Home > Interviews > interview with Gold Panda - “ネクスト”を求めて
僕も一時期はフライング・ロータスがとてもクールに思えて、『ロサジェンルス』みたいなビートを作ろうと腐心したこともあったけど、あまりにもその亜流が多いし、僕自身も飽きてしまった。だって、ダブステップの連中だって、多くがフライング・ロータスの物真似じゃないか。
■プラグインを使って、わけのわからないものにしているような。
パンダ:彼らはインターネットからコンピュータ・ゲームから、いろんなものから影響を受けている。電話しながら音楽を作れる世代なんだよ。だから彼らの音楽はより複雑になってきているんだろうね。
■じゃあ、ちゃんといまのシーンをわかっていて、今回の音にしたんだね。
パンダ:新しい音楽にはつねに興味を持っている。僕も一時期はフライング・ロータスがとてもクールに思えて、『ロサジェンルス』みたいなビートを作ろうと腐心したこともあったけど、あまりにもその亜流が多いし、僕自身も飽きてしまった。だって、ダブステップの連中だって、多くがフライング・ロータスの物真似じゃないか。だったら僕は違うところに行こうと思って、もっとエレクトロニックでミニマルなところを目指したんだよ。古いモノをまた聴き直しているんだよね。
■そこは意識してそうなったんだね。
パンダ:今回も、そして次作も、『ロサジェンルス』ビートからはどんどん離れるよ。
■ハハハハ。逆に言えばフライング・ロータスはそれだけすごいからね。
パンダ:それはもちろん。"ユー"はちょっと、いかにもいまっぽいウォンキー・テクノな感じを出しているでしょ。でもよく聴けば、BPMもそうだけど、ビートはもっとストレートなんだ。他のトラックでも、似たようなことはしていない。
■僕が『ラッキー・シャイナー』を聴いて思い出したのがエイフェックス・ツインの『アンビエント・ワークス』だったんだよね。90年代初頭のエレクトロニック・ミュージックを思い出した。
パンダ:エイフェックス・ツインと言われるのはとても嬉しい。彼の音楽や、あの頃のエレクトロニック・ミュージックは、より感情が反映されて、よりメロディが重視されていた。しかしいまの音って、いかにクレイジーかってところを競っているように思えるんだ。いかにクレイジーなビートを作るかってところが強調され過ぎている。僕はそうじゃなくて、エイフェックス・ツインのように感情を表現できる音楽を作りたいんだよ。
■まあ、クレイジーなビートも面白いけどね。
パンダ:エイフェックス・ツインもまさにクレイジーなビートも作っているけど、それだけじゃない。メロディもちゃんとあるでしょ。
■2曲目の"ヴァニラ・マイナス"以降も、かならず良いメロディがあるよね。
パンダ:うん、すごく意識したから。僕は"ビート"というよりも"ソング"を目指したんだ。歌詞がなくても"歌"、頭に残るような"歌"を意識した。
■あとは......ジャケット・デザインもそうですけど、マルチ・カルチュアラルというか、エキゾティムズみたいなのも意識しているでしょ。インドの楽器を使ったりしているし、内ジャケットに写っているこのおばさんの写真も......これ?
パンダ:僕のおばあちゃんの写真。
■えー、そうなんだ。
パンダ:インド人で、名前がラッキー・シャイナー。
■えー、そういうことなんだ!
パンダ:スペルを変えているけどね。
■エセックスに住んでいるの?
パンダ:住んでいる。
■キューバの人かと思った。
パンダ:80歳の誕生日に行ったポルトガルで撮った写真だよ。
■へー、それで"クイッターズ・ラガ"や"ユー"もインド音楽をチョップしてたんだね。言われてみればダーウィンもインド系の顔してるもんね。
パンダ:鼻とかとくにね。
文:野田 努(2010年10月14日)