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interview with Tofubeats

interview with Tofubeats

ニッポンをプレゼンする

──トーフビーツ、ロング・インタヴュー

橋元優歩    Oct 02,2014 UP

藤井さんは本当に音楽が好きで、ただの音楽オタクで。みんなに知ってもらいたいなという部分もあります。僭越ですけれども。


Tofubeats
First Album

ワーナーミュージック・ジャパン

J-PopHouseHip-Hop

初回限定盤
Tower Amazon


通常盤
Tower Amazon

■いやいや、藤井隆さんとの曲(“ディスコの神様”)なんて、まさにそういうところでつながっているんじゃないですか?

TB:そう、あの人も本っ当に音楽が好きな人なんですよね。

■最初は、なにかコンセプチュアルに藤井隆というアイコンが引っぱり出されてきているのかなと思ったんですよ。tofubeatsだし。でも曲を聴いて実際に感じるのは、音楽つながりなんだなあというような。

TB:そうそう、藤井さんはすごくジョディ・ワトリーが好きで、しかも高校生のときに〈ブルーノート〉に観にいっていたりとかしてるわけなんですよ。前もスタジオで、「96年にオランダで買ったレコードが思い出せないんです。“エターナリー”って言ってる……」とかって突然言い出して、何を言ってるんだろうと思っていたんですけど、実際に探したらその曲があったりしたんですよね。本当に音楽が好きで、ただの音楽オタクで。そういうことをインタヴューとかの端々から感じていたからこそ、この人にオファーしようって思ったんです。

■そういうキラキラとしたマジックが、メジャーというステージでは可能になるんだなというところはありますよね。

TB:それに、藤井さんがこんなに音楽が好きなんだっていうことを、これを通じてみんなに知ってもらいたいなという部分もあります。僭越ですけれども。

■なるほど。すごく素敵な話ですよ。それに、遊び場がひとつ増えた、広がったというところもあるんじゃないですか?

TB:いやー……。そうですね、ほんとにBONNIEさんとか、藤井さんとか、〈ワーナー〉に来ないとできないことではあったので。

■その一方で、ERAさんとかPUNPEEさんとか、前作のひとつのインディ感からは異なるものにもなっていると思いますが。

TB:それはでも、今度出るアナログとか、企画段階のリミックス盤とかには自分に近いところからブッキングしていて。
 とはいえ、アルバム自体はこのかたちでラッピングしておかないと、自分のやっていることがいっしょすぎてしまうし、そこはメジャーから出すということを意識しました。

野田:どんな人たちなの?

TB:BUSHMINDさん、STARRBURSTさん、(DJ・)HIGHSCHOOLさん、MASS-HOLEさん、ENDRUNさん、SH-BEATSさん、YOSHIMARLさんです。

野田:うわ、すごいね(笑)。


いっぱい曲が入っていれば、嫌な曲を消してもふつうのアルバムくらいの分量は残る。聴いている人が金額的に得なもの、というところでアルバムを考えています。

■ところで、アルバムという単位についてもうちょっと掘り下げて訊いていいですか? いまは、タイムラインで1曲単位の消費、しかも1時間後に消えていてもおかしくないようなものを追ったりするわけじゃないですか。トーフさんはそういうところで生き生きと呼吸をしている人ですが、それに対してアルバムというのは、それこそ産業的に完成されたひとつのフォームでもありますよね。

TB:このアルバムについては、俺ならこう並べるってだけですけどね。あとは、いっぱい曲が入っていれば、嫌な曲を消してもふつうのアルバムくらいの分量は残る。このあたりの気持ちは『lost decade』のときと変わらないですね。聴いている人が金額的に得なもの、というところです。ただ、プレイリストありきでは作ってないですけどね。
 通常のメジャーのアルバムの作り方だったら、2曲めに自分のラップなんて絶対に入れずに“Don't Stop The Music”をもってくるわけですけれど、そういうことはやってないです。あと、CDで出しているのはあくまで〈ワーナー〉とサインしているからで、でもディスク2がついていて安い。

■「安い」「お得」というのも、コンセプチュアルに仕組まれているように感じますね。

TB:でも、安いっていうのは会社の提案なんですよ。2枚組で2,400円って、頭おかしくなっちゃったのか? って思いました(笑)。

(一同笑)

■真ん中にも思いきって4曲ほどインストが入っていたりするじゃないですか。

TB:あれはもう絶対に入れたくて。

■“Populuxe”とかが好きです。

TB:あれは60年代のアメリカの、郊外開発のときのキーワードなんです。ニュータウンについていろいろ研究しているときにぶちあたった単語で、けっこう好きだったのでデモ曲のタイトルにしていたんですが、それをそのまま使いました。

■どういう意味なんです?

TB:60年代に、郊外に一戸建てを買ってわりとリッチに暮らすっていうようなスタイルが流行って、そのころのひとつの価値観を表す言葉というか。ポップでデラックスっていうことなんです。成金というとまたちょっとニュアンスがちがいますけど。

■ああ、なるほど。

TB:郊外での暮らしが、いわゆるサバーブっていう感じのものになっていって、レッチワースみたいな、田園都市の根幹を成す考え方と合流していくという。でも、曲に使用しているのは単純に単語が好きだからですね。曲自体はポリリズムがやりたかったというだけのものなんです。4拍子と5拍子の。菊地成孔とかもやってるから俺も、って。

野田:意識するの?

TB:いえ、意識するわけじゃないんですが。でもJAZZDOMMUNISTERSを聴いていて、本当に菊地成孔さんのラップはいいなあって思って。あのアルバム、僕はすごく好きで。というか菊地さんのラップが好きなんですよ。やっぱりラッパーってパーソナリティなんだなってことをヒリヒリ感じました。もう、そいつがおもしろいかどうかってのが大きいなって。

■そういえば、これも素朴に気になっていたんですが、トーフさんって二次元カルチャー的な入口が意外にないですよね。アニメとか、あるいはニコニコ動画、ボカロみたいな文脈がない。

TB:それは意識的にやってますね。日本のものを世界に明け渡すにあたって、ニコ動にアップしていたら外国人は見ないので。

■なるほど。言語の問題を措いても、特性ともいうべき独特の閉鎖性がありますよね。弾幕が流れて画像がブロックされますし(笑)。

TB:あとは、ボーカロイド周辺の雰囲気があまり自分の肌には合ってないみたいで。思っている以上にクローズドなものがあるのかなと思います。いってみれば、シカゴ・ハウスとかよりもずっとハードコアなんじゃないですか? 初音ミクを使わなきゃいけないっていうのは。


707って使わなきゃいけないものだったけど、そこからいろんな発明が生まれてきたわけじゃないですか。でも初音ミクはどう彼女を運用していくかみたいな部分が大きい気がします。

野田:なんで(笑)?

TB:いや、それこそいちばん病んでいたころのデトロイト・テクノくらい開いていないというか。

野田:909を使わなきゃいけない、っていう?

TB:キャラなわけだから、「初音ミクはこんなこと言わない」みたいな次元も生まれてきたりするわけですよね。アイディアで何かが入れ替わっていくのではなくて、キャラクターとしての閉鎖性とプラグインとしての機能の制限が複雑に絡み合っているみたいに見えて、自分からするとちょっと面倒くさいというか。そもそもキャラに思い入れがなければ参入しにくいですし。最終的にその閉じまくった複雑さが海外でパーンとウケたりもしてますが、自分には向いていないなって思いますね。
 707って使わなきゃいけないものだったけど、そこからいろんな発明が生まれてきたわけじゃないですか。でも初音ミクって、それを使って発明をしたりしようというものではない。どちらかというと、どう彼女を運用していくかみたいな部分が大きい気がします。

予算をかけて作れた時代の音楽が好きなんだなって自分で思います。そしてそういう人たちの音楽はブックオフにあるんです。

■なるほど、では反対に、昔ながらでメガな受け皿について。単に個人的なルーツなのかもしれないんですけど、BONNIEさんだったり森高さんだったりって、「芸能」とか「テレビ」とかに象徴される種類の豊かさが反映されたものだと思うんですね。そのへんはわざわざフォーカスしたものなんですか?

TB:半分意識的で半分そうじゃないかもしれませんね。BONNIEさんとか、予算をかけて作れた時代の音楽が好きなんだなって自分で思います。そしてそういう人たちの音楽はブックオフにあるんです。

■なるほど(笑)。

TB:だから僕が出会いやすかった。ということに尽きます。BONNIE PINKさんとか、1万円札を持っていけば全部かえる揃うと思います。言い方は最悪に聞こえるかもしれませんが。森高さんも全部ブックオフだし、藤井さんもそうだし、今回お呼びしているなかで、誰ひとりとしてリアルタイムで正規盤を買っている人はいないです。残念ながら。

(一同笑)

TB:だから今回はじめて還元ができるという言い方もできるかもしれないですね。

■では、それなりに素直に自分の背景でもあるわけですよね。

TB:そうですね。あとは、景気がいいっていうのはいいなって思います。そんな時代の音楽に憧れている部分はありますね。

■いかにお金をかけないかっていう工夫合戦が、ある種の音楽を進化させてきた側面もありますけどね。

TB:それもあると思います。でも、だからこそ「音楽、音楽」って言わなきゃいけないのかもしれない。

■ああ、なるほど。

TB:ハイプなものではまったくなくなってますから。音楽は。

■今日なんかは、テレビの収録もあったわけですよね。テレビ出演につながってくるというのは、トーフさんにとって大きいことですか?

TB:まあ、大きいことですねー。ありがたいです。営業の方とかも、こんなやつをテレビに出させてくれて。でも一方で、それで数が動くことの切なさみたいなものもありますね。知名度っていうのはそんなところで上がっていくんだなって。

■いまだテレビは大きいんですね。

TB:まずは聴いてもらうところからはじめなきゃいけないので、それは本当にありがたいんですが。ただ、自分が本当に音楽が好きなので、音楽を好きじゃない人に届けるという概念があまりよくわかんないです。実際出ると反響はあるんですけどね。
 やっぱりそういうことを感じるために神戸にいるという部分もあります。世のなかそんなに信用できないなっていうことを、神戸にいるとよく感じられるというか。

■ははは! ここにいると麻痺するんですかね?

TB:そんな気がします。あとはスピードを遅らせたい。結局は「中の人」になっていっちゃうだろうし、就職もしないで音楽をやる仕事に入ってきてしまったので、きっと他の人からずれていくと思うんです。それを遅らせたいという気持ちはありますね。


何の手も借りない、自立したポップス──それはもしかしたらポップスと言わないのかもしれないですけどね──そんなものになれたらいいなって思うんですよね。

■方向としても、さらにプロデューサーという感じになっていくんですかね? いまやっていることもコンセプターとしての気質みたいな部分もそうかと思いますが。

TB:プロデューサー側になれたらいいなと思うんですけどね。繰り返しになりますけど、音楽を作って、聴いてもらうことがうれしいわけなので。でも本音を言うと、自分でいいなと思える曲ができた瞬間がいちばんうれしいです。それ以上はないですよね。

■なるほど。でもそのあたりが次のステップということになっていくわけですね。

TB:そうですね。あまり内向的にならないようにしようと思います(笑)。

■ははは! そこは、内向的になってもいいんじゃないですか?

TB:いや、もっとEDMくらいの開き方をしていかなきゃぐらいに思ってますよ(笑)。

野田:EDMにはならなくていいけど、ポップスは目指してほしいよね。

TB:いまは、何かに寄りかからなくていいポップスをやっている人がいないですから。AKBもEXILEも、何か別のものとポップスを掛け合わせたものじゃないですか。何の手も借りない、自立したポップス──それはもしかしたらポップスと言わないのかもしれないですけどね──そんなものになれたらいいなって思うんですよね。ポップスとしてひとつで立ってるもの。

■よくわかりますよ。

TB:がんばるって言うしかないんですけどね! よく言われんですよ、「〈マルチネ〉の人柱」って。僕が突入していくと、みんながそこにつづいてくれるわけです。いちばん若いので、鉄砲玉として働きますよ。

取材:橋元優歩(2014年10月02日)

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