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Columns

AFX──『サイロ』から3作目の正直

AFX──『サイロ』から3作目の正直

対談:佐々木渉 × 野田努

Aug 17,2015 UP

 初めてマシンを鳴らしたときのようにあまりにも新鮮な、いや、空っぽな、いや、無邪気な、いや、アシッディな……いや、なんにせよ、こうも空っぽの音楽、ありそうで実はなかなかないぞ。『オーファンド・ディージェイ・セレク 2006 - 2008』は、リチャード・D・ジェイムスの昨年の『サイロ』~「コンピュータ・コントロールド・アコースティック・インストゥルメンツ pt2 EP」に続く、新作である。


AFX
ORPHANED DEEJAY SELEK 2006-2008

Warp/ビート

AcidTechno

Amazon

 というか、13年ぶりにアルバムを出したと思ったら、数ヶ月後にはEP、およそ1年後には新作。何なんだ~この攻めの姿勢は〜と不可解に思う方もいるかもしれないけれど、ワーナーと契約する以前の、『アンビエント・ワークス』やポリゴン・ウィンドウ時代のリチャード・D・ジェイムスはこんな感じだった。本来の彼に戻っただけである。そう、『アンビエント・ワークス』みたいな牧歌的で、郷愁的な作品を出すその傍らで、彼は当時は名義を代えてまったくクーダラナイ、アシッド・ハウスの変異体を出したりしていたのだった。要するに、『オーファンド・ディージェイ・セレク 2006 - 2008』は、クーダラナイ音楽を作り、プロモーションもなにも考えずにとにかく発表してみるという、リチャード・D・ジェイムスのもうひとつの真実を象徴していると言えるだろう。
 『サイロ』を『アンビエント・ワークス』に喩えるなら、新作はAFX名義での作品、あるいはコウスティック・ウィンドウ名義の一連の作品と連なっている。が、『サイロ』がそうであったように、過去の焼き直しではない。サウンドは確実に面白くなっている。リスナーはあらためてエイフェックス・ツインのドライな側面の、底知れぬ魅力に気づかされるだろう。

 それにしてもエイフェックス・ツインについて佐々木渉と話していると時間があっという間に過ぎる。わずかふたりの人間でさえそうなのだから、世界中のAFXファンが、飽きもせずに研究し、調査し、分析し、嬉々と議論し続けるのも無理はない。エイフェックス・ツインは聴いている最中ばかりでなく、その後も、まあとにかく面白いのだ。

AFXって、なんでこうも見事なくらい空っぽなんでしょうね? ──野田

本当に時代背景がバラバラな機材を集めて、「どうすんだろこれ?」っていう(笑)。──佐々木

野田:今回はAFX名義なんですよね。

佐々木:どういう事情なんでしょうね。

野田:ていうかまず、『サイロ』(2014年)からこんなにも連続で出てくるとは(笑)。『ele-king Vol.14』のインタヴューでは年内に出すとは言っていたけど、「あれはいつもの気まぐれだろうな」ぐらいに思っていたら、本当に出した。で、しかもその作品、『コンピュータ・コントロールド・アコースティック・インストゥルメンツ pt2 EP』がまず良かった(笑)。それも驚きでしたね。

佐々木:そうですね。クオリティが高い電子音楽を、一杯聴けて嬉しいですよね!でも、サウンドクラウドに大量にアップロードされた音源とかも含めて、割と溜まってたんだなと。音源が溜まってたというよりは、キッカケがあれば、ぶわーっと出てくるテンションがあったんだなという感じがしますよね。

野田:やっぱり『サイロ』で自信をつけたんでしょうね。

佐々木:それもあるでしょうし、もともと最近の作品の方向性に自信があったんだなっていう(笑)。

野田:リチャード・D・ジェームスみたいな天才でも、時代とズレてきたかも? って不安を抱いたときもあったと思うんですよ。「アナロード」シリーズだって、最後まで付いていったファンって、佐々木さんみたいな本当にコアな人たちでしょう?

佐々木:「アナロード」シリーズを評価していた人たちっていうのが、あんまり見えないとうか。リチャードのイメージそものの原点回帰というか、チルアウトというか……。あの頃って「アナロード」シリーズとかについてメディアとかで語ったりとかではなかったですよね。

野田:当時は『remix』誌でも、「こういうシリーズがはじまりました」と取り上げていたんですけど、5枚くらいから正直疲れたんです(笑)。でもあれは、完走した人たちは、最後が良かったって言うよね。ぼくみたいに途中で下山してしまった人間はダメですね。でも、時代の向きとしては、エイフェックス・ツインに追い風はなかったよ。あの頃、ゼロ年代のなかばでは、90年代の頃のずば抜けた存在感も、だいぶ薄れていたというのは正直あったと思うんですよね。

佐々木:90年代のときの暴れん坊的なエイフェックス・ツインのイメージからすると、「アナロード」は随分地味に見えました。本人も自発的にシーンへの立ち位置みたいなものを変えてきてるんだろうなと。飛び抜けて尖ったことをやろうとして、ああいうものを出したとは絶対に考えられない。むしろ当時だと、エイフェックスがサウンド傾向をソリッド化させて、クラークみたいな方向でもうひと暴れするんじゃないか、という勝手な妄想がありましたね。

野田:クラークが出てきたときは、『…アイ・ケア・ビコーズ・ユー・ドゥ』(1995年)を好きだった人たちの耳をさらったよね。クリス・クラーク名義で出した最初の2枚とかはね。〈リフレックス〉というレーベル自体は『グライム』(2004年)という名のダブステップのコンピレーションを出したりとか、その先見の明は後々すごかったとなるわけですけど、とくに2枚目の『グライム2』(2004年)はすごかったんですけど、エイフェックス・ツイン自身がシーンのなかで突出しているわけではなかったですよね。

佐々木:世界的に拡散したエレクトロニカ/IDMムーヴメントとちょっと距離を置いて、あえて台風の目だった〈ワープ〉を避け、〈リフレックス〉の方から出していたんでしょうかね? エレクトロニカとの距離感が上手かったのは、〈プラネット・ミュー〉とかもそうですけれどね。エレクトロニカの飽和や、いままでのテクノのイメージとは違う流れっていうものを、ある種引き算的に打ち出して、独自に強度を上げて、うまいことコアな方に戻ってきている感じがしますね。ずば抜けた直感みたいなものが本人たちにあるのかなと思ってしまう程度には、コーンウォールの人たちはすごかったんだなと、いまでも思っちゃたりするところはあります(笑)。

野田:『サイロ』まで時間がかかったというのは、名義的なことだったり、他にもいろんな要因があったんでしょうね。とにかく、『サイロ』は勝負作だったと。そして、実際にそれが完成度の高い素晴らしい作品だったし、日本でもウケて、世界でもウケた。で、『サイロ』が日本でウケたってことが、ぼくはさらに素晴らしかったと思うんですよね。
というのも、エイフェックス・ツインの音楽って、本当に意味がないでしょ(笑)。まあ、リチャードには牧歌性とか少年時代への郷愁とか、そういったものを喚起させる曲もあって、もちろんそれは彼の最大の魅力で、『サイロ』にはそれがあったわけですけど、今回のAFX名義の『オーファンド・ディージェイ・セレク 2006-2008』は、ものの見事に空っぽなんですよ(笑)。
この意味のなさってすごくないですか? いまは本当に意味を求められる時代で、何をやるにしても、アイドルにだって意味が必要で、大義がなければいけない。何かのためになるとか、社会的な大義がなければいけないような時代において、ここまで何もない音楽があって良いのかという(笑)。純粋に音楽をただ楽しむっていうね、しかも、この音楽を楽しめる人がたくさんいるってことが、本当に良いですね(笑)。インタヴューでは社会に対して深刻な危機感を抱きながらも、作品でここまでふざけられるリチャードが素晴らしいですね。

佐々木:ぼく、今日こうやって対談させていただくというところで、すごく悩んでしまったのは、リチャード・D・ジェームスの存在感と、音楽の意味とかジャンルとかは関係ないと思ったほうが良いと思いたいんですよね。真偽ともかく……。リチャードの提示している音楽やその存在感と、昨今のエレクトロニック・ミュージックのジャンルだったり歴史だったりが対比されることは、掘り下げれば下げるほど意味がない気がする。
リチャードが『ele-king』のインタヴューで、若手アーティストのガンツだとか、その辺の若手に対して、「彼らは彼らなりにラップトップを使っていろんな音を試していろんなことを学んでいるんじゃないか?」と言っていますが、それこそ、エイフェックス本人が、そうやってずっとやってきたらだと思うんです。「音が出る面白いおもちゃがあったら徹底的にいろいろ試すだろ? ガンツの遊び心はセンス有るよね」みたいな。90年代の終わりにラップトップが入ってきて誰でもエレクトロニカを作れるようになったとき、みんないっせいに音遊びをはじめるようになったというところで、リチャードは「もっと違う音遊び」をするために、ハード機材などを模索し始めていたんだとしたら……すごい割り切り方だなと(笑)。やっぱり思考回路が違うんだろうなというところが……

野田:あまりにも天然っていうか、唯一無二ってこと?

佐々木:リチャードの『サイロ』のときのプレスの出し方、アルバムの内容、パッケージの出し方も含めて、とにかく、「うわー」っとなっちゃったというか……。「ちゃんと機材を吟味して、テクノロジーごとの特性や、個性の組み合わせを考えて、テクノを作ったら、こんなにすごいのができるんだ」以外の感想が僕にはなっかたんですよ。

野田:もちろんぼくも最初はそう思いましたね。

佐々木:だから何て言うんですかね……。音に、リチャードの音楽探求の成果があったんです。逆に、自分は頭では考えすぎて誤解をちょっとしていたな、と。音楽は変顔じゃない…という、パブリック・イメージのリチャードの意味のなさを、またリチャードが示してくれたというか(笑)。

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