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interview with IO

interview with IO

KoolBoyの美学

――イオ、インタヴュー

取材・文:二木信    Feb 16,2016 UP

(クールって言葉の定義は)シンプルなことだと思います。仲間を大事にするとか、女の子を大事にするとか、親を大事にするとか。

クールって言葉をよく使うじゃないですか。IOくんが定義するクール、またはクールな男ってどういうものですか?

IO:はははは。それは、すごく難しい(質問)じゃないですか(笑)。でも、ほんとにシンプルなことからだと思います。仲間や女の子を大事にするとか、親を大事にするとか。だから、テンションが低くて冷静であんまりはっちゃけないのがクールっていうわけではないです。

GOTTZ :Neetzのスタジオに「KoolBoy―10のルール―」みたいな紙が貼ってあるんすけど、9個までしかないんですよ。「ピザはピッツアと呼べ」とか書いてある(笑)。

はははは。

IO:いや、ほんとは11個あるんです。オレが4、5年前にバーッと書いたんです。紙が2枚あったんですけど、2枚めがどこかにいっちゃったから壁には9個で終わっているんです。「1日1回熱いシャワーをキメる」「誰の事も見下すな」とか書いた「KoolBoy―10のルール―」なんですけど、じつは11個めがある。それは「ルールにしばられるな」と。クールじゃないですか?

自分でルールを並べて、最後に「ルールにしばられるな」と。

IO:はい。でも当たり前のことだと思いますね。おばあちゃんには優しくするとか、ゴシップに振り回されないとか。オレの中には11個以上ありますね。


じつは11個めがある「KoolBoy ― 10のルール ―」

やっぱりクールの定義が明確にありますね。

IO:ですね。

クールにつながる話なんですけど、ラッパーや先輩、俳優とか歌手でもいいですし、カッコイイと思うってどういう人ですか?

IO:挙げたらキリないですけど、いまパッと出てくるのは『モ'・ベター・ブルース』(監督・スパイク・リー/1990年公開)のデンゼル・ワシントンですね。

僕もあの映画だいぶ昔に観ました。ジャズ・トランぺッターの話ですよね。

IO:言葉で説明するのは難しいですけど、あのデンゼルのストイックさがすごいカッコイイと思う。何時から何時まで楽器を練習すると決めて、音楽に対してちゃんと向き合う姿勢とかが渋いと思う。自分にそういうストイックさがないからかもしれないけど、そういう習慣のある男はカッコイイと感じますね。他にもジョー山中とかアル・パチーノとか自分の父親とか、NOBUさんやJashwonさんもGottzもクールだと思います。

KANDYTOWN“IT'z REVL (IO, RYOHU, Mr.K, MUD)”

フッドは街っていう感じで、タウンはもっとディープでオレらとか俺たちがいま立っている場所とか状況っていう意味かもしれないですね。

IOくんのファッションや立ち振る舞い、ラップにも街の匂いをすごく感じるんですね。ラップの中でも、シティ、タウン、フッドという単語が出てくるじゃないですか。その3つはどのように使い分けていますか?

IO:その言葉を言ったときのオレに訊いてみないとわからないですね。


IO
Soul Long

Pヴァイン

Hip-Hop

Tower HMV Amazon iTunes

たとえば、“City Never Sleep”という曲名は“Town Never Sleep”では意味が変わってくる?

IO:タウンは寝ますね。

タウンは寝るんだ。

IO:ガン寝です。

シティは?

IO:寝ないです(笑)。

アハハ。

IO:シティは大まかに言うと東京だったり世の中という意味が大きいと思うんです。タウンはオレらが居るとことか今みたいな事かもしれない。フッドよりタウンの方がオレ的には狭いかもしれないすね。

一般的にはフッドは近所でタウンは街だからフッドの方が狭いですよね。でもそこは感覚的には逆なんですね。

IO:逆かもしれないですね(笑)。フッドは街っていう感じで、タウンはもっとディープでオレらとか俺たちがいま立っている場所とか状況っていう意味かもしれないですね。

KANDYTOWNの“K”は喜多見の“K”ですよね。

IO:そうですね。

IO“City Never Sleep” (pro. by JASHWON for BCDMG) - Official Video -

(K TOWNとは)オレたちを作ってくれた街。べつに何かがあるってわけじゃないんですよ。ただ、オレたちが育ってともに時間を過ごして、いまもいる街ですね。

K TOWNをまったくの部外者に説明すると、どういう街ですか?

IO:オレたちを作ってくれた街。べつに何かがあるってわけじゃないんですよ。高いビルが建ってたりとか、いいブティックがあるとか、そういうわけでもない。ただ、オレたちが育ってともに時間を過ごして、いまもいる街ですね。

KANDYTOWNのメンバーはこの周辺の団地や一軒家でそれぞれ育っている感じなんですね。

IO:そうですね。オレらには団地で生まれたヤツもいるし、ハイクラスなシティ・ボーイもいる。全員がゲトーなわけでもないし、全員がハイソサエティでもない。だからといってお互いにヘイトもなく、みんながリスペクトし合ってる。そういう生まれた環境は抜きでオレらはずっと遊んできたんです。団地で遊ぶこともあるし、誰かの家で遊ぶときもある。バランスはいいと思いますね。

そういういろんなバックグラウンドの仲間が自然に仲よくしているんですね。

IO:そうですね。誰かを僻んだりもしない。団地で生まれたって事に引け目を感じたり、変な形でそこに固執してるやつはいないと思う。ラッパーとしてしっかりレペゼンするときはして、高みを目指す。みんなが目指すところはだいたい同じ方向だと思うし。逆にいい生まれでもそれに感謝して以上を目指せば素晴らしいことだと思う。それがHIPHOP的にハンデになるとも思わない。ほんとにシンプルにこの街にいっしょにいるっていう感じですね。

最近はどんな遊び方をしているんですか。飲み屋に行ったりとか?

IO: あまり居酒屋とかは行かないんで。だいたいは恵比寿のソウル・バーですね。〈SOUL SISTERS〉っていうよくしてもらっているソウル・バーがあって、そこにけっこう溜まっています。そこからクラブに行ったりもするときもありますね。途中で来るヤツもいるし、途中で帰るヤツもいる。で、残ったヤツでフッドに戻って来てレコーディングして曲を作る。そういう感じです。

そういう流れの中で曲が大量に溜まっていったんですね。実際、それぞれの作品の曲数も多いですよね。

IO:そうですね。街で遊んで、地元に帰って、曲を作る。それだけなんで苦でもないし、遊んでいたら自然とそのぐらいの曲が溜まっていたんです。でも、はじいた曲もあるから実際にはもっとありますよ。純粋にラッパーだけで10人は超えているんで曲数は多いですね。

街で遊んで、地元に帰って、曲を作る。それだけなんで苦でもないし、遊んでいたら自然とそのぐらいの曲が溜まっていたんです。

KANDYTOWNのメンバーはラッパーやビートメイカーやデザイナーだけじゃないわけですよね。

IO:そうですね。そういうヤツらも数え出したらもうわけがわからなくなりますね。ラップしていないヤツもたまにステージに上がっているし、「今日来てるんだね」って感じですね。

「遊びに来てるならステージに上がりなよ」という感じ?

IO:いや、言わなくても上がってる(笑)。

ははは。IOくんにとってKANDYTOWNの仲間とは何ですか?

IO:友だちですかね(笑)。

それは言い替えてるだけでしょ(笑)。

IO:KANDYTOWNは多くがラッパーでライバルでもあるけど、今回オレがソロを出すとなったときにみんながいろいろなサポートをしてくれた。穴があったら誰かが埋めたり、お互い支え合ったりしてアルバムができて、すごく仲間のありがたみを感じたんです。でも、ほんとは支え合うとかはあまり言いたくないんですけど……

そういうこと言うのがちょっと恥ずかしい?

IO:そうですね。でも、今後誰かが何かをするときには、オレも自分がしてもらったように全力でサポートできればいいなとは思いますね。だから友だちです。

さっきのリリックの制作過程の話を聞いていても共同作業の側面も相当大きそうですもんね。

IO:ほんとにそう思いますね。メンバーのみんながこのアルバムが好みかはわからないけど、みんなを代表して作ってやっと1枚できたという気持ちはありますね。

そういう責任感みたいなものはあった?

IO:ほんとにもうありんこぐらいの。

ふふふ。

IO:KANDYTOWNやBCDMG、P-VINE、プロデューサーやトラックメイカー、いろんな人が関わってサポートしてくれたから、そういう人たちの期待を裏切りたくないという気持ちはありました。でもそれがプレッシャーにはなっていないですね。

KANDYTOWN“Skweeze Me”

『SOUL LONG』は去年亡くなられた親友のYUSHIさんのノートに書いてあった言葉からきているんですよね。

IO:響きがよかったですね。フィールして、ほんとうにそれだけですね。YUSHIのリリック帳を読むと、おそらく“SO LONG”という意味だと思うんですけど、オレもまだわからないし一生わからないかもしれない。いろんな想像をさせてくれる言葉だから、聴いた人、見た人がそれぞれ感じて解釈をしてくれればいいかなと思います。

YUSHIさんが亡くなったとき、それまでの人生で初めて考えたことはありましたか?

IO:うーん、まだあんまりわかんないです。そのことをまだ冷静に理解できていない。もうそろそろ1年経つんですけど。

発売日(2月14日)が命日ですよね。

IO:そうですね。亡くなったときにどう思ったとかはあんまりこう……会いたいなとか淋しいなとか、そういうのは思うんすけど……。

整理がまだついてない?

IO:一生つかないかもしれないです。6歳からいっしょだったんで、起きてることがよくわかんない。まだあんま理解できてないです。

YUSHI“42st.”

BANKROLL“KING”

フェイクな音楽はやりたくない。自分がやりたくない音楽をやることほどキツイものはないと思うんですよ。

インナースリーヴの最後のページにYUSHIさんの顔のタトゥーが入った肩がうつっているじゃないですか。あれはIOくんの肩ですか?

IO:そうですね。YUSHIがNYが大好きだったのでYUSHIのお姉ちゃんとNYに行って、YUSHIの骨を撒いてきました。そのときにハーレムで入れてきました。

アルバムへの反響はこれからだと思うんですけど、今後ラッパーとしてどうしていきたいですか?

IO:このアルバムはもう自分の中での評価は下っているんで、次のステージに活かして音楽をやれる時期にやれるだけやって自分のラップをして、仲間と楽しくクールにやる。もうそれだけですね。

ギラギラした野心みたいなものはそこまでない?

IO:もちろんリッチになりたいとは思います。でも、フェイクな音楽はやりたくない。自分がやりたくない音楽をやることほどキツイものはないと思うんですよ。だから自分が納得できるのがいちばん重要なことです。その上でみんなが認めてくれてお金もついてきたらいちばんいいと思う。ラッパーやラップをナメているわけではなくて、ラッパーだけが自分の可能性だとは思っていないんです。いまのオレがいちばん好きなのが音楽だからラップしているんです。そういうことなんです。だから自分の好きな音楽をやってそのあとに結果がついてくる。それが成功だと思いますね。先のことはわからないですね。

■IO リリース・ライヴ情報

2016.3.25 (金)
BCDMG Presents IO 『Soul Long』 Release Live
@ 代官山UNIT & SALOON
OPEN/START 23:00
Release Live: IO (KANDYTOWN)
Live: KANDYTOWN
more information coming soon...

取材・文:二木信(2016年2月16日)

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Profile

二木 信二木 信/Shin Futatsugi
1981年生まれ。音楽ライター。共編著に『素人の乱』、共著に『ゼロ年代の音楽』(共に河出書房新社)など。2013年、ゼロ年代以降の日本のヒップホップ/ラップをドキュメントした単行本『しくじるなよ、ルーディ』を刊行。漢 a.k.a. GAMI著『ヒップホップ・ドリーム』(河出書房新社/2015年)の企画・構成を担当。

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