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Whatever The Weather

Whatever The Weather

@CIRCUS TOKYO

2022年11月3日

野田努 Nov 04,2022 UP

 ヘヴンリー・ミュージック、そんな言葉が相応しいライヴだった。アンビエントと呼ぶには、あまりにも繊細で美しい音楽に思えた。この人は、なんでこんなにも美しい音楽を作ることができるのだろう。その美しさは、いったい彼女のどこから来ているのだろう。彼女の内面からわき上がる何か、希求してやまないもの、もしくは本当に桃源郷。
 ひとまず通り一遍のことを書いておくと、まず、クラブにおけるライヴで、派手なリズムを入れないアンビエント・スタイルをもって1時間のあいだオーディエンスを釘付けにすることは、難易度が高い。期待に満ちた満員のフロアなら、キックの音でも連打すればそれなりに盛り上がりもする。そしてそれをついついやりたくもなる。だが、ロレイン・ジェイムスのワエヴァー・ザ・ウェザー(WTW)のライヴは、そういう安易なのせ方をしなかった。前半で演奏したビートレスのピアノ・アンビエント“14℃”で愕然とするほどの崇高さを表現し、最高の見せ場としたことが、昨晩のライヴを象徴している。(ダンス・ミュージックに特化した前の晩の演奏もすこぶる良かったそうだが、ぼくは行っていない)
 
 ロレイン・ジェイムスが夢見人であることは、彼女の諸作から充分にうかがえる話だが、“17℃”のような曲で時折入る細かに分解されたジャングルのリズムは、かろうじてこの音楽の出自を仄めかしてもいた。とはいえWTWは、こうした分析が無駄に思えるほど、ただただ美しかった。そう、涙が流れるほどに……前から言っていることだが、年を取ると涙もろくなるのだ。さらに言っておくとオーディエンスの多くは若く、この手の音楽のライヴにしては女性は多かったし、アフリカ系の女性もいた。
 そんなわけで、ロレイン・ジェイムスの初来日は、後ろを振り返るものではなく、未来に開けていたと言えよう。アンコールもあって、終わったのは10時過ぎ、渋谷の外の気温は15℃くらいだった。
 なお、彼女へのインタヴューは紙エレキング年末号にて掲載(インタヴュアーはジェイムズ・ハッドフィールド)。

野田努