ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 大友良英スペシャルビッグバンド - そらとみらいと
  2. Teresa Winter, Birthmark, Guest,A Childs - Teresa Winter, Birthmark, Guest,A Childs | テレサ・ウィンター、バースマーク、ゲスト、エイモス・チャイルズ
  3. Jeff Mills with Hiromi Uehara and LEO ──手塚治虫「火の鳥」から着想を得たジェフ・ミルズの一夜限りの特別公演、ゲストに上原ひろみと箏奏者LEO
  4. Columns 大友良英「MUSICS あるいは複数の音楽たち」を振り返って
  5. Dual Experience in Ambient/Jazz ──『アンビエント/ジャズ』から広がるリスニング会@野口晴哉記念音楽室、第2回のゲストは岡田拓郎
  6. 別冊ele-king 音楽が世界を変える──プロテスト・ミュージック・スペシャル
  7. DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTS ——パンキー・レゲエ・パーティのレジェンド、ドン・レッツとマッシヴ・アタックのダディ・Gが揃って来日ツアー
  8. Milledenials - Youth, Romance, Shame | ミレディナイアルズ
  9. Dolphin Hyperspace ──凄腕エレクトリック・ジャズの新星、ドルフィン・ハイパースペース
  10. Young Echo - Nexus  / Kahn - Kahn EP / Jabu - Move In Circles / You & I (Kahn Remix) | ヤング・エコー
  11. Deadletter - Existence is Bliss | デッドレター
  12. Jabu - A Soft and Gatherable Star | ジャブー
  13. interview with Autechre 来日したオウテカ──カラオケと日本、ハイパーポップとリイシュー作品、AI等々について話す
  14. LIQUIDROOM 30周年 ──新宿時代の歴史を紐解くアーカイヴ展が開催
  15. Jill Scott - To Whom This May Concern | ジル・スコット
  16. KMRU - Kin | カマル
  17. Loraine James ──ロレイン・ジェイムズがニュー・アルバムをリリース
  18. Cardinals - Masquerade | カーディナルズ
  19. ぼくはこんな音楽を聴いて育った - 大友良英

Home >  Reviews >  Album Reviews > Helado Negro- Double Youth

Helado Negro

ElectronicIndie RockPost-RockPsychedelic

Helado Negro

Double Youth

Asthmatic Kitty

Tower Amazon

橋元優歩   Sep 05,2014 UP

 サヴァス・アンド・サヴァラス(SAVATH & SAVALAS)のメンバーとしても活躍し、プレフューズ73(PREFUSE 73)のアルバムにプロデューサーとして名を連ねるなど、ギレルモ・スコット・ヘレンとの仕事でよく知られるヘラド・ネグロことロベルト・カルロス・ラング(ROBERTO CARLOS LANGE)。スクール・オブ・セヴン・ベルズやイエセイヤー、ベア・イン・ヘヴンらとも関わりの深い彼は、いうなれば2000年代サイケデリックのエレクトロニック/ヒップホップ・サイド、あるいは、同時期のレフト・フィールドを象徴する面々を裏から支えてきたキー・マンというところだろうか。ヘラド・ネグロ名義での活動は彼がマイアミからブルックリンに移り住んでからスタートしているが、それは前掲のアーティストたちとともにブルックリンという地名がこの10年ほどの間においてもっとも求心力をもった時期にも一致している。『アー・オー(Awe Owe)』(2009年)などは日本でもよく売れたのではないだろうか。中古屋でもよく見かけた。

 さて、〈アスマティック・キティ〉からコンスタントにリリースをつづけ、2012年のジュリアナ・バーウィックとのコラボなど、客演やプロデュース業でもかわらずに活躍するラングの新作が届けられた。ノスタルジックなぬくもりとミステリアスな異世界感をとけあわせるジャケット写真だが、この被写体のうちのひとりはネグロ本人であるようだ。
 実家で不意に見つけた古い写真をアートワークに用いたというエピソードにミツメの『eye』を思い出し、この風合いや異世界性にはアワ・ブラザー・ザ・ネイティヴの『メイク・アメンズ・フォー・ウィー・アー・ミアリー・ヴェッセルズ(Make Amends For We Are Merely Vessels)』を連想する。いずれにせよ、エクアドル移民というルーツを瀟洒に取り入れながら音響的アプローチを試みてきた彼の手法は今回も健在で、冒頭の“アー・アイ・ヒア”のドードーズやエル・グインチョを思わせるようなゆるめのトロピカル・サイケに、スペイン語が心地よく映えている。

 しかし今作の特筆点は、昨年の『インヴィジブル・ライフ』においてもすでにその萌芽が見受けられたリズム・セクション、ビートの変化だろうか。さっそく2曲めの“アイ・クリル・ユー”は16ビートで展開されている。クリック・ノイズのような音があしらわれたパルスで、しつこくないものの、少し大胆にダンス・オリエンテッドな作品ではないかという予感を煽る。残響も深め、初期の清新なエレクトロ・アコースティック感は後退し、よりドリーミーでサイケデリックな色をつよめている。ジミー・タンボレロが参加しているという“イッツ・アワ・ゲーム”や、つづく“マイセルフ・オン・トゥー・ユー”“フレンドリー・オーギュメンツ”などは、ラテン風のクセもほとんど外れていて、たとえば〈ブレインフィーダー〉などからリリースされていてもおかしくないような、あるいはアンビエント・テクノといった趣さえある。
 遍在するようでどこにもないような、異国のようなホームのような、あらゆる場所の境界線を虹彩のように調節し、やわらかくもドープにも広げる、ネグロのマジック・タッチが冴えるサイケデリック・ダンス・アルバムだ。

橋元優歩