ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 猛暑をやり過ごすためのサウンドトラック -
  2. interview with LEO 箏とエレクトロニック・ミュージックを融合する
  3. Homie Homicide ──これまでライヴやSoundCloudで評判を上げてきた東京の4人組インディ・バンド、ついにデビューEPを発表
  4. Stereolab - Instant Holograms On Metal Film | ステレオラブ
  5. Greil Marcus ——グリール・マーカス『フォーク・ミュージック——ボブ・ディラン、七つの歌でたどるバイオグラフィー』刊行のお知らせ
  6. MOODYMANN JAPAN TOUR 2025 ——ムーディーマン、久しぶりの来日ツアー、大阪公演はまだチケットあり
  7. Nick León - A Tropical Entropy | ニック・レオン
  8. interview for 『Eno』 (by Gary Hustwit) ブライアン・イーノのドキュメンタリー映画『Eno』を制作した監督へのインタヴュー
  9. Derrick May ——デリック・メイが急遽来日
  10. interview with caroline いま、これほどロマンティックに聞こえる音楽はほかにない | キャロライン、インタヴュー
  11. Columns LAでジャズとアンビエントが交わるに至った変遷をめぐる座談会 岡田拓郎×原雅明×玉井裕規(dublab.jp)
  12. Columns #14:マーク・スチュワートの遺作、フランクフルト学派、ウィリアム・ブレイクの「虎」
  13. Theo Parrish ──セオ・パリッシュ、9月に東京公演が決定
  14. What's in My Playlist 1
  15. Pulp - More | パルプ
  16. Susumu Yokota ——横田進の没後10年を節目に、超豪華なボックスセットが発売
  17. Columns 「ハウスは、ディスコの復讐なんだよ」 ──フランキー・ナックルズの功績、そしてハウス・ミュージックは文化をいかに変えたか  | R.I.P. Frankie Knuckles
  18. R.I.P. Brian Wilson 追悼:ブライアン・ウィルソン
  19. Ellen Arkbro - Nightclouds | エレン・アークブロ
  20. 別冊ele-king イーノ入門──音楽を変革した非音楽家の頭脳

Home >  Reviews >  Live Reviews > Whatever The Weather- @CIRCUS TOKYO

Whatever The Weather

Whatever The Weather

@CIRCUS TOKYO

2022年11月3日

野田努 Nov 04,2022 UP

 ヘヴンリー・ミュージック、そんな言葉が相応しいライヴだった。アンビエントと呼ぶには、あまりにも繊細で美しい音楽に思えた。この人は、なんでこんなにも美しい音楽を作ることができるのだろう。その美しさは、いったい彼女のどこから来ているのだろう。彼女の内面からわき上がる何か、希求してやまないもの、もしくは本当に桃源郷。
 ひとまず通り一遍のことを書いておくと、まず、クラブにおけるライヴで、派手なリズムを入れないアンビエント・スタイルをもって1時間のあいだオーディエンスを釘付けにすることは、難易度が高い。期待に満ちた満員のフロアなら、キックの音でも連打すればそれなりに盛り上がりもする。そしてそれをついついやりたくもなる。だが、ロレイン・ジェイムスのワエヴァー・ザ・ウェザー(WTW)のライヴは、そういう安易なのせ方をしなかった。前半で演奏したビートレスのピアノ・アンビエント“14℃”で愕然とするほどの崇高さを表現し、最高の見せ場としたことが、昨晩のライヴを象徴している。(ダンス・ミュージックに特化した前の晩の演奏もすこぶる良かったそうだが、ぼくは行っていない)
 
 ロレイン・ジェイムスが夢見人であることは、彼女の諸作から充分にうかがえる話だが、“17℃”のような曲で時折入る細かに分解されたジャングルのリズムは、かろうじてこの音楽の出自を仄めかしてもいた。とはいえWTWは、こうした分析が無駄に思えるほど、ただただ美しかった。そう、涙が流れるほどに……前から言っていることだが、年を取ると涙もろくなるのだ。さらに言っておくとオーディエンスの多くは若く、この手の音楽のライヴにしては女性は多かったし、アフリカ系の女性もいた。
 そんなわけで、ロレイン・ジェイムスの初来日は、後ろを振り返るものではなく、未来に開けていたと言えよう。アンコールもあって、終わったのは10時過ぎ、渋谷の外の気温は15℃くらいだった。
 なお、彼女へのインタヴューは紙エレキング年末号にて掲載(インタヴュアーはジェイムズ・ハッドフィールド)。

野田努