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interview with TOYOMU

interview with TOYOMU

ポップはそれ自体をなめつくす

──トヨム、インタヴュー

野田 努    Nov 24,2016 UP

もっと欲をかいたというか、自分ですべて作ったものを出したいと思ってきたんです。だからサンプリングで一音だけ録ってきて音階にわけて弾いていても、やっぱりどこかで借り物感に満足しきれなくて、今回はそういうことに頼らずにできたと思っているんです。

なるほど(笑)。TOYOMU君って、物静かな外見とは裏腹に、けっこう大胆な行為をやっているんですけど(笑)。ニコニコしながら言っていますが、普通こんなことはビビってできないと思います(笑)。

TOYOMU:それは「日本に住んでいるとただでさえアンテナが低いのに、出さなかったら知られていない、やっていないのと一緒だ」と思ったからなんですよね。せっかく作っているのに聴いてもらえないのがほんまに悲しいと思ってきて、だからそれだったら方法なんて選んでられへんよねという話で。しかもヒップホップ自体が手段を選ばずに新しいことをやるという音楽であるはずだと思うので、その考えからいったら怖いものはなにもないですよね。あとは個人レベルでやって怒られることなんてまずないから、なんでもやったらええやんと思うんです。

でも、今回の『ZEKKEI』がそうですが、商業流通を前提で作っているから、人騒がせなサンプリングもないわけで、自分の音をサンプリングしたんですよね。そういうときにどうやって自分のやり方を調整していくのですか?

TOYOMU:それはYMOとかを聴いてきた僕自身にミュージシャン気質みたいなものが入ったから、自分で作曲してメロディを作り出すということ自体がもしかしたら自分がもっとも目指していたところなんじゃないかと思います。最初はサンプリングとシンセの融合でうまいことやって、サンプリングに聴こえないものを作り出すというのが当初の目標でしたけど、もっと欲をかいたというか、自分ですべて作ったものを出したいと思ってきたんです。だからサンプリングで一音だけ録ってきて音階にわけて弾いていても、やっぱりどこかで借り物感に満足しきれなくて、今回はそういうことに頼らずにできたと思っているんです。今回はそういう欲求でしたね。そもそも欲求としてあったというのはあります。

サンプリング・ミュージックというのはある意味でコンセプチュアル・アートのようなもので、発想を楽しむというのがあるじゃないですか。それに対していま言ったような作り方というのは、自分で実際に絵を描くというような行為ですよね。

TOYOMU:だからコンセプチュアル・アートだけやっていた人が、自分で絵を描くのをやりはじめたという段階がいまですね。

それはやっていて面白かったですか?

TOYOMU:そうですね。いままで自分が挑戦していなかったことをやるんで、やっぱり無類に楽しいですね。僕はメロディやコードの勉強はいっさいしていないですけど、理論って……理論化して可視化しているだけなんで別に(感覚で)理解できればいらないと思うんですよね。サンプリングでコードを合わせたりするのをやっていて感覚として身についてきたので、サンプリングを外してメロディだけを作ってみたりするのがだんだんできるようになってきたということが大きいですね。
 今回はとりあえずの足がかりを作って、それをアルバムの基軸に繋げていきたいと思っていましたし、アルバムを作ることになってからあまりにも時間がないということもあったので、先にジャブ的な感じでひとつ出そうかという感じでしたね。カニエに一区切りするために、というのも一つありました。あれをいつまでも引きずるのは嫌だし、KOHHも「昔のことを忘れたらいい」「過去にしがみつくなんてダサい」と言っているじゃないですか。その感覚ですね。

なるほど。もう次に行こうということですね。

TOYOMU:新しいことのほうがしたいんで、いつまでも一緒のことをやっているのも単純に面白くないし、飽きてきますよね。

『なんとなく、パブロ』のようなギャグをもないですよね。

TOYOMU:そうですね。ギャグはタダでいっぱいやればいいし、それをやる一方でアルバムは超真剣に作ればいいんじゃないかなと思っていますね。別に(ギャグの)入れがいがあるんだったらアルバムに入れてもいいと思うんですけど、100まで振りきってやるというのはやらなくてもいいかなと。

ダンス・ミュージックなどといった縛りはなかったのですか?

TOYOMU:ジャンルということだけは定義づけてやりたくない、という考えは通してありました。「これはトラップですよ、これはハウスですよ、ヒップホップですよ」と最初から冠づけずに、「音楽ですよ」と言って出したかったので定義づけしないでやりましたね。ジャンルがあるからジャンルに従って作ったというのがそもそも嫌だし、「これがビートの作り方ですよ。これがカッコいいですよ」となっている状況が嫌だったから、その(ジャンルの)メソッドが確立したら絶対それをやらずに新しいものを作るということを前からずっとやっていますね。

それでなぜ『ZEKKEI』なのでしょうか?


TOYOMU
ZEKKEI

トラフィック

DowntempoElectronic

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TOYOMU:フィールド・レコーディングの曲も京都の音ですし、『印象』の5番目で『そうだ、京都。(Kyoto Music)』というのを作って人から感想を言われたりして、自分が好きな京都が祇園祭とかクール・ジャパン的な京都じゃなくて、落ち着いたアンビエントの方向の京都なのかなと思ったんですね。京都自体がそういうイメージであることを再認識して、曲を作るときにもそういうのを意識して作ったりしていたので、その延長で今回のEPの制作に取りかかったんですよね。だから『ZEKKEI』というタイトルにしたのは普通絶景と言ったら歌舞伎の石川五右衛門ですよね。あれは南禅寺じゃないですか。

なるほど。そっちから来たのですね。

TOYOMU:日本語のタイトルをつけたいというのがまずあったんですよ。カニエのときは全部邦題的なノリの日本語で書いて今回もやろうと思ったんですけど、それをちゃんとしたCD作品としてやっちゃうと勘違いされるんですよね。

ヴェイパーウェイヴなんかは、相変わらずグーグル翻訳したような日本語をそのままタイトルにしていたり。

TOYOMU:でもそれを僕がやったらヴェイパーウェイヴの人になっちゃう。それが嫌だったんですよ。そこは僕もものすごく悩みましたよ。全曲のタイトルが日本語でもよかったんですけど、やっぱりそれをオフィシャルでやって理解してもらえるまでの周知度はないと思って、嫌だったんですけど日本語の言葉で英語タイトルをつける、ということをなるべく心がけてやったんですよ。だから2曲目に“Incline”という曲があるんですけど、これも英語ではあるんですが、琵琶湖から京都まで引っ張ってきている水路があって、その水路に滑車をつけて荷物を運んでいた「インクライン」という輸送用の台があったんですよ。その線路とかを含めて「インクライン」と呼んでいたんですけど、京都の人はそういうのを小学生の頃から習ったりして知っているから、僕にとって「インクライン」という言葉は英語というより蹴上にあるものが先に思い浮かぶんですよね。もし日本語タイトルでやっていたなら、カタカナで“インクライン”にしていましたし。あと1曲目の“Atrium Jobo”というのも、「条坊制」から取っていて日本語的な意味がありますね。

それは曲のイメージと関係があるのでしょうか?

TOYOMU:曲のイメージからです。EPを作ってからも自分のなかで京都の印象が強かったので、全部曲ができてからタイトルを考えるときも、京都のどこかしらの場所がそれぞれ点在していると考えるとうまく解釈できたんですよ。例えば1曲目は京都駅で、2曲目はさっき言ったインクラインで、5曲目のフィールド・レコーディングは嵐山のほうで、そう考えていくと(京都の)俯瞰になっているんです。そういうふうに俯瞰で眺め見ている+日本語タイトルをなんとかしてつけたいということを考えて、それを理解するのに正しい言葉は『ZEKKEI』だと思ったんです。

当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが、TOYOMU君のなかで京都というのは大きいのですね。

TOYOMU:そうですね。ただ音楽に国境は関係ないという話がよくあると思うんですけど、どこに住んでいたとしても住んでいる場所から生まれ出たものが絶対大きく影響しているはずなんですよ。それは京都に住んでいるから京都をレペゼンしたいということじゃなくて、もう少し俯瞰してみると自分が京都に生まれてからずっと住んでいて(その状況で)音楽を作ったらどうなるのか、ということを考えたうえでの京都なんですよ。もちろん京都愛はありますけど、そうじゃなくてもう少し冷静な見かたの京都であるということを言いたいですね。

アルバムは来年になるのでしょうか?

TOYOMU:来年の2月くらいかな。タイト・スケジュールですね。

ハイペースだね。『印象』シリーズもそうですが、作るのが好きですよね。

TOYOMU:パッと出したいので、時間かけて煮詰まってああだこうだ言うんじゃなくて、『印象』シリーズに関しては最初のインパクトだけで短期間で終わるものをどんどん出していったほうがいいかなと思って。それがあるのであんまりもったいぶっても忘れ去られるだけだなと思いますね。

やはり消費の速度は早いと思いますか?

TOYOMU:思います。それは星野源のリミックスがそうだったし、カニエのやつも3月に出して「Sampling-Love」に載ったあとワーッと盛り上がってスッと消えたので。突然もう聴かれなくなって「はあ、じゃあ次作るか」と思っていたところやったんですね。タダのものしか聴かないという状況は大きいと思いますね。みんな本当にそれしか聴かないですしね。

そういう状況のなかで音楽家はどうやっていくか、というのもテーマとしては大きいですよね。

TOYOMU:タダのものはお金を出して買って頂けるもののオマケというか、プロモーションとしてやるつもりではいるので、今回のカニエくらい実験的だったりギャグ的なことだったりしてやれることはこれからもやっていくとは思うんですよね。

それはそれで楽しみにしつつという考えなのですね。

TOYOMU:そうですね。けっこう早いペースですけど、おそらくEPが出るまでにやると思います(笑)。(※『印象』シリーズの最新作は宇多田ヒカルだった)そうやって動いていきたい感じはありますね。とにかく「あの人は音楽を作り続けているな」というふうに(言われるように)はなりたいですね。実際にやっていて「もうアイデアがない」みたいな状態もないので。

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