Home > Interviews > interview with Ultraista (Laura Bettison) - ナイジェル・ゴドリッチの新たな仲間たち
ウルトライスタ - ウルトライスタ ホステス |
パフォーマーになることではなく、おもしろい挑戦をすることが自分の望みである、と昨年ナイジェル・ゴドリッチは語っている。いわずもがな、「オルタナティヴ・ロック」世代の名プロデューサーだ。レディオヘッドやベックをはじめ、数多くのバンドが彼のマジック・タッチによって独特のサウンド・キャラクターを得てきた。ゴドリッチの場合は、目立たぬようにそのバンドの音をブラッシュ・アップするというよりは、彼でしかありえない特徴的なプロダクションを植えつけるといった仕事ぶりが際立っている。その意味でとてもアーティスティックな裏方ではあり、そうした個性でもって同時代のロック・ファンのなかに大きなインパクトを残してもきた。
そのゴドリッチが新しく示した「おもしろい挑戦」とは、他ならぬ彼自身によるバンド、ウルトライスタのことだ。しかしパフォーマーになることが自分の望みではない、と自らの活動スタイルについて言及しているのは興味深い。プレイヤーとしての個人的な表現欲求を満たすプロジェクトではなく、あくまでもより開かれた場所へ向けて問いかける力を持った取り組みだという自負がうかがわれる。
プロジェクト誕生のきっかけは、ゴトリッチとベテラン・ドラマー、ジョーイ・ワロンカーとの対話であったというが、ふたりがもうひとりのメンバーとして白羽の矢を立てたのが、まだほとんどキャリアのないロンドンの女性アーティスト、ローラ・ベッティンソンである。彼女の通っていたアートスクールのイヴェントをのぞきにいき、そのことがハントに結びついたという。今回のインタヴューのお相手は、そのローラだ。いわば名ではなく、実の才能を見初められたといってもいい起用であるが、彼女はどういう人物なのだろうか。いまではいくつもの記事が公開されているが、インタヴューを行った当時はまだほとんど詳細な情報はなかった。音楽活動に対するしっかりとした意見やヴィジョンがあり、また、ただのシンガーというわけでもなく、楽曲制作の上でも本質的な部分を負っている、とても魅力的な存在だ。
アーティストたちが「理想のレーベル」や「ちょうど良いタイミング」とかを待つのにくたびれて、自分たちの音楽をすぐにファンと共有したいがために、そういうやり方に人気が出るようになってきている部分もあると思う。
■ウルトライスタはどのような性格のプロジェクトなのでしょう? 期間限定のコラボといったかたちなのか、それとももっとバンドとしての有機的なつながりを持ったものなのでしょうか?
ローラ:このプロジェクトは、アフロ・ビートとエレクトロニカにインスパイアされたプロジェクトで、基本的にはバンドなの。いまはライブ活動もしているしね。わたしたちのうちの誰も、これからの方向性をはっきりとはわかっていないんじゃないかな。レコードをリリースしてからはいろいろ目まぐるしかったけど、これからも全員が十分な時間があって、楽しんでやれるかぎりは、いっしょに音楽活動を続けていくと思うわ。
■ナイジェル・ゴドリッジがライヴを観に来たことが、あなたがウルトライスタとして活動するきっかけになったそうですが、ディンブルビー&キャパーはあなたひとりでライヴを行っていたのですか? どのようなステージングだったのでしょう?
ローラ:ディンブルビー&キャパーはわたしひとりで曲を作っていたんだけど、ライヴでは大抵バンドとダンサーに参加してもらっていたの。このプロジェクトは何年もやっているうちに何度も生まれ変わって、はじめはソロ・プロジェクトだったものが、最後にやったライブではステージ上に15人も登場するまでになったわ。
■音源のリリースはテープが1本あるだけですか?
ローラ:わたしが大学2年めだった2008年あたりにディンブルビー&キャパーの曲を書きはじめて、そのエレクトロニックでループ中心の新しいセットを使ってどんなことをしようか試行錯誤している間、自分自身を隠せるような名前が欲しかったの。ほとんど遊びみたいなものだったわ。活動中の数年間には、自主制作のシングルをシリーズで出したり、小さなEPをいくつかリリースした。いまは別の名義でわたし自身のソロの作品を制作中で、できれば2013年中には世に出せるようにしたいと思っているの。
■UKのシーンでもテープのリリースやD.I.Y.なレーベル運営は増えているのですか? あなたが活動していたシーンやまわりにいたアーティストについて教えてください。
ローラ:増えていると思うわ。お金のないレーベルが多いから、すでに小さくても熱心なファンが付いているアーティストは、自分たちでリリースした方が利益が上がるっていう場合もあるしね。でもそれだけじゃなくて、アーティストたちが「理想のレーベル」や「ちょうど良いタイミング」とかを待つのにくたびれて、自分たちの音楽をすぐにファンと共有したいがために、そういうやり方に人気が出るようになってきている部分もあると思う。
インターネットはアーティストとファンがそういう形で交流するのにとても便利ね。わたしはアート・スクールとして有名なサウス・イースト・ロンドンのゴールドスミス・カレッジで勉強したから、わたしのいる「シーン」はまったく違ったいろいろな分野のクリエイティヴな人びとばかりだと思う。アーティスト、フォトグラファー、ファッション・デザイナー、ミュージシャンとか。とても刺激的よ!
取材:橋元優歩(2013年1月17日)
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