「S」と一致するもの

Goldie - ele-king

 ベリアルが “Inner City Life” をリミックスしたり、スケプタとのコラボ曲 “Upstart” が話題を集めたりしたのが2017年。後進にも大きな影響を与えているゴールディーだが、このたび1995年のアルバム『Timless』の25周年記念盤がリリースされている。ゴールディー本人監修によるリマスターが施されており、レア曲やリミックスを収めたボーナス・ディスク付きのCD3枚組仕様。未聴の方は、ぜひこの機に。

ドラムンベースの金字塔作品が25周年を記念してリマスター復刻

4ヒーローの『Parallel Universe』と双璧をなすゴールディーによるドラムンベース初期の金字塔『Timeless』が発売25周年を記念してアニバーサリー・エディションとして未発表発掘&リマスター復刻! ソリッドなビートとフューチャリスティックな流線形サウンドをミックスしてアンダーグラウンドなクラブ・サウンドをネクストレヴェルへと引き上げたシーンのマイルストーン的な一枚。いま聞いても全く色あせることのない、まさに「タイムレス」なマスターピース。


アーティスト名:GOLDIE(ゴールディー)
アルバム・タイトル:Timeless - 25 Year Anniversary Edition(タイムレス 25周年記念盤)
商品番号:RTMCD-1480
税抜定価:2,700円
レーベル:London Records
発売日:2021年7月18日
直輸入盤・帯/英文解説日本語対訳付

◆ドラムンベースというイギリス独自のジャンルを4・ヒーローやロニ・サイズらと共に開拓し発展させ、00年代以降のベース・ミュージックのシーンにも大きな影響を残したUKクラブ・シーンの生ける伝説ゴールディー。

◆その名声を決定づけたデビュー・アルバム『Timeless』の発売25周年を記念した再発企画(オリジナル発売は1995年、ロンドン・レコード/FFRRからのリリース)。

◆ダイアン・シャーラメインのボーカルをフィーチャーしたリード・シングルの「Inner City Life」は、UKチャートのトップ40へと躍進し、ドラムンベースという音楽ジャンルが、アンダーグラウンドなクラブ・シーンから飛び出し広く一般的な注目を集める最初のきっかけとなった、歴史的にも重要な90年代クラシックス。

◆壮大なシンフォニーの「Timeless」、盟友ロブ・プレイフォードとの問答無用な直球ドラムン「Saint Angel」、メイズのベース・ラインが炸裂した「A Sense Of Rage」、意表を突くイーノのシンセが異郷トリップを誘う「Sea Of Tears」、生ドラムでレイドバックした「State Of Mind」、クリーヴランド・ワトキスのジャジーなチルアウト曲「Adrift」などなど、バラエティに富んだ楽曲群が、ゴールディーのアルバム・アーティストとしての新たな側面を、見事にあぶり出しております。まさに「タイムレス」なマスターピース。

◆本人監修によるリマスター、レア曲やリミックスを収めたボーナス・ディスク付きの3枚組。

◆クラフトワークやテクノのガイド本などの著作もあるジャーナリストのティム・バーによる解説の日本語対訳を添付予定。

[収録楽曲]

CD1
1-1a Inner City Life
1-1b Pressure
1-1c Jah
1-2 Saint Angel
1-3 State Of Mind
1-4 This Is A Bad
1-5 Sea Of Tears
1-6 Jah The Seventh Seal

CD2
2-1 A Sense Of Rage (Sensual V.I.P. Mix)
2-2 Still Life
2-3 Angel
2-4 Adrift
2-5 Kemistry
2-6 You & Me

CD3
3-1 Timeless [Instrumental]
3-2 Kemistry (VIP Mix)
3-3 Angel (Grooverider Re-edit)
3-4 State Of Mind (VIP Mix)
3-5 Still Life (VIP Mix) [The Latino Dego In Me]
3-6 Saint Darkie
3-7 Inner City Life [4 Hero's Part 2 'Leave the planet mix')
3-8 [re:jazz] - Inner City Life
3-9 Sensual

Island People - ele-king

 〈raster-noton〉が、バイトーン(オラフ・ベンダー)の〈raster〉と、アルヴァ・ノト(カールステン・ニコライ)の〈noton〉に分裂し、それぞれの道を歩みはじめたことは、10年代の先端的な電子音響音楽において重要なトピックだった。電子音響、エレクトロニカを牽引していたレーベルが終わりを迎えたからだ。
 その〈raster〉が始動後(再起動後とでもいうべきか)に最初にリリースしたアルバムがアイランド・ピープル『Island people』(2017)である。彼らのアルバムをレーベルのファースト・リリースとしたところに〈raster〉=オラフ・ベンダーの意志を感じたものだ。つまり高品質なエクスペリメンタル・エレクトロニック・ミュージックを送り出していくという意志だ。じじつ〈raster〉は、この4年のあいだ流行に左右されずに、質の高いエレクトロニカをコンスタントに送りだしてした。その原点にアイランド・ピープルがあったのだとは言い過ぎだろうか。しかしわたしが彼らのサウンドが忘れられなかったことは事実だ。折に触れ何度も繰り返し聴き続けた。

 アイランド・ピープルはスコットランド・アイルランド出身の4人の音楽家/サウンド・デザイナーによるグループである。ダフト・パンクやジェフ・ミルズ、リカルド・ヴィラロボスやカール・クレイクなどを手掛けた人気のマスタリング・エンジニアのコナー・ダルトン、グラミー賞受賞プロデューサーのデイヴ・ドナルドソン、シリコン・ソウルのグレアム・リーディー、ギタリストのイアン・マクレナンがメンバーである。先にグループと書いたが、「バンド」といってもいいかもしれない。それほどまでに4人の個性が交錯しているサウンドに聴こえるのだ。
 プロデューサーとエンジニアが在籍するアイランド・ピープルのサウンドは高品質なアンビエンス/アンビエントを実現していた。まるで映画のサウンドトラックを思わせるようなムードである。その音は緻密かつ繊細に設計され、美しくも深淵な音響空間を実現していた。どこかアンドレイ・タルコフスキーのSF映画『惑星ソラリス』を思わせもする。その意味で同じく2017年リリースの坂本龍一『async』との親和性も感じられた。

 前作『Island people』から4年の月日を経て送り出された新作が本作『II』である。待ちに待ったというより、不意に届けられたという印象で、一聴すると基本的に『Island people』のサウンドを継承しているように感じられた。しかしその音は以前よりダークであった。何か世界の変容を捉えようとするように、サウンドの移り変わりは、ゆったりとした映画の長いワンシーン・ワンショットのカメラワークを思わせた。レーベルは「初期のアントニオーニ映画のロング・トラッキング・ショットのように展開され、時間が止まっているようで、その瞬間を巡っている」と書いているが(https://raster-raster.bandcamp.com/album/ii)、まさに言い得て妙である。

 つまり前作に比べて、どこか暗く沈んだムードのアルバムなのだ。しかしそれが不快ではない。流行や時間の流れを超越したかのようなサウンドであり、その静かで、不穏で、「人がいない世界」のような音響空間には心を鎮静するような力すらある。特にドラマチックな流れのサウンドを展開する1曲目 “His Illusion” からインナースペースへと沈み込んでいくような3曲目 “Loneliness Has A Purpose” までの展開には孤独のアトモスフィアがうっすらと漂っていた。アルバムはそんなムードを反復するように展開していく。
 環境音と電子音が深海と廃墟の中で交錯するような4曲目 “Far From Shore” と5曲目 “Ten Green Bottles”、ギターのアルペジオが映画音楽的なムードを彩る6曲目 “Idyll”、緊張感に満ちたアンビエントを展開する8曲目 “Stillness”、環境音楽的なシンセサイザーに濃厚な音色のギターを聴かせる9曲目 “Luna” まで、まるでひとけのない都市を彷徨するような音世界だ。その映画音楽的なサウンドに聴きいっているとコロナ禍でロックダウンされた都市の音響のように聴こえたほどだ。加えて、ヴォーカリストのアリス・ヒル・ウッズを招いたヴォーカル曲 “Stalling”(10曲目)が収録されたことも重要なトピックだろう。アルバム・ラストの12曲目 “Traffic” では、スペイシーな電子音響アンビエントを展開し、地球を俯瞰するようなムードになり、アルバムは幕を閉じる……。

 全12曲、アイランド・ピープルは流行り廃りを超えた普遍的な電子音楽を構築しようとしているのではないか? と感じられた。尖端から深淵へ。流行から普遍へ。モードからスタイルへ。10年代まで切り拓かれてきた電子音響音楽の世界は、いま、聴き手の心に作用するアトモスフィアを得ようとしている。それこそがこのアルバムが獲得した不思議なリアリティの正体なのかもしれない、と思うのだ。

食品まつり a.k.a foodman - ele-king

〈Hyperdub〉からニュー・アルバム『Yasuragi Land』を送り出したばかりの食品まつり。同作の発売を記念し、リリース・パーティが開催されることになった。昼の部(8月8日開催)と、「サウナ」「水風呂」の2フロアにわかれた夜の部(9月11日開催)の2部構成という、ユニークな開催方式です。食品まつりとゆかりのあるアーティストを含む全20組がかけつける……これは行きたい!

Local World x Foodman - Yasuragi Land - Tokyo 2021

世界で最もピースな電子音楽家FoodmanによるUKの名門〈Hyperdub〉からの最新アルバム『Yasuragi Land』のリリパがクラブ&モードなアドベンチャー・パーティLocal WorldとSPREADにて共同開催!

土着、素朴、憂いをテーマに南は長崎、北は北海道、Foodmanに纏わるアーティスト含む全国各地からフレッシュな全20組が集まる昼のコンサートとサウナと水風呂の2フロアに別れた夜のクラブ・ナイトの2部構成、2021年の湿度と共に夏のボルテージを上げるサマー・イベント。

■SUN 8 AUG Day Concert 16:00 at SPREAD

ADV ¥3,300+1D@RA *LTD70 / Club Night DOOR ¥1,000 OFF

LIVE:
7FO
cotto center
Foodman
machìna
NTsKi
Taigen Kawabe - Acoustic set -

DJ: noripi - Yasuragi set -

・70人限定 / Limited to 70 people
・デイ・コンサートの前売チケットで9/11クラブ・ナイトのドア料金が1000円割り引かれます / Advance tickets for the day concert will get you 1000 yen off the door price for the club night on 11th Sep
・再入場可 ※再入場毎にドリンク・チケット代として¥600頂きます / 1 drink ticket ¥600 charged at every re-enter


■SAT 11 SEP Club Night 22:00 at SPREAD + Hanare

ADV ¥2,500+1D@RA *LTD150 / DOOR ¥3,000+1D / U23 ¥2,000+1D

サウナフロア@SPREAD

LIVE:
Foodman
JUMADIBA & ykah
NEXTMAN
Power DNA
ued

DJ:
Baby Loci [ether]
D.J.Fulltono
HARETSU
Midori (the hatch)

水風呂フロア@Hanare*

LIVE:
hakobune [tobira records]
Yamaan
徳利

DJ:
Akie
Takao
荒井優作

artwork: ssaliva

・Hanare *東京都世田谷区北沢2-18-5 NeビルB1F / B1F Ne BLDG 2-18-5 Kitazawa Setagaya-ku Tokyo
・150人限定 / Limited to 150 people
・再入場可 ※再入場毎にドリンク・チケット代として¥600頂きます / 1 drink ticket ¥600 charged at every re-enter

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EVENT PLAYLIST
https://soundcloud.com/meltingbot/sets/local-world-x-foodman-yasuragiland

前売リンク
Day Concert https://jp.ra.co/events/1452674
Club Night https://jp.ra.co/events/1452675

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食品まつり a.k.a foodman

名古屋出身の電子音楽家。2012年にNYの〈Orange Milk〉よりリリースしたデビュー作『Shokuhin』を皮切りに、〈Mad decent〉や〈Palto Flats〉など国内外の様々なレーベルからリリースを重ね、2016年の『Ez Minzoku』は、海外はPitchforkのエクスペリメンタル部門、FACT Magazine、Tiny Mix Tapesなどの年間ベスト、国内ではMusic Magazineのダンス部門の年間ベストにも選出された。その後Unsound、Boiler Room、Low End Theoryに出演。2021年7月にUKのレーベル〈Hyperdub〉から最新アルバム『Yasuragi land』をリリース。Bo NingenのTaigen Kawabeとのユニット「KISEKI」、中原昌也とのユニット「食中毒センター」としても活動。独自の土着性を下地にジューク/フットワーク、エレクトロニクス、アンビエント、ノイズ、ハウスにまで及ぶ多様の作品を発表している。

[最新作リリース情報]
食品まつり a.k.a foodman - Yasuragi land [Hyperdub / Beatink]
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11814

Local World
2016年より渋谷WWWをホームに世界各地のコンテンポラリーなエレクトロニック/ダンス・ミュージックのローカルとグローバルな潮流が交わる地点を世界観としながら、多様なリズムとテキスチャ、クラブにおける最新のモードにフォーカスし、これまでに25回を開催。

Local 1 World EQUIKNOXX
Local 2 World Chino Amobi
Local 3 World RP Boo
Local 4 World Elysia Crampton
Local 5 World 南蛮渡来 w/ DJ Nigga Fox
Local 6 World Klein
Local 7 World Radd Lounge w/ M.E.S.H.
Local 8 World Pan Daijing
Local 9 World TRAXMAN
Local X World ERRORSMITH & Total Freedom
Local DX World Nídia & Howie Lee
Local X1 World DJ Marfox
Local X2 World 南蛮渡来 w/ coucou chloe & shygirl
Local X3 World Lee Gamble
Local X4 World 南蛮渡来 -外伝- w/ Machine Girl
Local X5 World Tzusing & Nkisi
Local X6 World Lotic - halloween nuts -
Local X7 World Discwoman
Local X8 World Rian Treanor VS TYO GQOM
Local X9 World Hyperdub 15th
Local XX World Neoplasia3 w/ Yves Tumor
Local XX0 World - Reload -
Local XXMAS World - UK Club Cheers -
Local World x ether

https://localworld.tokyo

label: BEAT RECORDS / Hyperdub
artist: 食品まつり a.k.a foodman
title: Yasuragi Land
release date: 2021/07/09 ON SALE
* 輸入盤LPは8月中旬発売

国内盤特典:ボーナストラック追加収録 / 解説書封入
CD予約: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11814
LP予約: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11815

downstairs J - ele-king

 思わず、「ちょうど良い」という言葉をひさびさに口走ってしまった downstairs J なるアーティストのLP『basement, etc...』。いわゆるダウンテンポというよりかはテクノで、しかしリズムは強すぎず多様に躍動していて、クリアな音質も相まって初期オウテカあたりをマイルドにしたようなそんな印象を覚える作品です。リリースはアンソニー・ネイプルズと写真家でもあるジェニー・スラッテリー(Jenny Slattery)によるニューヨークのレーベル〈Incienso〉から。

 アンソニーは〈Proibito〉を閉じた後に、この〈Incienso〉を、さまざまな才能をフックアップする、そんなレーベルにしている模様(自身の作品は〈ANS〉から)。もちろんアンソニーという現在のハウス、テクノ・シーンの重要人物のレーベルというのもあるんですが、本レーベルに関していえば、やはりDJパイソンの1st『Dulce Compañia』でその名前を記憶している方も多いでしょう。その他の作品も最高で、ダウンテンポやアートコア・ジャングルなどの絶妙な配合でモダンなテクノの柔軟な音楽性を豊かに提示して見せたベータ・リブレ(Beta Librae)の傑作アルバムや、現在、NYとともにやはりすばらしいアンダーグラウンド・アクトを輩出しまくっているメルボルンの、スリープ・Dの作品、そして本作とほぼ同時期にリリースした、こちらもメルボルンからの新生、ブレイクビーツとディープ・ハウス、テクノの折衷様式がすばらしいビッグ・エヴァー(ex コップ・エンヴィー)のシングルもありました。コール・スーパー、あとは工藤キキの驚きのシングルもこちらのレーベルからでした。どちらかと言うと、そこまでリリースの多いレーベルではありませんが「いま思い返せば」、いつでもそのサウンドがその先の未来(つまるところ現在のシーンの動き)とともに思い出せるようなそんなサウンドをキープしているレーベルといった印象です。つまりセンス良すぎる。アンソニー・ネイプルズは、言われなくてもという感じだと思いますが、〈Proibito〉時代のフエアコ・エスのフックアップとかも含めて、とにかくいい感じなんですね。

 おっと横道にそれてしまいましたが『basement, etc...』にもどると、こちら downstairs J、本名義では初となる作品で、ジョシュ・アブラモビッチというアーティストによる名義。このジョシュはグライフィック・デザイナーのようで、DJパイソンのアルバム2nd『Mas Amable』なんかも手がけています。音楽面では snacs というノスタルジックなエキゾチック・アンビエント〜ダウンテンポを(実は本原稿での下調べで一番の発見だったかも……)、VOSE 106という名義では1作、ドープなビートダウン・ディープ・ハウスをリリース。どちらも Bandcamp を探すと出てきますがなかなか楽しめる作品ですのでぜひ。

 アルバムはテクノ・インフルエンスなヒップホップ・ビートからスタート、2曲目はスキッと爽やかで軽やか、涼やかなテクノ “Solid Air City”、ダブ・ブレイクビーツ的な “Soft Tissue”、アシッドなロウ・ビート “Lab Rat Boogie”、ポコポコとアンダーウォーターなダブ感が心地よい “Adjust”、フローティングでマイルドなダンスホール “Viewing Space”、エキゾチックなダウンテンポ “Wired” と、7曲。と、文字だけだとなんだか1990年代とか2000年代の、すごく凡庸なダウンテンポ・アルバムの原稿を書いているようでげんなりなんですが、でもそこに立ち上がってくるのはモダンでアップデーテッドなテクノの音響的なミックスの音質、そこはかとないダブ感、フローティンなメロディととにかく聴けば聴くほど、その楽曲の素晴らしさがにじみ出てきます。初期オウテカ、もしくはデトロイト・エスカレーター・カンパニー、あのあたりのテクノのチル感を彷彿とさせます。もうちょっと抽象的な言葉で言ってしまえば、IDMなグリッチでも、ドープなスモーカーズ・デライトでもないクリアなチル感といってもいいのではないでしょうか、そうした要素が抽出されていて、それでいて今様な、という。ダンス方面でも1990年代テクノのいわゆるインテリジェンス・テクノ、ないしはエレクトロニック・リスニング・ミュージックと呼ばれる音楽の復古というのがありましたが、当時の音源、いわゆるアンビエント・テクノが一部がトリップホップ的な方向へと舵を切ったあたりのサウンド、だけどドープなブレイクビーツには行っていないあのあたりの感覚がいま顕在化しているんではという感覚もあります。

 で、しかもレーベルが明らかにもう少しフロア寄りのサウンドで、シングルとしてリリースしている前述のビッグ・エヴァーのシングル「Otto EP」での、多様なIDM的なリズムを内包したハウス・トラックとは少なからず本作の音楽は共鳴しています。このあたり、なにか顕在化しつつある動き、単なるトリップホップの、IDMの、リヴァイヴァルと言ってはもったないような動きではないかと妄想が膨らんでしまうような音楽です。もちろんコロナ禍の影響もあるのかもしれませんが、この惹きつけられる感じは、なにかの未来をつかまているそんな作品であるような気がしてなりません。

John Carroll Kirby - ele-king

 昨今のUS西海岸の音楽シーンを中心に、有能なセッション・ミュージシャン及びソング・ライター/プロデューサーとして活躍してきたジョン・キャロル・カービー。共演やコラボしてきたメンツには、フランク・オーシャン(“DHL”でキーボードを演奏)、ソランジェ、ブラッド・オレンジ、バット・フォー・ラッシーズ、シャバズ・パラセズ、コナン・モカシン、セバスチャン・テリエ、ジ・アヴァランチーズ、イエロー・デイズなどが並ぶ。特にブラッド・オレンジの『フリータウン・サウンド』(2016年)への参加で名を広め、ソランジェの『ホエン・アイ・ゲット・ホーム』(2019年)では主要プロデューサーに名を連ねている。1990年代に活躍したソウル・デュオのチャールズ&エディの片割れであるエディ・チャコンが昨年リリースした復活作の『プレジャー,ジョイ・アンド・ハピネス』では、全面的に制作を任されている。

 そんな裏方仕事が多いジョン・キャロル・カービーだが、自身のソロ作品も地道に作ってきており、2017年に『トラヴェル』という処女アルバムを残している。キーボード奏者である彼ならではの各種鍵盤&シンセサイザーなどを多重録音したアンビエント~ニューエイジ系の作品だった。続いてカセットのみで発表した『メディテーションズ・イン・ミュージック』(2018年)はタイトルどおり瞑想のための音楽で、『タスカニー』(2019年)はピアノのみで綴る20分弱の曲がレコードのA/B面にそれぞれ収められ、〈ECM〉的なジャズとアンビエント~モダン・クラシカルの中間のような作品だった。そんなジョン・キャロル・カービーが昨年〈ストーンズ・スロー〉と契約を結んだのは意外だったが、最近の〈ストーンズ・スロー〉はリジョイサーなどジャズからアンビエント寄りのアーティストの作品もリリースしているので、彼もそんな新機軸を担うアーティストとして期待されたのだろう。

 〈ストーンズ・スロー〉からは2020年4月に『コンフリクト』と『マイ・ガーデン』の2作が立て続けてリリースされた。『コンフリクト』は『タスカニー』の延長線上にある静穏としたピアノとシンセによる作品集で(一部にフルート演奏もあり)、“ワビ(侘び)” と題された楽曲も収録されている。彼のピアノ演奏は昨年末にコロナ感染で死去したハロルド・バッドがブライアン・イーノとコラボしていた頃のサウンドを彷彿とさせるものだ。
 『マイ・ガーデン』のほうはもう少しシンセが前面に出て、フルートやマリンバなど楽器使いもカラフルになっている。曲によってしっかりとした骨格のリズム・セクションによるジャズやジャズ・ファンク寄りのアプローチあり(日本人ベーシストの鈴木良雄が1980年代に作っていたニューエイジ・ジャズからの影響が強いようだ)、メディテーショナルなモダン・クラシカルあり、チルウェイヴやヴェイパーウェイヴに繋がるところも感じさせる楽曲ありと、より広がりのある世界を見せる作品集だ。

 そして、『コンフリクト』と『マイ・ガーデン』から約1年ぶりの新作が『セプテット』である。ちなみにジャケットの写真は前述のエディ・チャコンによるものだ。ジャズのセプテットは7人組の楽団だが、今回はジョン・ポール・マランバ(ベース)、ディーントニ・パークス(ドラムス)、ニック・マンシーニ(マレッツ)、デヴィッド・リーチ(パーカッション)、ローガン・ホーン(ウッドウィンズ)、トレイシー・ワンノメイ(ウッドウィンズ)が参加し、文字どおり7人組バンドによる録音。いままではほぼひとりで多重録音してきたが、『セプテット』はバンド・サウンドによるアプローチへ変化している。
 そうした変化は “レインメーカー” あたりに顕著で、バンド・サウンドならではのグルーヴに富むメロウ・ナンバーだ。この曲に見られるように『セプテット』の方向性はジャズとソウルやファンクの融合で、これまでのアルバムとは異なるカラーを持つ。ある意味でより〈ストーンズ・スロー〉らしいカラーのアルバムかもしれない。たとえば “スワロー・テイル” はクルアンビンあたりに近いレイドバックしたファンク・ナンバーで、レトロなアナログ・シンセの音色がサイケデリアを演出する。

 “センシング・ノット・シーイング” はアフロ・ラテン調のミステリアスなジャズ・ナンバーで、カマシ・ワシントンの『ヘヴン・アンド・アース』(2018年)にも参加していたトレイシー・ワンノメイらによる木管が重厚で神秘的な音色を奏でる。ジョン・キャロル・カービーの鍵盤はむしろ管楽器などの引き立て役で、『セプテット』において彼は全体のプロデュースを主眼としていることを示している。“ジュビリー・ホーンズ” も同様にホーン・アンサンブルが主役となるが、ここではジョン・キャロル・カービーのエレピも印象的な演奏を聴かせる。1970年代のロニー・リストン・スミスあたりに近い演奏と言えよう。
 メロウの極みと言える “ウィープ” でのエレピとマリンバの絡みも素晴らしく、サンプリング・ソースとしても有名なボビー・ハッチャーソンの名曲 “モンタラ” を彷彿とさせる世界だ。“ザ・クエスト・オブ・チコ・ハミルトン” はジャズ・ドラマーのチコ・ハミルトンに捧げた作品で、『ペレグリネーションズ』(1975年)、『チコ・ハミルトン・アンド・ザ・プレイヤーズ』(1976年)、『ノマド』(1980年)などクロスオーヴァー/フュージョン期の彼の作品をイメージしている。“ニュークレオ” のマリンバを絡めた変拍子のドラミングも印象的で、エスニックな雰囲気とミニマル・ミュージックに繋がる要素を感じさせる。ジョン・キャロル・カービーならではのニューエイジ・ジャズと言えるだろう。

Phew - ele-king

 エレクトロニック・ミュージックにおけるサウンドの加工や異化つまりヴァリエーションによる「異質さ」は、批評家コジュオ・エシュンの「ソニック・フィクション」論でいうところの、従来的な思考法からの逸脱をうながす(参照:紙エレ22号P110、高橋勇人による論考「周縁から到来する非直線系」)。これはアフロ・フューチャリズム理論のなかで記述されているロジックではあるが、いまやエレクトロニック・ミュージシャンとして世界で活躍するPhewの作品から聴こえる電子音を読み解く上でも流用可能だろう。サウンドがうながす非直線的思考──じっさい彼女は新作における資料で、次のように発言している。「80年代、そして90年代までは物事が過去から現在、未来へという流れで進行していましたが、とくに21世紀がはじまって以来、その流れが変わってしまったと感じます。個人的には、現在から連なる未来というものが見えなくなってしまいました」
 反転した「ニュー・ディケイド」が描かれているのであろう、Phewの待望の新作はTraffic / MUTEから10月22日に世界同時発売決定。まずは第一弾先行シングル「Into The Stream」の青木理紗監督によるミュージック・ヴィデオをどうぞ。

Phew (Phew)
ニュー・ディケイド (New Decade)

発売日:2021年10月22日(金)
品番:TRCP-294 / JAN: 4571260591103
定価:2,400円(税抜)/ 解説:松村正人
ボーナス・トラック収録
Label: Traffic/Mute

Tracklist
1. Snow and Pollen
2. Days Nights
3. Into the Stream
4. Feedback Tuning
5. Flashforward
6. Doing Nothing
7. In The Waiting Room (bonus track)

[Pre-order + Listen]
https://smarturl.it/phew

伝説のアート・パンク・バンド、アーント・サリーの創設メンバーであり、1979年解散後はソロとして活動を続け、1980年に坂本龍一とのコラボレーション・シングルをリリース、1981年には、コニー・プランク、CANのホルガー・シューカイとヤキ・リーペツァイトと制作した1stソロ・アルバム『Phew』を発売。1992年、MUTEレーベルより発売された3rdアルバム『Our Likeness』は、再びコニー・プランクのスタジオにて、CANのヤキ・リーベツァイト、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのアレックサンダー・ハッケ、そしてDAFのクリスロ・ハースと制作された。2010年代に入り、声と電子音楽を組み合わせた作品を次々に発売し、エレクトロニック・アーティストとしても世界的評価を高めた。ピッチフォークは「日本のアンダーグラウンド・レジェンド」と評している。また、アナ・ダ・シルヴァ(レインコーツ)、山本精一(ex.ボアダムス)等とのコラボレーション作品も発売。2021年10月、最新ソロ・アルバム『ニュー・ディケイド』はTraffic/Muteより世界発売。

https://www.instagram.com/originalphew007/
https://twitter.com/originalphew
https://www.facebook.com/Phew-508541709202781
https://phewjapan.bandcamp.com/merch

〈PAN〉 × 〈Hakuna Kulala〉 - ele-king

 ベルリンの〈PAN〉と、ウガンダはカンパラの〈Hakuna Kulala〉(〈Nyege Nyege〉のサブレーベル)が手を組んだ。『KIKOMMANDO』と題された新プロジェクトは、カンパラのシーンを新たな角度から切りとるもので、音源に加え写真やMVもその一環に含まれる模様。
 8月6日にリリースされるミックステープには Blaq Bandana や Ecko Bazz、Swordman Kitala や Biga Yut といった〈Hakuna Kulala〉のアーティストが参加。〈PAN〉の STILL が全曲のプロデュースを担当している。STILL ことシモーネ・トラブッキは、かつてザ・バグが先鞭をつけたエレクトロニック・ミュージックとダンスホールの折衷を継承する音楽家で、2017年の『I』が話題となった人物だ。
 それは対話だった、とトラブッキは今回のプロジェクトについて述べている。「シンガーたちに自信を持ってもらえるような音楽的土台をつくると同時に、わたしは彼らに挑戦もした。一緒に仕事をすることはアイディアを加速させ、発明というものがひとりだけでできるものではないことを明らかにする。それこそ『KIKOMMANDO』がわたしにとってアルバムでなく、ミックステープである理由だ」とのこと。
 現在 Ecko Bazz の “Ntabala (Rolex Riddim)” が公開中。他の曲も楽しみです。

V/A (Prod. by STILL)
Title: KIKOMMANDO
Format: Digital mixtape / Book
Label: PAN / Hakuna Kulala
Cat. No: PAN 124 / HK029
Release date: 6 August 2021

01. Blaq Bandana – Nkwaata (Prod. by STILL)
02. Ecko Bazz – Ntabala (Rolex Riddim) (Prod. by STILL)
03. Swordman Kitala – Rollacosta feat. Omutaba (Prod. by STILL)
04. Biga Yut feat. Florence – Ntwala (Prod. by STILL)
05. Biga Yut – Tukoona Nalo (Prod. by STILL)
06. High Cry Interlude (Prod. by STILL)
07. Jahcity – Njagala Kubela Nawe (Prod. by STILL)
08. Biga Yut – Plupawa (Prod. by STILL)
09. Winnie Lado – The Race (Prod. by STILL)
10. Florence – Bae Tasanze (Prod. by STILL)
11. Jahcity – Tukikole Nawe feat. Omutaba (Prod. by STILL)
12. Winnie Lado – Ahlam Wa Ish السماء هي الحد (Prod. by STILL)

N0V3L - ele-king

 分断と連帯、インターネットがもたらしたもの。「インターネットの発展は、奇妙な髭を蓄えた前世紀の古風な圧制者が夢見るほかなかった大規模な社会コントロールを約束したものだ」トマス・ピンチョンがジョージ・オーウェルの1984年の新装版における序文にそう記したのは2003年のことだったようだが、2021年の現代ではその言葉がより現実的な響きを帯びてきているように思える。テクノロジーによって利便性を手に入れ、価値観が変化し、そうして新たな問題が出現し積み重なっていく。

 「後期資本主義の不気味なディスコ」そう自ら評す N0V3L の 1st アルバムが表現するのは我々が生きるフィクションのような世界だ。『NON​-​FICTION』というタイトルが指し示す世界の断片、自己が引き裂かれ消費される(“UNTOUCHABLE”)、絶望が簡略化され必要性がリプレスされる(“GROUP DISEASE”)、ポスト・トゥルースのアリバイ(“EN MASSE”)、名前を選んでサイドを決める(“INTEREST FREE”)、平和主義者だが暴力と栄光に狂喜する(“VIOLENT & PARANOID”)、利益を生む抜け道(“PUSHERS”)、シニカルな、さもなければ悪意を持った管理者のレイティング(“STATUS”)、収録された全ての曲に『NON​-​FICTION』と名付けられたこの世界の断片が映し出されている。静かに吐き捨てられる短い言葉は、暗く影を落とした世界のトレンドを支配する検索ワードのようでもあり、窓の向こうに広がるモノクロの世界を形作っているもののようにも思える(いずれにしてもそれらの言葉はイメージと結びつく)。

 N0V3L はカナダのバンクーバーを拠点とするコレクティヴで、ジョン・ヴァーレイとノア・ヴァーレイ(この二人は兄弟だ)、ブライス・クロゲシー(ミリタリー・ジーニアスとしての活動でも知られ、本作のプロデュースもしている)の中心メンバー三人は同じくカナダのコレクティヴ、クラック・クラウドのメンバーでもある。クラック・クラウドの去年のアルバム『Pain Olympics』はサイバーパンクの世界で抗う集団を描いたかのようなポストパンクの傑作だったが、N0V3L のこの『NON​-​FICTION』は同じ世界を別のやり方で描いたもののように思えてならない。クラック・クラウドが直接的に抗った世界に対して N0V3L は感情を静かにぶつけ、虚無を抱えながらも、悲しみにまみれた怒りを「現実世界のフィクション」として表現する。

 1970年代後半から80年代前半にかけての音楽、ポストパンク、ニューウェイヴ、ノーウェイヴ、ギャング・オブ・フォーやジョセフ・K、ザ・キュアー、ジェームス・チャンス(彼らはジェームス・チャンスのバック・バンドを務めたこともある)、それらからの直接的な影響を感じさせながらも N0V3L が単なるリヴァイヴァル・バンドにならないのは、そこにいまの時代の空気がしっかりと反映されているからなのだろう。構造的な暴力、ポピュリズム、利益の為に不都合を作り出す企業、インターネットによる分断、何度もリヴァイヴァルが起きるポップ・ミュージックの世界では音楽がかつての時代にはなかった、あるいは変わっていった価値観と混じり合い、現実と相対する自己の表現として成立する。そしてそれこそがポップ・ミュージックあるいはポップ・カルチャーの魅力なのだろう。エンターテインメントの中に意見や立場や葛藤があり、作品の空気を通してそれらが語られる。だからこそ時を超え機能し続けるのだ。そのことはポストパンク/ニューウェイヴのスタイルを受け継いだ N0V3L 自身が証明している。

 そうして希望もある。インターネットの明るい部分、離れた場所に住む人びとによる連帯、2019年の初頭に “TO WHOM IT MAY CONCERN” のビデオが公開されたあの瞬間、赤と黒のギャングたち、僕たちはみんなあのビデオの中に入りたかった。「20世紀は一過性の世代を生みだし、世代の形成期は、無視することの出来ないインターネットの台頭と人間性の変化の初期段階に加わることに費やされてきた。(中略)全体的なメッセージとして、このビデオは、相互接続性によってコミュニティや帰属性をより強固に感じられるよう、傍観を越えた協調にフォーカスを合わせることを提唱している。このオーディオ・ビジュアルはまた N0V3L のパブリック・アイデンティティでありテーマの追求の基礎となるものでもある」ビデオに添えられた声明文の通りに、その強烈なヴィジュアル・イメージは頭のなかに残り続け、遠く離れた場所にいる人びとに刺激を与え行動を起こさせてきた。たとえばスクイッドのオリー・ジャッジが、ユニフォームのようだったビデオのなかの N0V3L と同じあの服を着て、ドラムを叩き唄うといった具合に(なんでそんなことが起きるのかは今年出たスクイッドの素晴らしいアルバムを聞くか、あるいは “Narrator” のビデオを見ればきっとわかる)。そうやって世界にストレンジャーたちのコミュニティが出来上がっていく。

 『NON​-​FICTION』は最後に少しの希望を残して終わる。「新しいやり方、ノスタルジア/現在を掴み取ったささやきのような/指と太古のアンセムの間に挟まった砂のような」 穏やかで物悲しい響きの中に過去が流れ込み、差し押さえの通知が無関心の未来へと我々を運んでいく。しかしそれは決して絶望ではない。分断と連帯、いまはもう存在しない取り壊された賃貸住宅で、80年代の機器(Tascam 388)を使って記録された現代、適応を強制され、引きずられ、それでも未来へと進んでいく。

interview with Jouska - ele-king


 北欧……といってもぼくはデンマークにいちど行ったことがあるだけで、ノルウェーはおろかスウェーデンにさえも足を踏み入れた経験がないので偉そうなことはとても言えない。でもひとつだけ、北欧がほかのヨーロッパ諸国と決定的に違っていることは最初の1日目でわかった。街にせよ、ホテルや飲食店のトイレにせよ、とにかく清潔なのだ。街中イヌの糞だらけだった90年代のパリとは偉い違いだった。このクリーンさは北欧の音楽に反映されているように思われる。ハウスであれアンビエントであれ、ジャズであれシンセ・ポップであれ、スカンジナビア半島で生まれる音楽にはこざっぱりとした清潔感があり、独特の透明感がある。北欧のこうしたアンダーグラウンドな音楽は、90年代は待っていては見つけられず、探そうという意志がなければ出会えないものだったが、その品質が国際的に評価されていったことで、いまでは北欧はそれ自体がひとつの音楽ブランドと言えるほどのファンを獲得している。

 ノルウェーに関して言えば、クラブ系ではビョーン・トシュケリンドストロームプリンス・トーマストッド・テリエジャガ・ジャジストなどなど……それから知性派としてはジェニー・ヴァルがいるし、近年ではスメーツと、そしてここに紹介するヨウスカがいる。

 ヨウスカ(Jouska)は、マリット・オティーリエ・ソービック(Marit Othilie Thorvik)とハンス・オラヴ・セテム(Hans Olav Settem)という20代半ばの2人によるプロジェクト。昨年、配信のみでリリースされたアルバム『Everything Is Good』が海外メディアや北欧ポップス・ファンのあいだで話題となって、先日〈Pヴァイン〉からCD盤/アナログ盤としてもリリースされたばかり。

 ヨウスカは、捻りの利いたエレクトロニカ・ポップスでリスナーを魅了する。彼らの屈折した感性は、アルバムのスリーヴにもうかがえる──美しい海と何かひどい目に遭遇したばかりの女性の顔、題名は「すべては良い(Everything Is Good)」。マリットのエーテル状のヴォーカルとハンスによる折衷的なトラックとのコンビネーションは、初期のスメーツに似ているが、ヨウスカはドリーム・ポップ色が強い。
 取材では、ぼくからの質問のほか、彼らと同世代の通訳の水島くんとの対話から彼らのライフスタイルやノルウェーのお国柄に関する話題など広範囲に渡って話してくれている。日本で暮らすぼくからしたらなかなか興味深い話ではあるが、しかし、やはり日本から北欧は遠い。たとえばノルウェーのオスロはよく知られるように、2022年の冬季オリンピック誘致に立候補したけれど、IOCからのあまりの財政負担が強いられる無茶苦茶な要求(宿泊施設の条件から移動手段や料理や酒の指定、国王との対面等々)をみて、きっぱりと撤退している。
 ……ま、とりあえずぼくたちはヨウスカの音楽を楽しみましょう。



ノルウェーの伝統的なポップ・ミュージックはだいたい年寄りのために作られてたりするから、僕たちの世代は自分たちが好きなものを好きなように作りたかったんだと思う。それは結果的にはノルウェーらしいモノではないけど、新しいモノではあると思うんだ。

ヨウスカはどのようにスタートしたのですか?

マリット(以下、M):私たちはオスロのミュージックスクールで出会ったの。最初は普通に遊んでいたんだけど、いつからか一緒にスタジオに入るようになったのよね。

ハンス(以下、H):だいたい7年前だよね。

M:そうね。初めて会ったのは2014年だと思う。

H:最初はマリットが音楽を作りはじめていて、それがめちゃくちゃカッコいいと思ったからほぼ強制的に入れてもらったんだ(笑)。それから最初のリリースの前に一緒にたくさんの音楽を作ったよ。最初の数年感はインストの曲やサンプルを中心に実験的でちょっと変わった楽曲までいろいろアイデアを練って作っていったよ。

オスロの音楽学校で出会ったということですが、音楽のプレイ面を学ぶ学校だったのですか? 

M:4年生のポップ・ミュージックをテーマにしていた学科だった。そこでは音楽をプレイすることはもちろんだけど、ビジネスも勉強したね。

H:両方だよね。オスロで唯一のポップ・ミュージックにフォーカスした授業を学べる学校だよ。ジャズやクラシックをプレイすることがほとんどだと思うんだけど。

ティーンのときとかはどんな音楽が好きだったの?

M: 私はけっこう何でも聴いていたと思う。昔はヒップホップでダンスをしてたんだけど、その影響もあってヒップホップやR&B、ポップ・ミュージックを最初は聴いていた。そこからだんだんとインディーを掘るようになったって感じかな。アルバムというよりかは楽曲ごとに聴いていたわ。プレイリストとかを作ってね。

H:マリットはナップスターでダウンロードして聴くのがお気に入りだったよね(笑)。いまの世代では一般的だよね。僕はもっとオールドスクールで、グリーン・デイとかビートルズのCDを買っていたし、マイナーなパンク・バンドや昔のロックンロール・バンドのCDを集めていたんだ。

M:彼はバンドもやっていたのよ。

H:そうだね。だからアルバムで聴くのが好きだったのかもしれない。

ちなみにノルウェーの音楽を聴いていたの?

H:うーん、ティーンのときはノルウェーの音楽には全然ハマってなかった。

みんな海外の音楽を聴いているのが普通なの?

M:そうだね。だいたいみんなアメリカやイギリスの音楽を聴いているよ。

日本とは全然違うね。日本人はだいたい日本の音楽を聴いているから。

H:個人的にノルウェーのポップ・ミュージックは良い方向にチェンジしたと思う。いまではアメリカの音楽のクオリティーと変わらないレベルにあるけど、昔は海外の音楽よりも劣っているように聴こえたんだ。あとポップ・ミュージックじゃないけど、80年代のファンクやディスコとか90年代のヒップホップとかカッコいいものも探せばたくさん出てくるよ。でもそれに気づいたのは最近かな。

なるほど。だから海外のサウンドに影響を受けているように感じるけど、それは自然なことなんだね。

M:うん、自然だよね。オスロのアーティストでノルウェーの音楽だけを聴いている人は私たちの周りには少なくてもいないし。

なるほど。そうしたらヨウスカのことについてもう少し話していきたいんですが、ヨウスカという名前の由来や付けた理由はありますか?

M:私が 「普段使わない/耳にしないクールな単語」って調べたときにヨウスカってワードがリストに載っていたの。まず見た目がカッコいいと思った。 ヨウスカって単語の意味は自分の頭のなかで架空の会話が何度も何度も繰り返されて頭のなかでグルグル回っていること。って感じなのだけど、そういった音楽を作りたかったからクールだと思ったのよね

H:取り憑かれたかのように何度も何度も強制的にね。なかなか目にしないワードで、他の単語では説明できないような言葉を使いたかったんだ。

M:私が見たそのサイトには日本の単語も載っていたよ

本当に?

M: うん。意味は理解できなかったけど、形がカッコよかったわ(笑)。

僕には何がカッコいいのかわからないけど、いろんな人から言われるよ(笑)

H:日本のカルチャーはカッコいいと思う。もちろん全部のことを知ってるわけではないけど、現代では昔よりも世界中のカルチャーが影響を与えあっていると思うし、それが良い感じに表現されているよね。例えば僕は日本のヒップホップとかをたまに聴くよ。意味は理解できないけど、それでもカッコいいと思う。

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グライムスはスペシャルだ。彼女が作り出したエイリアン・テクノ・ヴァイブスは僕らの音楽にも入っていると思う。FKAツイグスも本当に最高だしUSやUKからの影響はもちろん、フランスのエレクトロ・ミュージック・アーティストとかからも影響を受けている。

音楽制作について訊きたいんだけど、インスピレーションはどこから受けることが多いですか? 他の音楽からとかですか? それとも日常生活?

H:日常の経験から影響を受けるよ。僕たちは日常で起こったことをありのままに書いているわけではないけど、例えば何かに怒っているときは激しいビートができるし、いつも自然と頭に浮かんでくるモノをまずは作るようにしているから、落ち込んでいるときは自然とアンビエントなシンセサウンドが浮かんできたりする。ひとつの楽曲のなかにたくさんの感情が宿っていると思うけど、それは自然と湧き出てくる感情が音につながっているからだと思う。歌詞を書くのには苦労するときもあって、さっき話した自分たちのムードはサウンド面で表現することが多いのだけど、歌詞は抽象的に表現をして、聞いてくれる人がそれぞれの意味を見つけられるようんしたいんだ。これが僕たちの人生で起きたことだよって伝わえるわけではなくてね。僕たちは抽象画を書いて、最終的にそれがどのような絵なのかはリスナーに感じたまま受け取って欲しいんだ。

M:抽象的な音楽を作りたいというのは私たちのひとつのテーマであると思う。

リスナーに考えたり、色をつけるスペースを与えたいと?

M:そういうことだね。

たしかに”Everything Is Good” といいながらもサウンドはカオスティックで全然グッドではなかったり、頭のなかで映像が自然と浮かんでくる楽曲も多いですよね。

H:それは映画にも影響を受けることが多いからかな? たまに映画についての曲も書くよ。他のアートから影響を受けてまた別のアートを生み出すのは素晴らしいことだと思うんだ。

どんな映画に影響を受けたの?

H:『ショップリフター』って見たことある? 日本の映画だと思うんだけど。舞台は東京だっけ?

M:うーん、たぶん。

ああ、『万引き家族』ね。僕は観たことないけど、有名な映画です。

H:Hirokazu Koreedaの映画だよね。発音がわからないけど。

ヒロカズ・コレエダだね。

H:コレエダ? 発音するのが難しいね。でもとても影響を受けた映画のひとつだ。ベタだけど『パラサイト』も好きだね。

M:『マルホランド・ドライブ』……

H:イエス! 僕たちはデヴィッド・リンチが大好きだ。

M:最近私はMUBIというプラッフォトームでよく映画を見ている。知っている?

知らないなあ。Netflixみたいな感じですか?

M:似たような感じだけど、MUBIはもっと昔の映画、インディペンデントな作品やフィルム・フェスティヴァルで上映されたモノとかが取り扱われてるんだよね。最近『La Haine』というフランス映画は最高にクールだったわ。

へえ! 全然知らなかったよ。チェックしてみるよ!

H:日本のシリーズを見てたことあったよね? なんて名前だっけ?

M:名前忘れちゃったわ

H:あれ韓国のだっけ?

M:たぶん

H:ごめん日本と韓国はいつもゴチャゴチャになっちゃうんだ。

大丈夫だよ。僕もよくあるよ。あなたたちは自分たちの音楽を ”ベッドルームR&B”と呼んでいますね。プレスリリースによるとあなたたちはThe Internetやグライムスといったアメリカ(カナダ)のアーティストから影響を受けていると書いてあるけど、FKAツイグスやマッシヴ・アタックのようなUKのアーティストのスタイルとも親和性を感じます。ヨウスカが音楽を作る上で、アメリカのアーティストからの影響が多いのですか?

H: 面白いね。いま挙げてくれた4つのアーティストは僕たちにとっていちばん影響を受けているアーティストと言えるからね。とくにグライムスはスペシャルだ。彼女が作り出したエイリアン・テクノ・ヴァイブスは僕らの音楽にも入っていると思う。FKAツイグスも本当に最高だしUSやUKからの影響はもちろん、フランスのエレクトロ・ミュージック・アーティストとかからも影響を受けている。たくさんの音楽を聴いて、それぞれから影響を受けているし、国はあんまり関係ないかな。アメリカやカナダのアーティストが多い気もするけど、それは単純にアーティストがたくさんいるからだと思う。

M:私は自分がバンド・プレイヤーとしても参加しているノルウェーのSassy 009から大きな影響を受けている。バンドに参加してからはもちろんだけど、彼女と知り合う前からね。Sassy 009のアルバムのMixをしていた人が“Everything Is Good”のMixもしてくれたのよね。

マリットがSassy 009のプロジェクトに参加してから具体的にはからはどのような影響を受けましたか?

M:レコーディング・プロセスからソングライティング、とにかくいろんなことを影響されていると思う。彼女の音楽そのものはもちろん、美学のようなモノにも影響を受けているわね。スタジオワークで衝動的にイメージをサウンドに変化させるのがすごく魅力的で。音やテイク選びにも優れていて、彼女からサウンドのノイズ、アンビエント、歪みなどの使い分けを多く学んだと思う。

ヨウスカのサウンドには他にもテクノやアンビエントとかの音楽性も加えられていて、とてもオリジナルなモノだと思う。いつも音楽を作るときにヨウスカのオリジナリティーを出すことは意識してる?

M:そうだね! 私たちは自分たちのオリジナル・サウンドを作ることを意識してる。さまざまなアーティストからの影響を感じさせつつも、自分たちのオリジナル・サウンドとして成り立っているのはとても重要だし、聴いてくれた人がいままで聴いたことないような音楽を作りたいの。

インスピレーションをミックスして?

M:そういうことよ。

H:とにかくインスピレーションは多いほうが良いと思っているし、それをミックスすることで良いものが作れると思っているんだよね。

なるほど。楽曲制作では最初にゴールを作りますか?それとも感覚的に作りますか?

H:たまに制作に入る前にどんな曲を作りたいのかビジョンを描くことはあるね。もちろん感情に任せることもあるよ。怒りの感情が強いときはそういった曲になるし、悲しいムードだと自然とメランコリックな表現がキャプチャーされたりね。ただヴィジョンを描くとはいったけど、例えばあのアーティストのあの曲みたいな楽曲を作りたいとかはないかな。曲を作る前にこの曲を聞いてくれた人がどんなムードになってほしいのかを考える感じかな。

ライヴとかをイメージして?

H:そうだね。ライヴでのオーディエンスもヘッドフォンでひとりで聴いてくれる人もイメージかな。

H:ライヴで演奏することなんていまでは奇妙な話に思えちゃうね。悲しいけど。

日本ではキャパシティーを制限してライヴを開催できるよ。なんとかね。

M:本当に?

うん、完璧とは言えないけどね。僕も主催しているイベントがあったりするよ。

M:私たちを呼んでよ!

計画するしかないね! こんな時代終わったらね!

M:楽しみだわ。

話は代わるけど、マリットは好きなヴォーカリストやリリシストはいますか?

M:う〜ん、選ぶのが難しすぎるわ。

M:レナード・コーエンとスフィアン・スティーヴンスはとてもお気に入りね。私たちの音楽とはかけ離れてるけどね。

H:彼らのような少しメランコリックなアコースティック・ミュージックは小さいときから触れる機会の多い代表的なジャンルでもあるんだ。僕らは2人とも小さな街の出身だからカルチャーとかも発展してなかったし、悲しいムードから逃げ出したいときとかにレナード・コーエンやスフィアン・スティーヴンス、あとはダミアン・ライス(アイルランドのフォーク歌手)とかもよく聴いていたね。フォーク系のアコースティックな音楽は僕たちが10代の頃によく聴いていた音楽のひとつだと思う。

M:ボン・イヴェールのジャスティン・ヴァーノンも大好きだわ。彼の音楽を初めて聴いてたとき、言葉では説明できないような感情に初めて陥った。感情爆発したかのようだったし、いままで聴いたことのない音楽のようだったの。

H:僕もだよ。彼のセルフタイトル・アルバムからはかなり影響を受けている。あのアルバムを聴いている間は完全に彼の音楽の世界に溺れているような感覚にさせられる。音が瞬間的に伝わってきて、それが景色を作り出すんだ。

僕も彼が大好きだよ。初めてコーチェラで彼のステージを見たとき、本当に遠くにいて彼の姿も見えないくらいだったんだけど、それでも彼が鳴らす音はダイレクトに伝わってきたりしてね。

H:2011年に観た彼のライヴはいまでも人生でもっとも素晴らしかったライヴのひとつだよ。さっき言った大好きなSTアルバムのツアーでね。

そのとき見れたのは羨ましいな。マリット何を考えているの?

M:女性で好きなリリシストは誰かな〜って考えてて。たくさんいすぎて決められないわ。

(笑)

M:グライムスの話はしたしなあ。Joan BaezやLinda Perhacsは大好きだわ!

H:ニコも大好きだよ。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは聴いたことある?

もちろん

H:ルー・リードのバンドね。彼女はいくつかの曲でコラボしたんだ。アンディ・ウォーホルが仕組んだんだよね。

H:おかしいことに2015年より後のアーティストについては何も語ってないね(笑)。

M:たしかに(笑)

ノルウェーにはほかに、クラブ系ではリンドストロームやトッド・ティエリ、プリンス・トーマスのような国際的なDJ / プロデューサーがいるのと、〈Smalltown Supersoun〉というレーベルもありますが、ヨウスカや他の同世代のアーティストにとって彼らはどういった立ち位置ですか?

H:もちろん、彼らは知っているよ! 彼らに影響を受けたと声を大きくしては言えないけれど、彼らのライヴを何回か見ているから、もしかしたらどこかで知らずと無意識で影響を受けているかもしれないね。〈Smalltown Supersound〉についても知っているけど、残念ながら繋がりはないかな。ただ、ノルウェーのレーベルやアーティストが世界的に評価されるのは嬉しいことだし、僕たちの世代やさらに若い人たちも含めて世界中に自分たちの音楽を発信したいと思っているのは間違いないね。

ジェニー・ヴァルはどう? 彼女もノルウェーの画期的なアーティストだと思うけど。

M:大好きだわ! 『Blood Bitch』というアルバムをめちゃくちゃ聴いてるよ。

H:あ! ちょっとまって!

M:彼女のコンサートは素晴らしかったわ。思ってるほどにノルウェーで有名ではないけどね。

(ハンズがTシャツを持ってくる)

わお! ツアーTシャツ?

M:猫を飼ってるから穴が空いてるけどね。これは日本語だよね?(“血売女“ という字が書いてある)

それは漢字だね。僕たちも使うよ。「Blood Bitch」って漢字を使って書いてあるね。

H:なるほど!

M: 私は彼女のダウナー落ち込んでいるときによく聴くかな。そういったダークな感情から逃げるのにちょうど良いのよね。

H:彼女はたくさんのノルウェーのアーティストに影響を与えていると思うよ

M: とくに女性ヴォーカリストにはね。

H:彼女は新しい女性SSWのシーンを早い段階から作っているからね。たぶん2010年くらいからかな。ノルウェーのいまのシーンにも繋がっているとても重要なアーティストだと思うよ。

LAでも人気だったよ。彼女のツアーはすぐにソールドアウトしてね。ようやくだけど、アルバムの話しも聞いてもいいですか?

M:もちろん


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日本やアメリカと比べるとここでは生計を立てるための機会がみんなに与えられていると思う。仕事を失ってもここでは大きな問題ではなくて、政府が新しい仕事を見つけるサポートをしてくれるんだ。


『Everything Is Good』は音はもちろん、コンセプトも素晴らしい1枚でした。まずあのジャケットが目を引くと思うのですが、あのジャケットを作る上での戦略や目的はあったのでしょうか?

H:僕たちは大惨事のようなシチュエーションを描きたかった。そもそもウェディングドレスを中古ショップで見つけて、それを持ってビーチに行ったんだ。ウェディングドレスといえば “ロマンチック”や“幸せ”のようなポジティヴな感情を象徴するモノだと思うんだけど、それを身につけながら悲しみや憂鬱のようなモノを表現したかったんだ。

“Everything Is Good”というタイトルなのに楽曲がメランコリックなのと同じだね。

H:そういうことだね。

M:ドレス全体は見えないけどね。

マリットは撮影日について覚えていることはある?

M:私たちは一日中海にいたんだけど、とにかく寒い日だったのよね(笑)。身体についた砂を設立されているシャワーで洗い流したんだけど、とにかく水が氷水みたいで。もう本当に最低だったの。もしかしたらそのムードがその写真にも現れてるのかもね(笑)。

そもそもオスロにビーチがあるのを知らなかったよ。

H:ノルウェーのビーチはLAのようなビーチではないけどね。砂浜は狭いし、だいたい寒いよ(笑)。

撮影はいつだったんですか? まさか冬じゃないよね?

M:もし冬に撮影していたら私たちはいまここにいないわ(笑)。去年の春くらいね。

どっちにしてもビーチに行くには早すぎるね(笑)。

H:ノルウェーにはビーチに行くベストタイミングが7〜8月しかないからね(笑)。ちなみに日本のどこに住んでるの?

神奈川というところに住んでるよ。電車で30分くらいで東京にいけるところ。よくこの質問されるのだけど、住んでるところを説明するときは、もしNYが東京だったら、NZに住んでるって説明するんだけどわかるかな?

H:NYとNZね。村上春樹の本を読んでるから東京近辺の街や駅の名前とか少しわかるよ。都会的でコンパクトな街のイメージがあるね。

東京の満員電車は想像できる?

H:できるよ。昔やってたバンドのMVでフィルム班が東京に撮影しに行ったことがあったんだけど、そのとき彼らは小さな電車にたくさんの人が乗っている映像を撮ってきてね。しかも他の人を無理やり電車に押し込んでいるんだ。

M:OMG

だね。最悪だよ。アルバムの話に戻るけど、『Everything Is Good』の制作に限って言うと、一番影響を受けた3組のアーティストを教えて下さい

M:グライムスは確実ね あとは……。

H:ノルウェーのスメーツも入るかな。

H:いままで触れてこなかったけど、テーム・インパラにもたくさん影響を受けているね。グライムス、スメーツ、テーム・インパラの3つのアーティストの間にいるようなサウンドを作りたかったんだ。テーム・インパラの大好きなところはダークな曲でもといかく音がとにかく心地良いところで、高揚させるような楽曲の中で同時に悲しみやダークさが味わえるのが好きなんだよね。

たしかにヨウスカのサウンドにも包まれるような心地良さがありますよね。

M:そこは意識したわね。水が流れるように自然に身を委ねられる心地良いサウンド作りをとくにシンセサイザーの音で意識したわ。

H:あとは「Euphoria」というドラマにも影響を受けたね。雰囲気やヴィジョンがとてもクールなんだ。チェックしてみて。

見てみるよ。 『Everything Is Good』というポジティヴなアルバム・タイトルですが、内容はもっとメランコリックでダークでエモーショナルですよね。何故こういったアイロニカルな表現をタイトルで使用したのでしょうか? まったく情報がなければサマーチューンが詰まったアルバムをイメージします(笑)。

H:大事なところだね。アルバムはダークでメランコリックなモノに仕上がったんだけど、アルバム内容をそのまま表現するようなタイトルはつけたくなかった。もっと面白くしたかったのさ。アルバムのタイトルを見てから聴いてもらえれば一瞬でそれがアイロニカルな表現だって気づいてもらえると思うし、ちょっとクスッとしてほしくてね。予想していたサウンドと別のものを届けたかったんだ。僕たちはペテン師ではないけど、サプライズが好きでね(笑)。

(笑)ヨウスカの音楽には哀しみが含まれていると思うのですが、その哀しみはどこから来た哀しみですか? 個人的な心配事や出来事、もしくは日々の生活の中で感じること? もしくはもっと外の世界で起きている社会問題とかからですか?

M:混ざっていると思う。もちろんパーソナルな経験から来ることもある。そしていまの私たちが置かれている状況とかからもね。例えばInstagramにいいね!とフォロワーを稼ぐために写真を上げるのは本当にストレスになるし、この状況にまだ慣れない。それでも残念なことにいまでは社会の大きな一部になってしまっているでしょ。そういった日々の小さなことから気持ちがダウナーになってそれが楽曲のムードにも反映されていると思う。

ときどき全部やめたくなるよね。

H:本当にね。それに僕たちは神経質だと思うんだよ。いろいろ考えてしまうし心配ごとも多い。でも自分たちの性格がこういう人間だって知ってからは感情を自分たちの音楽で表現したいと思ったよ。無理に明るい音楽を作るんじゃなくてね。悲しいかもしれないけど、同時に美しいかもしれないから。

感情を吐き出せる場所があるのは素晴らしいことだと思うよ。 ちなみにパーソナルなこと以外だとノルウェーのダークな部分から影響があったりするんでしょうか?

M:あるわよ。

例えばどんな? ノルウェーには行ったことがないので、多くの情報を知ってるわけではないけど、そんなアウトサイダーにはノルウェーはとても良い国に見えます。カレッジに無料で行けたり、医療システムも平等で整ってる。僕はアメリカが好きだけど、とても問題が多すぎて良い国とは言えないし、日本に良いイメージを見る人も多いけど、治安は良いけどじつは自殺者が多い国なんて良い国とは言えないよね。そういう意味でいうとノルウェーは外部者からしたらパーフェクトな国にも見えたりするんだけど、そうじゃないかもしれないよね。ノルウェーのダークなポイントはあったりするのでしょうか?

H:そうだね、まずたしかにノルウェーやスウェーデン、デンマークといった国は世界のなかでもとくにラッキーな国だと思うよ。国の決まりや政治においてね。小さい国だからまとめやすいというのも大きいと思う。例えば僕たちはほとんどの国民が政府を信じているし、世界的に見るとそれはユニークなことだと思う。例えばアメリカでは政府と国民の間には溝が空いていると思う。政治家と市民はまるで違う世界に住んでいるかのようにね。でもノルウェーでは誰もが誰かしら政治に関わっている人を知っているから、格差がなくて親近感を持ちやすいんだ。それは多くの人たちが持っている社会主義的な考え。ほんとうの意味での社会主義ではないのかもしれないけど、平等主義者というのかな。

平等主義者? 例えばどんなことから感じるの?

H:日本やアメリカと比べるとここでは生計を立てるための機会がみんなに与えられていると思う。仕事を失ってもここでは大きな問題ではなくて、政府が新しい仕事を見つけるサポートをしてくれるんだ。たぶんだけど、日本やアメリカでは一度仕事を失ったら、それは人生に大きく作用するような出来事になっていると思うし、自殺とかにも繋がってくると思うんだけど。

そうだよ。

H:日本はアメリカよりマシでしょ?

うーん、経済的な格差にしてはマシだと思う。アメリカにはホームレスが多すぎるしね。LAを離れてNYCに行ったときがあったんだけど、しばらくNYで生活してLAに戻ってきたら友だちがホームレスになってた。そういったことが普通に起きたりするんだ。彼はたった23歳だったのにね。ところでノルウェーのダークポイントは?

H:人びとがとても孤立しているんだ。自分自身の抱える問題や感情を人に話すのも苦手だし、新しい人たちと出会うのを恐れているところかな。なかには生まれてから死ぬまで同じ環境のなかで同じ人たちと過ごす人たちもいるよ。日本にも似ている部分があるよね?

そうだね。日本人はとくにシャイだから。でもノルウェー人もシャイなの? 僕には数人ノルウェー人の友だちがいるけど、彼らめっちゃ喋るから(笑)。逆に珍しいのかな?

H:そうだね。レアだよ。ノルウェー人はとてもシャイだと思う。

M:ノルウェー人は偏見が強いよね。

H:そうだね。ノルウェーの人は偏見が多いと思うし、すぐに他人をジャッジする傾向にあると思う。たしかに他の国よりも住みやすい国ではあるんだけど、それをわざわざランキングっぽい感じで表現していたりする。それは社会的にはよくないと僕は思うかな。

M:甘やかされて育った子供みたいにね。

M:気候も関係あると思う。冬なんてとにかく暗いし寒いんだけど、それらが人のムードとかにも直接関係していると思う。

H:ノルウェーより南から引っ越してきた人たちは、とにかく冬になると落ち込むよ。なんつったって、太陽が出ないからね。

M:真っ暗よ。

H:この気候はノルウェーの人たちのワガママな正確を生み出しているひとつだと思う。世界的には考えられないかもだけど、あの冬があるし、僕たちは毎年夏に長い夏休みを取る権利があると思ってるからね(笑)。

そろそろアルバムの話に戻りたいのですが、4曲目に収録されている“Pink”という曲にはDoglover95というアーティストがゲスト参加していますよね。彼はオスロのラッパーのようですが、元々繋がりがあったのでしょうか? 

H: うん、彼のことはもともと知っていたよ。彼がリリースしたアルバムが大好きだったんだ。

M:彼の音楽ではノルウェーのラッパーでは珍しい実験的なサウンドなんだよね。

H:ノルウェーのラッパーはだいたいキャッチーなモノを目指して作るんだけど、彼はもっといろんなモノを取り入れていてユニークな存在だよ。人としても最高なヤツだから一緒に仕事できて嬉しかったね。

M:プロデューサーとしても素晴らしいの。

アルバムを作ってるときに記憶に残ってることってあります?

M:フィレンツェに2週間行ったときがあって。

H:ダラシないノルウェー人だね(笑)。

M:アルバムの制作もスタートしてね。すべてが素晴らしい体験だったのよね。

H:建造物やムードとか街を歩いているだけで感じることがたくさんあったんだ。ダビンチとか偉大なアーティストがたくさん生まれた街だからね。滞在するだけで感じるモノがとにかく多かったんだよね。音楽を作るのには最適な場所だね。

ノルウェーからそんなに遠くない?

H:遠くないよ。飛行機で3時間くらいかな。

それは良いよね。ヨーロッパに住んでいると、いろんなところに気軽にいけるのがいいよね。

M:うん。文化や言葉が違う国に気軽にいけるのはアーティストにとって良いことだと思う。

アルバムのなかでとくにお気に入りの曲はある?

H:僕のお気に入りは冒頭の”Everything Is Good”だよ。個人的に一番ピュアな曲だと思うし、アルバムのムードを1曲で表現できた曲だと思うんだ。メランコリックな気持ちにもなるし、楽曲の最後のカオスなアレンジが好きだね。

M:私は“Beat Up You Baby”がお気に入りね。まずメロディが好きなの。脳内のなかをグルグル回ってる感じがするのよね。この曲は他のアーティストとは全然違うオリジナリティのある曲にとくに仕上がっていると思う。インディー・ギターとR&Bヴォーカルをミックスしたスタイルがとくにうまく表現できたかな。

アルバムのラスト・トラックである“”♰shadow♰は作中もっとも実験的な曲ですが、この曲のアイデアはどこから来たんですか?

H:(笑)Shadowだよ(猫をみせる)。

M:フィレンツェで作った曲だよね。

H:フィールド・レコーディングでイタリアの子どもたちが公園で遊んでいる様子を録音したんだけど、それをあらためて夜中に聴いているとメランコリックな気持ちにさせられてね。ただ、子どもたちが理解できない言語で喋っている要素が録音されているだけなのに、ノスタルジックが止まらなかったんだ。だからこのサンプルの上でヨウスカらしい即興シンセを乗せて、アルバムのラストアンセムにしたんだよ。

M:フィールド・レコーディングでとてもノスタルジックになって、私は子供の頃の感情を思い出したの。子供のときに飼っていたペットが死んじゃったこととかね。本当に残酷で辛かった。当時はその私が大切にしていたウサギが死んでしまったことを理解もできなかったの。この曲はそのウサギとShadowを重ねた曲だね。この子もいつか死んでしまう日が来るわけだし。

H:だから「shadow」の隣に♰がついているんだ。

M:あらためてお葬式をやっているかのようにね。

とても悲しい終わり方ですね。

H:だね。

オスロの音楽シーンについてもっと訊きたいのですが、先ほどスメーツやSassy 009というアーティストが話題になりましたが、個人的にはDas Bodyや Lokøyといったアーティストも好きで、こういったエレクトロ・ミュージックにR&Bが加わったスタイルの素晴らしいアーティストがオスロから続々と出てきているような気がするのですが、それに理由などはあると思いますか?

H:たしかにオスロではつねにどこかしらの若いアーティストのコミュニティーがいつも急激に成長をしている感じがあるよ。理由としては、まずアーティスト同士の距離が近くて影響与えあっていることかな。オスロという街は大都市に比べると規模が小さいから知り合いが音楽を作っていることも多くて、そういった知り合いがカッコいいものを作っていると自分も作りたくなる。そういった連鎖が生まれていると思う。コラボレーションとかもやりやすい環境だと思うしね。他にはライヴをプレイする場所もたくさんあるし、ノルウェー政府からサポートを受けられることもたくさんの若い子が音楽をやっていける余裕がある理由の大きいなひとつだと思う。

政府に支援されている?

H:そうなんだ。だから誰しもが弁護士や医者を目指す必要はないんだ。そういった財政的な支援があるから僕たちはメジャーなポップを作らなくても済んでいる。楽器を買ったり、アルバムを制作したりするのはお金がかかることだけど、僕たちアーティストはそういった音楽活動することで欠かせないことに関して財政的支援を受けられるんだ。

M:あと、目立ちたいってのもあると思うな。ノルウェーではだいたいがポップ、ヒップホップ、フォークみたいな音楽をやってる人が多いから、だから違うタイプの音楽を作ればシーンのなかで目立つしね。

H:ノルウェーの伝統的なポップ・ミュージックはだいたい年寄りのために作られてたりするから、僕たちの世代は自分たちが好きなものを好きなように作りたかったんだと思う。それは結果的にはノルウェーらしいモノではないけど、新しいモノではあると思うんだ。それで結果的にそういった思考を持ったアーティストはオスロに集結する。それ以外の街ではなかなか活動が難しいからね。

M:私たちは別々の街で育ったけど、どちらとも音楽をやってる人はいなかったね。本当にやりたいならオスロに引っ越してくるのが主流なのよ。小さい街にとって悲しいことかもだけどね。でもオスロに引っ越してきて、すれ違う人が全員カルチャーに対して興味を持っているような感じがあるわ。

他のジャンルのアーティストとも関わったりしますか?

H: うん、いろんなジャンルのアーティストと関わるよ。僕たちはプロデューサーとしても活動しているからね。とくにアコースティックな音楽や実験的なジャズ、更にはノイズミュージックのようにヨウスカよりも実験的なモノをやったりもする。自分たちのなかでリミットを立ててしまうとつまらなくなってしまうからね。そういったこともあって僕たちはいろんなアーティストと繋がりがあるよ。

InstagramでSafarioと一緒に仕事をしているとこを見たよ。

H:そうだね、最近彼と仕事をしているよ!

彼はもっとアメリカのベッドルーム・ラップっぽい感じだよね。他のアーティストとかもジャンルをまたいで仕事をしている人が多いの?

H:あんまり多くはないかな。だいたいの人たちは同じジャンルの人たちと一緒に仕事をしたり遊んだりしているからね。LokøyやSafarioのようになかにはジャンルを超えて色々やっているアーティストもいるよ。個人的には自分たちとまったく違うアーティストと仕事をすることは最高だと思っている。全然違う趣味のなかでお互いが好きなモノを見つけたら、それは大きな発見にもなって自分自身をアップデートすることにも繋がるからね。

クラブとかには遊びに行くの? 

M:行かないわね。

H:いまは行かないね

M:昔から行かなかったじゃない。オスロにはクールなクラブは多くないの。

H:オスロにはクールなクラブはあんまり多くないんだ。少しはあるけど、だいたいオスロのパーティ・カルチャーといえば、飲んで、酔っ払ったら外で休憩して、良い感じの人を見つけてセックスするみたいな感じだからね。ただここ10年間でいろいろ変わってきていると思う。最近レイヴ・パーティを主催する人が増えていて、そこではクールな音楽がいつも流れているんだ。街の中心にあるクラブだとせいぜい2〜3くらいしか良い場所があるかないかって感じかな。

なるほどね。クラブ・カルチャーは若い子には根付いていませんか?

H:クラブに行くのは高いんだよね。ノルウェーの人はだいたいお金をそこそこ持ってるけど、それ以上にアルコールが高いんだ。だから若い人がクラブで朝まで過ごすにはハードルが高くてね。半月の給料を一夜で溶かすようなモノだよ。

本当に? 普段から高いの? それともクラブ内でだけ?

H:どこ行っても高いけど、クラブはとくに高いね。アルコールのルールが厳しいんだ。

日本とは真逆だね。日本は他の国よりも安くアルコールをクラブで買えるよ。でも逆にドラックには超厳しいから海外のお客さんからはたまに文句言われてるよ(笑)。

H:ノルウェーもドラッグに対しては少し厳しいかな。でもいろいろ変わっていて、マリファナはたぶん合法になっていくと思う。

最後にオススメのオスロの新人アーティストを3組教えて下さい。

M: まずはJuni Habel(ユニ・ハベル)彼女はインディーフォークSSWね。最高なの。

H:少しジョニ・ミッチェルに似てるかな。メロウでチルなフォークでめちゃくちゃ最高だよ。

M:Niilasも最高ね。

H:彼はエレクトロ・プロデューサーだね。彼はずっとDJとして活動していたんだけど、最近自身のデビュー・アルバムをリリースしてね。それが最高なんだよ。クラブっぽさもあるんだけど、メランコリックな要素もあってね。彼は自身の音楽にサミー族の音楽やカルチャーをミックスしようと挑戦しているんだ。サミー族の話は聞いたことある?

ごめん知らないや。

H:彼らはノルウェーの先住民なんだ。ドイツやデンマークから人びとがノルウェーに移住してくる前からノルウェーの北の地域に住んでいた人たちで、まったく違うカルチャーのなか生活していた。アメリカのネイティヴ・アメリカンと同じ感じだね。Niilasはそういったサミーの伝統音楽とヨーロッパのテクノやUKのブレイクビーツをミックスしているんだ。

M:後はアンビエントもミックスされているわ。

なるほど。ノルウェー人にしか作れない音楽ってことだね。

M:うん、そのとおりだわ。

もう一組は誰でしょうか?

H:たくさんいるから選ぶのが難しいね。

M:Murmurかな。彼女は私と一緒にSassy 009のバンドメンバーをしているの。

H:Murmur はライヴがカッコいいんだよね。日本にも一緒に行きたいよ。

M:私は彼女の唄声が大好きなの。彼女の歌い方は少なくてもここでは他の人とは全然違うのよね。

H: 僕たちみたくノルウェーのアーティストはシャイだから囁くように歌ったり、メロウな感じで歌ったりすることが多いんだけど、彼女は身体の全体から声を出すように歌うんだ。

名前もカッコいいね。ヨウスカ、Murmur、Sassy 009でツアーをできたら最高だね。

M:そうだね! せっかくリリースもできたしいつか日本にも行きたいわ!

追悼ジョン・ハッセル - ele-king

“悪行と善行の観念を越えたところに平原が広がる。我々はそこで会おう”  ジャラール・ウッディーン・ルーミー(13世紀ペルシャの神秘主義詩人)

 ジョン・ハッセルに電話インタヴューしたのはちょうど1年前の昨年7月だった

 実はそのとき、もしかしたらこれが最後の取材になるんじゃないか……という予感があった。彼の問答には、明晰さのなかにも随所で精神的衰弱が垣間見られたから。取材3ヶ月前の同年4月には、ジョン・ハッセルの生活サポートのためのファンドが立ち上がったことをブライアン・イーノがツイートしていたが、当時ハッセルは、骨折治療とコロナ禍での健康不安により生活が困窮していたという。昨年の新作『Seeing Through Sound』により、新たなリスナーを増やしていただけに、彼の逝去はあまりにも残念だ。

 件のインタヴュー記事では『Seeing Through Sound』のことだけでなく、過去のキャリアについてもかなり語ってもらった。彼の業績に関する総論的追悼文をここで書いても、インタヴュー記事の内容の繰り返しになってしまうので、ここでは、彼の音楽的基盤から枝葉まで、その具体例を聴きながら改めて全体像を把握することで、追悼文に代えさせていただく。

ジョン・ハッセルに多大な影響を与えた音楽家たち

1. Stan Kenton『This Modern World』(53年)

 ハッセルは1937年3月、米テネシー州メンフィスに生まれた。父親が大学時代に学生バンドで吹いていたコルネットを手にしたのが小学生の時。十代半ばになるとジャズに親しみつつ、ジュークジョイント(黒人向け音楽バー)にも通っていたという。とくに魅せられたのが、スタン・ケントンのビッグ・バンドだ。“プログレッシヴ・ジャズ”を標榜し、斬新なアンサンブルを展開したケントンの50~60年代の作品は、いま聴いても驚かされる。「第四世界」の種のひとつがこの奇妙なハーモニーとリズムのなかにはあった。ちなみに、デビュー当時のキング・クリムゾン(とくにイアン・マクドナルド)もケントンに絶大な影響を受けていた。

2. Karlheinz Stockhausen「Gesang Der Jünglinge (少年の歌)」(56年)

 ハッセルはNYなどでトランペットと作曲を学んだ後、妻のマーガレット(70年代に離婚後は、前衛専門のピアニスト、カトリーナ・クリムスキーとして活動)と共にドイツに渡り、現代音楽の大家カールハインツ・シュトックハウゼンに3年弱(64~66年)師事した。カンのイルミン・シュミットやホルガー・シューカイもクラスメイトだった。渡独前からシュトックハウゼンの「少年の歌」(ミュジーク・コンクレートと電子音楽を統合した初期の傑作)に心酔し、切ったり貼ったりのテープ・マニピュレーションを独自に試みていたというハッセルは、留学時代には、50年代米国ジャズ・ヴォーカル・グループ、ハイ・ロウズの作品をコラージュしたりもした。シュトックハウゼンの下で習得した電子機器の使い方やプログラミング、テープの切り貼り等の技術は、80年代以降の彼のサンプリング・ワークの土台になった。

3. Terry Riley『In C』(68年)

 「私は彼のことが大好きだったし、お互いの妻も含め、ひとつの家族のような関係だった」と語るように、ドイツから米国に戻ったハッセルがもっとも親しくつきあい、また影響も受けたのがテリー・ライリーだ。帰国したハッセルを待ち受けるように60年代後半の米国現代音楽界で沸騰しつつあったのが現代音楽のニュー・モード、ミニマリズムだが、そのブレイクスルーの象徴的作品であるライリー『In C』の初録音盤(68年)にはハッセルと妻マーガレットも参加している。

4. Pandit Pran Nath『Ragas』(71年) 

 ハッセルは、テリー・ライリーとともにミニマリズム・ムーヴメントを牽引していたラ・モンテ・ヤングのドローン・プロジェクト《Theater of Eternal Music(永久音楽劇場)》にも加わり(ヤングの74年のライヴ盤『The Theatre Of Eternal Music - Dream House 78'17"』に参加)、そこから導き出した「垂直の音楽」(時間軸に沿った旋律聴取ではなく、微細な音色や倍音などの感知を通して音の深奥まで下降し体得する音楽的アナザー・ヴィジョン)という概念を元に、やがて「斜めの音楽」という独自の世界を目指していった。その思考過程を土台固めしてくれたのが、すでにライリーとヤングが師事していたインド古典声楽の大家パンディット・プラン・ナートだ。ハッセルは72年、ヤング夫妻に同行してインドに赴き、ナートの下でインド古典声楽の修業をした。やがて、音のなかに曲線を描くナートの歌唱技術は、トランペットを共鳴管として歌わせるハッセルの演奏技法そのものとなっていった。ハッセルはナートから学んだことを「自分の音楽の中で最も大きなポジションを占める」と告白している。

5. Μiles Davis“He Loved Him Madly”(74年)

 ライリー&ヤングやパンディット・プラン・ナートと並びハッセルの表現にもっとも大きな影響を与えたのがエレクトリック期(60年代末期~70年代半ば)のマイルズ・デイヴィスだ。ピックアップを仕込んだマウスピースを歌うように響かせ、エンヴェロープ・フィルターなどで電気処理するというハッセルの演奏技法は、当時のマイルズのワウ・ペダルを参考にしたものであり、その技法は今日ニルス・ペッター・モルヴェルなどによってさらに発展している。ハッセルはいくつかのインタヴューでとくに愛着のあるマイルズの作品として『On The Coener』(71年)や『Live-Evil』(72年)などを挙げているが、音色やムードが最も近いのは『Get Up With It』のA面曲“He Loved Him Madly”だろう。これがハッセルのソロ・デビュー作『Vernal Equinox』に直接的に影響を与えたことは想像に難くない。

11枚で俯瞰するジョン・ハッセルの軌跡

1. Jon Hassell『Vernal Equinox』(77年)

 ジョン・ハッセルの名前と「第四世界」なる新コンセプトを一躍世界に広めたのは言うまでもなくブライアン・イーノとの連名で発表された『Fourth World Vol. 1 - Possible Musics』(80年)だが、そこで示された斬新なサウンド・プロダクションの大半、そして彼の表現の核である夢幻的官能性は既にこのソロ・デビュー作の中に十分すぎるほど認められる。キーワードの「第四世界」こそ明記されてはいないが、コンセプト自体はこの何年も前から彼の頭のなかにはあった。乱暴に言ってしまえば、本作にイーノがエレクトロニクスでトリートメントを加えたのが『Fourth World Vol. 1 - Possible Musics』だったのだ。米ピッチフォーク誌の「アンビエント・アルバム歴代ベスト50」リストでも47位に選出されているが、個人的にはベスト10に入れるべき作品だと思う。ハッセルは近年のインタヴューでこう語っている。「当時私は、電子技術を組み合わせた管楽器によってラーガとミニマリズムの相克を探求していた。最近、本作に内包された種子が自分にとっていかに重大なものだったかが改めてわかり、驚嘆した」

 録音は76年、トロントのヨーク大学エレクトロニク・メディア・スタジオ。参加しているのは、「永久音楽劇場」の仲間であり、人体の自律神経を用いた音楽作品 (バイオ・フィードバック・ミュージック) で一躍注目を集めていた実験音楽家デイヴィッド・ローゼンブーム、純正律や現代音楽的ガムランなどで80年代に有名になる実験音楽家ラリー・ポランスキー、パリから米国に移ったばかりのブラジル人パーカッション奏者ナナ・ヴァスコンセロスなど、実験音楽と民族音楽の両方を自在に行き来するクセ者ばかり。そしてエンジニアを務めたのは、80年代以降、ブライアン・イーノやダニエル・ラノワの右腕的コラボレイターとして、あるいはリアルワールド系作品のプロデューサーとして大活躍することになるマイケル・ブルック。当時パンク・シーンでギターを弾いていたブルックは、ここでのハッセルとの出会いをきっかけに、世界中の民族音楽に興味を持つようになったという。

2. Talking Heads“Houses In Motion”(80年)

 「こういう作品を待ち望んでいた」と絶賛したとおり、『Vernal Equinox』はブライアン・イーノに絶大な影響とインスピレイションを与えた。そしてハッセルもまた、イーノとの出会いをきっかけにポップ・ミュージック・シーンと関わり始めた。その最初のコラボ・ワークが、トーキング・ヘッズの傑作『Remain In Light』 への参加だ。アフリカ音楽のリズムを大胆に取り込んだ本アルバムへの賛辞“原始と電子の融合”は、そのままハッセルの「第四世界」のコンセプトでもある。翌年出たイーノとデイヴィッド・バーンの連名による『My Life In The Bush Of Ghosts』にはハッセルは参加しなかったが、そこで展開されたエスノ・エレメントのコラージュ・ワークは、元々はハッセルのアイデアであり、後年彼はインタヴューで「二人にパクられた」と恨み言をつぶやいている。

3. Jon Hassell『Aka / Darbari / Java - Magic Realism』(83年)

 ハッセルは、マレー半島の山岳少数民族セノイ族の夢理論をモティーフにした『Dream Theory In Malaya (Fourth World Volume Two)』(80年)を経て、この次作では「第四世界」上に「マジック・リアリズム」という新コンセプトを積み重ねた。ここでは、世界初のデジタル・サンプリング・キーボード「Fairlight CMI」を導入し、ピグミーのコーラスやセネガルのドラム、イマ・スマックのレコードなど様々なサウンド・エレメントを細分化、再構築している。サンプリング/コラージュやミニマリズム、インドのラーガなどから始まったハッセルの初期キャリアの、これが最高到達点だろう。

4. David Sylvian「Brillant Trees」(84年)

 ハッセルが参加したロック系作品のなかで、『Remain In Light』と並びもっとも有名かつ印象的なのが、デイヴィッド・シルヴィアンの初ソロ・アルバム『Brilliant Trees』だろう。全7曲中の2曲でトランペットを演奏。ハッセルの参加がどういう経緯だったのかは不明だが、本アルバムには元カンのホルガー・シューカイ(ハッセルとはシュトックハウゼンの同門)も参加しており、もしかしたらホルガー経由(推薦)だったのかもしれない。ちなみにカンにも「第四世界」とは似て非なる「E.F.S.(Ethnological Forgery Series=民族学的偽造シリーズ)」というコンセプチュアル・ワークがあった。

5. Kronos Quartet「Pano da costa (Cloth from the Coast)」(87年)

 クロノス・クァルテットがハッセルに委嘱した弦楽四重奏曲。クロノスのアルバム『White Man Sleeps』に収録。ハッセルをクロノスに紹介したのは、クロノスにたくさんの楽曲を提供しているテリー・ライリーである。ここでの演奏にはハッセルは参加していないが、楽曲自体はハッセルの世界そのものだ。おそらくここから発展したのだろう、クロノスの93年のアルバム『Short Stories』ではハッセルの師パンディット・プラン・ナートが歌った曲も入っている。

6. Jon Hassell/Farafina『Flash Of The Spirit』(88年)

 デビュー作『Vernal Equinox』で電子音楽家デイヴィッド・ローゼンブームにもンビラやタブラ等を担当させるなど、当初からパーカッションに強いこだわりを持っていたハッセルがブルキナファソの伝統音楽打楽器アンサンブル(7人編成)ファラフィーナとガップリ四つに組んだ作品。バラフォンやタマ、ジャンベなどが複雑に織り成すアフリカン・ポリリズムのなかをハッセルの電化トランペット/キーボードが蛇行する様は「第四世界」音楽のわかりやすいサンプルか。パーカッシヴな名曲としては、同年にジャン=フィリップ・リキエル他とイタリアでライヴ録音した「Pygmy Dance」(91年のオムニバス盤『Ai Confini / Interzone』に収録)もお勧めだ。

7. Les Nouvelles Polyphonies Corses With Hector Zazou「In La Piazza」(91年)

 フランスの前衛室内楽ユニット「ZNR」での活動を経て、80年代にはアフリカ他世界中の伝統音楽を独自に加工したキッチュなエスノ・ポップで名を馳せた才人エクトール・ザズー。なかでも人気が高いのが、コルシカ島のポリフォニー・コーラスを素材にしたアルバム『Les Nouvelles Polyphonies Corses Avec Hector Zazou』だ。ハッセルは3曲に参加。様々な声とトランペットがもつれ合いながら描くヒプノティックな曲線が美しい。

8. Jon Hassell & 808 State「Voiceprint」(90年) 

 ハッセルは都市のノイズに焦点を当てた90年のアルバム『City:Works Of Fiction』あたりからクラブ・ミュージックやヒップホップとも接近しはじめた。同年には『City:Works Of Fiction』のオープニング・ナンバー「Voiceprint」の808 Stateリミックス・ヴァージョンを含むミニ・アルバムと12インチ・シングル「Voiceprint」もリリース。後年にはリカルド・ヴィラロボスやアルカなどもハッセルをサンプリングしている。

9. Jon Hassell & Bluescreen『Dressing For Pleasure』(94年) 

 パブリック・エナミーをヴォーカル・サンプリングした『City:Works Of Fiction』以上にヒップホップ色濃厚な作品がブルースクリーン(DJを含む4人組)と組んだ『Dressing For Pleasure』だ。デューク・エリントンのエキゾティック・チューン“Bakiff”を含む細かいサンプリングで精緻に構成しつつ、全体を貫くのはブレイクビーツ。

10. Jon Hassell / I Magazzini「Temperature Variabili」(95年)

 ハッセルはライ・クーダー絡みの映画音楽にもいくつか参加しているが、『Sulla Strada』はイタリアの前衛劇団「イ・マガッツィーニ」の演目のための音楽集だ。アルバム全体にわたりハッセルが過去に試みてきた様々な技法やスタイルがちりばめられ、随時、イ・マガッツィーニの声もランダムに混入される。サウンド・スペクタクルとして非常にヴァラエティに富み、面白い作品だ。

11. Jon Hassell『Fascinoma』(99年)

 ナット・キング・コールのスタンダード・ナンバーとして有名な“Nature Boy”(モンド/エキゾティカ文脈で知られる奇人作曲家エデン・アーベの作)で幕を開け、デューク・エリントンのナンバーなどもカヴァした異色アルバム。ハーモナイザー等エフェクターなしの素ペット演奏も聴ける、一種のジャズ回帰/回顧作。しかしバンスリや木魚の音が突然出てきたり、「キャラヴァン」にタンブーラが妖しく絡みつく「Caravanesque」なんてのがあったりと、どこまでもハッセル・フィルターを通した幻想のジャズである。ジャズ・ピアニストのジャッキー・テラソンが全面参加し、プロデュース/ギターはライ・クーダー。

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