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interview with Courtney Barnett

interview with Courtney Barnett

座って考えて、座って、でも踊る

──コートニー・バーネット、インタヴュー

取材:野田努    撮影:小原泰広   Jan 20,2016 UP

ポップ・ミュージックが人気である時間ってほんの一瞬だし、そこにはお金と広告がすごく絡んでる。それとは反対に、自分にいまでも響く音楽は年代を問わずにつねに新しく聴こえる。だから、ロックや本物の音楽はいまでも時間を超越することができるんじゃないのかな。


Courtney Barnett
Sometimes I Sit and Think, and Sometimes I Just Sit

Marathon Artists/トラフィック

Indie Rock

Amazon

目標にしていたミュージシャンは誰ですか?

CB:うーん、自分が小さかったときにお兄ちゃんがジミ・ヘンドリクス(注:本来ならロックの最初のスーパースターになるべく男だったが、人種的偏見がそれを阻んだとも言われる)とかニルヴァーナとか聴かせてくれたな。私、左利きでギターも左なんだけど、彼らもそうだからインスパイアされたのかも(笑)。PJハーヴェイやパティ・スミス、トーキング・ヘッズ、テレヴィジョン……、絞りきれないけどそういう人たちがお気に入りよ。

小原(カメラマン)はニルヴァーナだと言って、僕はヴェルヴェット・アンダーグラウンドの『ローデッド』みたいなアルバムだと思ったんですけど、どっちの感想が言われて嬉しいですか?

CB:へー、そうなんだ(笑)。うーん、両方かな。私はいろんなタイプの音楽に影響を受けてきたから、ヴェルヴェッツもグランジも好き。自分の音楽にはそのふたつの要素が入っているんじゃないかな。そうやって聴いてくれるひとによって、違う要素を見つけてくれるのは楽しいし、すごく嬉しい。

言葉を喋るような歌い方はどこから来ているんですか?

CB:自分で曲を作りはじめたとき、ギターを弾きながら自分の日記を読み上げてメロディをつけてたんだけど、そのときに自分のスタイルができたと思う。それに私は自分のことをいいシンガーだと思ってなかったから、歌と喋りの中間っていう歌い方はすごく心地よかった(笑)。そうすれば緊張もしないし、自分の言いいたいこともはっきりと言えたのは大きかったな。

おしゃべり好きだったから、ああいう歌い方になったのか、あるいは喋れないんだけどギターを持つと喋れるようになるのか、どっちなんでしょうか?

CB:うーん……。私はそんなに喋る方じゃないかなぁ。すくなくとも普段はね(笑)。子どものときに私があまりにも喋らないものだから、親がすごく心配してたのを覚えてる(笑)。でも自分の内側に思いはあったから、それをアウトプットする方法として音楽が私にはあるって感じかな。

ちなみに理想とする歌詞は誰のものですか?

CB:うーん、答えられないかも。それぞれにいいものがあるからな……。

じゃあもしカヴァーをやるとしたら誰を選びますか?

CB:レモンヘッズとかはカヴァーしたことある。うーん、その質問の答えもすぐには思い浮かばないな(笑)。

ギタリストとしてインスパイアーされたアーティストはいるんですか?

CB:さっきも出てきたけど、ジミ・ヘンドリクスだと思う。サウンド的にはニール・ヤング&クレイジー・ホースが好き。最近だとスティーヴン・マルクマスとか。

ピックを使わずに指でずっと弾いてきたんですか?

CB:うん、ずっとそうやって弾いてきた。弾き語りをはじめたときから、あんまりピックの音が好きじゃなくってね。あとピックよりも指で弾いた方がリズムにもノりやすかった。

子どもの頃になりたかったものって、ほかに何かありましたか?

CB:いろいろあったな(笑)。当時から音楽に興味があったけど、漫画家になりたかったし、動物が好きだから動物園でも働いてみたかった。あとプロのテニス選手(笑)。

えー。では、あなたの生まれ育った場所を比喩的な言葉を使って説明してもらえますか?

CB:生まれたのはタスマニアで、育ったのはシドニー。具体的でもいい? ビーチやサーフィンが有名で、私が子どもだったときは、水辺や茂みをみんなで走り回ってた。

なんか、すごくのびのびとした少女時代を過ごしてるじゃないですか! さっきあなたが挙げたロック・ミュージシャンたちは、心のどこかに屈折感があるでしょ?

CB:そういえばそうかもね。でも私の家はすごくハッピーだった(笑)。

ではあなたは、あなたの好きな音楽のどういうところに共感を覚えるんですか? あるいは彼らの何があなたに突き刺さったんでしょうか?

CB:小さいときに歌詞の内容を完ぺきに理解していたわけじゃなくて、音楽から伝わってくるエネルギーに惹かれたというかな……。自分が歌詞を書くようになってから聴き方も変わってきたから、どう影響を受けてきたのかは断定できない。でもたしかなのは、昔から男女関係とか車について歌ってるようなポップ・ミュージックには全然興味なかった。自分が好きなミュージシャンはもっと深いところに響くものを歌っているように思えたし、私はそういう歌に考えさせられてきた。それが正しい理解であるかどうかは抜きにしてね。

その影響がこのジャケットに描かれている椅子に象徴されるようなことなんでしょうかね。

CB:タイトルとジャケットにそれが反映されているのは間違いないよね。それから、時間をかけて物事を別の角度から観察してみることのメタファーに、そのふたつはなっているつもり。

では最後の質問です。ロックにはそれなりの歴史があって、いろいろな偉大なミュージシャンや多くの傑作が生まれてきました。いまこの時代でもしロックという音楽が機能するとしたら、どのような機能があると思いますか? いまでも往年のクラシック・ロックは人気がありますが、あなたのような新しい世代のロックは過去の名盤よりも軽視されがちなところがあるように思ういますので。

CB:そうだなぁ……。機能というか、音楽のよさっていうものは、それがどう良いのかによって判断されるべきでしょう? クラシック・アルバムには人気のものもあるし、忘れ去られるものがあるし、出てから10年後に人気になるものもある。そういう音楽、つまり本物の音楽って、いまのポップ・ミュージックと比べることはできないものだと思う。だっていまのポップ・ミュージックが人気である時間ってほんの一瞬だし、そこにはお金と広告がすごく絡んでる。それとは反対に、自分にいまでも響く音楽は年代を問わずにつねに新しく聴こえる。だから、軽くてつまんないポップと違って、ロックや本物の音楽はいまでも時間を超越することができるんじゃないのかな。

取材:野田努(2016年1月20日)

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