Home > Interviews > interview with Taylor McFerrin - 僕らはジャズか?
たとえばJディラの音楽にはたくさんレイヤーが入ってるんだけど、その中にはリード・レイヤーがない。だから、すべてのレイヤーを聴くには、何度も何度もその曲を聴く必要があるんだ。ちょっと変わったサンプルが密かに入っていたり、聴けば聴くほど新しい発見がある。
Taylor McFerrin Early Riser |
■アルバム全体のサウンドもとてもバランスが良く、心地いいです。ミックスの作業にはこだわりはありましたか。
TM:ミックスで意識したことか。たとえばJディラの音楽にはたくさんレイヤーが入ってるんだけど、その中にはリード・レイヤーがない。だから、すべてのレイヤーを聴くには、何度も何度もその曲を聴く必要があるんだ。ちょっと変わったサンプルが密かに入っていたり、聴けば聴くほど新しい発見がある。このレコードは、それを意識してミックスしたんだ。ミックスは全部自分でやった。でもこのレコードに関しては、あまりミックスの環境はよくなかったんだよね。いいアパートに住んでるわけでもないし、オフィシャル・スタジオをもってるわけじゃないし。アルバムを聴いていると、もう少し時間をかけたかったなと思う箇所がある。やろうと思えばできたんだろうけど、ちょっと環境がね。本当はもう少し上手くできるんだけど。
プロのスタジオに自分の音楽を作りにいったことがないんだ。それをずっと続けているから、いまはそれが逆に変な感じがして、もしそれをやってみたらどうなるかわからない。でも、超デカいスピーカーでやると、大きいアレンジのフリークエンシーが聴こえるから、もっとミックスは簡単になる。今回のレコードでは、いくつかのちがうカー・ステレオで聴いたりしてみたんだ。いま聴くと、自分のスタジオでは聴こえなかった周波数が聴こえる。だから自分が思っていたのと少しちがって聴こえるんだよね。ミックスのプロセスは、ほとんど俺のヘッドフォンといくつかのカーステレオでやったから、次回はよりよい作品を作るためにももう少しちゃんとしたスタジオでやれたらと思ってるんだ。
俺はオフィシャルなものを作るという目的なしに作品を作りはじめることが多いし、そのせいで個々にトラックを仕上げられないという問題がある。もっとたくさん音楽を作ることもできたかもしれないけど、たまに自信がなくなってなかなか進まないこともあったんだ。この4年間の中間地点くらいでは、本当にアルバムを仕上げられるのかわからなくなって悩んでいた。先が遠すぎて、もう無理かもとも思ったくらい(笑)。でもいまはそれを乗り越えているから、どうすればいいかわかってる。ゲストを迎えて何かを補うこともできるということ、それによってよりよいものが作れることもわかったし。だから、次のアルバムはもっとスムーズにいくと思う。次はもっとこうやりたいっていうアイディアがすでにあるんだよね。ミックスもそうだし、もっと自分のヴォーカルを増やすとか、より自分で楽器を演奏するとか。
ちょっと俺と親父の音楽はちがうんだ。でも、自分には親父にできない何かがあるっていうのはクールだし(笑)、それでいいと思ってる。
■『アーリー・ライザー』には、父親のボビー・マクファーリンさんも参加されています。父親から学んだことはありますか。
TM:変に聞こえるかもしれないけど、いままで父親に直接音楽のことに関して何かきいたことはないんだ。彼からどういう影響を受けたのか、自分にもわからない。父親をもちろんリスペクトはしてるけどね。それは逆も同じで、彼も俺の音楽をリスペクトしてくれている。でも、父親の音楽の世界を特別に理解しようとしたことがないんだ。俺はヒップホップのような、彼のスタイルじゃない音楽を聴いて育ったから。音楽を作りはじめたときも最初からビートだけを作っていたし、親父はもっとジャズやクラシックのバックグラウンドから来ているし。そういう音楽では、もっとテクニカル・スキルや楽器が重視される。他のミュージシャンとの即興は、本当にハイレベルな技術が要求されるからね。でも俺は、サウンドとテクノロジーを操ることに慣れている。だから、ちょっと俺と親父の音楽はちがうんだ。でも、自分には親父にできない何かがあるっていうのはクールだし(笑)、それでいいと思ってる。俺は逆に親父ができることができないし。でもさっきの即興の話みたいに、年齢を重ねると、「この部分、気づけば親父の影響を受けてるな」と思うことがたまに出てくるんだ。ショーをやっていると、気づけば即興をたくさんやっているんだよね。俺の場合は楽器じゃなくてテクノロジーだけど、それでも即興はする。やっぱりそれはジャズの影響だと思うし、俺のやることの一部。それは父親からダイレクトに受けた影響なんじゃないかな。彼の90分間のショーを何度も見てきたから。もちろんその中にはたくさんの即興があった。だからなのか、即興がすごく心地がいいんだよね。自分にとっては普通のことなんだ。それは育った環境で自然と身に付いたものだと思う。俺がずっと観察してきたことだから。
■現在のミュージシャン/アーティストで気になる人はいますか。
TM:俺はお気に入りのレコードを何度も聴く派だから、気になるアーティストってあまりいなくて。いまはとりあえず、ハドソン・モホーク、ジェイムス・ブレイク、フライング・ロータスとサンダーキャット。それだけ(笑)。あまりいまのシーンがどうとか、周りで何が起こってるかとかは気にしないタイプなんだ。ブログをチェックしているときに新しい作品を見つけたりはするけど、あまりラジオも聴かないし、自然と自分のところに来た音楽を聴くことの方が多い。とくにニュー・アーティストに関しては、あまり彼らの音楽は聴かないようにしている。2、3回聴くだけかな。影響されすぎないようにそうしているんだ。たまにミキシングのテクニックを自分のと比べてみたりはするけど。あと、あまりに変わっている音楽で、「よし、これには音楽のルールはないんだな」と一度わかると聴いたりはする。でも普通は、偶然誰かのアルバムを知って、それがよければしばらく聴くって感じかな。俺は新しい作品よりも古い作品のほうをひんぱんに聴くし。
■ハドソン・モホーク、ジェイムス・ブレイク、フライング・ロータスとサンダーキャットのどのような点が気になりますか。
TM:彼らが似た影響を受けていることは明らかで、似ている環境から来ていることもたしか。でも、みんなそれぞれがちがうアプローチをもってる。それが新鮮なんだ。いま起こっていることに影響を受けるのは悪いことではない。でも俺は、何かをチェックするよりも、ライヴに出演して実際に会場で影響を受けるほうが好きなんだ。
ニュー・アーティストに関しては、あまり彼らの音楽は聴かないようにしている。2、3回聴くだけかな。影響されすぎないようにそうしているんだ。たまにミキシングのテクニックを自分のと比べてみたりはするけど。
■ブルックリンを拠点にしているということですが、ブルックリンは、ヒップホップ、フリージャズ、オルタナティヴ・ロックなど、さまざまな音楽がひしめきあっています。ご自身の活動において、ブルックリンという街に与えられる刺激などはありますか。
TM:ブルックリンには本当にたくさんのアーティストがいて、ニューヨークの中でもスペシャルな場所だと思う。もう14年も住んでるから、ブルックリンの一員って感じはするね。もちろんブルックリンは俺という人間の一部だし。マンハッタンとはちがうけど、アーティスト仲間の90%はここに住んでるし、俺たちの街って感じがする。刺激を受けているかはわからないけど、ブルックリンの人たちが俺の作る音楽に共感してくれてるってことは、何か繋がるものがあるのかもしれないね。」
■最後にもう一問だけ訊かせて下さい。ジャイルス・ピーターソンに激賞されましたが、ジャイルスからはどのように評価されたのでしょう。
TM:「彼は初めて“ブロークン・ヴァイブスEP”をかけてくれたDJのひとり。もう何年も俺の音楽活動をサポートしてくれているんだ。彼がどう俺の作品を評価したかはわからないけど、たぶん、最初にEPが出たとき、それが当時のUKで起こっていたサウンドに影響されてたっていうのが気に入ってくれた理由のひとつだと思う。そこに何か繋がるものを感じたんだじゃないかな。最近も彼からインタヴューを受けたけど、彼は本当によくしてくれるし、キーとなるDJのひとりだし、彼みたいな人が気に入ってくれることには大きな意味がある。すごく光栄だよ。何故俺の音楽を気に入ってくれたのかはとくに聞いてないけど、俺らしいスタイルを気に入ってくれたんじゃないかなと思う。たくさんの音楽からのさまざま」な影響がミックスされているから。ジャイルスもそういうスタイルを好むんだよ。
■今週末の〈ブレインフィーダー〉へ出演!
史上最大スケールで開催されるレーベル・パーティ〈BRAINFEEDER 4〉。フライング・ロータスやティーブスを堪能しつつ、テイラー・マクファーリンを目撃しよう!
2014.05.23 FRI @ 新木場ageHa
open/start: 22:00
前売チケット: ¥5,500
http://www.beatink.com/Events/Brainfeeder4/
取材:矢野利裕(2014年5月21日)