Home > Interviews > interview with Alex Paterson - “希望”と“自由”のオーブ
地球をテーマに......どうやって地球ができたのかをテーマに僕がオペラを書いているんだけど、それと関連している。そのことがあって、『メタリック・スフィアーズ』というタイトルに惹かれたんだよね......そう、つまり......ああ、僕はパンク野郎じゃなく、ヒッピーだったんだ! いま気がついたよ!
オーブ メタリック・スフィアーズ[Limited Edition] ソニー・ミュージック・ジャパン |
■アルバムにおけるデヴィッド・ギルモアの役割はどんなものだったのですか?
アレックス:ギターを弾いた。
■はい。
アレックス:あとヴォーカル少々、そして......消えた。
■ハハハハ。
アレックス:アルバムがリリースされてから数か月後、(ギルモアと)共通の知り合いのサッカー選手と話す機会があったんだよ。そうしたら、彼がこう言うのさ。「デヴィッド・ギルモアがいままで作ったアルバムでいちばん楽だったと言っていたぞ」って。僕は「そりゃあ、当たり前だ。あいつは3時間しかいなかったんだから」と言ってやった。「1日もいなかったんだぜ。それは楽だろう」ってね。
■あなたが彼にディレクションしたことがあれば教えてください。
アレックス:いいや、何も......ていうか、僕はスタジオには立ち会ってないから。ユースは立ち会っていたよ。とにかくミスター・ギルモアはピンク・フロイド的なギターを弾いた。弾きまくった。まあ、マニュエル・ゲッチング的なミニマルな箇所もちょっとだけあるけどね。
■コンセプト的にはデヴィッド・ギルモアが入る前からあなたのなかではできあがっていたんでしょうけど、前作『バグダッド・バッテリーズ』からの連続性はあるんですか?
アレックス:あるよ。
■それは環境問題とリンクしているんですか?
アレックス:ていうか......『バグダッド・バッテリーズ』は、2000年前のバグダッドの話がモチーフになっているんだけど、『メタリック・スフィアーズ』は2800年前の南アフリカに実際にあったメタリックな造形物なんだよ。ググればすぐにわかるよ。500個も出てきたらしい。
■あなたは、そのメタリック・スフィアのどんなところに興味を抱いたのでしょう?
アレックス:それは子供に名前を付けるようなもので、今後のオーブの方向性を表すようなものとして『メタリック・スフィアーズ』と名付けた。いまはまだ詳細を話せないんだけど、ロンドンのコヴェント・ガーデンにあるオペラハウスで、僕が関わるプロジェクトが進んでいる。それは地球をテーマに......どうやって地球ができたのかをテーマに僕がオペラを書いているんだけど、それと関連している。そのことがあって、『メタリック・スフィアーズ』というタイトルに惹かれたんだよね......そう、つまり......ああ、僕はパンク野郎じゃなく、ヒッピーだったんだ! いま気がついたよ!
■ハハハハ。ちなみに"メタリック・サイド"が何を意味し、"スフィア・サイド"は何を意味しているのでしょうか?
アレックス:とくに意味はないけど、Aサイド、Bサイド、Cサイド、Dサイドと分けるよりはふたつに分けたほうがいいだろうと。CDでは1面しかないんだけど、こうすればふたつに分けられる。もっと詳しく話そう。実はアルバムには10曲入っている。しかし、iTunesでそれをバラにダウンロードすると、アルバムという作品の意味がなくなってしまう。アルバムとして聴いてもらえなくなる。レンブラントやピカソの絵が1枚ではなく、部分部分を切り取ったら作品として成立しないでしょ。そういうこともあって、"メタリック・サイド"に5曲、"スフィア・サイド"に5曲収録した。で、1曲の値段で5曲を売るという、これなら買う人にとってもハッピーでしょ。それにピンク・フロイドは長年、iTunesと闘ってたよね。彼らもアルバムとして聴いて欲しいからそうしたんだけど、これはそういう意味で良いアイデアだと思った。
■ふたつの世界観を表しているわけではないんですか?
アレックス:とくにない。半分に分けているだけで、中間点とも言える。"メタリック・サイド"の曲が"スフィア・サイド"でまた出てきたりしているだろ。
■グラハム・ナッシュの"シカゴ"のような曲を現在取り上げることの意義をどう考えますか?
アレックス:"シカゴ"は僕たちのカヴァー・ヴァージョンだよ。
■"ヒム・トゥ・ザ・サン"では、サンプリングされていますね。この曲は当時の新左翼(シカゴ・エイト)への共感を歌っているそうですが、アルバムのメッセージを代弁していると言えますか?
アレックス:代弁している。つまり希望だ。
■希望?
アレックス:よりよい世界への希望だよ。
■なるほど。
アレックス:ミスター・ギルモアならアルバムのタイトルを"ヒム・トゥ・ザ・サン"にしたかったろうね。まあ......今回はミスター・ギルモアとは電話やメールでしかやり取りしてないからね。もしこんどいっしょにやる機会があれば、時間を作ってじっくり会ってからやりたいよ。
■会ってないというのはびっくりですね。
アレックス:会ったことはあるんだけど、今回のプロジェクトでは会っていない。21世紀のファイルシェアリングのお陰だ。
取材:野田 努(通訳:湯山恵子)(2011年1月31日)