ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. フォーク・ミュージック──ボブ・ディラン、七つの歌でたどるバイオグラフィー
  2. Pulp - More | パルプ
  3. Cosey Fanni Tutti - 2t2 | コージー・ファニ・トゥッティ
  4. Derrick May ——デリック・メイが急遽来日
  5. Theo Parrish ──セオ・パリッシュ、9月に東京公演が決定
  6. サンキュー またおれでいられることに──スライ・ストーン自叙伝
  7. Adrian Sherwood ──エイドリアン・シャーウッド13年ぶりのアルバムがリリース、11月にはDUB SESSIONSの開催も決定、マッド・プロフェッサーとデニス・ボーヴェルが来日
  8. Little Simz - Lotus | リトル・シムズ
  9. MOODYMANN JAPAN TOUR 2025 ——ムーディーマン、久しぶりの来日ツアー、大阪公演はまだチケットあり
  10. 〈BEAUTIFUL MACHINE RESURGENCE 2025〉 ——ノイズとレイヴ・カルチャーとの融合、韓国からHeejin Jangも参加の注目イベント
  11. Terri Lyne Carrington And Christie Dashiell - We Insist 2025! | テリ・リン・キャリントン
  12. interview with Rafael Toral いま、美しさを取り戻すとき | ラファエル・トラル、来日直前インタヴュー
  13. Swans - Birthing | スワンズ
  14. interview with caroline いま、これほどロマンティックに聞こえる音楽はほかにない | キャロライン、インタヴュー
  15. Columns 高橋幸宏 音楽の歴史
  16. Columns 高橋康浩著『忌野清志郎さん』発刊に寄せて
  17. DREAMING IN THE NIGHTMARE 第3回 数字の世界、魔術の実践
  18. GoGo Penguin - Necessary Fictions | ゴーゴー・ペンギン
  19. 忌野清志郎さん
  20. Columns 6月のジャズ Jazz in June 2025

Home >  Interviews > interview with Sigur Ros - 黒いマグマの行くさき

interview with Sigur Ros

interview with Sigur Ros

黒いマグマの行くさき

――シガー・ロス、インタヴュー

   通訳:Nomura Yoshiko   Jun 13,2013 UP

 初めてシガー・ロスを観たのは、2001年オックスフォードで行われたレディオヘッドの地元凱旋ライヴ(前座)でのことだ。あの『アゲイティス・ビリュン(Ágætis Byrjun)』が世界に放たれた直後だったことを考えると、わたしは運がよかった。
 伝え聞いていたヨンシーのボウイング奏法と、聴き手を一瞬で茫然自失させる圧倒的世界観、幻想的な音と声。シンプルなシーケンスがどんどん展開して、シンフォニックなサウンドと相まっていく。野外だったこともあって、自然と音の共鳴に身震いしたのをいまも鮮明に覚えている。シガー・ロスがわたしにとって唯一無二の存在になった瞬間だった。


シガー・ロス
クウェイカー

Xl / ホステス

Amazon iTunes

 あれから12年も経った。アルバムはその間も断続的にリリースされつづけたが、今回の作品は「『クウェイカー(Kveikur)』以前/以後」と言われるようになるかもしれない、バンドにとって非常にエポック・メイキングな作品だ。武道館ソールド・アウトという来日公演の熱気冷めやらぬ内に、シガー・ロス7枚目の新作『クウェイカ―』がリリースされる。

 先行公開された"ブレンニステン(Brennisteinn)"が、あまりにヘヴィでダーク、インダストリアルな音だったので正直驚いた。攻撃的にすら思える。前作『ヴァルタリ(Valtari)』は、メンバーいわく「スローモーションな雪崩」ということだが、もうまるっきりそれとは別次元だ。じつに攻撃的で力強く、バンドがいわゆる「バンド的衝動」で作ったアグレッシヴなサウンドになっている。まるでこれからの決意表明でさえあるように。

 今作のシガー・ロスは黒いマグマである。ドロドロしながらうごめき、噴き出す寸前。映像を喚起させる神秘的サウンドの地下深くでは、ドロドロとしたパッションが溜まっていたのだ。アイスランドから流れ出た溶岩は、高温の熱を放って、冷めないだろう。どんどん突き進む。その熱量は増すばかりだ。活動休止やキャータンの脱退を経て、シガー・ロスはネクスト・ステージへと上がった。

 短い時間だったが、武道館公演を翌日に控えたゲオルグとオーリーにインタヴューを行うことができた。今作のサウンドとは対照的な、気さくでのんびりとした空気が伝わるだろうか?

タイトルには、「ヒューズ」とか「火花」っていう意味もあるんだ。新しく何かがはじまるというイメージなんだけど。

ヘヴィでダーク、バンドが前へ前へ突き進んでいくアグレッシヴなパッション。シガー・ロスの新章が開けたような印象を受けました。『ヴァルタリ』から1年経たないという、短いスパンでしたね。現在のバンドの状態がアグレッシヴで、曲がつぎつぎと湧いてきているような印象を受けます。原曲のようなものはかなり録りためていたのでしょうか?

ゲオルグ:11ヶ月と言われているけど、実際、制作期間はそれ以上かかっているんだ。最初スタジオに入って、ベースとドラムといった基本の音を録ったんだよ。そこからずっと何かしら足したり重ねたりして、リハーサル中もミキシング中も音を重ねていって、曲はつねに変化していた。どんどん進化をとげていった感じかな。

オーリー:僕たちもニュー・チャプターが開けたようでエキサイティングしているんだ。
シガー・ロスにとって新しい新章、ほんとにそんな感じだよ。

シガー・ロスの音は、祝祭感あふれる曲も多いですが、今作はダークな感じですね。

オーリー:ダークな感じの曲は書きたかったんだ。意図的にそうしたのはあるかな。アヴァンギャルドな感じのね。

『クウェイカー』は、「芯」(ろうそくなどの)を意味するそうですね。まさに今作の曲たちは、これからのバンドの核、軸になりそうな重厚感ある印象を受けました。タイトルは、どのような経緯でつけられたのでしょうか?

ゲオルグ:タイトルには、「ヒューズ」とか「火花」っていう意味もあるんだ。「新しいことがはじまる」というのは、アルバム・タイトルの候補にあってね、新しく何かがはじまるというイメージなんだけど。火花が散るというイメージがぴったりじゃないかな、と思ってつけたんだ。

"ブレンニステン"のPVは、暗い世界のなかで何かと何かが格闘しています。黒くうごめく何かを必死にあばこうとしているように見えました。毎回シガー・ロスの映像美には息をのむのですが、この作品はアンドリュー・トーマス・ホワン(Andrew Thomas Huang)が手掛けていますよね。映像の制作については、監督におまかせしているのでしょうか? それとも、バンド側からアイディアやイメージなどを提案してから制作に入るのでしょうか?

オーリー:最初にイメージを監督に伝えたんだ。何かこう、猛獣のようなものが起きてくるような、目を覚ますようなイメージをね。このタイトルには「黄色」という意味があるんだけど、そのふたつを監督に伝えたよ。そうすると監督から案がきて、メールのやりとりでだんだん固めていったんだ。最初出してきた案は、気に入らなくてボツになっちゃったんだけどね。(笑)

ゲオルグ:PVにかかわらず、自分たちの名前で出す作品には必ず自分たちが関わるようにしているよ。

※アンドリュー・トーマス・ホワンは、BjorkのPVも手掛ける新進気鋭のヴィジュアル・アーティスト。

取材:秋山さゆり(2013年6月13日)

12

INTERVIEWS