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Noel Gallagher's High Flying Birds

Noel Gallagher's High Flying Birds

Noel Gallagher's High Flying Birds

Sour Mash/ソニー・ミュージック・ジャパン

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野田 努   Nov 11,2011 UP

 今日のいかなるブリット・ロック・バンドもレディオヘッドのようにダブステップを取り入れるか、あるいはデーモン・アルバーンのようにアフリカン・ミュージックにアプローチするとは限らない。60年代のブリット・ロックのふたつの巨星、ザ・ビートルズとザ・ローリング・ストーンズ以来の成功を収めたバンド、オアシスの曲を手がけていたノエル・ギャラガーは、すでに手垢でべたべたの、古めかしいブリット・ロック・サウンドに新たな気持ちで臨んでいる。弟のリアムによるビーディ・アイが、まさにブリット・ロックの歴史博物館に閉じこもったようなアルバムによって本国ではかんばしい評価を得られなかったこととは裏腹に、ノエルはこのアルバム『高く飛ぶ鳥たち』でブリット・ロックの拡張につとめている......という話になっている。英国でのレヴューを読むと(それで特別に評価されているわけではない。ただし、UKでは2011年にもっとも売れたロック・アルバムになるかもしれない、もうひとつのブリット・ロック・モンスター、アークティック・モンキーズよりも)。
 僕は『ガーディアン』のこのアルバムの記事の、ノエルが「エンニオ・モリコーネとデリック・メイに対する愛情を語っていた」と、そして収録曲の"AKA...ホワット・ア・ライフ!"の「ピアノ・リフはリズム・イズ・リズムの"ストリングス・オブ・ライフ"からの影響だ」というくだりを読んでいちだんと興味を抱いた。マンチェスターは20年以上昔に、"ストリングス・オブ・ライフ"がおそらく世界で最初にヒットした町だろう。というわけで、僕は真っ先に6曲目に収録された"AKA...ホワット・ア・ライフ!"から聴いた......まあたしかに、言われてみればそうなのかと思った。が、言われなければ一生気がつかなかっただろう、このピアノ・リフがそれだとは。
 ともあれ、オアシスとはアシッド・ハウス以降のダンス(エレクトロニック)に染まったブリット・ロックを昔ながらのバンド・サウンドに引き戻した張本人でもあるから、そのバンドの音楽的中心人物がいまさらリズム・イズ・リズムを口にすること自体、音楽ファンからするとじつは面白い話なのだ。さらにまた、周知のようにノエルはこのあともう1枚のソロ・アルバムのリリースが控えているが、そのコラボレーターはアモルファス・アンドロジーナス、そう、同郷のベテラン・テクノ・プロジェクト、フューチャー・サウンド・オブ・ロンドンの別名義だという。FSOLは日本ではUKほどに評価も人気が高くないとはいえ、"パプア・ニューギアニア"のヒットを知っている世代からするとちょっと驚きだ。

 これだけ言われれば『高く飛ぶ鳥たち』を聴かない手はない。"AKA...ホワット・ア・ライフ!"のあとに、まあ当然のことそれでは最初からと、オープニング・トラックの"エヴリバディズ・オン・ザ・ラン"を聴いて、そしてまずはその涙もろさに度肝を抜かれた......が、しかしオアシスとはビール腹の大人もいっしょに大声で歌わせ、号泣せることで有名なバンドなのだ。60年代的でスタイリッシュなブリット・ロックの(ディキシーランド・ジャズからの影響による)"ドリーム・オン"を聴くと、『オアシス』は「図々しくもいろんな時代のすべての偉大なバンドから言葉とメロディを盗んでいる」という『ピッチフォーク』の皮肉めいた評の通りだと思うのだけれど、そんなことは世界中のどのバンドにもあることで、"イフ・アイ・ハッド・ア・ガン"のようなバラードには力があるし、60年代後半のザ・キンクスのような"ザ・デス・オブ・ユー・アンド・ミー"も決して悪くはない。
 ノエル・ギャラガーなりに雑食性は高いつもりかもしれないけれど、しかし結局のところブリット・ロックの最良の部分が継承されていると思うし、そこがこのアルバムの最大の魅力となっていると思う。日本の人気ロック・バンドの多くは、それこそ「図々しくもいろんな時代のすべての偉大なバンドから言葉とメロディを盗んでいる」わけだが、彼らが盗みきれないブリット・ロックの真髄=伝統芸がこのアルバムにはある。それは技法的なこともさることながらオアシスの最大の魅力であっただろう、人の目など気にせずに好きなように生きるってことだ。

 マンチェスターの初演ではダフ屋が300ポンド(円高とはいえ4万円近く)の値段を付け、アルバム発表後間もないというのにオーディエンスはノエルといっしょにすでに歌を歌えている......と『ガーディアン』はレポートしている。ロックンロールの物語への執着心というよりも"俺たちのノエル"が帰ってきたというわけだ。ユナイティッドやシティのサポーターと同じような気持ちかもしれないが、この文章を読んでいるみんなはどう思うだろう、こんなものは醜いと思うのだろうか......ビール腹の大人たちが涙ながらにこんな歌詞を合唱している国というのは。「頑張ってくれ/耐えるんだ/誰もみな自由を求めているのだから」

野田 努