Home > Interviews > interview with Tickles - 時計仕掛けのメルヘン
フォー・テットやディラン・グループも好きでしたよ。でも自分が表現したい本当のところは、むしろゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラー寄りというか。もっと激しいものであって......
![]() Tickles on an endless railway track MOTION± |
■そもそもticklesはいつ頃にスタートしたんですか?
tickles:ファースト・アルバム『ア・シネマ・フォー・イヤーズ』を出したのが2006年。で、2008年にセカンド・アルバム『トゥデイ・ザ・スカイ・イズ・ブルー・アンド・スペクタキュラー・ヴュー』を出して、4年空いて今回の『オン・アン・エンドレス・レイルウェイ・トラック』ですね。
■はじめた当時と比較して、現在はどういう部分が変化していると思いますか?
tickles:最初はメンバーがふたりいて、いまほど生楽器を使わない、打ち込み主体のサウンドだったんですよ。
■時間が経つにつれて、どんどん生楽器が増えて、今回のような温かみのあるサウンドに変わってきた感じなんですね。
tickles:そうですね。
■本作ではどんな楽器を使っていますか?
tickles:ピアノ、ギター、トイピアノ、ピアニカ、ベース......。
■鍵盤が多いんですね。
tickles:家にある楽器は鍵盤が多いですね。あとドラムはサンプリングですけど、ほとんど自分で叩いてます。
■基本的にはご自宅で録られているんですか?
tickles:ピアノとドラムはスタジオで録りましたけど、あとはすべて自宅です。
■『オン・アン・エンドレス・レイルウェイ・トラック』(線路は続くよ どこまでも)というタイトルには、どのような意味が込められていますか?
tickles:アルバムを作っている途中で、僕たちが昔から知っている「線路は続くよ どこまでも」というフレーズを英語にしたものにしようと思っていたんです。英語にすると、字面がちょっと淡白な感じになってしまうんですけど、わりと楽観的な意味合いで、これからも楽しくやっていけたらいいね、というような意味合いで付けました。このジャケットは友だちにお願いしたんですけど、彼が僕に持っているイメージがこんな感じなんだと思います(笑)。
■これは絵なんですか?
tickles:アクリル板を5枚ぐらい重ねて、立体にした絵なんです。それをさらに箱に入れたという。なかなか伝わりにくいかもですけど。
■へー、面白いジャケットですよね。これを最初に見たときに、ある種、宮沢賢治的というか、童謡的なイメージを連想したんですけど、どういうコンセプトで作ったのですか?
tickles:実はこの手法は、ユーリ・ノルシュテインというロシアのアニメーション作家が作品を展示する時に使うやりかたを真似したものなんです。ユーリ・ノルシュテインが童話的な作品を作る人だし、ロシアやチェコのアニメーションが好きだったりもするので、そういう感じは出てるかもしれないですね。
■そうした童話的な世界観とティックルズの音楽にはどのような関連性がありますか?
tickles:そうですね。アニメをアニメイトする(命を吹き込む)という行為と、音楽に自分の魂を吹き込むという行為は似てるのかなって思いますね。電子音楽なんですけど、そこに有機的なものを入れたいというのは常々思っていることでもありますし。
■なるほど。ちなみにピアノをずっとやられていたんですよね?
tickles:幼稚園くらいから、10年ちょっとやっていましたね。
■じゃあ鍵盤は昔から得意なんですね。
tickles:最初に触れた楽器だし、いまでも曲を作るときに最初に触るのは鍵盤であることが多いですね。
■とてもリズミカルな演奏だなって思ったんです。ハウスやテクノのプロデューサーが作るリズムとも違うし、ロックをバックボーンに持つ人の感じともまた違う。とても独特なリズム感があるなと思いました。
tickles:そこは完全に無意識というか、ある種の手癖みたいなものだと思います。シーケンサーにパチパチと打ち込むんじゃなくて、手打ちで打っていくので。メロディ先行で、後からリズムを付けていくので、そういう感じになっているのかもしれないですね。
■ゴッドスピード以外で、インパクトのあった音楽ってどんなものですか?
tickles:いろいろありますけれど、シガー・ロスのライヴを観たときはかなり感動しました。うーん、あとは何かなあ。
■シガー・ロスもゴッドスピードもとてつもなく壮大なサウンドだけど、ティックルズはもっと身近な感じがしますよね。
tickles:そうですね。僕がスタイルだけシガー・ロスやゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーのようなサウンドをやっても何の説得力もないというか。僕ができる音楽というのは、現在のティックルズのようなサウンドっていうことなんだと思います。
取材:野田 努(2012年5月24日)