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interview with Fat White Family

interview with Fat White Family

彼らはインディ・ロックの救世主か?

──ファット・ホワイト・ファミリー、インタヴュー

質問:野田努    通訳:萩原麻理(ネイサン担当)/原口美穂(リアス担当) Photo by Sarah Piantadosi    Apr 19,2019 UP

いまの若くて貧乏な連中には、そういうアートを探るチャンスが与えられてない。金もゼロ、サポートもゼロ、方向性みたいなものもゼロだと、人が一番に求めるのは何かしらの安全、セキュリティになる。アートみたいなものは顧みなくなるんだ。

たとえばいまUKにはマーク・E・スミスのような人がいないことをあなたがたはどのように考えていますか? ひとつの解釈としては、労働者階級出身の良いロック・ミュージシャンが昔のようにはいなくなっているということがあると思いますし、もう昔のようにロックそれ自体が反抗の音楽でもないという考え方もあるんじゃないでしょうか?

ネイサン:どうかな……わからないけど、むしろ経済状況と関係してるんじゃないかな。いまの若くて貧乏な連中には、そういうアートを探るチャンスが与えられてない。金もゼロ、サポートもゼロ、方向性みたいなものもゼロだと、人がいちばんに求めるのは何かしらの安全、セキュリティになる。アートみたいなものは顧みなくなるんだ。すごく悲しいことだけど。とくに都市周辺はもともと物価が高いし、才能やマテリアル、すべての素晴らしいものへのアクセスにものすごく金がかかる。それに貧乏だと、金よりもまず、アートなんかかける時間がないんだよ。生活のなかにそのための時間がない。で、結局どんどんミドルクラスの連中が全部取りすることになるんだ。でも、ミドルクラスの連中が音楽を通じて表そうとするものは……なんていうか、多くの場合、そこには他の人びとに対して自分は何を意味するのか、みたいなものが欠けてるんだよね。本能的なもの、衝動みたいなものが。いまはほんと、そういうのばっかりで。それに対して俺が何を感じるかっていうと……失望だな。ロンドンとかで部屋を借りるのなんて、もう無理なんだよ。金がない連中はスクワットしてたけど、もう俺たちが最後くらいじゃないかな。残念な話だ。

そう、南ロンドンのペッカムって、なんかファッショナブルで、ちょっといまハイプになってきている感じもするんですけど、そんな場所であなたがたはスクウォットしていたという話を読みました。現代のロンドンは、物価も家賃も高くて、再開発されていて、もう貧乏人は住めない街で、昔のようにスクウォッターなんていない街だと思っていたので、意外に思ったのですが、ロンドンには、あなたがたのような生き方をしている人もまだいるってことですね?

ネイサン:いまはもうスクワットなんて無理だね。不可能だ。まあ、全部そういうもんなんだろうけど。浮き沈みがある。だろ? 都市が進化することもあれば、その進化ってやつが馬鹿馬鹿しかったり。まあ、俺としてはいい気分はしないよ。俺はもうロンドンじゃ部屋を借りる金なんてないし、まわりの友だちもみんなそうだし。

リアス:ここ何年かで、どんどん変わってきている。ニューヨークやベルリンと違っ、ロンドンにはレント・コントロールがないからね。どんどん高層ビルが建てられて、中国人の億万長者が建てているビルだから、建っても誰も住んでない。新しい建物が建っても、労働者階級の人びとは、そこに住めるわけがないんだ。そういう現象は起こっているけど、それでも南ロンドンは良い街だとは思う。俺たちももうブリクストンには住めないけどね。ブリクストンに遊びには行けるけど、住めはしないな。でも、遊びに行くには良い街だし、南ロンドンはいまも面白いと思うよ。

全裸なのは俺(笑)。しばらくやってたけど、やっぱトラブルになったから最近はやってない。俺はアートとして裸体に興味があるんだ。自分なりにGGアリンのライヴ・パフォーマンスを分析しているというか、そんな感じ。逮捕されたこともあるけどね(笑)。

メンバーに全裸の人がいますが、それって、ある種の開き直りというか、隠しごとなんてないからどこからでもかかってこい的な気持ちのあらわれだったりするのでしょうか?

リアス:全裸なのは俺(笑)。しばらくやってたけど、やっぱトラブルになったから最近はやってない。俺はアートとして裸体に興味があるんだ。自分なりにGGアリンのライヴ・パフォーマンスを分析しているというか、そんな感じ。逮捕されたこともあるけどね(笑)。

ネイサン:兄貴はただ、人から反応を引き出すのが好きなんじゃないかな。昔からああだったし。子どもの頃から、学校の教室でいきなり服を脱いで、机の上に立ってた。裸で他のキッズを見下ろしてね(笑)。だから、ずっとそうだったんだよ! まあ、どういう理由でやってるのか知りたかったら、きっとリアスと膝つき合わせて、あいつの精神分析をしないといけないだろうな。本当に本当の意味を知りたければ(笑)。ま、俺からすると、他人のリアクションを見るのが好きなんだと思う。あれがリアス的な人生の楽しみ方なんだよ。

『サーフス・アップ!』というタイトルが痛快でいいですね。この言葉を選んだのはなぜでしょうか?

ネイサン:サーフ(surf)っていうのは、いま、現在ってこと。で、いまって世界中で右翼ポピュリズムのムーヴメントが起きてる。で、人びとが共鳴して立ち上がってるんだけど、それこそが人びとをさらに抑えつけ、ひどい状況に引きずり込むものだっていう。あのタイトルはちょっとそれに言及してるんだ・

リアス:労働者階級がもっと自由になるために伸び上がるっていうのを表現したのがあの言葉。ブレグジット、トランプ、そういった現代の問題を総括したものがこのタイトルなんだ。ビーチ・ボーイズのアルバムをもじったと思われがちだけど、そうじゃない。たまたまそうなっただけだよ。

アルバムのアートワーク、これはいったい何なんでしょうか?

リアス:あれは、ニーチェ(※マーク・E・スミスのお気に入りの哲学者でもある)の”力への意志”と、スーパーマンのアイディアを表したものなんだ。ドイツのヒロイズム(※英雄的資質)。あとは、俺たちのお気に入りのバンド、ライバッハへの同意でもある。最終的に、俺たちは皆愛すべき利己主義者なんだよ。

ネイサン:俺たちはヨーロッパ的で古い感じの、自然のイメージが欲しかったんだ。どこか神話的なイメージ。何か誇れるような、いいものがね。でも必ずしも……うん、そういうイメージを好きになるのに、ナショナリストである必要はない。美しいものを誇りにしたっていいんだ。たしかに自然主義的な絵画、イメージを右翼は好んできたし、左寄りだとそういうイメージを使っちゃいけないことになってるのかもしれないけど、「なんでいけないんだ?」ってこと。誰だって使っていいんだよ。シンボルそのものは右翼でも、左翼でもないよね? ただのシンボルなんだ。そしてそれが表現すべきものを表現してる。なのに無理やり意味を付加されて、袋小路的な思考に押し込められてて。でもそれに従ってたら、もうトライバリズムしかなくなる。だろ?

“Tastes Good With The Money”(※イアン・デューリーの息子、バクスター・デューリーが参加))のような曲は、曲名からしてきっと新自由主義的なことをからかっているんだろうなとは推測するんですけど、アルバム全体で、メッセージのようなものはあるんですか?

リアス:曲それぞれでメッセージは違う。あまり歌詞の内容やメッセージを明確にはしたくないんだ。でも、英雄的苦しみ、男らしさのイメージの崩壊、ポピュリズム、自己愛とアート、そういったものが主なテーマだとは言えるかな。

“I Belive in Somthing Better”は、ろくでもないことばかりこのご時世でも良いことあるよっていう希望の曲なんですか? 

リアス:あの曲では、俺たちなりに環境保護について書いてみたかったんだ。セオドア・カジンスキーみたいな奴のことをいろいろな奴らがプロぶって崇めているけど、カジンスキーが爆弾で多くの人びとを殺し、負傷させた事実には触れもしない。俺たちはそれが馬鹿げていると思うし、そんな奴らが語っている理にかなっていない社会問題を超えた素晴らしいものがこの世のなかには存在しているということを書きたかった。

いまいちばん頭に来ていることといまいちばん楽しいことは?

リアス:頭に来ているのはブルジョア。あと、非現実的な希望を掲げて活動する政治家たち。あと、俺自身に十分な金がないことだな(笑)。ブリクストンに住めないくらい(笑)。楽しいことは、音楽で食べていけてはいること。アルバムを作れるくらいの余裕はある。あと、ドラッグ中毒じゃなくなったことと、アメリカ人の彼女がいないこと(笑)。

ネイサン:人間が環境崩壊に突き進んでることに対しては、すごく憂慮してる。ある日は考えたくもないし、また別の日には何かしなきゃいけない気持ちに駆られるし。落ち込むね。で、ハッピーになれることは、もしすべての終焉が来るとしたら、もうちょっと暑くなる(=温暖化)、ってわかってることかな。で、それを生き延びる動物もいるだろう、ってこと!

あなたがたの考える、イギリスのいちばんいいところってなんだと思いますか?

リアス:それは俺だな(笑)。俺を作ったこと(笑)。何事にもオープンで、人種も混ざっている。つまりは、自分自身を持ちながらも、さまざまな文化や要素が混ざっているということさ。

ネイサン:いまUKでいちばんいいところ? ファック、回答不可能な質問だな! ま、俺たちが日本に行けるかもしれない、って思うといちばん嬉しいね、いまは(笑)。

萩原:まあ言っておくと、日本もかなりのカオスですよ。わけのわからないことも起きてるし、そこははっきりさせておきます(笑)。

ネイサン:まあどこでもクソってことだよね? きっと必要なのは、第四の産業革命なのかも。たぶんね」

萩原:あと経済と、民主主義では何かしないといけないかもしれないですね。

ネイサン:うん。まあ、もがくのをやめちゃダメだ、ってことなんだろうな。みんな一人じゃないんだし。じたばたしつづけないとね!

質問:野田努(2019年4月19日)

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