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Home >  Interviews > interview with Gonno & Masumura - テクノ、アフロ、そして喋るリズムとは?

interview with Gonno & Masumura

interview with Gonno & Masumura

テクノ、アフロ、そして喋るリズムとは?

──ゴンノ&マスムラ、インタヴュー

取材:野田努    写真:小原泰広   May 09,2018 UP

Gonno & Masumura
In Circles

Pヴァイン

TechnoJazzAmbient

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 生演奏とエレクトロニクスとの融和はこれからさらに注力されるべきテーマだろうし、ジャンルの壁を壊すこと、リスナーの耳を押し広げることは、もうかれこれ20年来の課題だ。そしてリズムは永遠のテーマ。ロラン・ガルニエがパリで、ジャイルス・ピーターソンがロンドンで、松浦俊夫が東京で、早速それぞれのラジオ番組で紹介してくれたゴンノ&マスムラの『イン・サークルズ』
仏英日のリスナーにこの野心作がどのように聴かれたのか気になるところではありますが、まずはここにふたりの声をお届けしましょう。

普段4拍子の音楽を長時間やっている身なので、俺としてはめちゃめちゃ面白かったです。最初に作った“サーキット”という曲のリフは、BPM127くらいのハウスっぽいフレーズををなんとなくマスムラくんに送ったのですが、それが5拍子だということに気づかなくて。そしたら増村くんが5拍子のドラムを入れてきた。これは新しいなということと共に、厄介なプロジェクトだなと(笑)。──Gonno

作品ができ上がって半年くらいですか?

G:そうですね……。実質的な制作期間は3カ月くらいでした。僕がアレンジ、ミックスしたのは1カ月くらいでしたからね。

ゴンノくんが最後缶詰になって?

G:そうですね。記憶がないですからね(笑)。

一緒にやってみて面白かった点は?

G:普段4拍子の音楽を長時間やっている身なので、俺としてはめちゃめちゃ面白かったです。最初に作った“サーキット”という曲のリフは、BPM127くらいのハウスっぽいフレーズををなんとなくマスムラくんに送ったのですが、それが5拍子だということに気づかなくて。そしたら増村くんが5拍子のドラムを入れてきた。これは新しいなということと共に、厄介なプロジェクトだなと(笑)。

ゴンノくんがそれを狙って作っているのかと思った。

G:いえ、脱4つ打ちとかそういったものは一切考えてなかったです。フレーズも4つ打ちを想定してつくったものでしたけど、たしかに5拍子のフレーズを無意識に完全に一発録りしたものを増村くんに送りました。

M:音源が届いて、たしかに最初何拍子かわからなかったです。

G:とくにリクエストもなかったしね。

M:クリックも入っていなかったので。聴いていたら、これはきっと5拍子だなと思って。たしかにゴンノさんは狙ってやったというよりは、自然となっちゃったんだろうなと思います(笑)。当たり前だけどいろんなトラックが何個か重なっているじゃないですか。5拍子でミニマルになっている音を、ちゃんと聴けるくらいに自分のなかに取り入れて、それで5拍子のドラムをぶっこんで。そこから一気にプロジェクトがはじまった感じでしたね。

G:返ってきたドラムを聴いてビックリしました。

M:最初のデモが録音の粗悪さもあって、すごく過激なトラックになりました。あれをいつかボーナストラックで出したいです。

G:増村くんの音は1本マイクを立てて録ったものなので、要は80年代のブームボックスで録ったみたいな。

M:音が割れまくっている。iPadで録ったので。マイクも使っていないです。

G:なんかブートレグみたいな(笑)。

大分の山で録ったんだっけ?

M:それは東京のスタジオです。リハーサル・スタジオで。iPhoneでスピーカーから流して、聴きながらドラム叩いて、その部屋の音をiPadで録るという超アナログ・レコーディング。

今回ドラマーとのコラボレーションということで、しかも、ゴンノ君はテクノ、いわゆるダンスフロアというものを常に念頭に置きながら作品を作っている人なわけだから、リズムというのは大きなテーマですよね。

G:そうですね。

M:僕からしたら、異種格闘技戦ではあるんですけど、最初からリズムがテーマになってくれているので、むしろバンドのときよりも自然な形で、自由なアイデアでやらせてもらえたという感じです。機械とやっているけど、むしろ自然にできたという感じでした。元々テクノのことをあまり知らないですが、昔、岡田(拓郎)がジェフ・ミルズにハマっているときがあって。森は生きているの終わりくらいです。ライヴ前に聴かされたりして、これはアフロだなとそのときから思っていて。そもそも、アフリカ系アメリカ人が機械でビートを出しはじめたことが成り立ちなんですよね? ということはパーカッションとあまり変わらないのかなって。変わるけど(笑)。いままでいろいろなプロジェクトに参加してきたけれど、かなり自由に、気楽にできたというか。

G:よかった(笑)。

M:ゴンノさんの音源だと、はまるんですよね。リズムがはめやすいというか。バンドだと、先にドラムを録って他の楽器を重ねたら、最初にドラムを叩いた意思と全然違う形ででき上がることがけっこう多いですが、ふたりということもあるし、ゴンノさんのトラックの柔らかさみたいなものがあるので、叩いているときの感じでできてくれるというか。それが嬉しかったです。逆に言うとミスもはっきり出るんですけどね(笑)。

G:ずっと4拍子の世界にいたので、リズムの気付かない豊かさみたいなものが今回わかりました。例えば、5拍子だとこんなトランスの仕方をするんだとか、7拍子だとこんな具合が悪くなってくるんだとか(笑)。

一同:(笑)。

G:5拍子のレコーディングとか、終わったあと眩暈しました。

M:眩暈しましたね(笑)。

ゴンノ君はリスナーを躍らせるということがひとつの絶対的なテーマとしてあるじゃない?

G:DJだとそうですね。

今回もそれはある?

G:音楽をつくる面で僕が大事にしていることは、踊れるということよりも、いろんな音楽を紹介したり、多様性を示唆するみたいなことも自分の役目だと思っています。そういう意味では今回、例えば、“マホラマ”という曲がアルバムに入っているんですけど、それもパーカッションとドローン的なシンセサイザーだけで構成された、特に踊れるものという意識は全くない曲です。逆に4曲目の“ミスド・イット”という曲は、いわゆるファンク・ドラムにハウスっぽいベースラインを入れて踊れるような雰囲気を狙いました。そういった曲は勝手知ったる他人の家といった感じでしたが、他の曲は自分のなかでは今回チャレンジングなものばかりでした。

“ミスド・イット”は個人的にはシングルにして欲しいくらいの曲なんだけど、これって、最終形がわかっていてやったプロジェクトじゃないよね?

G:ではないです。

とりあえず出発してみたという。

M:それを逆に狙っていたというか。

どこに行くかわからないけど、出発してみようって? ゴンノ君にもそれはわからなかった?

G:わからなかったです。もともと増村くんのドラムのファンだったので、自分の曲に増村くんのドラムが乗っていたら素晴らしいのになとずっと思っていたことがひとつの経緯です。あと、やっぱりこういうプロジェクトをなかなかやれる機会がないので、面白そうだからやるしかないというか。面白そうっていちばん大事じゃないですか。楽しそうだったから。それに尽きますね。

にしても、よく9曲も作れたなぁ(笑)。

M:ほんとそうですよ(笑)。ゴンノさん様様なんですけど(笑)。

G:僕もビックリですね。

M:どっちかというとそこだけが懸念していた点というか。曲はたぶんできていくんだけど、アルバムとして形にするためにどうなっていくんだろうなということはずっと思っていました。3月のゴンノさんがそれをピシッとやってくれたのですごいよかったですけどね。

G:3月はまったく休憩がないですからね。DJしていたことの記憶もないですね(笑)。

取材:野田努(2018年5月09日)

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