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割礼

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岩崎一敬   Aug 31,2010 UP

 CDプレイヤーのスタートボタンを押した途端、フラッシュバックを起こした。1曲目に流れてきたのは、1990年頃、吉祥寺のライヴハウスで膝を抱えながら聴いていた割礼の曲、"リボンの騎士"である。スローなテンポで紡がれていくダークで妖艶な演奏と、おどろおどろしくも少年的でロマンティックな歌声。演奏の細部こそ覚えていないが、当時に受けた強烈なインパクトがありありと思い出される。しかしこんなにエロかっただろうか......。チリチリに音を歪ませ、アームを痙攣させながら弾かれるギターは、まるで女体に侵入するヘビのよう。ジャジィな旋律でループを紡ぐベース&ドラムも、身体に巻き付き陰部を舐め回すようにねっとりとまとわりつく。まして宍戸幸司のヴォーカルにいたっては......(自粛)。10分を超えてもなおオーガズム寸前の快楽で責めるこの曲に、男の筆者も、身体が火照ってしまうほど。"リボンの騎士"は古くからの割礼の代表曲であるが、今回初めて正式なかたちで収録されたのである。

 割礼は1983年に結成、今年で活動27年に及ぶ。『星を見る』は7年ぶりにリリースされる6枚目のアルバムだ。前掲の"リボンの騎士"以外にも"ルシアル"、タイトル曲"星を見る"といった、以前から演奏されている名曲が収められており、ほかに収録されている新曲も、同じようにスローで(宍戸いわく)"平ら"なもので統一されている。2000年に発表された『空中のチョコレート工場』、2003年に発表された『セカイノマヒル』ではカラフルでポップな表現も聴かせていたが、今回の新作ではそれ以前の割礼のムードを全体に感じさせるものとなった。
 こう書くと「80年代の音?」だとか「前時代的なんじゃないか?」と思われるかもしれない。いやいや、このリッチな音の鳴りはどうだ。研ぎ澄まされた演奏はどうだ。何よりエキサイティングな刺激と、サイケデリックなトリップを与えてくれるではないか。ぼくが20年前に受けたインパクトはまったく薄まることなく、どころか、さらに長い年月をかけて磨き上げられた豊潤な演奏に完全にノックアウトされた。

 日本のサイケデリック・ロック・バンドといえば、アシッド・マザーズ・テンプル&ザ・メルティング・パライソUFOやゴースト、スターズ、そして解散してしまったゆらゆら帝国や羅針盤などが挙げられるが、"サイケデリックなギター・バンド"といえば、僕のなかでのいちばんは割礼だ。とくに、かつてテレヴィジョンのギター・プレイにハマった人ことがある人は、ぜひ聴いてもらいたい。

岩崎一敬