ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns 大友良英「MUSICS あるいは複数の音楽たち」を振り返って
  2. 別冊ele-king 音楽が世界を変える──プロテスト・ミュージック・スペシャル
  3. KMRU - Kin | カマル
  4. 坂本慎太郎 - ヤッホー
  5. Milledenials - Youth, Romance, Shame | ミレディナイアルズ
  6. Dolphin Hyperspace ──凄腕エレクトリック・ジャズの新星、ドルフィン・ハイパースペース
  7. Loraine James ──ロレイン・ジェイムズがニュー・アルバムをリリース
  8. DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTS ——パンキー・レゲエ・パーティのレジェンド、ドン・レッツとマッシヴ・アタックのダディ・Gが揃って来日ツアー
  9. interview with Autechre 来日したオウテカ──カラオケと日本、ハイパーポップとリイシュー作品、AI等々について話す
  10. ele-king Powerd by DOMMUNE | エレキング
  11. Deadletter - Existence is Bliss | デッドレター
  12. Squarepusher ──スクエアプッシャーのニュー・アルバムがリリース
  13. Jill Scott - To Whom This May Concern | ジル・スコット
  14. ロバート・ジョンスン――その音楽と生涯
  15. Cardinals - Masquerade | カーディナルズ
  16. HELP(2) ──戦地の子どもたちを支援するチャリティ・アルバムにそうそうたる音楽家たちが集結
  17. Free Soul × P-VINE ──コンピレーション・シリーズ「Free Soul」とPヴァイン創立50周年を記念したコラボレーション企画、全50種の新作Tシャツ
  18. Columns 2月のジャズ Jazz in February 2026
  19. ぼくはこんな音楽を聴いて育った - 大友良英
  20. Flying Lotus ──フライング・ロータスが新作EPをリリース

Home >  Reviews >  Album Reviews > 少年ナイフ- 大阪ラモーンズ

少年ナイフ

少年ナイフ

大阪ラモーンズ

Pヴァイン

Amazon iTunes

大久保 潤   Jul 29,2011 UP

 少年ナイフには"Ramones Forever"という曲がある。2007年のアルバム『fun! fun! fun!』に収録された曲で、モーターヘッドの"R.A.M.O.N.E.S."と並んでグっとくる名曲である。個人的には聴くたびに泣く。この原稿を書くためにさっき聞き直したが、やはりちょっと泣きそうになった。ある日ラジオでラモーンズの曲を聴いて次の日にレコードを買いに行く。そしてギターを買ってバンドをはじめたパンク・ロック少女がやがてラモーンズのオープニング・アクトをつとめることになる......というストーリーが歌われている。少年ナイフのリーダーであるなおこさんの体験がもとになっていると言っていい内容の曲だ。
 本作『大阪ラモーンズ』はタイトルどおり、全曲ラモーンズのカヴァー・アルバムである。革ジャンにジーンズという姿でレンガ壁の前に立ったモノクロのジャケも雰囲気が出ている。リリースの経緯、ラモーンズとの交流などはオフィシャルサイトに詳しく書かれているので参照されたし。

 ラモーンズといえば、数多のメジャー・アーティストを集めた『ウィー・アー・ハッピー・ファミリー』というトリビュート・アルバムが2003年にリリースされている。マリリン・マンソンによるダウンテンポで陰鬱なアレンジの"KKK"のようにひねりを効かせたものもあれば、オフスプリングによる"アイ・ウォナ・ビー・シディテッド"のようなストレートなものある。振り幅はさまざまだったけれども(ちょっと速くしたメロコア・カヴァーみたいなのがいちばんつまんないと思う)、「大阪ラモーンズ」の場合はほとんどひねりを加えずシンプルに演奏されている。ラモーンズの場合は意外とコードの弾き方ひとつをとっても曲によって細かく変えていたりするのだが、そこまで厳密にコピーしているわけでもない。そのあたりの大らかさもナイフらしい。

 "電撃バップ"ではじまり"ピンヘッド"で終わる全13曲、基本的には代表曲が中心だけれども、あまり取り上げられる機会のない曲もある。なかでも『ロード・トゥ・ルイン』収録の"She's The One"なんかはあまり知られていない曲だが、とてもナイフに似合っている。ラモーンズの曲としては少々異色の部類に入る"ウィ・ウォント・エアウェイヴズ"は原曲以上にヘヴィな演奏だ。そういえば"電撃バップ"と並んでラモーンズの代表曲である"ロックンロール・レディオ"はやっていないが、何か意図があるのだろうか。先述のKISS以外にも、日本でも原爆オナニーズやK.G.G.M.など多くの名カヴァーが存在するだけに「いまさらやらなくていいか」というくらいのノリなんだろうとは思うが......。
 結成30周年を迎えたバンドのこのリリースについて「原点回帰」という表現をよく見かける。が、そもそもおそらく少年ナイフは「原点」を忘れたことはない。その時々で新しい音楽を吸収することはあっても、根っこにはつねにラモーンズやバズコッコスといった音楽がある。それはラモーンズの音楽にはつねに50年代のガール・グループやビーチ・ボーイズがあるのと同じことだ。ティーンのときに影響を受けた音楽をずっと大事にするということも少年ナイフがラモーンズから受け継いだことのひとつだ。もうひとつ、ラモーンズから受け継いだもっとも大きい要素は、シンプルで人懐っこく、とぼけたユーモアがあるところだろう。

 ラモーンズは結成22年にして解散した後、主要メンバーのジョーイやジョニーが燃え尽きたかのように次々とこの世を去った。ドキュメンタリー映画『エンド・オブ・ザ・センチュリー』を観るとメンバー間の確執や長年のツアー生活の疲れなど、想像以上にストレスフルなキャリアだったことがうかがえる。しかし、少年ナイフにそれは感じない。結成30周年を迎えながらその瑞々しさはまったく失われる気配がないのだ。イースタン・ユースの吉野寿はかつて少年ナイフについて「あの佇まいに憧れる」「あんなふうにまっすぐにロックと向き合えたらなあ」といった発言をしているが、おそらくそれは誰にでもできることであり、しかしやはり誰にでもできることではないのだ。

大久保 潤