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interview with NRQ

interview with NRQ

異端の演奏者たち

──NRQ、リレー・インタヴュー 1

松村正人    Jan 22,2015 UP

NRQ - ワズ ヒア
Pヴァイン

RockJazz

Tower HMV Amazon iTunes

 NRQのリレー・インタヴューをお届けする。
 2007年に牧野琢磨(ギター)と吉田悠樹(二胡)のデュオとしてはじまったNRQは翌年ベースとの服部将典が加わり、同じ年の中尾勘二の参加をもって現布陣におちつき、2年後にはファースト『オールド・ゴースト・タウン』を出し、さらにその2年後2作目の『のーまんずらんど』を発表した彼らの活躍は弊媒体読者諸兄もご存知のことでしょう。今回彼らの口にのぼるのは『ワズ ヒア』と題した3作めにまつわるそれぞれの思いである。狭義のインディ・ミュージックましてやJロックの範疇におさまらず、軽音楽であるがゆえにジャズやカントリーやラテンやそのほかもろもろが縁からこぼれるNRQの広義の音楽、いやむしろウェスタンとファー・イーストに挟まれた四者の組曲ともいえる空隙の音楽はどこに向かいつつあるのか。

 私は年も押し詰まった昨年暮れ、NRQが忘年会を開くという噂を聞きつけ、この比類なき作品をつくった彼らに一網打尽に話を訊く千載一遇のチャンスだと、東京北西部の閑静な住宅街の一画にある牧野宅へ駆けつけた。本稿は年をまたいだその記録であり、掲載順は忘年会に訪れた順になる。まずは牧野琢磨。NRQのオリジナル・メンバーであり、ギター・コンシャスな演奏者である牧野琢磨にご登場いただく。というか、ここは彼の家なのだから私がやってきたのである。

■NRQ / エヌ・アール・キュー
東京を拠点とし、現在は4人で活動をつづけるバンド。2007年に吉田悠樹(二胡)+牧野琢磨(guitar)デュオとして活動を開始し、翌08年には服部将典(contrabass)が参加。中尾勘二(drums / sax / tb / cl)にも参加を依頼するようになる。バンド名はNew Residential Quarters(ニュー・レジデンシャル・クォーターズ=新興住宅地)の略。〈オフ・ノート〉のコンピレーション『Our Aurasian Things!』などへの参加ののち、2010年にはファースト・アルバム『オールド・ゴースト・タウン』を、2012年にはセカンド・アルバム『のーまんずらんど』をリリースし、同年にリミックス作『The Indestructible Beat of NRQ』をはさんで、今年2015年1月、サード・アルバム『ワズ ヒア』を発表した。

誰かが何かをいい出したら100パーセントそれに乗っかる。そこで、他の意見と統合して落としどころを探さない、というのが大事なことなのかもしれないですね。

■私は牧野くんの新居に初めて来たけど、引っ越したこともふくめ、生活の変化は音楽の変化に影響したことがあると思いますか?

牧野:心境の変化ということでいえば、使う時間のフォーカスが絞られたということですね。使える時間が限られているから決断を早くしなければならない。(子どもを保育園に)迎えに行く直前まで出かける前の準備をしなければならない、とか。……NRQは歌がないじゃないですか?

■そうだね。

牧野:だからバックバンドの話がよく来るんです。誰かの曲のバックをわれわれ4人につけてほしい、という依頼がけっこう来るんです。ですが、それをやるといまは時間を奪われている気がするんですよ。吉田さんとかは前野くんとか穂高亜希子さんとかの仕事でたくさん歌手に貢献してきたから、これははっきりと本人に訊いたことはないけど、歌手に貢献するのはもう一生分やったと思っているかもしれない。服部さんはベースでメシ喰っているからまったくちがう向き合い方だと思いますが……。それで、バンドとして誰かのために時間を使う、というのができなくなった、というかしたくない、というのが個人的にはちょっとあります。あくまでバンドとしてで、牧野個人としては別ですが。仕事もして、バンドもやって、バンドでの収入が100パーセントではないという現実もあったうえで、作曲やプリプロダクションといった制作に時間をつぎこんで、やっとこ3年くらいかけて3枚めのアルバムができたというペースに、やっぱりなっちゃうんですよ。

■生活における音楽の純度はあがった?

牧野:変わらないと思います。純度って何? っていうことはとりあえず置いといて。つねに興味のあることがあるし、パーソナルにやってみたいことはどんどん出てきますし。でも、バンドでやってみたいことを持ち込むとNRQでは成功しないことが多いですね。大上段にバンドとして構えて、これをこうやってみたいんだ、あるいはこうしていきたいんだということでは、なんというか、場が「はぁ……?」みたいな感じになっちゃうでしょうね。

■連帯的な結束ではなさそうだもんね。

牧野:でも個人的な欲求を発揮することは存分にできる環境ではあるんです。手前ミソだけどそれはすごくいいことだと思う。

■個人的な欲求を発揮するにしても、たとえばアルバムをつくるなら、方向については誰かしら先導をきらなければならないんじゃないかな?

牧野:方向は実際はなくて、それはパッケージをどうするか、実務的なガワ(皮)の問題が残るだけなんです。

■牧野くんは前もそういっていたけど、『ワズ ヒア』はガワだけの問題ではない気がした。アルバムをどうつくるかという意識が前2作より高まったと思うんですよ。

牧野:それもまた共同作業だと思うんです。というのも、曲順は今回も中尾さんの案なんです。

■中尾さんは曲順王ですね。

牧野:マイスターです(笑)。

■“エンヴィ”がハナで“日の戯れ”がオシリというのも――

牧野:僕がもし決めたなら、“日の戯れ”は5曲めで“エンヴィ”は9曲めとかになったでしょうね。そして、中尾さんからこういう曲順案が出たときに、こっちで手を加えずそれをそのままでいく、ということが重要なんです。誰かが何かをいい出したら100パーセントそれに乗っかる。そこで、他の意見と統合して落としどころを探さない、というのが大事なことなのかもしれないですね。

■合議制は凡庸になりがちだからね。

牧野:そうです。

誰かが何かをいい出したら100パーセントそれに乗っかる。そこで、他の意見と統合して落としどころを探さない、というのが大事なことなのかもしれないですね。

■“東16字星”も“日の戯れ”も“街の名”もそうだけど、これらの曲には組曲的な構成ですよね。牧野くんのこれまでの曲は曲のつくり方としてはシンプルな志向性だったと思うのね、それがこのように変化して、それが私は『ワズ ヒア』の基調だと思ったんです。『ワズ ヒア』をなぜ私がNRQでいちばんいいと思ったかというとしっくりきたからなんだけど、なぜそうなったかというとレコメン感というと誤解を招きますが(笑)、組曲形式にそれに似たものを投影したからだと思うの。

牧野:いや、レコメン感はあるんですよたしかに。“東16字星”のカブセ(オーバーダビング)のとき、エマーソン(北村)さんにたしかレコメンっていいました(笑)。

■それゆえ、NRQがグッと迫ってきたところがあったのかもしれない。

牧野:(笑)それはよかった。本当は具体的にはレコメンからの影響ではなくて、組曲形式はジミー・ジュフリー3からですね。

■あーなるほど。

牧野:“ウェスタン組曲”をよく聴いていたんです。たとえば“門番のあらまし”とか、リズムをパーカッションぐらいまでにおさえてドラムを入れないという楽器の配置なんかは、個人的にいうと“ウェスタン組曲”がすでに歴史上にあるから大丈夫だろう、みたいな。半世紀前の話なんですけど(笑)。そういうことがあって、やってみたいなというのはありました。

■発想からそういう意図だった?

牧野:“門番のあらまし”はけっこうそうですね。

■そうしたことでこれまでの自分の書き方とちがうようにはなったでしょ?

牧野:曲が長くなりましたね。

■それをやろうと思ったのはどのタイミング?

牧野:やろうと思ったことがやれない、うまくいかないのがNRQなんです。中尾さんとか、じつは何でもできるわけじゃないから。けど、何かできることは異常にできる。そこがおもしろいんです。“日の戯れ”でも、ドラムをこうしてくれ、とは一度もいったことなくて、曲を持っていって、僕が最初のギターのカッティングだけ何小節かやって、そのあとベースとドラムに入ってください、といったらもうあのドラムだったんです。
 これは、僕がやろうとしていることと中尾さんが異常にできることが合致した幸福な例といえます。曲作りの段階で捨てた曲やうまくいなかった曲もけっこうあったし、だからそれは当たり前のことなんですけど、できることしかできないという前提が中尾さんに限らずわれわれにはあるんです。服部さんはちがっていて何でもできると思いますが……。吉田さんには(楽器に)音域の制約がある。だから、組曲形式のように具体的な形式があっても成功するかどうかはわからない。

■例をあげてやりたいことを具体的に説明することは――

牧野:それで失敗しつづけてきたので止めた、ということです。たとえば何か例になるような音源を持っていって、これこれこういうふうにしてくれ、といってもうまくいかないことが多い。時間がかかり、かつ完成しない。“日の戯れ”みたいに持っていって一回でできたのは成功例なんです。

■そういうバンドへの曲の諮り方はあるんだね。

牧野:僕はありますね。ほかのメンバーはまたちがうと思います。たとえば服部さんの曲“ショーチャン”なんかは、ジャケットのクレジットに「作曲」のほかに「アレンジ=編曲」というのも入れたんだけど、この曲には服部さんが書いた各パート譜があって、演奏は譜面通りなんです。

でもファーストよりはかなり遠いところまで来たかもしれない。

■バンドの歩みをみていくと『ワズ ヒア』は3枚めになります。1枚めにそのバンドのすべてがあり、2枚めのジンクス云々といういい方があり、そう考えたうえで『ワズ ヒア』はNRQにとってどういったアルバムと位置づけられると思いますか?

牧野:アルバムをつくる前は毎回、あぁ今回できるかな……、と思うんです。そう思いながらとりかかって、できたのが1枚めで、2枚めのときはさらにその不安が大きくなった。僕はファーストが音像や演奏をふくめて好きだったから、それよりよいものができるか心配だったんですね。ところがそれができた。で、今回は「2枚めがよかったから3枚めはいよいよ難儀だな……。販売規模もいままでいちばん大きくなるだろうし……」と思っていたんだけど、それこそ松村さんには、(ザ・バンドの)『カフーツ』みたいになるかもしれないといったこともあったけど(笑)、けどできたんです。でもファーストよりはかなり遠いところまで来たかもしれない。

■そうかもしれない。

牧野:中尾さんには不変の魅力があるけど、ほかの3人がいろんなところで揉まれたのがでかいかもしれないですね。服部さんなんか、初めて会ったときと較べると、単純に技術的な面でも別人のようです。そして技術に裏打ちされているから技術からの飛躍というか、語弊があるいい方かもしれないけど、罠の仕掛け方とかもいろいろできるようになったんだろうな、と思うんです。

■「罠」というのはなにを指していっている?

牧野:みんなを安穏とさせないというか。本人の意志として、これをやりたいというときにアイデアの幅とか、そういうものが3枚めを録る少し前から桁ちがいになったと思います。上から目線じゃないです(笑)。でも服部さんがすごく上手くなったのは本当だし、それは僕にもわかったし、録音もうまいことセパレートで録れたのでよかった。いままではひと部屋で録っていたのでコントラバスは埋もれがちだったので。

■ところで“sui”はバンド最初期の曲だよね?

牧野:すげーむかしの曲ですね。

■なぜこれを再録したの?

牧野:“sui”は一銭も生み出していないんですよ。

■お金の話なの(笑)?

牧野:そうです(笑)。というのは、〈オフノート〉の『アワ・オーラシアン・シングス(Our Aurasian Things)』というコンピに入れて、それがNRQの最初の録音だったんですよ。

■2008年だよね。

牧野:そうです。で、まぁゴニョゴニョとお金はもちろん出なくて(笑)、出版もどこにも登録されていなかったので録ったんです。

■ファーストに入れればよかったんじゃない?

牧野:ファーストのときはちょっと前のそのコンピに入っているから逆に入れるのを止めよう、ということで。セカンドのときはmmmも歌ってくれたし、他にもたくさん曲があって結局外れた。そして3枚めになって戻ってきました(笑)。やっていることは当時とまったく変わっていないんですけど。BPMもいっしょ。MC.sirafuのスティールパンが入っているくらい。しかしあんまり叩いていない。要所要所だけ(笑)。

■満を持してということではなかった。

牧野:ぜんぜんない(笑)! でも今回のアルバムからのMVは“sui”なんですよ(といってPCで画像を検索する)。


“sui”

牧野:右の手はロロという劇団などで活動している女優の島田桃子さん。島田さんとは、大谷能生さんが在邦フランス人の前でゲンズブールを歌うという、本当に勇気のあるイヴェントのバック・バンドに参加したとき、彼女がいわばフランス・ギャル役として出演していて、そのときに知り合いました。

■(広告が映りこんだ背景を指して)これは資本主義批判なの?

牧野:そんな素朴な……(笑)。なんていうか、自主的に勝手にいろいろと広告を入れたんです。で、最後は中尾さんが出てくるという。

■中尾さんは『ワズ ヒア』では結構吹いているよね。

牧野:たしかにそうですね。けどそれは、曲が要求する部分も大きかったんじゃないですかね。

■中尾さんがどの楽器を選ぶかも──

牧野:基本的には任せていますけど、今回は「ここはアルトです」とか「クラ(リネット)です」「トロンボーンかぶせたいです」とか言いました。演奏の中身はもちろんお任せしてます。“街の名”でトロンボーンを録ったときは「いまのは大原(裕)さんみたいでしたね」とはいいました。これはマジでいいました(笑)。大原さんみたいに吹いてくれとはもちろんいいませんでしたけど、曲の後半に独自に大原さんみたくなっていったから感無量でした(笑)。

■なんできみが感無量になるのよ(笑)。

牧野:いや、僕はサイツが好きなんです(笑)。船戸(博史)さんも芳垣(安洋)さんも。芳垣さんのドラムってとくにヌケがいいんですよ。音がよい。ドラマーってドラムの音をいちばんよく聴かせてくれるじゃないですか。

■でも中尾さんにはそういうところはないよね。

牧野:中尾さんはドラマーじゃないから。そしてそれがNRQでは重要なことなんです。ただ、“東16字星”では僕がスネアのセレクトを間違えたんですよ。録音をした〈デデ・スタジオ〉ってヴィンテージのドラムセットがいっぱいあって、中尾さんがいないときにスタジオの人に「ドラムセットはどうしますか?」と訊かれたんです。そういわれても、中尾さんはドラマーじゃないし、どうするかと本人が訊かれてもたぶんどうもしない(笑)だろうから、ラディックがあればラディックで、と僕がいったんです。リンゴ・スターの使ってるメーカーだし。で、「スネアはどうしますか」と訊かれて、間違えて木胴を選んじゃったんです。んでアルバム全部を木胴で録っちゃったから、“東16字星”だけエンジニアの葛西(敏彦)さんに「EQでドラムの音を金胴にしてくだい」ってお願いしました(笑)。

■中尾さんはドラムセットに対する意見はないんですか?

牧野:意見も不満もないし、チューニングもしない。そこにあるセットに座って、叩く。だから、たとえばライヴハウスで対バンがあるとき、前に出演したバンドのドラマーがドラムのチューニングに気をつかう人だと次のわれわれの音がえらいイイ音になったりする。ハコによっては、奥から引っ張り出してきたようなドラムだったりするんだけど、それでも中尾さんはまったくチューニングしないからボッカンボッカンいったりする。するんだけどそのままでいく。

取材:松村正人(2015年1月22日)

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