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interview with Taylor McFerrin

interview with Taylor McFerrin

僕らはジャズか?

──テイラー・マクファーリン、インタヴュー

矢野利裕    通訳:原口美穂   May 21,2014 UP

俺が思うジャズ・ミュージシャンっていうのは、マスタリングと楽器にフォーカスを置いているミュージシャンたちだから。楽器をどう演奏するかで自分を表現しているし、スタンダードなジャズをしっかり勉強してる人たち。

ここ数年(日本では、とくにロバート・グラスパー『ブラック・レディオ』以降)、ロバート・グラスパーやクリス・デイヴなど、クラブ・ミュージックの影響を色濃く受けたジャズ・ミュージシャンの活躍が目立っています。ジャズというジャンルで、このような音楽が続々と花開いているのは、どうしてだと思いますか。

TM:何人かのプロデューサーたちがジャズをサンプリングしてヒップホップの中に取り入れたり、クラブ・ミュージック的なタイプの音楽に取り入れたりした流れじゃないかな。たとえばムーディーマンは、ソウルの作品をたくさんサンプリングしてハウスのコンセプトにそれを取り入れている。Jディラやマッドリブも、いつもジャズやソウルをぶつ切りにして、それを使ってビートを作っていた。だから、自然とその流れでそういう音楽が出てきて、注目されるようになってるんだと思う。
 ロバート・グラスパーのようなミュージシャンたちはJディラからたくさん影響を受けているし、ロバートはJディラをたくさんカヴァーしているし、Jディラあたりがそのムーヴメントのトップにいるんじゃないかな。ヒップホップのアーティストも彼ら独自のやり方でジャズを表現していて、サンプリングしたりもしている。いまの時代、ひとつの音楽にとらわれずにそこにいろいろと混ぜるやり方で曲作りをしているアーティストは多いしね。そういった変わった音のブレンドって、すごくクールだと思う。ひとつの決まった音楽を必ずしも作る必要がないということを提示しているしね。いろんな影響が繋ぎ合わさっているのはいいことだから。

テイラー・マクファーリンの音楽は、ジャンルの枠にとらわれないものだと思います。だとすれば、ご自身の音楽において、「ジャズ性」はどういった部分にあると思いますか。過去のジャズと自分の音楽が接続されるポイントはどこにあると思いますか。

TM:わからないけど……このレコードでジャズだなと思うのは、マーカス・ギルモアがプレイしている箇所。それと、父親とマリアノスが参加しているトラックもジャズっぽいと思う。でも、俺自身はジャズというよりはソウルにインスパイアされていると思うんだよね。あとフュージョンとか。フュージョンはストレートなジャズとは違うから。俺もなんて言っていいかわからないけど、自分自身をジャズ・ミュージシャンだとはあまり思ってないんだ。俺が思うジャズ・ミュージシャンっていうのは、マスタリングと楽器にフォーカスを置いているミュージシャンたちだから。楽器をどう演奏するかで自分を表現しているし、スタンダードなジャズをしっかり勉強してる人たち。でも、俺はそういうプロセスは踏んでいないし、ビートメイキングも自己流。だから、ジャズとのコネクションを感じはするけど、それは直接的ではないんだ。

以前、自分がライヴで即興をやる部分は、気づけば自然と父親のジャズの影響が出ているかもしれないと言っていましたよね。即興演奏という部分は「ジャズ性」にはならないですかね?

TM:あ、たしかに。それは一理ある。でもどうだろうね。他のたくさんのジャズ・プレイヤーたちといっしょにハイ・レヴェルな即興をやるっていうのはやはり俺には無理だから(笑)、やっぱりそれができるのがジャズ・ミュージシャンと呼ばれる人たちだと思う。

ジャズはこれまで、ソロでの即興演奏が重要視されるような価値観があったように思います。「ソロがないとジャズとして物足りない」という意見もあります。このことについてはどう思いますか。

TM:俺はあまり音楽の定義とかそういうことは気にしない。黄金期のジャズを箱に入れて守るために誰かがそう言っているんだと思うけど、それは理解できなくもない。昔の、まさにジャズの時代のジャズ・ミュージシャンたちは、歴史を知らず知識もない若いプレイヤーがジャズを語るのは気に入らないだろうしね。でも世代を超えて要素ってものはどんどん変わっていくし、あるミュージシャンがジャズに影響を受けていたとしても、だからといってジャズの特定のスタイルにこだわらないというのは自然の流れだと思う。だから、俺は自分の音楽を必ずしもジャズとは呼ばないんだ。俺はそういうジャズの時代の後の音楽を聴いて勉強してきたわけだからね。

俺はあまり音楽の定義とかそういうことは気にしない。黄金期のジャズを箱に入れて守るために誰かがそう言っているんだと思うけど、それは理解できなくもない。昔の、まさにジャズの時代のジャズ・ミュージシャンたちは、歴史を知らず知識もない若いプレイヤーがジャズを語るのは気に入らないだろうしね。

過去のジャズ・ミュージシャンで影響を受けた人はいますか。どのような点で影響を受けましたか。

TM:マッコイ・タイナーは絶対。あとは、マイルス・デイヴィス・クインテットとジョン・コルトレーンのソロ作品。とくにマイルスとコルトレーンからは影響を受けている。あと、マイルス・デイヴィス・クインテットのメンバーでもあったハービー・ハンコック。それがトップの影響だと思う。マイルズに関しては、彼が自身の音楽の中でエレクトロの要素を出しはじめて、『ライヴ・イヴル』のアルバムを出したころ。あのときはジャズ・プレイヤーたちが電子機器を使って演奏しはじめたときで、マイルスもワウペダルやアンプ、シンセサイザーを使ったりしていた。そこからジャズとエレクトロニック・ミュージックが交差しはじめたから、あれはムーヴメントだったと思う。それに、俺が子どものころ聴いていたミュージシャンたちも彼らから影響を受けているしね。

〈ブレインフィーダー〉は、とてもユニークな音楽を発表しています。〈ブレインフィーダー〉およびフライング・ロータスに対する印象を教えてください。

TM:〈ブレインフィーダー〉はクールなレーベルだよ。いまはけっこう規模が広がってアーティストもたくさんいるけど、最初は少なくて、みんな本当に仲間って感じだった。いつもフライング・ロータスを中心にいっしょに出かけたり。そこからくる特別なエナジーがあったんだ。そのエナジーはいまも変わらない。みんな似た経験をしていて、同じ街にいて、互いにインスパイアしあって、いっしょにムーヴメントを作っている。そういう部分は本当に尊敬するよ。俺はニューヨークに住んでいるから少しアウトサイダーみたいな感じもするけど(笑)、もしかしたらフィアンセといっしょにLAに引っ越すかもしれないんだ。いまはロサンゼルスにとって特別な時期だと思う。アーティストに自由に音楽を作らせることによって境界線を押し広げている〈ブレインフィーダー〉は世界的にリスペクトされてるし、そこに関われているのはクールだと思う。
 いまのロサンゼルスのシーンでおもしろいのは、音楽から感じるエナジーが、たくさんのミュージシャンたちがお互いをよく知っていた黄金期のエナジーと似ていること。みんな一般的なスタンスは持っているけど、それぞれが自由にちがうことをやって境界線を押し広げている。みんなが新しいことにトライしているんだ。マイルスは、若手のミュージシャンたちを自分のまわりに置いて、自分の音楽を前進させようとしたことで有名だけど、きっと彼は、彼らに好きなことを一気にやらせて、それが混ざったときに生まれるダイナミックなサウンドをエンジョイしていたんじゃないかな。

いまのロサンゼルスのシーンでおもしろいのは、音楽から感じるエナジーが、たくさんのミュージシャンたちがお互いをよく知っていた黄金期のエナジーと似ていること。

 フライング・ロータスは、たぶんレーベルやコラボのために、スタンダードな音楽を作りつづけるだけじゃなく、自分の作品を前進させようとしているアプローチを持ったミュージシャンたちを探しているんだと思う。レーベルをそこからどんどんちがう方向性に広げていこうとしているんだと思うよ。それは音楽を作る上で俺にとっては大切なことだし、ロータスにとっても大切なはず。だから、ロータスが〈ブレインフィーダー〉からレコードを出さないかとオファーをくれたときはうれしかったよ。自分がいるべき場所のひとつだと思っていたから。もともとフライング・ロータスのファンでもあったんだ。彼の音楽に関して好きなところは、最初に聴いた時点でそれをすべて理解する必要がないこと。一瞬でわかる要素もあれば、彼はいったいここで何がしたかったんだろう? と思う箇所もある。でも、聴いていけば聴いていくほど、だんだんそれがわかってくるんだ。そうやって彼の考えの中にじわじわと入っていくのがおもしろいんだよね。

取材:矢野利裕(2014年5月21日)

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Profile

矢野利裕 矢野利裕(やの・としひろ)
1983年生まれ。ライター、DJ、イラスト。共著に、大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸編『村上春樹と一九九〇年代』(おうふう)などがある。

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