ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Moodymann ──ムーディーマンの来日公演が決定、今年は東京と京都をツアー
  2. The Alchemist ──現代USヒップホップのキーパースン、ジ・アルケミストが来日
  3. Eden Aurelius - Entre Nous / emer ft. Ugnė Uma - You and Me | エデン・オーレリウス、エメル、ウグネ・ウマ
  4. Marcellus Pittman ──デトロイト・ハウス珠玉の逸材、マーセラス・ピットマンの来日ツアーが開催
  5. Boy Harsher - GET MEAN | ボーイ・ハーシャー
  6. Helen - Linda's Head | ヘレン
  7. aya × Violent Magic Orchestra ──初来日を果たす〈Hyperdub〉のアヤと、ブラックメタル・テクノ・プロジェクトVMOによる共同ツアー
  8. interview with Adrian Sherwood and Nightmares On Wax UKダブ・“トーク”・セッション | ――エイドリアン・シャーウッド×ナイトメアズ・オン・ワックス特別対談
  9. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  10. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定
  11. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  12. Freddie Gibbs & The Alchemist - Alfredo  | フレディー・ギブズ、ジ・アルケミスト
  13. The Bug vs Ghost Dubs - Implosion | ザ・バグ、ゴースト・ダブズ
  14. Black Marble - Life in Small Spaces | ブラック・マーブル
  15. Columns ♯17:もしもパンクがなかったら ——その基礎知識と『パンク50周年記念号』刊行のお知らせ
  16. アンビエント/ジャズ マイルス・デイヴィスとブライアン・イーノから始まる音の系譜
  17. Gaku Kiishi ──『サイコ』『オーメン』『シャイニング』『リング』から『8番出口』『バックルームズ』まで、ホラー映画の音楽を分析する1冊が刊行
  18. R.I.P. 鷲巣功
  19. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  20. Cornelius - Refractions | コーネリアス

Home >  Interviews > interview with Agraph - 深夜の街の、電子とピアノ

interview with Agraph

interview with Agraph

深夜の街の、電子とピアノ

――アグラフ、インタヴュー

野田 努    Oct 26,2010 UP

夜の海を散歩したこと、夜の街を山の上から見たことが大きなヒントになっています。そのとき感じたのは、「そこにあるのに見えていない」ということだったんです。夜の海は真っ暗で海の存在感はあるのに見えない、夜の街も街はあるのに人が見えない。


agraph / equal
Ki/oon

Amazon

■音楽体験として大きかったのは?

牛尾:アクセス。

■なんですかそれは?

牛尾:浅倉 大介さんとか、どJ-POPです。僕はそれをテレビで見て、「将来ミュージシャンになろう」と。それからTMN、小室哲哉さんを見て、「やらなきゃ」と(笑)。

■はははは。

牛尾:痩せているから運動部はやめようと(笑)。まあ、そういう感じでしたね。

■自分で意識的にCDを買いに行ったのは?

牛尾:クラフトワークですね。中学校まではJ-POPだったんですけど、卒業間際に友だちの家で『ザ・ミックス』を聴いて、もう「すごーい!」と(笑)。"コンピュータ・ラヴ"の「ココココココ......」と短いパルスみたいな音にリヴァーブがかかっているだけというブレイクがあるんですけど、それだけテープに録ってずっと聴いてたっりとか。

■はははは。

牛尾:音フェチみたいなのは、もうその頃からありました。気に入った音色をずっと追い続けていたりとか......ピアノを弾いていると戦メリを弾きたくなってくるので、そこから坂本龍一さんを聴いて、YMOを聴いて、みたいなのがちょうどクラフトワークを聴きはじめたのと同じ時期で。そうこうしているうちに90年代後半で、卓球さんやイシイさんも聴いたり、雑誌を見ると「〈ルーパ〉というパーティがあってそこでは80年代のニューウェイヴもかかっているらしい」とか、で、「あー、行かなきゃ」って(笑)。それからジョルジオ・モロダーを探してみたり。そうやって遡っていってるだけなんです。

■最初から電子音楽には惹かれていたんだね。

牛尾:家にはピアノとエレクトーンがあったんですけど、ずっとエレクトーンに憧れがあったんですよ。それが大きかったかもしれないですね。で、クラフトワークにいって、それから......「卓球さんが衝撃を受けた"ブルー・マンデー"とはどういう曲なのか」とかね。

■そうやって一筆書きの世界に近い付いていったんだね(笑)。

牛尾:そうです(笑)。だから、エレディスコなんです。卓球さんにコンピに入れてもらった曲も、最初に出したデモはオクターヴ・ベースがずっと「デンデンデンデン」と鳴っているような(笑)。ちょうど当時はシド・ミードのサウンドトラックを作るんだと自分で勝手に作っていた時期で。

■いまのアグラフの原型は?

牛尾:浪人か大学のときです。でも、ハラカミさんを聴いたのは、高校生のときでしたけどね。だから、エレディスコを作りつつ、そういう、小難しい......。

■IDMスタイル(笑)。

牛尾:そう、IDMスタイルと呼ばれるようなものを作りはじめたんです(笑)。だんだん知恵もついてきて、細かい打ち込みもできるようになったし、アグラフの原型ができていった感じですかね。

■小難しいことを考えているかもしれないけど、ファーストよりも今回の新作のほうが若々しさを感じたんですよ。だって今回のほうが大胆でしょ。ファーストはもちろん悪くはないんだけどわりと型にはまっているというか。

牛尾:ハラカミさんへの憧れですからね。エレディスコをやっていたのも卓球さんやディスコ・ツインズへの憧れでした。それはいまでもあるんですけど、自分のなかで結実できていないんですよね。それよりも自分に素直に自分の味を出すべきだと思ったんですよね。自分がいま夕日を見ながら聴いて泣いちゃう曲とか(笑)、そこに根ざして曲を作りたかったんです。

■なるほど。

牛尾:そうなんです。ファーストは(レイ・ハラカミへの)憧れでしたね。

■この新作は時間がかかったでしょ?

牛尾:かかりましたね。ファーストをマスタリングしているときにはすでに取りかかっていましたから。でも、最初はうまくいかなった。『ア・デイ、フェイズ』の"II"になってしまっていたんですね。

■最初にできたのは?

牛尾:1曲目(lib)と2曲目(blurred border )です。テクニカルな細かい修正を繰り返しながら、だんだん見えてきて、それで、1曲目と2曲目ができましたね。「行けるかも」とようやく思えました。

■アルバムを聴いていてね、ものすごく気持ちよい音楽だと思うんだけど、たとえば1曲目にしても、かならず展開があるというか、だんだん音数が多くなっていくじゃない? ずっとストイックに展開するわけじゃないんだよね。そこらへんに牛尾くんのなかではせめぎ合いがあるんじゃないかなと思ったんですけどね。

牛尾:僕の曲は、後半に盛りあがっていって、ストンと終わる曲が多いんですよ。

■多いよね。

牛尾:小説からの影響なんでしょうね。小説をよく読むんです。小説って、それなりに盛りあがっていって、ストンと終わる。あの感じを自分が紡ぎ出す叙情性の波で作りたいんだと思います。

■なるほど。

牛尾:僕は散歩しながら聴くことが多いんですけど、曲を聴き終わって、いま見ている風景を......、夕焼けでも朝焼けでも夜の街でもいいんですが、曲が終わったときに風景をそのまま鳥肌が立ちながら見ている感覚というか、それをやりたいんです。

■それは面白いね。実際に曲を聴いていて、その終わり方は、きっと考え抜いた挙げ句の結論なんだなというのが伝わってきますね(笑)。

牛尾:ありがとうございます(笑)。

■あと、たしかにヘッドフォンで聴くと良いよね。

牛尾:まあ、やっぱ制作の過程で散歩しながら聴いているので、どうしてもそうなってしまいますね。でも、どの音量で聴いても良いように作ったし、爆音で聴かないとでてこないフレーズもあるんですよ。それはわざと織り込んでいる。

■ちなみに『イコール』というタイトルはどこから来ているんですか?

牛尾:僕の音楽はコンセプトありきなんです。ファーストは日没から夜明けまでのサウンドトラックというコンセプトで作りました。今回は、夜の海を散歩したこと、夜の街を山の上から見たことが大きなヒントになっています。そのとき感じたのは、「そこにあるのに見えていない」ということだったんです。夜の海は真っ暗で海の存在感はあるのに見えない、夜の街も街はあるのに人が見えない。それはひょっとしたら見ている対象物と自分とが均衡が取れている状態なんだなと思ったんです。そのとき、今回のタイトルにもなった"static,void "とか"equal"とか、そういう単語が出てきた。それでは、これを進めてみようと。抽象的だけど、寄りかかれる柱ができたんです。

■なるほど。最後のアルヴァ・ノトのリミックスがまた素晴らしかったですね。

牛尾:そうなんです。今回は10曲作って、最後はもう彼に託そうと。ドイツ人がわけのわからないアンビエントをやって終わるという感じにしたかったんです。そうしたらカールステン(・ニコライ)から「フロア向けにする?」というメールが来て。「あの人も、リミックスのときはフロアを意識するんだ」と驚きましたけどね。

■しかもあれでフロア向けというのが(笑)。

牛尾:でも突出していますよね。マスタリングをやってくれたまりんさんにしても、もう1曲リミックスをしてくれたミトさんにしても、あとブックレットに小説を書いてくれた円城(塔)さんにしても、僕の描いた青写真以上のものを挙げてくれた。だから満足度がすごく高い。

■僕、小説はまだ読んでないですよね。僕も日常で聴いている音楽はインストが多いんですけど、それはやっぱ想像力が掻き立てられるから好きなんですね。同じ曲を妻といっしょに聴いていても、僕と妻とではぜんぜん思っていることが違っていたりする。そこが面白いんです。

牛尾:そこは僕もまったく同じです。たとえばtwitterで曲を発表すると、僕が持っている「この曲はこういう気持ちで作りました」という正解と、ぜんぜん違った感想をみんな返してくれるんですよね。それが面白いんです。

■まさに開かれた解釈というか。だから小説を読んでしまうと、イメージが限定されてしまうようで恐いんです。

牛尾:円城さんは文字を使っているんですけど、ホントに意味わかんないんですよ。言い方は悪いんですけど(笑)。せっかく音楽があるのに、愛だの恋だのと、なんで歌詞で世界観を狭めてしまうんだろうなというのはずっとあるんです。でも、円城さんの言葉は違うんですよ。もっと開かれている言葉なんです。小説を付けたかったわけじゃないんです。円城さんの言葉が欲しかったんです。

■なるほど。

牛尾:さらに勘違いしてもらえると思うんです。

■わかりました。じゃあ、僕も読んでみます。

牛尾:ぜひ(笑)。

文:野田 努(2010年10月26日)

123

INTERVIEWS