「MAN ON MAN」と一致するもの

interview with Sofia Kourtesis - ele-king

 パンデミックを乗り越えて Outlier(アウトライアー)がようやく日本にやってくる。2020年4月に日本での初開催が予定されていたものの入国制限により中止となってしまったため、今回が本邦初である。ボノボ自身は、2022年フジロック、2023年東京大阪 2 days で来日しているが、通常の予測範囲からずれた測定値を示す「外れ値」をタイトルにいただくパーティでの登場に期待せずにはいられない。日本初の Outlier に登場するのはボノボに加えて、初来日となるケリー・リー・オーウェンス、そして今回インタヴューをする機会を得られたソフィア・コルテシス。
 各メディアから絶賛されたアルバム『Madres』が素晴らしい作品であったことに異論はないだろうが、かくいう筆者も紙版『ele-king』2023年間ベスト企画のハウス編でセレクトした。DJコーツェやアクセル・ボーマンといったプロデューサーたちがおこなってきたメランコリックでサイケデリックなハウスやテクノを受け取りながら、独自のエッセンスで捉え直したハウス・アルバムだと思う(インタヴュー中でも触れられているが、DJコーツェが彼女のヒーローだそう)。
 自身のルーツである南米ペルーの民族音楽や大衆音楽からの影響、政治的なスタンスを音楽に持ち込む姿勢、そして、彼女の家族に起きたとても困難な状況とそこからの回復といった様々な要素が『Madres』のなかに収められていることも重要なポイントだ。
 父との死別と母の罹患、絶望的な大病と奇跡のような名医との出会い、手術の成功という喜び。『Madres』がダンス・ミュージックの機能性を高いレヴェルで保ちながら、刹那的エモーショナルとは異なる、複雑で豊かな感情が音色やメロディから伝わってくるのはそういった幾層ものレイヤーが彼女自身に備わっているからかもしれない。
 このインタヴューでは、ボノボやケリー・リー・オーウェンス、Outlier をどのように捉えているか、また DJやパーティについての考え方、そしてアルバムの成功とそれに伴った環境の変化などについて質問をおこなった。

ボノボは私のヒーロー! Outlier では彼のキュレーターのスキルがすごくユニークで、ラインナップには私が大好きなアーティスト勢がいつも揃っている。

アルバム『Madres』が成功を収めたことでDJスケジュールが忙しくなったりなど、環境の変化はありますか?

ソフィア・コルテシス(Sofia Kourtesis、以下SK):ええ。ライヴ本数が増えて、世界中を旅するようになり、ライヴ会場が以前より大きくなった。いちばん嬉しいのは、アーティスト活動と並行してやっていた仕事を辞めたこと! いまはラッキーなことに、私の音楽パートナーでもあるボーイフレンドと音楽制作に専念することができて嬉しい。家族との時間を持てるようにもなって、本当に良かった。

辞めた仕事はクラブ・ブッキングの仕事ですか?

SK:うん。ドイツにあるクラブでブッキング担当をしていた。自分が好きなバンドをブッキングできて楽しかったけど、深い時間までの仕事だから、かなりハードな仕事でね。だから、デビュー後は徐々にそのブッキング仕事は減らしていって。

これまであなたがパフォーマンスをおこなった国や都市、パーティやフェスなど印象に残っているものがあれば教えて下さい。

SK:グラストンベリー・フェスティヴァルでのライヴ・セットは、いつも最高ね。私はギリシャ人とペルー人のハーフなんだけど、グラストンベリーに出演した初のペルー人だった! バルセロナで開催されたプリマヴェーラ(Primavera)では皆がシンガロングしてくれて、ホント楽しかった! それから、ベルリンのクラブ、ベルクハイン(Berghain)でのパーティは、これまでプレイしたなかでベスト・ショウのひとつだった。

ボノボのDJや彼がキュレートする Outlier、ケリー・リー・オーウェンスなど出演者についてどのようなイメージを持っていますか?

SK:ボノボは私のヒーロー! 初めて会ったのはオーストラリアで開催されたフェスだったかな。音楽スタイルが似ていることもあり、それ以降何度か同じステージでプレイすることが増えた。人間的にも素晴らしいし、彼のライヴ・セットに参加することもあって。逆に、ボノボが私のステージに参加することもある。
 Outlier では彼のキュレーターのスキルがすごくユニークで、ラインナップには私が大好きなアーティスト勢がいつも揃っている。前回の Outlier では、DJコーツェが参加していて、彼も私にとってはヒーロー的存在! ケリー・リー・オーウェンスも大好きなDJだから、間違いなく楽しい夜になるはず!

インターネット上で確認できるあなたのプレイを聴きました。新しくなるにつれて、スタイルが変化していっていると感じました。また、ミックスのなかでフックが毎回仕込まれているのも印象的です。野暮な質問なのですが、今回の Outlier ではどのようなパフォーマンスをおこなうか考えがあったりしますか?

SK:日本は勤勉な人が多くて、街のペースが速いから……ベース音を効かせた、テンポの速い、エネルギッシュなセットになる予定。それから、私の新曲を披露するから楽しみにしててね!

辞めてしまったとはいえ、ブッカーの経験も豊かだと思いますが、自身でイベントやパーティをはじめることに興味はありますか? また、共演してみたいアーティストがいれば教えて下さい。

SK:ぜひやってみたいけど、いまのところ企画する予定はナシ。というのも、今夏に新作を発表予定で、現在は自分の作品制作の方に専念しているから。でも、今年の年末にロンドンのフォノックス(Phonox)で初のレジデンシーが決定していて。共演してみたいのは、エルッカ(Elkka)。彼女のDJスタイルは私と似ているから、またぜひバック・トゥ・バックで組んでみたい。

ベース音を効かせた、テンポの速い、エネルギッシュなセットになる予定。それから、私の新曲を披露するから楽しみにしててね!

アルバム『Madres』について質問をさせてください。タイトル曲である “Madres” をはじめ、全体にポジティヴさや優しさのようなものを感じました。本作をつくることで、セルフケアをおこなう意図もあったのでしょうか?

SK:そうね。いつもメンタル面には気を使っている。『Madres』の曲作りで自分の気持ちを表現する上でときどき迷うことがあったから、精神的に不安になったときはセラピストの所に通っていた。自分のメンタル・ヘルス面に気を配ることはとても大切。

あなたの曲はどれもメロディが印象的ですが、ビートについても興味深く感じました。楽曲を作る際のドラムやベースラインに対する考え方があれば教えていただけますか?

SK:それは、曲の雰囲気による。たとえば、メロウな曲のときはあえてベルリン・テクノやハウス寄りにしないこともある。 曲の雰囲気によって、はじまりから終わりまでの楽曲展開を決めていくから。

アルバム制作時にカリブーフォー・テットに相談したそうですが、彼らはどのようなアドヴァイスをしたのでしょうか?

SK:いいバラードを50%、エネルギッシュなクラブ・バンガーを50%制作することを教えてくれた。私もそのとおりだと思うし、重要な点ね。

そのアドヴァイスは、カリブーとフォー・テットふたりとも?

SK:うん。ふたりともとても協力的で、アーティストが自分の能力を信じるようにモチヴェーションを上げてくれる。前進できるように、いつも励ましてくれるよ。

ホモフォビアに対しての抗議活動のフィールド・レコーディング、マヌ・チャオをフィーチャーした “Estación Esperanza” など、アクティヴィストとしてのあなたも作品で表現されています。戦争や紛争など、現在の世界における困難な問題について、あなたの意見はどのようなものでしょうか?

SK:活動を通して学んだ最も重要なことのひとつは、独りよがりの人が多いこと。だから、教育が非常に重要ね。特に、私たちより前の世代は、心を開いて、自分とは異なる考え方を学ぶべきだと思う。恐怖心や宗教は、ときとして最悪の敵のようになり得るから。きちんと学び、恐れを捨てて、よりオープンで、他者を理解する優しさを持つべきだと思う。いま、紛争の酷い状況を見ても、考え方が昔に逆戻りしていて、恐ろしい。正しいことを見つけ、すべてを止めようとするために、もっとオープンに話し合い、各自が学んでいく「変化」が必要ね。いま起きていることは、一歩前進するどころか後退していて……、クレイジーだと思う。

最後の質問です。今後のリリース作品や予定など教えていただけますか?

SK:2週間後に(今夏リリースの)新作が完成予定。タイトルはまだ決まっていないけど、ほぼ完成した。コミュニティへの恩返しのようなもので、音楽を中心に私たちを結びつける愛が題材。懸命に戦っている若い世代……各自が置かれたコミュニティで勇敢に立ち向かうヒーローたちに贈るアルバム。いいアルバムになると自負しているよ。

音楽的にはバラードが50%、クラブ・バンガーが50%という割合ですか? その他、今後の予定は?

SK:うん、そのとおり。今後の予定としては、日本での Outlier 出演後にグラストンベリー、プリマヴェーラやロスキレ(Roskilde)などのフェスが予定されている。

今日は、ありがとうございました。新作を聴くこと、あなたのプレイで踊ることを楽しみにしています。

SK:こちらこそ、どうもありがとう! 初来日は2009年か2010年あたりだったと思うけど、それ以降2013年までは毎年日本へ行ってて。大好きな国だから、久しぶりに日本の皆に会えるのが待ちきれない!

BONOBO主催のクラブイベント
『OUTLIER (アウトライアー)』
いよいよ来週に迫る

●気になるタイムテーブルを発表!
●当日券情報発表!
●会場限定グッズのデザイン公開!
本日よりオンライン受注受付もスタート!

アーティスト/プロデューサーとしてグラミー賞に7度ノミネートされるなど、絶大なる人気を獲得しているボノボが主宰する世界的クラブイベント、OUTLIER(アウトライアー)。主宰BONOBO(ボノボ)に加え、海外からはいずれも初来日となるKELLY LEE OWENS(ケリー・リー・オーウェンス)、SOFIA KOURTESIS(ソフィア・コルテシス)が参戦。さらに真鍋大度、食品まつり a.k.a foodman、TRAKS BOYS、SEIHO、KATIMI AI、FRANKIE $など、エキサイティングなラインナップが集結。さらにはグラフィックデザイナー/アートディレクター、YOSHIROTTENが本公演の為に特別な映像作品を制作し参加することも決定している。

会場はO-EAST~DUO~東間屋とエリアを拡張し、豪華ラインナップを配し複数ステージ同時進行で開催される他、ナチュラルワインをメインに取り扱うNEWVALLEYが厳選したナチュラルワインとおつまみを、季節の野菜を使ったフードケータリングで人気のTORATOMICANが提供するヘルシーで美味しいバインミーサンドなどを、東間屋では気の利いたお酒も味わえる。またNEWVALLEYは朝方に人気の自家焙煎コーヒーとモーニングメニューも提供する。音楽、アート、フード&ドリンクまで、とにかく朝まで楽しめるオールナイト・パーティーとなる。

イベント開催がいよいよ来週に迫り、気になるタイムテーブルとフロアマップ、会場限定Tシャツ、当日券情報を発表! Tシャツは日本限定のデザインとなり2色展開となる。本日よりBEATINKオフィシャルサイトにて、オンライン受注受付もスタート(締切は5月26日)。


https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=14085


https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=14086

BONOBO PRESENTS
OUTLIER

FEATURING:
BONOBO (DJ SET)
KELLY LEE OWENS (DJ SET)
SOFIA KOURTESIS (DJ SET)
DAITO MANABE
食品まつり a.k.a FOODMAN
FRANKIE $
KATIMI AI
SEIHO
TRAKS BOYS
YOSHIROTTEN (Video Art)

VJs (at DUO):
Kazufumi Shibuya, Sogen Handa,
Yuma Matsuoka, Yuta Okuyama, 91u5

FOOD&DRINK:
NEWVALLEY (Natural wine & Food)
TORATOMICAN (Food)

公演日:2024年5月18日(土)
会場:O-EAST + DUO + AZUMAYA
OPEN/START:21:00 (オールナイト公演)
前売:¥7,200(税込)
当日券:¥8,000 (21:00より販売)
※整理番号無し
※入場時に別途1ドリンク代 ¥700
※20歳未満入場不可。入場時にIDチェック有り。必ず写真付き身分証をご持参ください。

INFO: BEATINK [ www.beatink.com] / info@beatink.com
主催・企画制作:BEATINK / SHIBUYA TELEVISION

[TICKETS]
●イープラス [ https://eplus.jp/outlier/]
●ローソンチケット[ https://l-tike.com/outlier/]
●BEATINK [ https://beatink.zaiko.io/e/outliertokyo/]

店頭販売:
●HMV record shop 渋谷
●Lighthouse Records
●ディスクユニオン渋谷クラブミュージックショップ
●ディスクユニオン下北沢クラブミュージックショップ
●ディスクユニオン新宿ソウル・ダンスミュージックショップ

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OUTLIERキャンペーン
OUTLIERの日本初上陸を記念して、4月26日より出演者の人気タイトルを対象にしたキャンペーンの開催中! 期間中にキャンペーン開催店舗にて対象商品を購入すると先着特典として『OUTLIER』ステッカーをプレゼント! ロンドンの大型会場Drumshedsにて開催された『OUTLIER』ロンドン公演にて販売されたOUTLIER Tシャツが発売が購入できる。


【Tシャツ取扱い店舗】
タワーレコード渋谷店 / HMV record shop渋谷店 / ディスクユニオン渋谷クラブミュージックショップ
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Overmono - ele-king

 それぞれテセラ、トラスとして10年以上前から活動してきたエド&トム・ラッセル兄弟によるエレクトロニック・ダンス・ユニット、オーヴァーモノ。昨年ついにファースト・アルバム『Good Lies』を送り出し、フジへの出演も話題になった彼らだけれど、いよいよ単独公演が開催されることになった。10月16日@梅田 CLUB QUATTRO、10月18日@渋谷 Spotify O-EASTの2公演──まだ少し先の話とはいえ、秋の目玉イベントになりそうなこの公演、いまから期待を膨らませておきましょう。

The Lyman Woodard Organization - ele-king

interview with Lias Saoudi(Fat White Family) - ele-king

 ロックの本質をラディカルなものだと捉えているバンドマンは絶滅種に近い、とまでは思わない。日本からUKを見た場合、リアス・サウディやスリーフォード・モッズのような人たちはすぐに思い浮かぶけれど、まだ紹介されていないだけで、じつはほかにもいる。だから、UKロックがいよいよファッショナブルな装飾品になった、というのは早計だ。が、こんにちのロック界がラディカルなものを求めているのかどうか……ぼくにはわからない。
 ジョン・ライドンやジョー・ストラマー、あるいはポスト・パンク世代たちのインタヴューが面白かったのは、彼ら彼女らが、自分が言いたくても言えなかったことを言っていたから、という気持ちだけの話ではない。彼ら彼女らの発言には、たとえ平易な言葉であっても社会学や哲学、政治の話を聴いているかのような、知性に訴えるものもあった。リアス・サウディのインタヴューは、あの時代のUKインディ・ロックの濃密な実験が完全に消失されていなかったことを証明している。意識高い系へのウィットに富んだ反論という点では宮藤官九郎の「不適切にもほどがある」と微妙にリンクしているかも……いやいや、ファット・ホワイト・ファミリーのリスナーの大部分は昭和など知らない、ずっと若い世代です。
 とまれ、ファット・ホワイト・ファミリーが5年ぶりの4枚目のアルバムをリリースするまでのあいだ、バンドの評判が母国において上がっているとしたら、ベストセラーとなった共著『1万の謝罪』の効果もあろう。が、音楽シーンにおける難民となっている彼らだから見えている光景を、人はもうこれ以上、目を逸らすことができなくなってきているという状況があるとぼくはにらんでいる。この、いかんともしがたいダークな事態が続くなか、風穴をあけんとジタバタし、破れかぶれにもなり、じつを言えばなんとしてでもロックンロールを終わらせたくない男=リアス・サウディへの共感は、スマートではないからこそさらに熱を帯びることだろう。彼にはいま、作家としての道も開けているそうだが、ぼくとしては、ひとりでも多くの日本人がファット・ホワイト・ファミリーの音楽を聴いてくれることを願うばかりだ。


中央にいるのが、取材に応えてくれたリアス・サウンディ

テイラー・スウィフトを聴く方が、あの手のバンドを聴くよりも「侮辱された」って気にならないだろうな。例の「ポスト・ポスト・ポスト・ポスト・パンク」バンドの手合いね。生真面目で、時機に即した正義感あふれる歌詞、たとえば「自分たちはどれだけ移民を愛してるか」だの、ジェンダー問題云々、まあなんであれ、そのときそのときでホットな話題を取りあげる連中。

素晴らしい新作だと思いました。

Lias Saoudi(LS):オーケイ。

この時代のムード、とくにやるせなさや空しさをひしひしと感じました。

LS:うん。

最初にアルバムを通して聴いたとき、いちばん心にひっかかったのは、“Religion For One”でした。ぼくは英語の聞き取りのできない日本人なので、頼りはサウンドだけです。その次が“Today You Become Man”で、これが気になったのはサウンドと曲名です。ほかの曲も好きですが、この2曲から感じた、恐怖、混乱、倒錯的な快楽、目眩、空しさ、これらはこのアルバムのなかで重要な意味をなしているように思いました。この感想についての感想をお願いします。

LS:ああ、だから一種の、想像力およびアクションの麻痺、みたいなことなんだろうな。ある種……それが注意力を引きつけるのは当然のことだ、というか。だって、それ以外に何も起きてないわけだから。

通訳:それは、現在の世界では何も起きていない、ということでしょうか?

LS:そう。いまやこう、ぞっとするくらいの停滞状態、というポイントにまで到達したと思うし。だから一種の、この……アポカリプスか何かの一歩手前、って状態が恒久的に続いている、みたいな? つまり、そうなる寸前の段階で時間が凍りついて止まってる感じ。だから逆に、いっそ物事が崩れ落ちてくれる方がむしろ救いになるんじゃないか、と。それってだから、永遠に変わらない型/枠組みが存在する、波頭が砕けることはない、ということだし。とにかく、そういう……まじりっけなしの不安感がある、と。で、思うにそれがおそらく、「これ」と明確にわかるやり方で、ではないにせよ、おれが伝えようとしてることなんじゃないのかな。とは言っても〝Today You Become Man〟、あの曲は、おれの兄の体験した割礼のお話で。

通訳:えぇっ? そ、そうなんですか!

LS:(苦笑)うん、彼は子供の頃に割礼を受けて……おれたちは半分アルジェリア人の血が混じってるんだ。だから兄は父方の故郷で、北アフリカの山々で割礼を受けた、と。

通訳:なるほど。かなり残忍な儀式、という印象ですが。

LS:ああ、かなりむごい。兄は麻酔も受けずにカットされたし……

通訳:ぐわぁ〜っ、聞いてるだけで痛そうで、きついなあ。

LS:フハハハハッ! でも、だからなんだよ、あの曲がかなりナーヴァスなものに響くのは。

音だけだと、あの曲はフィリップ・K・ディックの小説で描かれる悪夢みたいで、強烈に惹きつけられました。

LS:なるほど。一種、そうかもね。ハッハッハッハッ!(※ディックは「陰茎」を意味する言葉でもある)

通訳:たしかに……(苦笑)。

LS:でも、あのとき兄は5歳くらいだったはずで。だからあの曲では、兄があの思い出を語るときにやるおれたちの父親の物真似、それをおれが真似てるっていう。あの曲で起きてるのは、そういうことだよ。

このグループのなかに、アルバート・アイラー的な面はあるよね。思うに……おれ自身は、フリー・ジャズに造詣が深いとは言えないだろうな。ただ、誰もが色々でっちあげたというか、アルバム作りのあの時点で、みんな、思いつくままクソをあれこれと壁に投げつけて、何がこびりつくか見てみよう、と。

フリー・ジャズは聴くんですか? “Today You Become Man”にその影響がありますが、もしそうなら、とくに好きな作品/アーティストは?

LS:まあ、このグループのなかに、アルバート・アイラー的な面はあるよね。思うに……おれ自身は、フリー・ジャズに造詣が深いとは言えないだろうな。ただ、誰もが色々でっちあげたというか、アルバム作りのあの時点で、みんな、思いつくままクソをあれこれと壁に投げつけて、何がこびりつくか見てみよう、と。

通訳:(笑)

LS:あの曲は実は、9人で演奏した、20分近いジャムみたいなものだったんだ。だからアルバムに収録したのは、そこからカットした短い部分。

通訳:ジャムから編集してアルバム向けの尺にした、と?

LS:っていうか、あの曲のヴォーカルにとって「これだ」と完璧に納得できる、その箇所だけ使った。

FWFの10年の歩みを綴った、アデル・ストライプとあなたの共著『Ten Thousand Apologies: Fat White Family and the Miracle of Failure(1万の謝罪:ファット・ホワイト・ファミリーと失敗の奇跡)』(2022)はいつか読みたい本です。レヴューを読む限りでは、FWFの歴史においての、おもにドラッグ常用者の手記みたいなものらしいですが、合ってます?

LS:ああ……。

通訳:もちろんドラッグ体験ばかりではなく、バンド・ヒストリーも追っているのでしょうが。

LS:まあ、本の多くは、おれとおれの弟(Nathan Saoudi)の生い立ちについて、だね。アルジェリア半分/英国半分の子供で、北アイルランド、そしてスコットランドで育ち……ということで、まあ、とにかくちょっとばかし奇妙なお膳立てだったわけ。で、続いて20年くらい前のロンドン音楽シーンの話になり、みすぼらしい生活、一時的なスクウォット暮らし等々……不潔さ、カオス、ドラッグが山ほど出てくるよ、うん。でも、どうなんだろ? たぶん、これくらい早い時点でああいう本を書くのは、ちょっと妙なんだろうな。ただ、パンデミック期だったし、おかげでほかに何もやることがなかったし、だったらまあ、ここでひとつ過去を吟味してもいいだろう、と。当時は音楽活動をまったくやってなかったし。

この本を書こうと思った動機について聞きたいのですが、たしかに「バンドの伝記」はちょっと早いですよね。いまおっしゃったように、コロナがきっかけだった? それともいつか書きたいと思っていた?

LS:いいや、たぶんアデル・ストライプは、どっちにせよこのバンドのバイオグラフィを書くつもりだったんだと思う。彼女はパンデミックの前から、おれに協力を要請していたからね。パンデミックが世界的に爆発したまさにその頃に、おれたちは日本・中国・台湾・香港etcを回ってるはずだったんだよ(※2020年3月に予定されていたがキャンセルになったツアー)。だから本来は、おれがロード生活の合間に彼女にいくつかのパラグラフをメールする予定だったわけ。ところが何もかも一時停止し、バンド全員が家にこもっていたし、ほんと、こりゃ執筆には完璧なタイミングだな、と。うん、あれはまあ、一種のセラピー的なプロセスだったというか。どうかな? とにかく、もっと過去に起きた、とんでもなくカオスな出来事の数々を自分なりに理解するのに役立った。ほんの少しだけど、それらからなにがしかの理解を引き出せた。

書名を『Apologies(謝罪)』としたのはなぜ? 単純な話、まわりに迷惑をかけたからでしょうか?

LS:んー、おれが思ったのはそれよりももっとこう、このバンド内には常に、非常に悪意に満ちた、有害な対人関係の力学が存在してきたわけ。おかげでその歴史は丸ごと、絶え間ない川の流れのような無意味な謝罪の連続、みたいな。つまり、あれは一種の内輪ジョークというか。ほとんどもう、いちいち相手に謝るのすら面倒くさいというのに近い。どうせまた険悪になるんだし、だったら中身のない謝罪ってことだから(苦笑)。

通訳:なるほど。バンド内のテンションや個人間の葛藤もありつつ、それでも仲直りし再出発するものの、でもまた誰かがおじゃんにする、の繰り返しで続いてきた、と。

LS:まあ、悲惨なのは、この……「仕事」というのか何というのか、そのいちばん魅力的な面というか、本当はたぶんそうするべきじゃないのに、でも続けたくなってしまう、その理由って、パフォーマンスをやることと、そしてそれにまつわる経験すべてのもたらすハイなんだよね。だから、おれたちの間で起きた口論の数々は、みんなの生きてる自然界での当たり前の人間関係だったら、たぶん完全な仲違い・絶交に繫がっていただろう、そういう類いのものだったわけ。普通なら、自然死していたはずだ。でも、おれはこの、いわば痛みを感じにくい生命維持装置めいたものをまとい続けていたし、それって風呂に浸かったまま生きるようなもんで、だから毎晩のようにマジにエクストリームなことをやっていた、と。ところがいったんライヴが終わるや、一気に罪悪感が出てきて、全員がハイな状態のままで「ごめんな」「悪かった」とか、謝り合うわけ。すると急に、「何もかも滅茶苦茶だけど、それでもオーライ!」って信じることができるっていう。それってある意味……勝手な思い込み・妄想なんだろうな。一種、毛布をひっかぶってイヤなものは遮断する、そういう幻想っていうかさ。そうやってひたすら目をつぶって邁進し続け、でも状況はどんどん悪化し、恨みや憤りもどんどん積み重なっていく、と。うん、そんなとこ。

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そもそもこのバンドは常に、なかばダダイスト的な、社会実験みたいなものだったからね。だから、ヒットを出して大きく当てる、みたいなことはハナから意図してなかった。

“Religion For One”には不思議なパワーを感じます。負の感情が横溢していますが、この曲には陶酔感もありますよね。曲ができた経緯を教えてください。

LS:えーと、あの曲を書いたのはいつだったっけ? フーム……ああ、パンデミックが起こる直前に、おれは曲を書き始めて、それとフィンガー・ピッキングのギター奏法も勉強し始めたんだ。フィンガー・ピッキングでギターを弾きたいとずっと思ってきたし、ここでもまたパンデミックが、アコギで指弾きをやるのを習得する格好のタイミングになった、と。で、おれはちょっとした曲を作り始めたし、それらは、そうねえ……「えせレナード・コーエン」調とでもいうか? 単に自分で浸って書いていたし、あとまあ、〝Suzannne〟をギターで弾こうとえんえん練習してたから、というのもある。で、そのプロセスのなかからこの曲が浮上してきた、みたいな。たしかあの頃は、ルーマニア人の悲観主義作家/思想家のE・M・シオラン(Emil Mihai Cioran)をよく読んでたな。

通訳:ほう。

LS:彼の文章はまあ、「宇宙的にブラックな笑い」、みたいな? で、あのときのおれが向かおうとしていたのも、そのノリだったわけ。というわけで、そうだな……(小声でつぶやく)さて、あの曲を書いたのはいつだったかな、はっきり思い出せない……まあともかく、いまからずいぶん前の話だよ。おれが、いわゆる「タートルネックを着た、真面目なフォーク吟遊詩人」になろうとしていた間に書いた曲だ。

通訳:(笑)ボブ・ディランみたいな?

LS:そう、ボブ・ディランか何かみたいな(笑)

FWFのなかは、ロックにおける成功とはいったいなんなのか?という、カート・コベイン的なヒニリスティックな疑問があるのでしょうか? たとえば、大衆受けする曲を書いて、こうして取材を受けて、売れて、儲かるという、それらすべてのポイントってなんなんだ? みたいな。

LS:いや、おれは複数のバンドを掛け持ちしようとしてるし、執筆活動もやる。だから、9時5時の普通の仕事をせずに食いつなぐためには、色んなことをやらなくちゃいけないわけ。だからおれからすれば、自分が標準的な職に就くのを回避できたら、それは漠然とした「成功」と捉えていいだろう、と。もっとも、公正を期すために言うと、今のこの仕事(=バンド〜アーティスト活動)だって、ある意味、普通の仕事と同じくらい嫌いなんだけどね。普通の仕事をやってる方が、たぶんもっと経済的に楽だろうし。ってことは、自分はそこすら勘違いしてたんだろうな、つまり自分なりの「成功」の定義のレベルですら、あまりうまくいかなかった、と。いやだから、以前のおれは、ステージに登場しただけで、バンドがまだ何も始めてないのに観客が拍手喝采する、そうなったら成功だろうと思ってたんだよ。ほら、人気を確立したバンドのライブだと、彼らがステージに上がった途端に、もうお客は拍手するわけじゃない? そうなったら、たぶん自分はそれだけで満足だな、昔はそう思っていたわけ。でも、満足するってことはなかった。それ以外にも、求めることはいろいろあるっていう。ただ、近頃じゃ……スポティファイ等々の権力を持つ側が基本的に、「お前にはなんの価値もない」と決めてしまったわけでね。だからおれたちも、「ロックンロールのサクセスとは何か」の定義/尺度を格下げしなくちゃならなかった、と。その公式見解に足並みをそろえるのは可能だし、そうすればもうちょっとバンドも長続きするかもしれないけど、そもそもこのバンドは常に、なかばダダイスト的な、社会実験みたいなものだったからね。だから、ヒットを出して大きく当てる、みたいなことはハナから意図してなかった、という。まあ、いわゆる「インディ・ロック」と呼ばれる類いの音楽で実際に成功してるもの、それらの実に多くはマジに、もっとも憂鬱にさせられるような戯言だしね。あれを聴くくらいなら、おれはむしろ……いや、実際にテイラー・スウィフトを聴いたことはないけど、たとえば彼女の類いの音楽を聴く方が、あの手のバンドを聴くよりも「侮辱された」って気にならないだろうな、と。つまり、例の「ポスト・ポスト・ポスト・ポスト・パンク」バンドの手合いね。生真面目で、時機に即した正義感あふれる歌詞、たとえば「自分たちはどれだけ移民を愛してるか」だの、ジェンダー問題云々、まあなんであれ、そのときそのときでホットな話題を取りあげる連中。それこそもう、「いま熱い」トピックを次々に繰り出す糸車みたいだし、しかもそのすべてに歯を食いしばるようなひたむきさが備わってて。だから、ユーモアにもセックスにも欠けるし、ただひたすらこう、「乾いてる」という。そういうのには、おれはとにかく、一切興味が持てない。

通訳:カート・コベインについてはどう思いますか? ニルヴァーナは90年代でもっとも成功したロック・バンドのひとつになり、彼はその重圧に苦しみました。で、大ヒット作のパート2ではない『In Utero』を作ったのは一種の「自己サボタージュ」だったと思います。『In Utero』はいまではクラシック・アルバムとされていますが、当時はニルヴァーナのキャリアを棒に振ると言われた問題作でしたし――実際、彼は自らの命を絶ってしまいました。彼のそういう厭世的なところは、理解/共感できたりしますか?

LS:そうだな、今日の……おれたちが生きてる時代の音楽の歴史って、実際面での再編成に影響されてるんじゃないかな。つまり、音楽をやってもちっとも金にならない、と。その点は本当に、とにかく何もかもの力学を丸ごと変えたと思う。不可能だ、と。だからもう、そうしたことをやる権限はないわけ。おれが見渡す限り、そういうタイプのスター、あるいはならず者的な存在は見当たらないし、うん、少なくともロックンロールの世界では、そうした人物は過去の遺物だね。まあ、もしかしたらカニエが、ラップ界でその旗を振ってるのかもしれないけど(苦笑)?

通訳:(笑)たしかに。

LS:(笑)「マジにファッキン狂った男」をやってて、危ない奴だ、と手かせ足かせで拘束されるっていう。一方でロックンロールはいまや、ブルジョワ階級の道楽めいたものになってる。こけおどしの儀式/祭典みたいなもんだし、これといった文化的な生命力は、そこにはもはやない。とにかく都会暮らしの中流階級のガキが繰り広げる仮装大会だし、要するに、そこには鋭い切れ味がすっかり欠けている、と。だから、いま言われたような「成功を拒絶する」型の声明を打ち出すのは、もう、どんどんどんどん、むずかしくなる一方なわけ。ってのも、メンバー全員が完全に頭がおかしくなり、あっという間に爆発してしまうことなしにバンド活動を続け、作品を出しツアーに出続けるのは、もう不可能だから。いまバンドをやってる連中は、そこにこもってODできるような私邸すら持ってない。三回離婚しても慰謝料を払えるほど稼いでもいないし、個人的なメルトダウンを起こしたら逃げ込める私有牧場も持ってない。コカインは高過ぎて買えないから、それより安いスピードに切り替えるしかないし、ヘロインの代わりにフェンタニル(※合成オピオイドの鎮痛剤)を使う……みたいな感じで、とにかくあらゆる基準において、何もかもが格下げされてきた。もちろんほかのすべて、生活基準etcもグレードが落ちてるけど、音楽におけるそれは、とりわけひどい。音楽がいかにシェアされるか、という意味でね。それこそもう、基準なんて存在しない、というのに近い。少し前に――これまた一種の「ロックンロールの自殺者」と呼んでいいだろうけど――デイヴィッド・バーマンに関する記事を読んで。

通訳:ああ、シルヴァー・ジュウズの(※1989年結成のUSバンド。2005年にラスト・アルバムを発表し09年に解散、フロントパーソンのバーマンは2019年に新プロジェクトをデビューさせたものの程なくして自殺)。

LS:うん。デイヴ・バーマンについて読んでたんだ、彼が自ら命を絶つ少し前にリリースした、最期のアルバムがとても好きだから。

通訳:『Purple Mountains』ですね。

LS:そう。あれはほんと……今世紀のもっとも美しいレコードのひとつ、というか。それくらい、本当にあのアルバムが好きで。でまあ、それで彼に関する記事を読んでたんだけど、そこに「彼はナッシュヴィルに家を買った」みたいな記述があって。90年代のレコード売上げ等々で彼には家を買えた、と。それを読みながら、おれは……いやだから、シルヴァー・ジュウズを聴くと、そのいくつかはとんでもない内容で(苦笑)。

通訳:(笑)

LS:それこそ、もっとも商業性のないオールドスクールなフォーク・ロックみたいなノリだし、歌詞にしてもへんてこで脱線気味。どう考えても「ヒット曲満載」ってもんじゃないし、支離滅裂で。だから「えぇっ、デイヴ・バーマンはあれでも家を買えたんだ!」と驚いた。「一体どうやって?」と思った。でも、ああそうか、90年代だったからか、と納得したっていう。

通訳:時代もありますし、あの頃のナッシュヴィルでも、郊外ならまだなんとかなったんじゃないですか?

LS:ん〜〜、たしかに。それはそうだな。ナッシュヴィルの不動産価格をきちんと調べた上でじゃないと、これに関して早合点はできないかもしれない。

通訳:(笑)。いまは、たとえばナッシュヴィルで腕を磨いたテイラー・スウィフトの成功で再び新世代のカントリー・シーンが盛り上がり、状況も違うんでしょうが。

LS:だけど、カントリーは常にかなり人気があるジャンルだと思うけど? それって、アメリカ国外のおれたちみたいな連中には認識できない、そういうもののひとつだと思う。ただ実際には、カントリーはアメリカでいちばん人気のある音楽と言っていいくらいポピュラーで。ヘタしたらヒップホップよりビッグかもしれないし、産業としてもめちゃめちゃ巨大だろうし。で、その再重要地点がナッシュヴィル、みたいな。だから、いまはもちろん90年代ですら、家の価格はかなり高かったんじゃないかと思うな……。ちょっと話が逸れたけども。

メンバー全員が完全に頭がおかしくなり、あっという間に爆発してしまうことなしにバンド活動を続け、作品を出しツアーに出続けるのは、もう不可能だから。いまバンドをやってる連中は三回離婚しても慰謝料を払えるほど稼いでもいないし……みたいな感じで。

たしかに。質問に戻りますが、先ほど「音楽にヴァイタリティがなくなってしまった」とおっしゃっていましたが、文化全般についてはいかがですか? 60年代末のカウンターカルチャー、パンク〜レイヴ・カルチャーの時代に比べて、文化の力が弱まったという意見がありますよね。あなたもそう思いますか? もしそういう自覚があるようだったら、その苛立ちというのはFWFに通底していると言えるのでしょうか?

LS:まあ、基本的にインターネットがそうした物事のすべて、君がいま挙げたようなサブカルチャーetcのポテンシャルを一掃してしまったんだと思う。それらはみんな、「ポスト・インターネット時代」においては認知不可能なものになってしまった、と。人びとの頭のなかに入り込んでしまう、この、奇妙な均質化と関連してね。つまり、インターネットの本質に不可欠なのは、可能な限り誰もがほかのみんなと似たり寄ったりになる、ということだし、そうすればマシンもより円滑に機能するわけで。思うに、かつて特定のファッションなり、音楽やサウンドなり、とある地域なりの周辺に集まって融合したエネルギーというのはすべて……そのエネルギーはきっと、何かに対する反抗だったり、あるいは単に、抑圧された表現の奔出だったんだろうけども――それらは全部、この「オンライン空間」みたいなものにパワーを集中し直したんじゃないかと。というわけで、意地の悪いケチな争い合いの数々に、色んなヴァイラル/TikTokのバズの堆積物の山だの……要するに君は、エンドレスに連続する、減少していく一方の無数の「無」を前にしてる、みたいな。フィジカルな世界で有機的に成長していくことのできる、真の意味での焦点/中心点ではなくてね。何もかもからそれが剥ぎ取られてしまい、そうした過去のサブカルetcに対するノスタルジアがそれに取って代わった感じ。おかげで、安っぽいイミテーションだのパロディが絶え間なく出て来るし、いまやもう「パロディのパロディの、そのまたパロディ」みたいな地点にまで達してる。でも、たとえばUKを例にとってみても――もちろん、音楽はいまだに英国有数の大産業だし、もっとも稼ぐ輸出産業のひとつなんだよ。ただ、そんな国なのに、全国各地で小規模のライヴ・ハウスやクラブ会場が消えつつあって、その存在は風前の灯。代わりに、新たなアリーナ会場が作られてる。

通訳:ああ、そうですよね。

LS:アリーナ公演のチケット代が天井知らずで上がる一方で、200〜300人規模のヴェニューは店じまいしてるわけ。だからなんというか、ギー・ドゥボール的な「スペクタクルの社会」になってる、というか? そこにはプラスチックでにせの「神」的存在が次々担ぎ出され、古風なロックンローラー、それこそテイラー・スウィフトでもいいし、ポール・マッカートニーでもいいけど、その手の重々しい「巨人たち」が登場する、と。ただ、そんな見世物はどう考えてもこっちも即応できる反応的なものじゃないし、観客が参加することも、何か加えることもできない。そこでは何もかも司令部からのお達しに従っているし、すべては大企業型の、こちらを疎外するような中央集権的なノリ。でも、そこが変化するとは、おれは思わないな。というのも、60年代等々の、文化がまだ重要だった時代から遠ざかれば遠ざかるほど、それに対するノスタルジアは強まる一方だろうから。人びとは20世紀半ば以降の半世紀を振り返って、あの頃は文化的に最高な時期だったと思うんだろうし、とくに、ポップやロックンロールといったタイプの音楽に関してはそうだろうね。ただ、あれらは本当にその時代特有の、かつ、当時の社会経済およびテクノロジー状況に固有の音楽であって。つまり、あの頃にはまだ第二次大戦後復興期の若々しい元気さがあったし、ある種のナイーヴさもあったわけで。新たに生まれた各種テクノロジーに対する、子供のあどけなさに近いものもあったし、そうやってラジオやロックンロールのパワーをコントロールしていった若者たちに、まだ企業/体制側も追いついていなかった、と。うん、いまの時代に、それはまったく不可能な話だと思う。

新作には、ダンサブルな曲がいくつかあります。“What’s That You Say”や“Bullet Of Dignity”のことですが、こうしたエレクトロ・ディスコな曲をやった経緯について教えてください。つまり、あなたはダンス・ミュージックにどんな可能性を見ているのか。

LS:いや、っていうか、おれはDecius(ディーシアス)って名前のダンス・ミュージックのプロジェクトもやってるんだ、パラノイド・ロンドンの奴らと一緒にね。そこではクラシックなハウス〜テクノ系の音楽をやってるよ。でもまあ、ダンス・ミュージックへの傾倒は以前からあったし、何年もの間に自然に、徐々にそっちに向かっていたんだと思う。だから、とくに深く考えてのことじゃないね。たまたまそういう流れだった、と。おれたち、ドナ・サマーのファンだし。

通訳:(笑)彼女は最高です! とにかく『Forgiveness Is Yours』は時代のムードに合っている作品でとても気に入っています。どうも、ありがとうございました。

LS:ありがとう。バイバイ!

Li Yilei - ele-king

 ロンドンを拠点に活動を展開する中国出身のサウンド・アーティスト/コンポーザーのリー・イーレイの新作アルバム『NONAGE / 垂髫』は、まるで夢と現実の境界線を浮遊するような美しいエレクトロニカ・アルバムだった。リリースは日本のアンビエント・アーティスト冥丁の名作『Komachi』でも知られる〈Métron Records〉から。リー・イーレイは同レーベルから2021年にアルバム『之 / OF』も発表している。

 リー・イーレイの最初のアルバムは、2020年にセルフ・レーベル〈LTR Records〉からリリースされたノイズを構築的に配置したような電子音響作品『Unabled Form』だ。翌年2021年には〈Métron Records〉から名作『之 / OF』を発表した。2022年には再び〈LTR Records〉からよりノイジーなサウンドを展開するエクスペリメンタルな『Secondary Self』をリリースする。いわばダーク/ノイジー/エクスペリメンタルな電子音楽作品を〈LTR Records〉から、ドリーミー/ノスタルジックなコラージュ・エレクトロニカ・アンビエントを〈Métron Records〉からリリースすることで自身のアルターエゴを表現してきたとすべきだろうか。
 本作『NONAGE / 垂髫』は、〈Métron Records〉からのアルバムなので、その音からは濃厚なノスタルジアを感じる。じじつ本作は幼少期の記憶がテーマとなっているらしい。サウンドは内省的ではあるが、ただ暗いだけではなく、まるで夢のなかに散りばめられている記憶の欠片を積み重ねていったような幻想的なサウンドでもある。記憶の欠如が、さらなるノスタルジアを誘発し生成するような感覚とでもいうべきか。記憶の消失がもたらすエモーショナルな感情が微かに、そして確かに息づいていた。音のタイプは異なるもののクレア・ラウジーの音楽(新作『Sentiment』は素晴らしい出来だった!)と同じく「エモ・アンビエント」と言いたくもなる。記憶、消失、ノスタルジアの生成、感情の静かな、しかし確かにエモーショナルな昂まり。
 かといって無駄に「エモ」に陥りすぎないのも、リー・イーレイのサウンドの特徴といえる。イーレイの音楽は冷たくはないが静謐なのである。前作『之 / OF』と同様に、本作『NONAGE / 垂髫』もまた静けさのなかにドリーミーな音が舞い踊るように鳴り響き、まるで時間と空間を浮遊させるような音楽を展開している。
 じっさいこの『NONAGE / 垂髫』には、おもちゃのピアノや手まわしオルゴール、鳥の口笛や壊れたアコーディオン、中国の昔のテレビ番組からの断片など、多様なサウンドのサンプルが用いられている。サウンド・コラージュを基調としたミニマルで室内楽的なエレクトロニカとしても洗練された出来ばえなのだ。とはいえいかにも「コラージュしました」というような意図的な不自然さは微塵もなく、とても自然に、もしくは夢のなかを彷徨するような感覚で、さまざまなサウンドが紡がれている。

 アルバム『NONAGE / 垂髫』は、ピアノを弾くような、乾いた透明な響きの一音から始まる1曲目 “Go, Little Book” で幕を開ける。やがて中国語のナレーションがコラージュされていくだろう。素朴でありながら、洗練されてもいる「音の流れ」が麗しい。続く2曲目 “O O O O” はミニマルでドリーミーな電子音が舞い踊るように連鎖する2分ほどの短い曲。3曲目 “Pond, Grief and Glee” は前2曲より落ち着いたトーンで展開するトラックだ。次第に浮かび上がってくる旋律が心身に浸透するように展開する。
 4曲目 “Tooth, Wallflower and Salt” では、1曲目のムードを反復するように浮遊するような音楽世界を展開する。5曲目 “++++” はグリッチ的な音の跳ねと鳥の鳴き声やノイズのコラージュが見事な曲だ。この2曲などは、かつて竹村延和が主宰したレーベル〈Childisc〉からの諸作品を連想してしまったほど。
 私がアルバム中、いちばん惹かれた曲は、夢のなかの光の瞬きのように音が生成し変化する6曲目 “Sand, Fable and Tiger Balm” と、アジア的な音がサウンドのなかに溶け合っていく2分ほどのインタールード的な7曲目 “Yip, Yip, Yip” である。この2曲がアルバムの中心に置かれていることも重要に思える。
 続く8曲目 “Conch, Soap and Whistle” では音が舞い踊るようなムードから次第に変化し、音と音が溶けあっていくようなサウンドを展開する。まるで夢の底に落ちていくような感覚とでもいうべきか。9曲目 “Nomad, Shelter and Creed” は再び音のうごめきが活性化する。これまでのトラックにあった音の舞と静謐なアンビエンスが融合する楽曲で、本作を代表する曲であろう。そして以降3曲は記憶の深層へと潜るように音が展開する。
 10曲目 “Sandalwood, Ivory and Summit” はアジア的な音楽のフラグメンツを用いた摩訶不思議なサウンドスケープを堪能することができた。11曲目 “Pillow, Mantra and Trance” は、どこか性急なミニマル・ミュージックを展開する。70年代の電子音楽やフィリップ・グラス的なミニマル・ミュージックとでもいうべきか。本作では特異なタイプの楽曲だが(やや緊張感のあるムードだ)、アルバムのラスト直前に置かれることで見事なアクセントになっていた。そしてアルバム最終曲にして12曲目 “Thé Noir, Rêvasser, Retrouvailles” では穏やかなムードに戻る。しかし反復するアルペジオに微かな緊張感があり、夢の世界から現実の世界へ帰還を促すような曲に思えてならない。

 本作に収録されている楽曲数は12曲。どの曲もリー・イーレイのサウンド・コンポーザーとしての手腕が発揮されており、その仕上がりは見事の一言である。そう、本作には、連続と断続、フラグメンツの集積、いわば全体の構築よりも断片の連鎖による構成、西洋的な構造/時間とは異なる東アジア的ともいえる感覚が横溢しているのだ。「時間」に拘った坂本龍一がもしも存命ならば、本作『NONAGE / 垂髫』を高く評価したのではないかと勝手に夢想してしまった。
 ともあれ未聴の方は「夢の中の夢」(ふとリー・イーレイによるコーネリアスのリミックスなども聴いてみたいと勝手に夢想してしまった!)とでもいうような本作のサウンドスケープを堪能してほしい。特に室内楽的なミニマルな電子音楽がお好きな方、幻想的なアンビエント作品がお好きな方などは、とても気に入るのではないかと思う。見事な工芸品のように、傷ひとつなく優雅に、かつ研ぎ澄まされたエレクトロニカ/電子音楽の逸品がここにある。

4月のジャズ - ele-king

 先日、サックス/フルート奏者のチップ・ウィッカムのインタヴューをおこなったが、そこでも話題に上ったのがハープ奏者のアマンダ・ウィッティングだ。チップ・ウィッカムのアルバム『Blue To Red』(2020年)、『Cloud 10』(2022年)に参加しているが、彼と出会ったのはマシュー・ハルソール率いるゴンドワナ・オーケストラのツアーで、そこから親交がはじまっている。マシュー・ハルソールゴンドワナ・オーケストラの作品においてはハープがとても重要な位置づけにあり、必ずと言っていいほどハープ奏者がフィーチャーされてきた。ハープはだいたい女性奏者が演奏することが多く、ゴンドワナ・オーケストラにおいてもこれまでレイチェッル・グラッドウィン、マディ・ロバーツ、アリス・ロバーツが務めてきており、現在それを担うのがアマンダ・ウィッティングである。ほかにもミスター・スクラフジャザノヴァグレッグ・フォート、ヒーリオセントリックス、レベッカ・ヴァスマン、DJヨーダなどと共演してきた彼女は、自主製作で3枚ほどのアルバムをリリースした後、2020年に〈ジャズマン〉から『Little Sunflower』を発表。フレディ・ハバードの名曲をカヴァーしたこのアルバムにおいて一躍注目のハープ奏者となる。そうしてマシュー・ハルソールやチップ・ウィッカムなどとも交流を深め、『After Dark』(2021年)、『Lost In Abstraction』(2022年)にはチップも参加している。


Amanda Whiting
The Liminality Of Her

First Word

 最初はクラシック・ハープを学び、その後ジャズの演奏をはじめるようになったアマンダ・ウィッティングだが、チップ・ウィッカムのインタヴューでは彼女について、1960~1970年代に活躍したジャズ・ハープ奏者の草分けのひとりであるドロシー・アシュビーに近いタイプの演奏家で、メロディアスでソウルフルな演奏が特徴にあると言っていた。そうしたところもあってか、ジャズにおいてもクラブ・ジャズ寄りのアーティストや、エレクトロニックなクラブ系アーティストにも起用されるのだろう。2023年には〈ファースト・ワード〉に移籍して、ヒップホップ/ソウル系のプロデューサー・チームであるダークハウス・ファミリーの片割れであるドン・レイジャーとの共演作『Beyond The Midnight Sun』をリリースしている。ジャズだけでなく幅広いタイプの音楽にアマンダのハープは見事にフィットすることを示したアルバムだった。

 そして、それから1年ぶりの新作『The Liminality Of Her』がリリースとなった。編成はハープ、ベース、ドラムス、パーカッションで、今回もゲストでチップ・ウィッカムのほか、女流DJ/シンガー/プロデューサーのピーチが参加する。そのピーチをフィーチャーした “Intertwined” と “Rite Of Passage” は美しいメロディーと繊細なムードに包まれ、モーダル・ジャズとソウル・ミュージックが結びついた最高の作品と言える。“Liminal” はアフロ・キューバンとジャズ・ファンクが融合したようなリズムで、ドロシー・アシュビーの〈カデット〉時代の名作『Afro-Harping』(1968年)、『Dorothy’s Harp』(1969年)、『The Rubáiyát Of Dorothy Ashby』(1970年)を彷彿とさせる。“Nomad” のハープはまるで琴のような音色で、「遊牧民」というタイトルどおりのエキゾティックなムードを演出する。もっともダンス・ジャズ的な作品は “No Turning Back” で、アフロ・キューバン調の転がるパーカッションに乗った軽快な演奏を披露する。クラブ・ミュージック系アーティストからも彼女が支持される理由がわかる演奏だ。


Shabaka
Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace

Impulse! / ユニバーサル

 シャバカ・ハッチングスは2022年にシャバカ名義でのソロ・アルバム『Afrikan Culture』をリリースしていて、今回リリースした『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』はその第2弾となるもの。『Afrikan Culture』はごく僅かのゲスト・ミュージシャンの手は借りるものの、基本的にはシャバカひとりの演奏のみで完結していた。従って非常にシンプルな楽器編成で、サウンドも原初的なものとなる。ほかのプロジェクトではサックスを演奏することが多いシャバカだが、このプロジェクトではフルート、クラリネット、尺八などで、それ以外にヴォイスも交えている。シャバカはいろいろなプロジェクトをおこなうなかでも、どこかに自身のルーツであるアフリカの音楽を感じさせる作品づくりをおこなってきたが、このソロ・プロジェクトはもっともアフリカ色が色濃く表れたもので、それも現代的なジャズへと行きつく遥か以前の民謡というか、原型的な音をそのまま抽出したようなものだった。

 『Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace』は参加ミュージシャンが増え、カルロス・ニーニョブランディ・ヤンガー、ミゲル・アットウッド・ファーガソン、エスペランザ・スポールディング、ジェイソン・モランらアメリカのミュージシャンも加わっている。また、フローティング・ポインツアンドレ・3000などクラブ・ミュージックの分野のひとたちから、アンビエント/ニュー・ミュージック界の巨匠であるララージ、エスカ、モーゼス・サムニーリアン・ラ・ハヴァスなどシンガー・ソングライター、ソウル・ウィリアムス、エルシッドなど詩人やラッパーと幅広い人脈が集まる。こうしたアルバムはともすると散漫な印象になってしまう危険性があるが、『Afrikan Culture』にあったような原初的な音楽性は損なわれていない。そして、基本的に音数や楽器はミニマルな構成となっていて、“End Of Innocence” や “As The Planets And The Stars Collapse” など静穏とした世界を展開する。ゲスト・ミュージシャンは多いが、個人個人の色は極力出さないようにしていて、あくまでシャバカの絵のなかの背景の一部となっているようだ。ハンドクラップのようなリズムの “Body To Inhabit” はエレクトロニクスを交えた作品ではあるものの、極めてプリミティヴな音像を持つもので、かつて1980年代にジョン・ハッセルブライアン・イーノとやっていたアフリカ音楽とアンビエントの融合を思わせる。


Glass Beams
Mahal

Ninja Tune

グラス・ビームスはオーストラリアのメルボルン出身のギター、ベース、ドラムスのトリオで、覆面をしてパフォーマンスをするというミステリアスさが話題を集める。東洋音楽と西洋音楽を融合したエキゾティスズム溢れる音楽性を持つが、リーダーのラジャン・シルヴァの父親がインド出身で、幼少期からラヴィ・シャンカール、アナンダ・シャンカール、R.D.バーマン、カルヤンジ・アナンジなどのインドの音楽に親しんできたという背景がある。インドや中近東、東南アジア、北アフリカなどの音楽と、ジャズ・ファンクやサイケ・ロックなどが結びついたのがグラス・ビームスなのである。クルアンビンあたりと共通するところもあるが、より民族音楽の色合いが強いバンドと言えるだろう。

 2021年にオーストラリアで「Mirage」というEPをリリースした後、2024年に〈ニンジャ・チューン〉と契約してミニ・アルバムの『Mahal』をリリースした。“Mahal” はインドや中東で宮殿を指す言葉で、その言葉どおりエキゾティックな旋律を持つジャズ・ファンクとなっている。基本的にはスリーピース・バンドであるが、“Orb” では尺八やフルートのような音色だったり、おそらくシンセで作ったミステリアスなSEを交えてサイケな空間を作り出している。“Black Sand” におけるギターもシタールを模したような音色で耳に新鮮だ。


Kenny Garrett & Svoy
Who Killed AI?

Mack Avenue

 デューク・エリントン、アート・ブレイキー、マイルス・デイヴィスらジャズ界の巨星たちと共演してきて、一方でクリス・デイヴジャマイア・ウィリアムス、シェドリック・ミッチェルら現代ジャズの精鋭たちを自身のバンドから輩出してきたサックス奏者のケニー・ギャレット。自身のリーダー・アルバムでは『Trilogy』(1995年)や『Pursuance: The Music Of John Coltrane』(1996年)のようなモードを追求した作品から、ファンクやソウル色の強い『Happy People』(2002年)、中国やアジアをモチーフとした壮大な『Beyond The Wall』(2006年)など多くの傑作を残している。ソロ・アーティストとして頭角を現したのは1990年代半ば頃からで、それ以降は現代で強い影響力を持つサックス奏者のひとりであり続けている。ロバート・グラスパーも修業時代に彼と共演し、いろいろ影響を受けたと述べていたことがある。

 近年は『Sounds From The Ancestors』(2021年)などアフリカ回帰色の強い作品を発表していて、そんなケニー・ギャレットの最新作はスヴォイことミハイル・タラソフとの共演作。ロシア出身のスヴォイはアメリカのバークリー音楽院に留学し、ジャズ・ピアノを学ぶと同時にエレクトロニック・ミュージックも手掛けるようになった。これまでに『Automatons』(2009年)のようなダンス~エレクトロニカ的なアルバムをリリースする一方、ミシェル・ンデゲオチェロ、レニー・ホワイトなどジャズ・ミュージシャンとも度々共演している。ケニー・ギャレットのアルバムにも『Seeds From The Underground』(2012年)、『Pushing The World Away』(2013年)でそれぞれヴォーカル、ストリングス・アレンジを担当し、今回はアルバム丸ごとでコラボレーションを行っている。ケニー・ギャレットもかつてQ・ティップの『Kamaal The Abstract』(2001年録音)に参加するなど、ヒップホップやクラブ・ミュージック系アーティストとの共演に対して寛容なスタンスを持つ人で、スヴォイとの共演についてもチャレンジングな気持ちで臨んでいる。『Who Killed AI?』というタイトルが示すように、AI時代の現代を表現したもので、スヴォイの作るエレクトロニックなトラックをバックにケニーのサックスが即興演奏を繰り広げる。マイルス・デイヴィスがAIを通じてコーチェラで演奏したらという “Miles Running Down AI” や、ケニーのソプラノ・サックスがスヴォイのシンセを通じてエレキ・ギターのような音色へ変調する “Divergence Tu-dah” など、これまでのキャリアからまた大きく飛躍する斬新なアイデアに満ちた作品集となった。

Gap Mangione - ele-king

The Lyman Woodard Organization - ele-king

Loraine James / Whatever The Weather - ele-king

 歓喜とはこのこと。2022年のすばらしいライヴをおぼえているだろうか。いまもっとも重要なエレクトロニック・ミュージシャンのひとり、ロレイン・ジェイムズの再来日が決定している。嬉しいことに、今回もロレイン・ジェイムズ名義とワットエヴァー・ザ・ウェザー名義の2公演。しかも、ジェイムズが敬愛しているという aus蓮沼執太がそれぞれの公演をサポートする。いやこれ組み合わせもナイスでしょう。
 ワットエヴァー・ザ・ウェザー&ausは5/15に、ロレイン・ジェイムズ&蓮沼執太は5/17に、いずれもCIRCUS Tokyoに登場。なお、ジェイムズはその後STAR FESTIVALにも両名義で出演します。ゴールデンウィーク後はしっかり予定を空けておくべし。

LORAINE JAMES // WHATEVER THE WEATHER JAPAN TOUR 2024
2022年の初来日公演が各所で絶賛され、2023年にLoraine James名義でHyperdubからリリースした最新作『Gentle Confrontation』が様々なメディアの年間ベスト・アルバムにも名を連らね、現代のエレクトロニック・ミュージック・シーンにおける再注目の存在であるLoraine James // Whatever The Weatherの再来日が決定致しました!
Loraine JamesとWhatever The Weatherでそれぞれ東京公演を行い、京都のSTAR FESTIVALにも両名義で出演致します。
また、東京公演のサポート・アクトにはLoraineが敬愛するaus(5/15公演)と蓮沼執太(5/17公演)が出演致します。
ausはハイブリッドなDJ+ライブセットを、蓮沼執太はソロセットを披露致します。

イベント・ページ:
https://www.artuniongroup.co.jp/plancha/top/news/loraine-james-2024/

Loraine James // Whatever The Weather
Japan Tour 2024

Whatever The Weather 東京公演
Ghostly International 25th Anniversary in Japan vol.1

日程:5/15(水)
会場:CIRCUS Tokyo
時間:OPEN 19:00 / START 20:00
料金:ADV ¥4,500 / DOOR ¥5,000 *別途1ドリンク代金700円必要

出演:
Whatever The Weather
aus

チケット:
イープラス https://circus.zaiko.io/e/whatever
ZAIKO https://eplus.jp/sf/detail/4082320001-P0030001

Loraine James 東京公演
日程:5/17(金)
会場:CIRCUS Tokyo
時間:OPEN 18:30 START 19:30
料金:ADV ¥4,500 / DOOR ¥5,000 *別途1ドリンク代金700円必要

出演:
Loraine James
Shuta Hasunuma

チケット:
イープラス https://circus.zaiko.io/e/lorain
ZAIKO https://eplus.jp/sf/detail/4082290001-P0030001

STAR FESTIVAL
日程:2024年5月18日(土)〜19日(日)
会場:府民の森ひよし 京都府南丹市日吉町天若上ノ所25 Google Map forest-hiyoshi.jp
時間:2024年5月18日(土)10:00開場 〜 19日(日)17:00閉場
Loraine James, Whatever The Weatherは両名義とも5/18に出演

料金:
前売入場券(ADV TICKET) ¥13,000
グループ割引入場券(4枚):¥46,000(1枚11,500円)
駐車券(PARKING TICKET) ¥3,000(オートキャンプA ¥20,000 / オートキャンプB ¥16,000 / オートキャンプC ¥6,000)

出演:
Craig Richards
DJ Marky
DJ Masda
Fumiya Tanaka
Loraine James
Whatever The Weather
Zip
and more…

チケット:
イープラス https://eplus.jp/starfestival2024/
ZAIKO https://thestarfestival.zaiko.io/e/2024MAY
楽天チケット http://r-t.jp/tsf

オフィシャルサイト:https://thestarfestival.com/

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主催・企画制作:CIRCUS / PLANCHA
協力:BEATINK


Photo by Ivor Alice

Loraine James // Whatever The Weather:

ロレイン・ジェイムス(Loraine James)はノース・ロンドン出身のエレクトロニッック・ミュージック・プロデューサー。エンフィールドの高層住宅アルマ・エステートで生まれ育ち、母親がヘヴィ・メタルからカリプソまで、あらゆる音楽に夢中になっていたおかげで、エレクトロニカ、UKドリル、ジャズなど幼少期から様々な音楽に触れることとなる。10代でピアノを習い、エモ、ポップ、マス・ロックのライヴに頻繁に通い(彼女は日本のマスロックの大ファンである)、その後MIDIキーボードとラップトップで電子音楽制作を独学で学び始める。自宅のささやかなスタジオで、ロレインは幅広い興味をパーソナルなサウンドに注ぎ込み、やがてそのスタイルは独自なものへと進化していった。
スクエアプッシャーやテレフォン・テル・アヴィヴといった様々なアーティストやバンドに影響を受けながら、エレクトロニカ、マスロック、ジャズをスムースにブレンドし、アンビエントな歪んだビートからヴォーカル・サンプル主導のテクノまで、独自のサウンドを作り上げた。
彼女は2017年にデビュー・アルバム『Detail』をリリースし、DJ/プロデューサーであるobject blueの耳に留まった。彼女はロレインの才能を高く評価し、自身のRinse FMの番組にゲストとして招き、Hyperdubのオーナーであるスティーヴ・グッドマン(別名:Kode 9)にリプライ・ツイートをして、Hyperdubと契約するように促した。それが功を奏し、Hyperdubは2019年に彼女独特のIDMにアヴァンギャルドな美学と感性に自由なアプローチを加えたアルバム『For You and I』をリリースし、各所で絶賛されブレイク作となった。その後『Nothing EP』、リミックス、コラボレーションをコンスタントにリリースし、2021年に同様に誠実で多彩なフルレングス『Reflection』を発表。さらなる評価とリスナーを獲得した。2022年には1990年に惜しくも他界したものの近年再評価が著しい才人、Julius Eastmanの楽曲を独自の感性で再解釈・再創造した『Building Something Beautiful For Me』をPhantom Limbからリリースし、初来日ツアーも行った。そして2023年には自身にとっての新しい章を開く作品『Gentle Confrontation』をHyperdubから発表。これまで以上に多くのゲストを起用しエレクトロニック・ミュージックの新たな地平を開く、彼女にとって現時点での最高傑作として様々なメディアの年間ベスト・アルバムにも名を連ねた。

そしてロレインは本名名義での活動と並行して、別名義プロジェクトWhatever The Weatherを2022年に始動した。パンデミック以降の激動のこの2年間をアートを通じて駆け抜けてきた彼女はNTSラジオでマンスリーのショーを始め、Bandcampでいくつかのプロジェクトを共有し、前述のHyperdubから『Nothing EP』と『Reflection』の2作のリリースした。そして同時に自身が10代の頃に持っていた未知の創造的な領域へと回帰し、この別名義プロジェクトの発足へと至る。Whatever The Weather名義ではクラブ・ミュージックとは対照的に、キーボードの即興演奏とヴォーカルの実験が行われ、パーカッシヴな構造を捨ててアトモスフィアと音色の形成が優先されている。
そしてデビュー作となるセイム・タイトル・アルバム『Whatever The Weather』が自身が長年ファンだったというGhoslty Internationalから2022年4月にリリースされた。ロレインは本アルバムのマスタリングを依頼したテレフォン・テル・アヴィヴをはじめ、HTRK(メンバーのJonnine StandishはロレインのEPに参加)、Lusine(ロレインがリミックスを手がけた)など、アンビエントと親和性の高いGhostly Internationalのアーティスト達のファンである。
「天気がどうであれ」というタイトルにもちなんで、曲名は全て温度数で示されている。周期的、季節的、そして予測不可能に展開されるアンビエント~IDMを横断するサウンドで、20年代エレクトロニカの傑作(ele-king booksの『AMBIENT definitive 増補改訂版』にも掲載)として幅広いリスナーから支持を得ている。


aus:

東京出身のミュージシャン。10代の頃から実験映像作品の音楽を手がける。長らく自身の音楽活動は休止していたが、昨年1月Seb Wildblood主宰All My Thoughtsより久々となるシングル”Until Then”のリリースを皮切りに、4月にはイギリスの老舗レーベルLo Recordingsより15年ぶりのニューアルバム”Everis”をリリース。同作のリミックス・アルバムにはJohn Beltran、Li Yileiらが参加した。Craig Armstrong、Seahawksほかリミックス・ワークも多数。当公演はDJ+ライブセットでの出演となる。


Shuta Hasunuma (蓮沼執太):

1983年、東京都生まれ。蓮沼執太フィルを組織して、国内外での音楽公演をはじめ、多数の音楽制作を行う。また「作曲」という手法を応用し物質的な表現を用いて、彫刻、映像、インスタレーション、パフォーマンスなどを制作する。主な個展に「Compositions」(Pioneer Works 、ニューヨーク/ 2018)、「 ~ ing」(資生堂ギャラリー、東京 / 2018)などがある。また、近年のプロジェクトやグループ展に「Someone’s public and private / Something’s public and private」(Tompkins Square Park 、ニューヨーク/ 2019)、「FACES」(SCAI PIRAMIDE、東京 / 2021)など。最新アルバムに『unpeople』(2023)。第69回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。

web: https://linktr.ee/shutahasunuma
Instagram: https://www.instagram.com/shuta_hasunuma/

KAPSOUL - ele-king

 LAを拠点に活動する日本人DJ/ビートメイカー、KAPSOULのファースト・アルバム『ASCENT』がリリースされる。すでに20年以上のキャリアを誇る彼は、これまで日米のさまざまなアーティストにトラックを提供してきており、たとえばそのなかにはデトロイトのハイ・テックのメンバー、キング・マイロが含まれていたりする。2022年、仙人掌をフィーチャーした “GaryPayton” で彼のことを知った方も少なくないだろう。
 今回の『ASCENT』にはその仙人掌とB.D.はじめ、LAの人気ラッパーのブルー、ダドリー・パーキンス(Declaime)、ジョージア・アン・マルドロウらが参加。チェックしておきたい1枚です。

LA在住の日本人DJ/ビートメイカー、KAPSOULのファースト・アルバム『ASCENT』、本日リリース! リリースに合わせ、アルバムからドープなインスト曲"90014"のMVが公開となり、仙人掌とBudaMunkのコメントも公開!

 20年以上のキャリアを誇り、仙人掌とのコラボによる"GaryPayton"のリリースで日本でもコアなヘッズの間ではその名が知られているLA在住の日本人DJ/ビートメイカー、KAPSOUL(キャップソウル)のファースト・アルバム『ASCENT』が本日ついにリリース! Westside Gunn作品の常連でもあるNYのラッパー、AARashidが参加した"LOAFER"、日本からB.D.と仙人掌が参加した"MEISO"、自らが率いるグループ、Black HairImperialが参加した"Y2KDNA"と3曲の先行配信曲も各所で話題となっており、他にもLAアンダーグラウンドで高い人気を誇るBlu、Stones Throwからのリリースでも知られるDudley Perkins(Declaime) とGeorgia Anne Muldrowらがアルバムには参加している。
 その『ASCENT』のリリースに合わせてジャズなテイストのドープなインスト曲"90014"のミュージック・ビデオが新たに公開! また、アルバムに参加している仙人掌とLA時代から進行の深いBudaMunkのコメントも公開!

*KAPSOUL "90014" (Official Video)
https://youtu.be/vuMrF7lei9Y

「ゲトー・バップと呼びたい最新のUS/LAのフィーリングが迫るドープなジャズヒップホップアルバム」仙人掌
「LAアンダーグラウンド界を長く支えてきた重要人物。自分がMPCでビートを作るきっかけになったプロデューサー」BudaMunk

[アルバム情報]
アーティスト:KAPSOUL
タイトル:ASCENT
レーベル:P-VINE, Inc.
仕様: デジタル | CD | LP
発売日: デジタル | CD / 2024年4月3日(水) LP / 2024年7月17日(水)
品番: CD / PCD-25386 LP / PLP-7415
定価: CD / 2,750円(税抜2,500円)LP / 4,378円(税抜3,980円)
*Stream/Download/Purchase:
https://p-vine.lnk.to/M0zJHX
*P-VINE SHOPにてCD販売&LPの予約受付中!
https://anywherestore.p-vine.jp/collections/kapsoul

[トラックリスト]
01. 5AM
02. LOAFER Feat. AA Rashid
03. Y2KDNA Feat. Black Hair Imperial
04. NARE NO HATE Feat. B.D.
05. DO THAT Feat. Black Hair Imperial
06. HEARO’S OF THE UNDERGROUND Feat. Black Hair Imperial
07. MEISO Feat. B.D., 仙人掌
08. MEGAPHONE Feat. BLU, Black Hair Imperial
09. 90014
10. DIRECTION
11. GARY PAYTON Feat. 仙人掌
12. SAME THANG Feat. Dudley Perkins, Georgia Anne Muldrow
13. ASCENT
※LPはSIDE AがM1~7、SIDE BがM8~13になります


[プロフィール]
 千葉にて生まれ育ち、1998年に渡米。ダウンタウンLAを拠点にプロデューサー/DJとして20年以上にわたって活動し、LAのアンダーグラウンド・ヒップホップシーンでは知る人ぞ知る存在となっている。
 ビートメイカーとしての腕を磨きながら、DOGMA&SAW、BURAKUMAN ZOMBIES(SHEEF THE 3RD x SAW)、デトロイトのグループ HI TECH のメンバーであるKing Miloなど、日米のさまざまなアーティストの作品にトラックを提供。さらに自身の作品としては、KAPSOUL名義でのソロアルバム『NGHT TRAIN』、シンガーのWet BookとのコラボレーションによるEP『Sketch Book』、Deshawn ReidとのユニットであるBlack Hair Imperial名義でのアルバム『NAPPY HAIR SOUL』などをリリースしてきた。
 2022年にリリースされた仙人掌をフィーチャーしたシングル「GaryPaytonが一躍脚光を浴びたことをきっかけに、2024年にP-VINEよりアルバム『ASCENT』をリリース。仙人掌、B.D.、Blu、Dudley Perkins、Georgia Anne Muldrowといった人気アーティストに加えて、日米のミュージシャンも多数参加し、ヒップホップとジャズを融合させた独自のサウンドを作り上げている。

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