「Lea Lea」と一致するもの

B.B. King - ele-king

 〈Pヴァイン〉の「VINYL GOES AROUND」シリーズ、次なる新作はなんとブルースの王者、B・B・キング。1957年のファースト・アルバム『Singin' The Blues』と1960年作『The Great B.B.King』がオビ付きの180g重量盤としてリイシューされる。さらに、同2枚をモティーフにしたTシャツも限定販売。LPとのセットもあり。これまた見逃せないアイテムの登場だ。詳細は下記をチェック。

B.B.KINGのクラウン時代の人気作『Singin' The Blues』『The Great B.B.King』が帯付き重量盤仕様で待望のリイシュー! VINYL GOES AROUNDにてTシャツの限定販売も決定!

言わずと知れたブルースの王者、B.B.KING。彼がCrown Recordsに残したアルバムから、ファースト・アルバムにしてR&Bチャート5週連続1位に輝いたブルース史上最高の名盤の1つである『Singin' The Blues』と、傑作「Sweet Sixteen」を筆頭に脂ののった彼の演奏が詰まった『The Great B.B.King』を帯付き重量盤仕様でリイシューします。

そしてその2作品のジャケット・デザインを使用したTシャツをVINYL GOES AROUNDにて限定販売することも決定しました。

ブルースの神髄が存分に堪能できるB.B.の名作とその魂を込めたTシャツ、是非この機会にチェックしてください。

B.B.KING『Singin' The Blues』『The Great B.B.King』LP,T-Shirts 予約ページ
https://vga.p-vine.jp/exclusive/

[商品情報①]
アーティスト:B.B. KING
タイトル:Singin' The Blues
品番:PLP-7824
フォーマット:LP(180g重量盤)
価格:¥4,400(税込)(税抜:¥4,000)
発売日:2022年6月8日(水)
レーベル:P-VINE
★初回限定生産 ★帯付き

■トラックリスト
A1. Please Love Me
A2. You Upset Me Baby
A3. Every Day I Have The Blues
A4. Bad Luck
A5. 3 O'clock Blues
A6. Blind Love
B1. Woke Up This Morning
B2. You Know I Love You
B3. Sweet Little Angel
B4. Ten Long Years
B5. Did You Ever Love A Woman
B6. Crying Won't Help You

[商品情報②]
アーティスト:B.B. KING
タイトル:The Great B.B.King
品番:PLP-7825
フォーマット:LP(180g重量盤)
価格:¥4,400(税込)(税抜:¥4,000)
発売日:2022年6月8日(水)
レーベル:P-VINE
★初回限定生産 ★帯付き

■トラックリスト
A1. Sweet Sixteen (Pts 1&2)
A2. (I'm Gonna) Quit My Baby
A3. I Was Blind
A4. Just Sing The Blues (aka What Can I Do)
A5. Someday Baby (aka Some Day Somewhere)
B1. Sneakin' Around
B2. I Had A Woman (aka Ten Long Years)
B3. Be Careful With A Fool
B4. Whole Lotta' Love (aka Whole Lot Of Lovin')
B5. Days Of Old

[商品情報③]
アーティスト:B.B. KING
タイトル:Singin' The Blues Original T-Shirts
品番:VGA-1025
フォーマット:Tシャツ
カラー:BLACK / WHITE / SKY
サイズ:S M L XL 2XL
価格:¥5,280(税込)(税抜:¥4,800)
期間限定受注生産(~5月30日まで)

※受注期間が終了しましたら各デザイン一色のみの販売となります。
※商品の発送は 2022年7月上旬ごろを予定しています。
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。
※Tシャツのボディはギルダン 2000 6.0オンス ウルトラコットン Tシャツになります。

[商品情報④]
アーティスト:B.B. KING
タイトル:Singin' The Blues Original T-Shirts + LP
品番:VGA-1026
フォーマット:Tシャツ+LP
Tシャツカラー:BLACK / WHITE / SKY
Tシャツサイズ:S M L XL 2XL
価格:¥9,350(税込)(税抜:¥8,500)
期間限定受注生産(~5月30日まで)

※Tシャツは受注期間が終了しましたら各デザイン一色のみの販売となります。
※商品の発送は2022年7月上旬ごろを予定しています。
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。
※Tシャツのボディはギルダン 2000 6.0オンス ウルトラコットン Tシャツになります。

[商品情報⑤]
アーティスト:B.B. KING
タイトル:The Great B.B.King Original T-Shirts
品番:VGA-1027
フォーマット:Tシャツ
カラー:BLACK / NATURAL / SPORT GRAY
サイズ:S M L XL 2XL
価格:¥5,280(税込)(税抜:¥4,800)
期間限定受注生産(~5月30日まで)

※受注期間が終了しましたら各デザイン一色のみの販売となります。
※商品の発送は2022年7月上旬ごろを予定しています。
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。
※Tシャツのボディはギルダン 2000 6.0オンス ウルトラコットン Tシャツになります。

[商品情報⑥]
アーティスト:B.B. KING
タイトル:The Great B.B.King Original T-Shirts + LP
品番:VGA-1028
フォーマット:Tシャツ+LP
Tシャツカラー: BLACK / NATURAL / SPORT GRAY
Tシャツサイズ:S M L XL 2XL
価格:¥9,350(税込)(税抜:¥8,500)
期間限定受注生産(〜5月30日まで)

※Tシャツは受注期間が終了しましたら各デザイン一色のみの販売となります。
※商品の発送は 2022年7月上旬ごろを予定しています。
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。
※Tシャツのボディはギルダン 2000 6.0オンス ウルトラコットン Tシャツになります。

interview with !!! (Nic Offer) - ele-king

 言うまでもなく、パンデミックは世界じゅうのミュージシャンに甚大な被害をもたらした。部屋に閉じこめられた多くの人びとは内省へと向かい、それと関係があるのかないのか、アンビエント作品のリリース量も増えた。あれから2年。欧米ではライヴもパーティもほぼ普通に開催されるようになっている。20年間つねにダンスを追求しつづけてきたNYのパンク・バンド、!!! (チック・チック・チック)の面々はこの期間、どんなふうに過ごしていたのだろう。
 新作を再生すると、アコースティック・ギターが感傷的なコードを響かせている。なじみのある声が控えめに「普通の人びと、普通の人びと」と繰り返している。エネルギッシュなライヴ・パフォーマンスで知られる彼らが、まさか弾き語りに活路を見出す日が来ようとは。まったくコロナ恐るべし……

 嘘だ。2曲めからアルバムはフルスロットルで走り出す。ちょっとしたジョークなのだろう。R.E.M. のカヴァー(というよりはリリックの拝借と言ったほうが近いが)からデンボウ(*)にインスパイアされた曲まで、相変わらずヴァラエティに富んだ内容である。軸になっているのはやはりダンス。!!! がそれを手放すなんてありえない。
 むろん変わったところもある。ドラムマシンの存在感。通算9枚めのスタジオ・アルバムは、かつてなく打ち込みの度合いが高まっている。集まってセッションするのが困難なら、機械を活用するまで。ダンス・パンク・バンドが踊れない時代に突きつけた回答、それが新作『ブルーなままに(Let It Be Blue)』だ。パンデミックの「暗い」思い出を否定することなく、ポジティヴに前へと進んでいこう──ビートルズの曲に引っかけたこのタイトルにはきっと、そんな想いが込められているにちがいない。
 幸いなことに、日本でもだいぶライヴやパーティが復活してきている。先日《LOCAL GREEN FESTIVAL’22》への出演がアナウンスされた !!! だが、ここへ来て単独東京公演も決定した(詳細は下記)。リモートで制作されマシン・リズムに身を委ねた楽曲たちが生のステージでどのように暴れまわるのか、いまから楽しみでしかたない。

* シャバ・ランクスの(反ゲイ感情を含む)問題曲に由来し、その後ドミニカで独自に進化を遂げた、レゲトンの発展形。

普通でいたくないんだけど、普通でいたくないと思うのは他の皆が思っている普通のこと。それって感情の戦いだからね(笑)。ユニークであること、ユニークでありたいと思うことは普通のことなんじゃないかな。雪の結晶と同じさ。ひとつひとつが違って当たり前。それが普通のことなんだ。

つい最近スペインでツアーをされたのですよね。いまだパンデミックは継続中かと思いますが、オーディエンスの状況やパフォーマンスの手ごたえはどうでしたか?

ニック・オファー(以下、NO):すごく良かったよ。久々のコンサートだったから特別感があったし、手ごたえもすごく良かった。パフォーマンスを永遠に続けていたいような感覚だったね。まあ、メンバーのひとりでもコロナにかかったらショウをキャンセルしなきゃっていうプレッシャーはあったけど、その他はいつものライヴと同じように楽しかったし、雰囲気も同じだった。3日だったから、違いを感じる時間もなかったっていうのもあるかもしれない。アメリカに戻って長いツアーをやったらどんな感じなのかな? っていうのはいま俺も気になっているところなんだ。

住まいはいまもニューヨークですか?

NO:そうだよ。

NYはどういう状況なのでしょう? マスクをしている以外は以前のNYに戻りつつあるというような記事も見かけましたが……

NO:ニューヨークって感染者の数も多かったし、アメリカのなかではコロナを気にかけてるほうだとは思うけど、正直いまはもうコロナはあまり影響していないと思う。スーパーとかに行くと、けっこう皆マスクをしていたりするけど、それ以外は前のニューヨークと変わらないね。クラブにいったらワクチンの接種証明のカードを見せないといけないとか、以前と違うのはそれくらい。

前作もヴァラエティに富んでいましたが、今回もだいぶヴァラエティに富んだアルバムに仕上がっています。パトリック・フォードによるトラック、ドラムマシンも印象的です。こういう打ち込み寄りのアルバムに仕上がったのは、ここ2年のパンデミックと関係がありますか? たとえばエレクトロの “Panama Canal” は、ラファエル・コーヘンとマリオ・アンドレオーニのファイル共有から生まれた曲だそうですね。

NO:!!! はエレクトロニックな要素を年々増してきているけど、今回はそれがMAXになっている。やっぱりそれは、バンドとして集まることができなかったから。俺たちはエレクトロニック・ミュージックが好きだし、それは常に !!! のサウンドの要素としては存在していたけど、今回はさらにそれを強化せざるをえなかったんだ。だから逆に、次のアルバムはもっとアコースティックになるかもね。今回は、リモートでエイブルトン・セッションをやりながら曲をつくっていったんだけど、“Panama Canal” もそのひとつ。誰かがまずサウンドを作って、それにまた違うメンバーが自分の音を乗せていく、というのが主な流れだったんだ。

R.E.M. の時代は、皆もっと無知だった。だから、情報を与えられると皆がそれを信じざるをえなかったと思う。でもいまは、皆ある程度知識がある。いまは、陰謀論をつきつけられても、俺たちはそれを信じるか信じないかの選択肢を持ってるんじゃないかな。

今年は “Me And Giuliani Down By The School Yard (A True Story)” から19年、来年で20周年です。最近就任したエリック・アダムス市長はどんな印象の人物ですか? 銃の暴力からの脱却やホームレス問題の解決などを掲げているそうですが。最近は、仮想通貨で給料を受け取るというニュースも話題になりましたね。

NO:俺はあんまりそういう話題はフォロウしてないんだよね(笑)。ジュリアーニよりはマシなんじゃないかな。もちろんエリック・アダムスも大衆が嫌がることをしてはいるんだろうけど。でも、彼なりにニューヨークという街をより多くのビジネスや観光業で潤わせようとはしてると思う。それが俺が望むことかと聞かれたらそうではないけど、彼は彼のやり方でやってるんじゃないかな。完璧ではなくても、ジュリアーニよりマシなのは確か(笑)。ジュリアーニより良くなるのはぜんぜん難しいことじゃないしね(笑)。

“Me And Giuliani” が出た当時は、アメリカやイギリスがイラクに戦争を仕かけていました。いまはロシアがウクライナを侵略中です。今回バイデンはあまり積極的には介入していないように見えます。彼は、米国民からの支持は高いのでしょうか?

NO:俺はあまり政治のことを理解していないから、この質問に答えるのに適してはいないと思う。ニューヨークでは絶対に見ないのに、アメリカの真ん中なんかに行くと、トランプ支持の垂れ幕が掲げてあったりしてさ。俺もびっくりするんだ。それくらい、アメリカ全体がなにを考えているのかはわからない。バイデンの文句を言っているひとたちもいるけど、彼が完全になにかをやらかしたとも思わないし、エリック・アダムスと同じく、彼は完璧ではないけどトランプよりはマシなんじゃないかな。

初めて1曲目を聴いたとき、アコースティックな曲でびっくりしました。まるで違うバンドになったかのような印象を受けました。リスナーにどっきりを仕かけるような意図があったのでしょうか?

NO:そうそう。このアルバムにはサプライズがあるぞってことを知らせるため。あと、気に入らなかったらスキップしやすいとも思ったし(笑)。

同曲は、タイトルどおり「普通の人びと」がテーマの曲ですが、逆にあなたにとって「普通ではない人たち」とはどのような人びとですか?

NO:なにを普通とみなすかがまさにこの曲のテーマなんだ。自分自身でいることへの葛藤とかね。でも、誰だって普通なんだ。みんなそれぞれ違うし、それは当たり前のこと=普通なんだ。皆、最初は似たような希望や夢を持っていて、成長するにつれそれにそれぞれのフィルターがかかってくる。自分自身でありたい、ユニークでいたいという思いは皆が共通して持っている普通の思いだし、イコール、それは他と違う、つまり普通ではないということ。この曲は、その「もがき」について歌っているんだ。普通でいたくないんだけど、普通でいたくないと思うのは他の皆が思っている普通のこと。それって感情の戦いだからね(笑)。そういうわけで、なにが「普通でない」のかは逆にわからない。基本、皆普通だと俺は思ってるからさ。ユニークであること、ユニークでありたいと思うことは普通のことなんじゃないかな。雪の結晶と同じさ。ひとつひとつが違って当たり前。それが普通のことなんだ。

いまUSもしくはNYで「普通の人びと」が最も気にしていること、心配していることはなんでしょう?

NO:難しい質問だな(笑)。たぶん、みんなまた自由を手にして普通の生活を取り戻したいと思ってるんじゃないかと思う。パンデミックでいろいろ学んだし、シンプルなことのありがたさ、すばらしさに気づかされた。だから、皆それを恋しがり、ふたたび手にしたいと思ってるんじゃないかな。皆で集まったりとか、一緒に出かけるとかさ。当たり前だと思っていたけど、それがどんなに特別なことかを知った。俺にとっては、人前でパフォーマンスすることもそのひとつ。以前の普通の生活に戻りたい、それが皆がいちばん気にかけていることだと思う。気候変動とかも心配だけど、パンデミックがまた戻ってくるんじゃないかっていうのがいちばん心配だよね(笑)。

4曲目 “Un Puente” は歌詞も一部スペイン語ですし、サウンドもこれまでになかったタイプの曲と感じ、!!! の新機軸かなと思ったのですが、ご自身たちではどう思っていますか?

NO:この曲は、こないだスペインで演奏したときオーディエンスの皆が一緒に歌ってくれたんだ。あの時間はすばらしかった。俺たちはいつだって新しい領域に足を踏み入れようとしているし、もちろんこの曲もそれを試みた作品のひとつ。この曲が特に影響されているのはドミニカ共和国のデンボウという音楽で、なかでもエル・アルファというアーティストが大きなインスピレイションなんだ。俺たちはポップ・ミュージックが好きなんだけど、ビートルズもプリンスも、ティンバランドもアウトキャストも、ポップの流れのなかである境界線を超え、音が奇妙になる時期があった。ドミニカのポップ・ミュージックは、いまその時期に突入していて、それが俺たちにとってはすごく魅力的だったんだよ。聴いていてすごく楽しかったから、取り入れてみることにしたんだ。

“Man On The Moon” はシングルで先に出ていた曲ですね。ちょうど30年前にリリースされた R.E.M. のこの曲は、なにごとも疑ってかかるひとや、もしくはなにが真実なのかわからないということがテーマの歌かと思うのですが、これをカヴァーしたのは昨今の陰謀論の流行を踏まえてですよね?

NO:正直、なんでカヴァーしたのかは自分たちにもわからない(笑)。そのトラックをつくっていたときに、たまたま思いついて。つくっていたトラックに “Man On The Moon” の歌詞を適当にのせてたんだけど、それがすごくしっくりきて、この曲にこれ以上の歌詞は書けないなと思ったからそのまま使うことにしたんだ(笑)。逆にその歌詞にあわせてベストなサウンドをつくりたくもなったし、やっていてすごく楽しかった。だから理由は陰謀論が流行っているからではないけど、カヴァーをつくっていたとき、20年前にこの曲の歌詞を聴いたときとは時代がぜんぜん違うんだなとは感じたね。昔といまでは陰謀論の捉え方や、なにを信じてなにを信じないかも違っているから。

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自分たちなりのパンクな “Let It Be” って感じかな。パンデミックのことを明確には語らずに、パンデミックについて触れているんだ。「レコードがつくられた2020年に起こった悲劇を、いまは素直に受け入れよう」というのが “Let It Be Blue” なんだよ。

これまであなたがもっとも仰天した陰謀論はなんですか?

NO:ははは(笑)。なんだろうな。月への人類の着陸ってのはけっこうワイルドだと思う(笑)。アイディアもすごいし、その様子を撮影してつくり上げるってすごくない(笑)? あとは、19歳のときにエイリアンが政治に関わってるっていうのを聞いてさ(笑)。そのときはもう興味津々で、それについての本を読んだりもした(笑)。あのときは若かったんだな。本を読んで、そんなの馬鹿げてるとちゃんとわかったからよかったけど(笑)。でも、R.E.M. の時代は、皆もっと無知だった。だから、情報を与えられると皆がそれを信じざるをえなかったと思う。でもいまは、皆ある程度知識がある。いまは、陰謀論をつきつけられても、俺たちはそれを信じるか信じないかの選択肢を持ってるんじゃないかな。10年ごとに、人びとは騙されにくくなっていると思う。アメリカのクリスチャンみたいな宗教やその考え方だって、日に日に解体されてきているし。皆、前よりもなにを信じるかを選ぶ自由を得ていると思うんだ。それってすごく良いことだよね。

現在も、ロシアやウクライナをめぐり真偽が定かでない情報が流れてくることもあります。なにが真実かわからないとき、あなたならどう行動しますか?

NO:俺は、それが真実かどうかを無理やり見極める必要はないと思ってる。SNSで配信されることをそこまで真剣にはとらえていないし、もしなにかをツイッターで見たとしたら、それが本当かどうかは自分でもっとちゃんとしたリサーチをしないと真に受けてはいけないと思ってるしね。まあ、ニュースってどんなニュースももしかしたら真実でない可能性はあると思うし、信じるかは自分次第。俺の場合は、いろいろあるうちのひとつの情報として頭のなかに入れておく程度にしてる。情報が不確かなものが多いから、フォックスニュースやフェイスブックはあまり見ないようにしてるかな。すぐに突き止めようとしなくても、時間をかけてそれが真実かそうでないかを判断してもいいんじゃないかなと俺は思うけどね。

“Let It Be Blue(ブルーなままにしておこう)” というのは、悲しいことやつらいこと、憂鬱なことは無理に忘れようとしないほうがいいということでしょうか?

NO:理由はさまざま。ひとつはビートルズの “Let It Be” の言葉遊び。前にマイケル・ジャクソンの “スリラー” をもじったみたいに。自分たちなりのパンクな “Let It Be” って感じかな。あとは、きみがいったとおり。パンデミックのことを明確には語らずに、パンデミックについて触れているんだ。「レコードがつくられた2020年に起こった悲劇を、いまは素直に受け入れよう」というのが “Let It Be Blue” なんだよ。

ちなみに、わたしは五年ほどまえ東京での取材時にあなたに薦められたのがきっかけで Spotify をはじめたのですが、最近の Spotify についてはどう見ていますか? 利益をアーティストに還元しないという話もよく聞きます。最近はニール・ヤングやジョニ・ミッチェルが曲を引き上げたことも話題になりました。

NO:ニール・ヤングが曲を引き上げたのは良かったと思う。そういうことをするからこそ、俺はニール・ヤングが好きだしね。それは心からリスペクトする。でも俺は、Spotify はプレイリストを交換するのにも便利だし、悪くはないと思う。俺たちだって、他のミュージシャンたちと同様 Spotify に悩まされてもいるのは確か。やっぱりだれかがなにかを完全にコントロールしてしまうのはよくないことだし、Spotify だけが音楽のアウトレットになってはいけないことはじゅうぶんわかってる。そうなってしまったら、それは恐るべきことだよね。だけど、やっぱり便利な部分もあるんだよな。好きな音楽が気軽に聴けるっていうのは事実だし。

振りまわされるのは悪いことじゃない。自分を楽しませてくれるなにかのファンであること、それに影響を受けることは大切なことだからね。ビートルズもボブ・ディランも、ライヴァルでありながら互いに学び合い、ともに成長してきたんだ。俺もその流れのなかにいたい。

あなたたちはプレイリストなどのトレンドとは無縁に、自身の固有のサウンドを追求しています。“Fast Car” や “Man On The Moon” のカヴァーが原曲とは似ても似つかないのもそうです。振りまわされない秘訣は?

NO:振りまわされるのは悪いことじゃない。自分を楽しませてくれるなにかのファンであること、それに影響を受けることは大切なことだからね。でも同時に大切なのは、自分が好きなもののファンであること、影響を受けている理由が、「それが流行っているから」じゃダメなんだ。自分が興奮できるなにかのファンになることが大事。いま俺は、60年代のアーティスト同士が互いにどう影響し合っていたかという本(『The Act You’ve Known For All These Years』Clinton Heylin)を読んでいるんだけど、ビートルズもボブ・ディランも、ライヴァルでありながら互いに学び合い、ともに成長してきたんだ。俺もその流れのなかにいたい。これからの音楽を、他の音楽と影響し合いながらより良いものにできたらと思うんだ。もちろん、オリジナリティを保ちながらね。

最後の曲では「これはポップ」と連呼されます。あなたにとって「ポップ」とはなんですか? あなたにとって最高のポップ・ソング、またはポップのレコードはなんでしょう?

NO:ポップには悩まされたこともあった。ポップはダサいなんて思ってたときもあったけど、結局は、自分が子どものころにいちばん強いつながりを感じていた音楽がポップなんだ。ラジオから聴こえてくる音楽。それが聴きたくてラジオをつけてヴォリュームをあげてた。でも、ニューウェイヴやパンクが出てくると、そういうちょっとポップとは違うものがクールだと思うようになってさ。でも、ときが経つと、ポップを疑う必要はないことがわかった。自分が好きな音楽なら、なんだって受け入れていいんだ、と。俺にとっては、子どものころに直感でつながりを感じ、俺を魅了してくれたのが俺にとってのポップ・ミュージック。聴いていてそのつながりや魅力を感じられる音楽ができあがると、これはポップ・ミュージックをつくったんだ、と思える。そういう子どものころに感じた音楽の魅力を感じさせてくれる音楽はすべて、俺にとっては最高のポップ・ミュージックだね。

通訳:ひとつ選ぶとしたらどうですか?

NO:最高っていうのは選べないから、最近いいなと思ったのを言うと、ロザリアとニルファー・ヤンヤかな。2022年のなかでは、いまのところ彼女たちの作品がいちばんのポップ・ミュージックだと思う。すごく良い音楽だから、チェックしてみて。超ポップで言えば、テイラー・スウィフトも好きだし、ドジャー・キャットが賞をとったのも嬉しかった。ブルーノ・マーズとアンダーソン・パークも好きだしね。自分たちが好きな音楽をつくってるなと思う。あの70年代のソウルの感じが、すごくつくられた感もあるんだけど、それはあえてで、なんか聴いていてすごく楽しいんだよね。どうやってあの魅力がつくりだせているのかは俺にはわからない。でも、彼らの音楽のいくつかはすごくいいと思う。

通訳:ありがとうございました!

NO:こちらこそありがとう! またね。

キャリア25年を超え今もなお最狂!!!
最新アルバム『Let It Be Blue』遂にリリース!!!
LOCAL GREEN FESTIVAL’22出演発表に続き、単独東京公演も決定!!!
グルーヴの旅路の、さらにその先へ導く最狂のライブ・バンド=チック・チック・チックによる、魅せて聴かせる最新ライヴ!!!
主催者先行スタート!!!

史上最狂のディスコ・パンク・バンド、チック・チック・チックによる待望の最新アルバム『Let it Be Blue』がいよいよ日本先行リリース!!! そんな中、さらに嬉しいニュースが到着!!!

昨年、一昨年とGreenroom Festival出演が決定していたにも関わらず、新型コロナの水際対策の影響で来日を果たせなかった我らがチック・チック・チック。しかし遂に先日LOCAL GREEN FESTIVAL’22への出演が発表され、最新アルバム『Let It Be Blue』と共に3年振りに来日しリベンジを果たすことが明らかになった。そしてその発表の熱が冷めやらぬまま、何と単独東京公演が決定! 最新アルバムでは、今までよりミニマルなアプローチを取り入れながらも、ファンク、ディスコ、アシッド・ハウスからレゲトンまで、パーティ・ミュージックをゴッタ煮にしたカオティックでエネルギッシュな音楽性はそのままに、さらにはメランコリック且つほの明るい希望的なフィーリングを同時に持ち合わせ、まさに人々を解放へ導くダンス・ミュージックを展開しさらに磨きがかかった万全の状態だ。最も感染対策が難しいと思わる最狂のライブ・バンドによる、魅せて聴かせる免疫増強ライヴ!? 開催決定!

[公演概要]
!!! (Chk Chk Chk) チック・チック・チック来日公演

公演日:2022年9月5日(月)
会場:O-EAST
開場/開演:OPEN 18:00 / START 19:00

前売:¥6,800(税込) ※別途1ドリンク代
※オールスタンディング ※未就学児童入場不可

先行発売:
4/28 (thu) 12:00~ BEATINK主催者WEB先行(※限定数…Eチケットのみ)
https://beatink.zaiko.io/e/chkchkchk2022
4/29 (fri) 12:00~5/5 (thu) 23:59 イープラス最速先行(抽選)
https://eplus.jp/chkchkchk/
5/7 (sat) 12:00~5/9 (mon) 18:00 イープラス プレオーダー
https://eplus.jp/chkchkchk/

一般発売:
5月14日(土)~
イープラス
https://eplus.jp/chkchkchk/
ローソンチケット(Lコード:74982)
https://l-tike.com/search/?lcd=74982
Zaiko
https://beatink.zaiko.io/e/chkchkchk2022

チック・チック・チック待望の最新アルバム『Let it Be Blue』は、CDとLPが4月29日に日本先行で発売され、5月6日にデジタル/ストリーミング配信でリリースされる。国内盤CDにはボーナストラック “Fuck It, I'm Done” が収録され、歌詞対訳・解説が封入される。LPはブラック・ヴァイナルの通常盤と、日本語帯・解説書付の限定盤(ブルー・ヴァイナル)で発売される。また国内盤CDと日本語帯付限定盤LPは、オリジナルTシャツ付セットも発売される。

label: Warp Records / Beat Records
artist: !!! (Chk Chk Chk)
title: Let it Be Blue

release: 2022.04.29 FRI ON SALE
2022.05.06 (Digital)

国内盤CD BRC697 ¥2,200+税
解説+歌詞対訳冊子/ボーナストラック追加収録

国内盤CD+Tシャツセット BRC697T ¥6,000+税

帯付限定輸入盤1LP(ブルー・ヴァイナル)
WARPLP339BR
帯付限定輸入盤1LP(ブルー・ヴァイナル)+Tシャツセット
WARPLP339BRT

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12382

TRACK LIST
01. Normal People
02. A Little Bit (More)
03. Storm Around The World (feat. Maria Uzor)
04. Un Puente (feat. Angelica Garcia)
05. Here's What I Need To Know
06. Panama Canal (feat. Meah Pace)
07. Man On The Moon (feat. Meah Pace)
08. Let It Be Blue
09. It's Grey, It's Grey (It's Grey)
10. Crazy Talk
11. This Is Pop 2
12. Fuck It, I'm Done *Bonus Track

interview with Shuya Okino (KYOTO JAZZ SEXTET) - ele-king


KYOTO JAZZ SEXTET feat. 森山威男
SUCCESSION

Blue Note / ユニバーサル ミュージック

Jazz

Amazon Tower HMV disk union

 DJ/プロデューサー/作曲家/クラブ運営者として四半世紀にわたりワールドワイドな活躍を続けてきた沖野修也。その活動母体とも言うべき Kyoto Jazz Massive と並行し、彼は2015年にアコースティック・ジャズ・バンド Kyoto Jazz Sextet も始動させ、これまでに2枚のアルバム『MISSION』(2015)、『UNITY』(2017年)を発表してきた。そして先日、待望の3作目『SUCCESSION』がリリースされたのだが、アーティスト名義は “KYOTO JAZZ SEXTET feat. TAKEO MORIYAMA”。そう、山下洋輔トリオなどで60年代から日本のジャズ・シーンを牽引してきた、あのドラム・モンスター森山威男(1945年生まれ)が、Kyoto Jazz Sextet のドラマー天倉正敬に代わり全曲で叩きまくっているのだ。

 森山ファンにはお馴染みの “サンライズ” や “渡良瀬” といった名曲に沖野が書下ろした “ファーザー・フォレスト” を加えた計7曲には、沖野がずっと掲げてきた「踊れるジャズ」というテーマから逸脱せんとするポジティヴな意志が溢れ、コロナ禍によって変わりつつある世界の今現在のジャズとしての新たなヴィジョンが提示されている。もちろん、これまでの作品のようにクラブでDJが客を踊るせることもできるだろう。が、同時に、自宅のソファに身を沈めてじっくりと聴き浸ることもできる。「匠の技」とも言うべきその微妙なバランス感、匙加減に、DJ/プロデューサーとして沖野が積み上げてきた経験の豊饒さ、感覚のリアルさを改めて思い知らされよう。

 何はともあれ、破格のパワーとグルーヴを堪能すべし。過去から現在、そして未来へとジャズが「継承(SUCCESSION)」されてゆく瞬間を体験できる、格調高い作品である。

僕がやってきた踊れるジャズをベースに、どうやって森山さんを引き入れるか。いったん踊れることを実現させた上で、どうやって逸脱していくか。踊らせたいけど同時に聴かせたい曲をどこに着地させるか。そこの格闘はなかなか痺れるものがありました。

森山威男さんは昨年11月20日の《Tokyo Crossover/Jazz Festival 2021》にゲスト参加し、それと前後してこのアルバム『SUCCESSION』の録音にも参加したわけですが、あのイヴェントに森山さんが参加した経緯から話していただけますか。

沖野:新木場の STUDIO COAST の閉館に伴い、クラブ・イヴェント《ageHa》もなくなるということで、昨年7年ぶりに《Tokyo Crossover/Jazz Festival 2021》の開催が決定したのですが、コロナ禍で海外勢は呼べる状況ではない。でも、日本人の出演者だけでやる以上、海外のファンが絶対うらやましがるようなラインナップにしたいと思いました。それで、目玉となるヘッドライナーを誰にするか考えた時に思い浮かんだのが森山さんでした。誰もが知っているジャズ・レジェンドであり、近年はイギリスのレーベル〈BBE〉から『East Plants』(83年)も再発されたし。あと、KYOTO JAZZ SEXTET のトランペットの類家心平が、以前森山さんのバンドでも吹いていた。これはもう森山さんしかいないなと。「KYOTO JAZZ SEXTET featuring 森山威男」にすれば、海外のジャズ系リスナーやクラブ・ミュージック好きはきっと注目してくれると思っていました。

マーク・ジュリアナとか、ここ近年のドラマー・ブームみたいなのも関係あったのかなと思ったんですけど。

沖野:まさにご指摘の通りで。ロバート・グラスパー周りとか、今、ドラムがジャズのイニシアティヴを握っているというイメージが世界的に広がりつつあるじゃないですか。「打ち込みを生で再生しているドラマー、すげー」みたいな。日本でも若いリスナーが「新しいジャズはドラマーだ!」みたいに言ってて(笑)。もちろん僕もそういった側面を否定しないです。でも、ベース・ラインとかコード進行とか、ドラマー以外のミュージシャンが醸し出す現代性や革新性も僕は常に意識しているし、プロデューサーやヴォーカリストも含めて、総合的に進化していると思っているわけで。そういった状況下で、レジェンドのドラマーを引っ張り出すのって、言わば逆の発想ですよね。KYOTO JAZZ SEXTET の上物というか、コード楽器や管楽器がオーセンティックなジャズで、ドラマーが今っぽい若手という選択肢もありましたが、それは他の人がやっているから、あえて逆にレジェンドを起用して、更に強烈な現代感覚を僕らは表現できるんですよ、というトライだったわけです。

なるほど。

沖野:やる前は、ひょっとすると森山さんワールドに僕らが持っていかれて、いわゆるメイン・ストリームのジャズになる可能性もあったし、はたまたフリー・ジャズになってダンス・ミュージックと完全に乖離してしまうという可能性もあった。どうやってジャズの現代性を表現するか、どうやって KYOTO JAZZ SEXTET らしさを出せるか、それは僕にとっても挑戦ではありました。

今、「ダンス・ミュージックと乖離する」とおっしゃいましたが、ということは沖野さんとしては今でもやはり根底には、自分達は踊れるジャズ、ダンス・ミュージックをやっているという意識があるんですね?

沖野:ベースとしてダンス・ミュージックはありますけど、今はむしろそこから離れてみたいという思いに駆られています。特に KYOTO JAZZ SEXTET はその方向性が強いですね。KYOTO JAZZ MASSIVE はやっぱりダンスありきですけど。KYOTO JAZZ SEXTET はむしろ踊れなくてもいい、もしくは踊れない方向にどんどん踏み出していきたいという気持ちが強いです。

権力との闘争なのか、メーカーとの闘争なのか、ミュージシャン同士の闘争なのか、わかりませんが、そういうぶつかる感じは若い世代のジャズ・ミュージシャンにはない。サラッとしてるというか、スマートというか。

実際に去年11月に初めて森山さんと共演した時の素朴な感想、印象を聞かせてください。

沖野:そうですね……初めてスタジオでお会いした時、僕が思っていたのと違って、森山さん、慎ましいというか、とても遠慮がちで(笑)。コロナ禍でライヴが2年間なく、全然叩いてなかったので、引退も考えられたそうなんですよ。もちろんカリスマ性というか、レジェンドに会ったという感動はありましたが、レコードでのプレイから感じていたエネルギーみたいなものは、お会いした瞬間はなかった。小柄で、とても寡黙な方だし。ところが、ドラム・ブースに入って叩き始めた瞬間に僕らの懸念は一気に吹き飛びました。リハーサル段階からものすごい音量、ものすごい手数で。音の洪水というか。アート・ブレイキーのドラムがナイアガラの滝に例えられますけど、本当に滝が流れ落ちるような状態で。メンバー全員で滝に打たれる修行、みたいな(笑)。

滝行(笑)

沖野:びっくりしましたね。2年間叩いてないって嘘でしょ、と。とにかく音がすごかった。1音目からすごかったです。

今回のアルバムでも、いきなり1曲目 “Forest Mode” の、特に後半なんてすごいですよね。

沖野:そうなんですよ。録音にもそのまま入っていますが、レコーディング中に雄叫びを上げて。あの小さな体から、これだけのパワーがどうやって出てくるのかな、と。衝撃でした。多分いつも一緒に演奏している方は、それが森山さんだという認識があるんでしょうけど。

ライヴやレコーディングでの森山さんの反応はどうでした?

沖野:ご自分でも仰ってましたが、本当に対等の目線でセクステットのメンバーと真剣勝負してくださって。ワンテイクの曲もいくつかありましたが、曲によっては森山さんが全くOKを出さず、これは違うと言って何度かやり直したんです。実はセクステットの過去2枚のアルバムでは採用テイクは全部ファースト・テイクでしたが、今回の3枚目では初めて、ファースト・テイクが採用されなかった曲がいくつもあります。

具体的には?

沖野:ワンテイクでOKだったのは⑤ “サンライズ” と⑥ “渡良瀬”、⑦ “見上げてごらん夜の星を” の3曲だけで、それ以外は森山さんが納得いくまでやりました。たとえば④ “ノー・モア・アップル” では、納得するリズム、納得するテンポが見つからないと森山さんが言って。あと、メンバーとのコンビネーションの問題とか。これじゃダメ、これじゃダメと何度も仰って。体力的に大丈夫なのかなとか、こっちはいらぬ心配をしましたが、森山さんが妥協されることはなかったですね。これでどうでしょう? と言っても、いやー違う、正解が出てない、と。

沖野さん以下メンバーの方では、どこがまずいのかな、と戸惑う感じですか?

沖野:いや、しっかりコミュニケーションをとりました。森山さんがノレるテンポとかグルーヴ、考えているアレンジと、メンバーが一番実力を発揮できるテンポなりリズムなりグルーヴなりの接点をどうやって探すかという。もう一回音を出してなんとなくやりましょう、ではなくて、問題点が速度のことなのかリズムのことなのか、誰かの演奏なのか等々をとことん話し合った上で次のテイクに臨むという感じで。

じゃあ、レコーディングはけっこう苦労されたんですか?

沖野:とはいっても、《ageHa》の本番前の2日間で録ったので、想定内です。森山さんが加わっての僕なりのクラブDJ的グルーヴ感というか理想の照らし合わせというか、森山さん曰く「激突」みたいな部分では、苦労したというより非常に興味深かったです。だって僕は元々森山さんの曲をDJでかけていたんですから。僕がやってきた踊れるジャズをベースに、どうやって森山さんを引き入れるか。いったん踊れることを実現させた上で、どうやって逸脱していくか。踊らせたいけど同時に聴かせたい曲をどこに着地させるか。そこの格闘はなかなか痺れるものがありました。

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KYOTO JAZZ SEXTET feat. 森山威男
SUCCESSION

Blue Note / ユニバーサル ミュージック

Jazz

Amazon Tower HMV disk union

日本のジャズ・ミュージシャンは、50~60年代からやってる人たちと今現在の若手では感覚もノリも気質もかなり違う気がしますが、いかがですか?

沖野:あくまで僕の主観ですが、上の世代のジャズの人って、それこそアメリカと日本とか、メジャーとマイナーとか、闘争の歴史から音を紡ぎ出していたと思うんです。でも僕らの時代って、そういうカウンター精神はあまりない。若いジャズの子たちもスルッとメジャーに行ってブレイクしたりする。闘うことの是非はともかく、あまりないのかなというのは感じます。権力との闘争なのか、メーカーとの闘争なのか、ミュージシャン同士の闘争なのか、わかりませんが、そういうぶつかる感じは若い世代のジャズ・ミュージシャンにはない。サラッとしてるというか、スマートというか。

ですよね。端的に言うとあの世代の日本のジャズ・ミュージシャンは、全てが喧嘩という感じがするんですよ。話しててもそうだし、音聴いてもそうだし。つまり、喧嘩にこそ意義があるというか、まず喧嘩しなくちゃ始まらないというか。それがまた面白さでもあるんだけど。そういった根本的な感覚のズレみたいなものは今回はなかったですか?

沖野:いや、僕が知っているジャズ・レジェンドの中では森山さんは人間的にかなり柔和だし。ただ演奏は完全に喧嘩でしたよ。《ageHa》のライヴDVDを観ていただくとわかりますが、お互いがかなりやり合っていて。特にフリー・ジャズ・パートでは、それこそ僕もカウベルやウィンドチャイムを叩きまくり、シンセサイザーの効果音で森山さんを煽りまくって。普段、僕のようなDJ/プロデューサーがライヴに絡むのは難しいのですが、本当に喧嘩状態でした(笑)。とにかく森山さんは、予定調和はダメだとずっと仰っていました。僕らもどうやって森山さんに仕掛けていくかというのが、メンバー間のミッションでしたね。

77歳でこのオファーをもらい、《ageHa》でやれて、生きててよかったよ」という森山さんの言葉を聞いて、20年後の自分にだって生きててよかったと思う可能性があるはずだという気持ちになりましたし。本当に今回は、ミュージシャンとしてだけでなく人間として森山さんからは影響を受けました。

沖野さん自身は、森山さん世代のそういった「出会い頭の即興的な喧嘩」というものに憧れがあったりしますか?

沖野:ありますね。僕は多分、ジャズDJと呼ばれる人たちの中でもそこに一番憧れがある一人だと思います。後でリミックスしやすいようにクリックを鳴らして安定したテンポで録りたがるプロデューサーもいますし、インプロは踊れないからとカットしてテーマだけでつなぐジャズDJもいる。でも僕はやっぱりインプロがあってなんぼの世界だと思うし、想像もしなかった録音が実現した時の喜びも何回も体験してきたわけで。森山さんが今まで感じてきたことや積み上げてきたこと、森山さんだけが見てきた景色が絶対あるはずです。そういった経験から僕たちに投げかけられる疑問や挑戦や挑発は、他では絶対に味わえないものでしょう。50~60年代からやってきた人たちの出す音の説得力や迫力ってやっぱり違うと思うんですよね。技術だけでなく、ここでそういくか!?  という想像を超えた表現力はレジェンド・クラスになると別格ですね。

今のコメントがこのアルバムのタイトル『SUCCESSION』(継承)をそのまま表現してるような気がします。

沖野:そうなんですよ。うちのメンバーだけではこういう作品にならなかったと思います。僕たちが知っているつもりで実は知らなかった表現方法とか、ジャズとは何かという、音による説得力をこのレコーディングとライヴでは学びましたし、それを更に僕らが継承して次の世代に伝えていかなくてはと思いました。あと、「77歳でこのオファーをもらい、《ageHa》でやれて、生きててよかったよ」という森山さんの言葉を聞いて、20年後の自分にだって生きててよかったと思う可能性があるはずだという気持ちになりましたし。本当に今回は、ミュージシャンとしてだけでなく人間として森山さんからは影響を受けました。

近年は海外でも日本の様々な音楽が注目されています。60~70年代の日本のジャズの人気も高まっていますよね。

沖野:元々、日本のフュージョンやジャズは、海外のマニアの間では人気があったんです。僕だって最初は、ジャイルズ・ピーターソンを含むロンドンの友人やDJ、ディストリビューターなどから教えてもらって日本のジャズの魅力に気づいた人間ですし。

それはいつ頃のことですか?

沖野:25歳くらいだから、今から30年ほど前です。でも、ここ数年の盛り上がりはちょっと違いますね。層が変わってきたというか。ロバート・グラスパー人気やサウス・ロンドンのジャズの盛り上がりとかもあって、若い世代のジャズ・リスナーの規模全体も大きくなっているし。お父さんがディスコのDJで生まれた時からレコードがいっぱい家にあったとか、お母さんがアシッド・ジャズ大好きで子供の頃からブラン・ニュー・ヘヴィーズを聴いてましたとか、そういう20代のジャズ・ミュージシャンやDJもヨーロッパ中にたくさんいます。今の若い子たちにとっては、トム・ミッシュクルアンビンサンダーキャットなどが、僕らが若かった30年前のジャミロクワイやブラン・ニュー・ヘヴィーズなわけです。で、トム・ミッシュやサンダーキャットなどは、多分僕らがかけてきた音楽、僕らがやってきた音楽を好きだと思う。つまり、今は二重のレイヤー、昔からのリスナーと若いリスナーが混在し、層が分厚くなっているんです。今はその両方の層に日本のジャズが受け入れられているんじゃないかな、というのが僕の分析です。

アメリカ大統領の娘さんが KYOTO JAZZ MASSIVE とか KYOTO JAZZ SEXTET のファンだったとしたら、「お父さん、日本に核兵器落とさないで、私の好きなシューヤ・オキノがいるから」みたいになるかもしれないじゃないですか。極端な例ですけど(笑)。

昔の日本のジャズのどういった点に面白さを感じるのか、そのポイントは、外国人と日本人では微妙に違うと思いますが、沖野さん自身は、日本の当時のジャズの、欧米ジャズと比べた場合の面白さ、特殊性についてどのように考えていますか。

沖野:まずは、メロディーの独自性ですね。論理的説明は難しいのですが、民謡とか童謡などのエッセンスが作曲家の潜在意識の中にあると思います。あと、使用楽器によるエキゾチシズムというのもあるんじゃないかな。60~70年代には和楽器を導入する実験も盛んにおこなわれていたし。海外のDJからも、メロディーのことはよく言われます。すごく日本ぽいと。日本のメロディーはシンプルでわかりやすいんだと。それはきっと、母音が連なる日本語の特性とも関係していると思いますね。あと、演奏テクニックが素晴らしいというのもよく言われます。それはフュージョン系の作品を指していると思いますが。

昨年(2021年)暮れに KYOTO JAZZ MASSIVE の久しぶりのアルバム『Message From A New Dawn』も出ましたが、ここで改めて KYOTO JAZZ MASSIVE と KYOTO JAZZ SEXTET の立ち位置の違いを簡単に説明してもらえますか?

沖野:KYOTO JAZZ MASSIVE は、僕と弟(沖野好洋)の合議制によるダンス・バンド。演奏の中にジャズもフュージョンもテクノもファンクもソウルも入った、よりハイブリッドなダンス・バンドです。KYOTO JAZZ SEXTET は、僕のプロデュースのジャズ・バンドで、踊れることは特に目的にはしていません。

今日のインタヴューでも何度か「踊れるジャズ」「踊ることを目的としないジャズ」という対比がありましたが、踊れない/踊らないというのは、この2年間のコロナ禍の状況も関係あるのかしら?

沖野:関係あると思います。僕自身のことも含め、この2年間家にいて、リスニング体験を楽しむ人が劇的に増えたと思います。アルバムの中から踊れる曲を1~2曲ピックアップして繋いでいくDJの僕ですら、家ではアルバム1枚かけっぱなしです。踊れる踊れないに関わらず、自分が好きな作品を通して聴くという風にリスニング・スタイルが劇的に変化した。KYOTO JAZZ SEXTET のこの新作がこの内容、構成になったのも、家で日本のジャズのアルバムを針置きっぱなしで聴き続けたことが影響していると思います。だからひょっとすると、コロナ前に森山さんとやっていたら、全編踊れるジャズになっていたかもしれない。でもコロナ禍を経て、踊れる曲ですら、聴いて楽しんでもらえるんじゃないかな、という期待もあります。同時に、僕が踊れないと思った収録曲も別のDJがダンス・ミュージックとして再発見してくれるんじゃないかという楽しみもある。今までの KYOTO JAZZ SEXTET 以上に、リスナーにとっての音楽聴取の自由度を上げる作品になったんじゃないかなと。僕自身、解き放たれた感じなんです。

沖野さんは文筆家でもあるし、Twitter でも積極的に発言されています。普段から政治意識、社会意識が強い方ですよね。社会の中でのDJ/音楽プロデューサーとしての自分の役割をどのように考えてますか?

沖野:やっぱり世代と国境を越える、というのが自分のミッションだと思っていて。

それは最近に限らず、以前からずっと?

沖野:そうです。自分の音楽を違う国の人に聴いてほしいし、上の世代とも若い世代ともコラボレートしていきたいと思ってきました。そういう気持ち、そういう音楽は偏見や憎悪から人の意識を解放する働きがあると思うんですよ。60~66年の〈ブルーノート〉作品のカヴァー・ワークだった1stアルバム『Mission』(2015年)は、アメリカと日本のジャズの関係というのが自分のテーマでしたが、僕のオリジナル曲で構成された2作目『Unity』(2017年)は、平和とか調和とか、結構ポリティカルなことを自分なりに表現したんですよ。だからヴォーカリストにも、歌詞はそういう趣旨で発注しました。世代、国籍、人種を超えるというメッセージを音楽で発信して、この世界がより良くなることに少しでも貢献できたらいいかなとは考えています。

実際に今まで活動してきて、多少なりとも実効力があったと思いますか?

沖野:日本人に対するイメージの変化に、微力ながらも貢献できたかなとは思います。もちろん坂本龍一さんとか北野武さんとか、サッカー選手や野球選手の活躍ありきですよ(笑)。ありきだけど、実際僕がDJとして行くことで、様々な国の人が一か所に集まったりした。音楽大使と言うとおおげさですが、世界平和への貢献実績はゼロではないと思います。時々冗談で言うんですが、アメリカ大統領の娘さんが KYOTO JAZZ MASSIVE とか KYOTO JAZZ SEXTET のファンだったとしたら、「お父さん、日本に核兵器落とさないで、私の好きなシューヤ・オキノがいるから」みたいになるかもしれないじゃないですか。極端な例ですけど(笑)。音楽とか文化が持っている力は侮れないと僕はずっと思ってきました。微力ではあるけど、これからも世代と人種と国境を越えることをテーマに音楽を作り続けていきたいですし、世界を旅していきたいです。

 

[LIVE INFORMATION]

KYOTO JAZZ SEXTET feat. 森山威男
~New Album “SUCCESSION” Release Live

2022年5月26日(木)ブルーノート東京
www.bluenote.co.jp/jp/artists/kyoto-jazz-sextet

FUJI ROCK FESTIVAL’22 出演
2022年7月30日(土)新潟県 湯沢町 苗場スキー場
https://www.fujirockfestival.com/

[RELEASE INFORMATION]

沖野修也率いる精鋭たちとレジェンダリー・ドラマーの劇的な出会い。
日本ジャズの過去と現在を繋ぎ、その延長線上にある明日を照らし出す。

●ワールドワイドな活動を展開するDJ/楽プロデューサー・ユニット、Kyoto Jazz Massive の沖野修也が2015年に始動させたアコースティック・ジャズ・ユニット、KYOTO JAZZ SEXTET。単なる懐古趣味にとどまらず、“ジャズの現在” を表現することをコンセプトとし、これまでに『MISSION』(2015年)、『UNITY』(2017年)という2枚のアルバムを発表しました。
●5年ぶりの新作では、ジャパニーズ・ジャズ・ドラムの最高峰、森山威男を全面フィーチャー。両者は2021年11月20日に新木場ageHa@STUDIO COAST にて開催された Tokyo Crossover/Jazz Festival 2021 にヘッドライナーとして出演し初共演。世代を超えた気迫みなぎるコラボレーションで、オーディエンスを圧倒しました。
●アルバムには、クラブ・ジャズ・リスナーにも人気の森山の代表的レパートリーに加え、沖野修也書き下ろしの新曲「ファーザー・フォレスト」を収録。オール・アナログ録音による骨太でダイナミックなサウンドも魅力です。

artist: KYOTO JAZZ SEXTET feat. 森山威男
title: SUCCESSION
label: Blue Note / ユニバーサル ミュージック

KYOTO JAZZ SEXTET
類家心平 trumpet
栗原 健 tenor saxophone
平戸祐介 piano
小泉P克人 bass
沖野修也(vision, sound effect on 渡良瀬)
featuring
森山威男 drums

Produced by 沖野修也 (Kyoto Jazz Massive)
Recorded, Mixed and Mastered by 吉川昭仁 (STUDIO Dedé)

tracklist:
1. フォレスト・モード
2. 風
3. ファーザー・フォレスト
4. ノー・モア・アップル
5. サンライズ
6. 渡良瀬
7. 見上げてごらん夜の星を

Caterina Barbieri - ele-king

 〈Editions Mego〉からリリースされた2019年の前々作『Ecstatic Computation』が高い評価を獲得したミラノのプロデューサー、カテリーナ・バルビエリ。ロックダウン中に録音されたという新作『Spirit Exit』が7月8日にリリースされる。なんでも詩や哲学にインスパイアされたそうで、バルビエリ本人のコメントによれば「世界の終わり、もしくはテレパシーのいち形態へのラヴ・ソング」だという。最終曲 “The Landscape Listens” は、イーノの人気曲 “An Ending (Ascent)” のような上品さと穏やかさで死にアプローチしている曲らしい。現在 “Broken Melody” が先行公開中です。


artist: Caterina Barbieri
title: Spirit Exit
label: light-years
format: digital / 2LP / CD
release: July 8, 2022

tracklist:
01. At Your Gamut
02. Transfixed
03. Canticle of Cryo
04. Knot of Spirit (Synth Version)
05. Broken Melody 04:26
06. Life at Altitude
07. Terminal Clock
08. The Landscape Listens

The Smile - ele-king

 昨年より大きな話題を集めていた新バンド、トム・ヨーク、ジョニー・グリーンウッドトム・スキナーからなるザ・スマイルがついにアルバムをリリースする。告知にあわせ、新曲 “Free In The Knowledge (知のなかの自由)” のMVも公開された。
 6月15日に発売される同名のアルバムには、これまで単発で発表されてきた5曲すべてが収録される。プロデューサーはおなじみのナイジェル・ゴドリッチ。フル・ブラス・セクションも参加しているという。どんな作品に仕上がっているのか、楽しみに待っていよう。

The Smile - Free In The Knowledge

THE SMILE
トム・ヨーク×ジョニー・グリーンウッド×トム・スキナー
ザ・スマイル待望のデビュー・アルバム
『A LIGHT FOR ATTRACTING ATTENTION』発売決定!!

レディオヘッドのトム・ヨークとジョニー・グリーンウッド、フローティング・ポインツやムラトゥ・アスタトゥケのバックを務め、現在はサンズ・オブ・ケメットで活躍する天才ドラマー、トム・スキナーによる新バンド、ザ・スマイルが待望のデビュー・アルバム『A Light For Attracting Attention』を〈XL Recordings〉よりリリース。新曲 “Free In The Knowledge” とレオ・リー監督による同曲のMVが公開された。

今回公開された “Free In The Knowledge” は2021年12月にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われたイベント「Letters Live」の一環として、パンデミック以降初めてトム・ヨークが観客を前に演奏して話題を呼んでいた。ザ・スマイルはこれまでにシングル “You Will Never Work in Television Again”、“The Smoke”、“Skrting On The Surface” を連続リリースし、4月3日に発表された “Pana-vision” は英人気BBCドラマ「ピーキー・ブラインダーズ」の最終回に起用された。

アルバムは5つのシングルを含む全13曲を収録し、盟友ナイジェル・ゴドリッチがプロデュースとミキシングを務め、名匠ボブ・ラドウィッグがマスタリングを担当。収録曲にはロンドン・コンテンポラリー・オーケストラによるストリングスや、バイロン・ウォーレン、テオン&ナサニエル・クロス、チェルシー・カーマイケル、ロバート・スティルマン、ジェイソン・ヤードといった現代のUKジャズ奏者たちによるフル・ブラス・セクションが参加。5月13日(金)にデジタル配信され、日本盤CDは6月15日(水)、輸入盤CD/LPは6月17日(金)に発売。

本作の日本盤CDは高音質UHQCD仕様で解説および歌詞対訳が封入され、ボーナス・トラックを追加収録。輸入盤は通常盤CD/LPに加え、限定イエロー・ヴァイナルが同時リリース。本日より各店にて随時予約がスタートする。

label: BEAT RECORDS / XL RECORDINGS
artist: The Smile
title: Free In The Knowledge
release date: 2022/06/15 WED ON SALE

CD 国内盤
XL1196CDJP
(解説・歌詞対訳付/ボーナストラック追加収録/高音質UHQCD仕様)
2,600円+税

CD 輸入盤
XL1196CD(6/17発売予定)
1,850円+税

LP 限定盤
XL1196LPE(6/17発売予定/限定イエロー)
4,310円+税

LP 輸入盤
XL1196LP(6/17発売予定/通常盤)
2,600円+税

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12758

!!! (Chk Chk Chk) - ele-king

 まもなく新作『Let It Be Blue』のリリースを控えるチック・チック・チックから嬉しいお知らせの到着だ。9月3日(土)と9月4日(日)の2日間にわたって横浜赤レンガ地区野外特設会場で開催されるフェス《LOCAL GREEN FESTIVAL’22》への出演が決定したとのこと。パワフルなライヴで知られる彼ら、パンデミックを経ていったいどんなパフォーマンスを披露してくれるのか。いまから楽しみだ。

史上最狂のディスコ・パンク・バンド
チック・チック・チックが LOCAL GREEN FESTIVAL’22出演決定!!!

待望の最新作『LET IT BE BLUE』は4月29日(金)日本先行発売!!!
数量限定のオリジナルTシャツ付セットや日本語帯付ヴァイナルも発売決定!!!

4月29日(金)に9枚目となる待望の最新アルバム『Let it Be Blue』のリリースを控える史上最狂のディスコ・パンク・バンド、チック・チック・チックが、2022年9月3日(土)、9月4日(日)の2日間に渡り、横浜赤レンガ地区野外特設会場にて開催する「Local Green Festival’22」に出演決定!

アルバムからはこれまでに “Storm Around The World (ft. Maria Uzor)” と “Here's What I Need To Know” の2曲が公開されている。

Storm Around The World (ft. Maria Uzor)
https://youtu.be/PVYddYDjBMc

Here's What I Need To Know (Official Video)
https://youtu.be/k3oKGyATLx4


Local Green Festival’22
開催日程:2022年9月3日(土)、 9月4日(日)
開催場所:横浜赤レンガ地区野外特設会場
主催:ローカルグリーンフェスティバル実行委員会
後援:横浜市文化観光局/スペースシャワーTV/J-WAVE
WEB : https://localgreen.jp/

ダンス・カルチャーを規制したニューヨーク市長に中指を立てた名曲 “Me And Giuliani Down By The School Yard (A True Story)” や、フジロックやソニックマニアを含め世界中の音楽フェスを熱狂させてきた “Must Be The Moon” “One Girl/One Boy” といった大ヒット・アンセム、そして他の追随を許さないパワフルなライヴ・パフォーマンスで知られる彼ら。芸術を作るということにおいて大切なのは、まず自らを奮い立たせ楽しむために、自らを改革し、常に挑戦し続けること。常に挑戦者の気持ちで自分自身の最高傑作を更新すること。チック・チック・チックの歩みを振り返れば、彼らは実に25年にもわたってその姿勢を貫いてきたことがわかるだろう。バンドの9枚目のアルバム『Let it Be Blue』は、その絶え間ない変化の感覚を、未開拓の新たな領域へと導いている。大音量でかけて人々を解放へ導くダンス・ミュージック、そういった類の音楽だ。

長年のコラボレーターであるパトリック・フォードがプロデューサーを務めた本作は、未来のダンスフロアを夢見て、2年間に渡って温められてきたという。その結果生まれた楽曲は、バンドがかつてないほど制作に力を注いだ作品となった。サブベースとドラムビートにあふれ、ダンス~パーティ・ミュージックをゴッタ煮したチック・チック・チック独自のグルーヴが表現されているが、これまでと比べて隙間のある作品となっている。それはバンドにとってエキサイティングな挑戦だった。ニック・オファーが「7、8人のバンドとしてスタートして、これまでは全員ですべてを詰め込んで、できるだけ多くのパーツをはめ込もうとしていた」と語るように、初期作品では音数の多さとある種の複雑さが魅力の一つだったが、今作はより洗練されたプロダクションとなっている。しかし、ミニマルなアプローチだからといって、代名詞のカオティックなエネルギーはまったく失われていないどころかむしろ熱量を増している。レゲトン、アシッド・ハウス、エイサップ・ファーグ、〈Kompakt Records〉作品、スーサイド、アコースティック……といった様々な要素が散りばめられたパンドラの箱のような作品だ。また、このアルバムには、ブルーでメランコリックな一面と希望的な感覚を同時に持ち合わせている。それはアルバム・タイトルにも反映されている。“Let It Be” という悟りではなく、“Let It Be Blue” というのはこれから待ち受ける様々なことを受け入れるという意味が込められている。憂鬱や悲劇は一時的なものであり、物事は過ぎ去る。しかし、何より本作『Let it Be Blue』は、これまで以上に踊り出したくなる作品だ。

チック・チック・チック待望の最新アルバム『Let it Be Blue』は、CDとLPが4月29日に日本先行で発売され、5月6日にデジタル/ストリーミング配信でリリースされる。国内盤CDにはボーナストラック “Fuck It, I'm Done” が収録され、歌詞対訳・解説が封入される。LPはブラック・ヴァイナルの通常盤と、日本語帯・解説書付の限定盤(ブルー・ヴァイナル)で発売される。また国内盤CDと日本語帯付限定盤LPは、オリジナルTシャツ付セットも発売される。

label: Warp Records / Beat Records
artist: !!! (Chk Chk Chk)
title: Let it Be Blue
release: 2022.04.29 FRI ON SALE
2022.05.06 (Digital)

国内盤CD BRC697 ¥2,200+税
解説+歌詞対訳冊子/ボーナストラック追加収録
国内盤CD+Tシャツセット BRC697T ¥6,000+税

帯付限定輸入盤1LP(ブルー・ヴァイナル)
WARPLP339BR
帯付限定輸入盤1LP(ブルー・ヴァイナル)+Tシャツセット
WARPLP339BRT

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12382

TRACK LIST
01. Normal People
02. A Little Bit (More)
03. Storm Around The World (feat. Maria Uzor)
04. Un Puente (feat. Angelica Garcia)
05. Here's What I Need To Know
06. Panama Canal (feat. Meah Pace)
07. Man On The Moon (feat. Meah Pace)
08. Let It Be Blue
09. It's Grey, It's Grey (It's Grey)
10. Crazy Talk
11. This Is Pop 2
12. Fuck It, I'm Done *Bonus Track

Black Country, New Road - ele-king

文:イアン・F・マーティン(訳:江口理恵)

 音楽をコミュニケーションの行為として考えるとき、私たちはそのプロセスの半分にしか思いを致していないことが多い。アーティストに伝えたいことがあり、それを音楽でリスナーに伝えると、その成功は受け手側にも共感を呼び覚ますことができるかどうかで測られる。しかし、コミュニケーションは双方向性のプロセスであり、録音というデッド(死んだ)な(ライヴとの対比として)メディアが、生きているリスナーと対話するには、それとは異なる難儀な類のコミュニケーションが必要になる。

 ブラック・カントリー、ニュー・ロードのコミュニケーションは、微細な観察からなる個々のディテールが、印象主義的な全体像を構成する、断片のコラージュで表現されている。これらの物語の断片を読み解くもっとも直観的な方法は、音楽の喜びのうねりや、押し寄せる嘆き、親密さに伴う押しつぶされるような痛み、喪失による靭帯の引き裂きにより、正確な意味が流れ去るような場面があっても、ときおり言葉に焦点を合わせて音色を追っていくことだ。また、細部を掘り下げることで、その他の物語が直線的ではなく、繰り返されるイメージを通して、聞きなれた言葉が馴染みのない方法で繰り返し使用され、再び現れた文字のシルエットなどが、まるで秘密の言語のようなヒントとして、かすかに浮かび上がってくる。

 2021年のバンドのデビュー盤『For the First Time』では、数年にわたり段階的に積み上げられてきたイメージやアイディアと、反復する音楽の主題や歌詞のアイディアが導入されては引き戻され、より大きなピースが傾き、互いにぶつかり合いながらも、一緒に織りあげられたものだ。それは、スリリングで多様性に満ちたリスニング体験をもたらし、高い完成度にもかかわらず、異なる条件の元で書かれた作品を見事なシミュレーションで一貫性を持たせた、寄せ集めのようなコレクションだった。これに続く新作では、ブラック・カントリー、ニュー・ロードがそのプロセスをより統制しやすくなっているのは必然であり、具体的な意味は不透明なままでも、表面下で煮えたぎるようなディテールは、より豊かで複雑に感じられる。

 具体的な解釈なしに自由に音楽が飛翔するなか、“Haldern” のような曲では、ときに感情を打ち砕くような音色を繰り出す。“For the First Time” をとても面白いものにしている繊細なユーモアは、いまは脱退してしまったヴォーカリスト、アイザック・ウッドの、もの悲しさや神話的なものと、陳腐で軽薄なものとを並走させながら、揺れ動く感情で、決して声のトーンを崩さないという驚くべき才覚によるもので、音楽のなかでも未だ重要な存在となっている。“Bread Song” では、「私のベッドでトーストを食べないで」という家庭内のリアリズムから、「この場所は誰のものでもない、パンくずのためのものでもない」という聖書のような語り口へと巧みに転換し、“The Place Where He Inserted the Blade” では、料理の比喩と思われるものを通してワイルドな感情の極限の狭間を揺れ動く。

 日常から形而上、時代劇からSF的な未来へと、時空を超えて飛び交う語り口は、我々をコミュニケーションの問題へと立ち返らせる。その非常な不透明さ、断片化、ほのめかされた相互関係は、リスナーが意味を選択して光を当て、自らの物語を書くことにより、聴くことをクリエイティヴなコラボレーションという行為に変えるのだ。ズームアウトして眺めてみれば、『Ants from Up There』には、ふたりの人間が、ある種の親密な関係を築こうと努力をするが、大きな痛みを与えあった後、引き裂かれて破壊的な傷が残るという喪失の物語がみつかるだろう。少しズームインしてみると、おそらくそこには、フィリップ・K・ディック風のポスト・モダニズムの、混乱した大人たちが、自分たちの肉体に不確かさを覚え、ライトセーバーや宇宙船、ウォーハンマー40,000といった子供時代のゲームなど、過去の残滓を使って自分たちや世界を理解しようと藻掻く物語も存在する。そこには、語り手のビリー・アイリッシュ(歌詞に何度も登場する)や、チャーリー・XCXのようなポップ・スターとフロイト的なパラソーシャル(パラセクシュアル?)な関係を築いたり、ポップ・ミュージックそのものが BC,NR の世界の混沌とした断片を繋ぎ合わせる共通の土台を形成したりしているという儚い物語も埋め込まれているのだ。繰り返し登場する超音速旅客機、コンコルドのイメージは繋がりの象徴なのだろうか? スピードと混乱の象徴? 恋人? 失われた未来? 他の何か、もしくは上記のすべてか?

 しまいには、バンドが書いた物語を聴いているのではなく、バンドが並べた断片と、それらが繋がるかもしれないという彼らが残した示唆をもとに、自分自身で描いた物語を聴いている気分になる。次に聴くときには、また異なる物語を書いているかもしれない。このアルバムの死んだプラスティックに綿密にマッピングされた分岐路の庭を消化する正味期限の限界があるだろうが、それまでは、『Ants from Up There』は、魅力的で、辛辣な面白さで、時に感情的に落ち着かない会話の相手になってくれることだろう。

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written by Ian F. Martin

When we think about music as an act of communication, we’re often only thinking of only half the process. The artist has something to communicate, and through their music they transmit that to the listener, with success measured by their ability to summon up those same feelings at the receiver’s end. Communication is a two-way process though, and how a dead (as opposed to live) medium like a recording is able to create a dialogue with a living listener is a different and more difficult sort of communication.

Black Country, New Road communicate in collages of fragmentary images in which granularly observed individual details make up an impressionistic whole. The most instinctive way to navigate these pieces of story is to follow the tone, letting the words occasionally fall into focus even as the precise meaning swims away in the music’s swells of joy, washes of mourning, crushing pain of intimacy and tearing ligaments of loss. Dig into the details, though, and other stories glimmer into light in a less linear fashion, through recurring images, familiar words used repeatedly in unfamiliar ways, silhouettes of returning characters revealed, all through hints like a secret language.

On the band’s 2021 debut “For the First Time”, images and ideas that had been built up piecemeal over several years were woven together with recurring musical themes, lyrical ideas introduced and brought back, even as the larger pieces lurched apart and crashed against each other. It made for a thrilling and diverse listening experience, but as fully-formed as it felt, it was still a collection of pieces written under different conditions and then fashioned, albeit masterfully, into a simulation of coherence. With this follow-up, it’s inevitable that Black Country, New Road would be a bit more in control of the process, and the interconnected details simmering beneath the surface feel correspondingly richer and more intricate, even if specific meanings remain just as opaque.

Even as the music flits free of tangible interpretations, they sometimes hit emotionally devastating notes on songs like “Haldern”. The subtle sense of humour that made “For the First Time” so much fun is still a key presence in the music too though, with now-departed vocalist Isaac Wood having an incredible knack for juxtaposing the mournful and mythic with the banal and frivolous, without ever breaking the teetering-on-the-brink emotional tone of his voice. On “Bread Song” the narration flips tone dextrously from the domestic realism of “Don’t eat your toast in my bed” to the Biblical “This place is not for any man / Nor particles of bread”, while “The Place Where He Inserted the Blade” swings between wild emotional extremes all through what seems to be the metaphor of cooking.

The way the narration leaps from mundane to metaphysical, from historical drama to sci-fi future, blurring time and space, all brings us back to the question of communication. That very opaqueness, fragmentation and hinted interconnections makes the very act of listening an act of creative collaboration as the listener writes their own stories by selecting and highlighting meanings. Zoom out and there’s perhaps a story of loss in “Ants from Up There” — of two people who struggle to connect, cause each other tremendous pain even as they find their way into some sort of intimacy, and who leave a devastating wound when they tear apart. Zoom in a little and there’s perhaps also a Philip K. Dick-like postmodernist story of confused adults, uncertain in their own flesh, struggling to make sense of themselves and the world using the lingering ghosts of the past — the light sabers, starships and Warhammer 40,000 games of childhood. There’s a story nestled in there too of the narrator’s Freudian parasocial (parasexual?) relationship with pop stars in the form of Billie Eilish (who makes recurring appearances in the lyrics) and Charli XCX, as well as perhaps the fragile way pop music itself forms a common ground of connection between the chaotic fragments of BC,NR’s world. Is the recurring image of the Concorde supersonic airliner a symbol of connection? Of speed and confusion? A lover? A lost future? Something else or all of the above?

By the end, you are no longer listening to a story written by the band but to one you’ve written yourself out of the pieces they’ve laid out and suggestions they’ve left for how they might connect. And the next time you listen, you may have written a different story. There is probably a limit to how long you can do so before you’ve exhausted the garden of forking paths mapped out on the album’s dead plastic, but in the meantime “Ants from Up There” makes for a fascinating, wryly funny and often emotionally uncomfortable conversational partner.

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文:Casanova.S

僕には二度目の別離の夏を迎える余裕はない
この階段は、君の古い写真に繋がっているだけなんだ
“Concorde”

君は自分を必要とする世界を恐れているんだろう?
だから地元の人と仲良くすることはなかった
だけど君はそのツルでゆっくりと僕を縛り付け、どこにも行けなくした
“The Place Where He Inserted the Blade”

 2nd アルバムの発売直前にヴォーカル/ギターのアイザック・ウッドがブラック・カントリー・ニューロードから脱退することが発表された。僕は彼の書く歌詞と少し硬い歌声が大好きだった。ナイーヴな自己憐憫を重ねるような歌詞、音として紡がれる言葉たち、ひとつの言葉が他の言葉と結びついてイメージを形作りそうして意味をなしていくアイザック・ウッドのスタイル。彼は 1st アルバムで「Black Country」という言葉を繰り返し用いて、ヴォーカルが起こした性的トラブルを告発されたことで解散することを余儀なくされたナーヴァス・コンディションズから続くブラック・カントリー・ニューロードの物語を描き出した。ケンブリッジの10代の新人バンドがデビューするという最初の記事が出たタイミングでの告発、一曲も残す事なくバンドは終わり、時間が過ぎて、残されたメンバーはそれぞれに失意を抱えながらもバンドを続けることを決意した。そうして隅っこでギターを弾いていたアイザック・ウッドの前にマイクが置かれ、本来それを担当するはずだった人間の代わりに彼が歌いはじめるようになった。「だからきっとある意味で/いつだって僕はゲストだった」 1st アルバム収録曲のヴァージョン違い、“Track X (The Guest)” に追加された「ゲスト」というこの言葉はウッドのソロ・プロジェクト ザ・ゲストにひっかけた言葉なのだろうが、ナーヴァス・コンディションズの解散後にはじめたこの活動がいまのアイザック・ウッドのスタイルを形作った。そこで彼は初めて詞を書き唄い、そうして自分自身をゲストと呼んだ。

 ウッドにとってナーヴァス・コンディションズとはどんな存在だったかのか? それは 1st アルバムを聞けばわかるのかもしれない。起きてしまったことに対する後悔と自己憐憫、少しの希望、アルバムの全ての曲は同じ方向に向かって流れ、それが「Black Country」という言葉によって繫がれる。「僕は何にも学んじゃいない/2018年に失った全てのことから/彼女はまだどこかで僕らを待っているって気がしてならないんだ/水を綺麗に保つために僕たちが作ったものの下に隠されて」。7インチのヴァージョンから変更された “Athens, France” のように象徴的な言葉を差し込み(2018年はナーヴァス・コンディションズが解散した年だ)、ウッドはアルバムの曲を連結し、全体で大きなイメージを作りあげた。ここで唄われる「彼女」とはナーヴァス・コンディションズのことを指していて「Black Country」という言葉も同じものを意味しているのではないか? アイザック・ウッドの歌詞はそうやって想像する余地を残していく。「向こうで Black Country が待っているんだ」。そう繰り返し唄われる “Science Fair”、「Black Country の地面から僕らが作りあげたもの」「穏やかに過ごすために僕たちが作り上げたもの」。“Opus” では比喩的にブラック・カントリー・ニューロードの結成の物語が綴られる(ブラック・カントリー・ニューロードはサウス・ロンドンシーンのパーティのはじまりに間に合わなかったバンドだ。本来ならばナーヴァス・コンディションズかここに参加しているはずだった)。1年前のリリース時のインタヴューでサックス奏者のルイス・エヴァンスが語っていたように 1st アルバムはある時期の彼らを切り取ったものだったのだろう。傷ついた仲間たちが再び集い、そうしてまた歩き出そうとする決意の物語、ウッドは自分たちのバンド名から後付けで言葉に意味を付与し、その最初の物語、失われてしまったナーヴァス・コンディションの未来の姿を終わらせようとした。余裕なんてどこにもなく、スリルと狂気と不安がそこに漂っているような、1st アルバムはそんなアルバムだった。

 この 2nd アルバムはどうだろう? 破裂してしまいそうだったヒリついた空気が消え去り、記憶を静かに呼び覚ますような、優しく慈しむような、ここではそんな音楽が奏でられている。1st アルバムとはもう別のバンドになってしまったと言ってもいいくらいに。あるいはゆっくりと時間をかけて自分の中に潜む感情を理解しようとしているかのような。最初のアルバムで感情の変化や亀裂を描いていたギターやサックスの音がこの 2nd アルバムでは感情を優しく導いていくようなものに変わり、舞台の上でセリフをまくし立てているようだったウッドのヴォーカルはメロディをゆっくりと口ずさむようになった。それは1年前にインタヴューで見せていたあの仲間同士のリラックスした雰囲気で、ポップ・ソングを愛する、もしかしたらこれがバンドの本来の姿だったのかもしれない。「ネクスト・アーケイド・ファイアになれたら……基本的にはそれがゴールさ」 冗談とも本気ともとれるようなジョークを飛ばすアイザック・ウッドの、おそらくはそれこそがサングラスをかけフォンジーに変身しステージ立つ必要のなかった世界のブラック・カントリー・ニューロードの姿だったのだろう。『Ants From Up There』にはそんなバンドの魅力が詰め込まれている。

 ウッドはこの 2nd アルバムでもイメージを結びつけるキーワードような言葉を用いてそれぞれの曲を繋ぎアルバム全体で一つのテーマを描き出そうとしている。「コンコルド」は曲のタイトルになっているし、「ビリー・アイリッシュ」も複数回出てくる。「クランプ」は彼らをつなぎ止める留め金で、それは “The Place Where He Inserted the Blade” において自らを縛り付けどこにも行けなくするツタや彼らを結ぶタグ、長い糸としても表現されている(おそらくそれは僕たちが絆と表現するものなのだろう)。曲をまたぎ何度も歌詞に登場する「コンコルド」という言葉はケンブリッジ郊外にあるダックスフォード航空博物館を訪れた共通の思い出が元になっているとドラムのチャーリー・ウェインが明かしているが、アルバム3曲目である “Concorde” においてのこの言葉はおそらくコンコルド効果を意味するものでもある。このまま引きずっていてもろくな事にはならないと理解していながらも、それでもこれまでにあった出来事をなかったことにはできない。思い出は美しく自らを縛り付ける。クリエイティヴ・ディレクター、バート・プライスが手がけた 1st アルバムのプロモーション(インターネット上のフリー素材を用いたスタイル)から、メンバー自身が子供の頃に書いた絵を使ったプロモーションに変化していることからも彼らがノスタルジックな思い出をこのアルバムのテーマにしていることがうかがえる。このアルバムは思い出を抱えそれに縛り付けられながらもそこから歩みを進めようとするアルバムなのだ。

 インタヴューの中で彼らは今作では歌詞だけではなくサウンド面でもリンクさせようと曲作りの段階で考えていたとも語っている。ルイス・エヴァンスは「今回は、曲を作っている時に他の曲のことを考えながら作った感じ。アルバムの曲順も曲作りの時点で考えながら曲を作っていったんだ」と語り、メイ・カーショウも「全てをリンクさせることを意識していた」と話す。その言葉通り、1分足らずの短いイントロから繫がれる “Chaos Space Marine” にはその後の曲を紹介するティーザーのようにアルバムの中の要素が断片的に織り込まれている。グランドピアノの音に明るく優しいサックス、何度もタメが入って展開し、メロディを唄うウッドの口からはコンコルド、ビリー・アイリッシュ、掘ってしまった穴と次々と後続の曲を示唆するような言葉が出てくる。パーソナルな領域にゆっくり踏み込むような “Bread Song” はチャーリー・ウェインのドラムによってエモーショナルさを一気に加速させ、その手法は “Haldern” や “Snow Globes” にも取り入れられている。それは匂いや色、言葉や音、一見関係がない事柄が他の何かを思い出すきっかけとなるような記憶の仕組みによく似ていて、楽曲に繋がりと広がりを生み出している。おおげさに言うとひとつの曲の中に実際には鳴っていない他の曲の音、あるいはイメージが埋め込まれているような感じだ。そうしてそれがオーバーラップしてくる。表面的な言葉や音は必ずしもそれ自体を意味しているわけではなく、その時々で違った意味が顔出す。僕はこれこそがブラック・カントリー・ニューロードの魅力なのだと思う。彼らは曲単位ではなく塊としてアルバムを意識している。もっといえばアルバムとアルバムとの関係性も意識しているのかもしれない。

 このアルバムはとても内向きなアルバムだ。ライヴで演奏するために作られた楽曲が収められた 1st アルバムと違い、ライヴのできない状況下で作られたこの 2nd アルバムの曲たちはアルバムに収録されるために作られた。最初にあったのは “Basketball Shoes” でこの曲を出発点にしてこのアルバムは作られたという。全てのテーマが “Basketball Shoes” の中にあり、逆に辿ってアルバムの最終曲であるこの曲にまた帰って来る。初期に「チャーリーXCXについて夢を見た」と唄われていた箇所が「コンコルドが僕の部屋の中を飛び回る/家の中をズタズタにして」と変更され、アルバムの中を飛び回る「コンコルド」のイメージを強化する(それはまたしても僕たちを縛り繫いでいく)。「僕がしてきたことの全てはドローンを作ることだった/僕らは残りを唄う」 曲の中でウッドがそう伝える通りに、このアルバムでは他のメンバーの声も聞こえてくる。“Chaos Space Marine” を彩るコーラスに “Good Will Hunting” で響く歌声、“The Place Where He Inserted the Blade”、そして “Basketball Shoes” の重なる声、それらがエモーショナルに心を震わせる。これも 1st アルバムでは見られなかった特徴だ。

 このアルバムのレコーディングはバラバラではなく一つの部屋で同時におこなうライヴ・レコーディングの手法がとられたようだ。ロンドンから離れ船でワイト島に渡り3週間滞在し、寝食を共にしてアイデアを出し合い意見を交わす。時にはフットボールに興じたり、みなで屋外レストランに出かけたり、地元のパヴを巡り映画を見たり。ルイス・エヴァンスは 1st アルバムのインタヴューで冗談まじりに「音楽より仲間の友情の方が大切さ」と語っていたがこのスタンスは2nd アルバムでより顕著に表れている。プロデューサーは立てたくなかったし、ロンドンでのレコーディングもしたくなかった、それは激動の時代を経てもう一度自分たちと向き合う為に必要なプロセスだったのだろうか? ロンドンから離れた場所、海を渡ったイタリアの観光地を思わせる非日常の世界、そのスタジオの中で彼らはお互いに向き合い、観客抜きの自分たちの為だけのライヴをおこなった。サウンド・エンジニアのセルジオ・マッショッコ(最終的には彼がプロダクションを担当することにもなった)とワイト島のレコーディングスタジオのエンジニアのデイヴィッド・グランショウのふたりの手を借りて、2nd アルバムはそうやってでき上がった。だからこのアルバムはより彼らの内面に迫ったものになっている。ある意味で彼らだけで完結している閉じた世界のアルバムなのだ。バンドが大きくなっていく過程において閉じた世界だけでは成立しなくなる、自分たちを取り巻く世界が目まぐるしく変わっていく、だからこそ彼らは原点に立ち返りそこから再び始めようとした。美しく慈しむようなこのアルバムのサウンドは、ノスタルジックであると同時に、「コンコルド」の思い出を糧に前へ進もうという意志と明るい希望が感じられる。あたかももう少し自分たちのバンドをやってみるよというメッセージが込められているかのように。

 アイザック・ウッドの脱退の発表からそこに新たな響きが付け加わってしまったのかもしれないが、それでもこの 2nd アルバムにはレコーディングされた当時の希望がそのまま封じ込められている。だから悲しくは響かない。1年後、3年後や5年後、これから先、きっと繰り返し聞くことになるアルバムには思い出が積み重ねられていく。音楽はそうやって時間を重ね、“Snow Globes” に出てくるキャラクター、ヘンリーがそうしたように記憶の壁にかけられるのだ。アルバムのアートワークに描かれている飛行機はどうしてコンコルドではないのだろう? 頭にそんな疑問が浮かぶが、でもそんなことは些細な問題なのかもしれない。アルバムを取りだしてジャケットを眺める。その飛行機の模型からコンコルドのことが思い出されて、針を落とす前にはもう頭の中に曲が流れ出している。このアルバムはやはり記憶と連想のアルバムなのだ。美しく感傷的で希望に溢れるブラック・カントリー・ニューロードのこの 2nd アルバムはきっと頭の中、記憶の部屋に残り続けることだろう。この先バンドがどんな風になっていくのかわからないが、でもいまはこの素晴らしいアルバムが作り上げられたことを嬉しく思う。

Dopplereffekt - ele-king

 ドレクシアの片割れ=ジェラルド・ドナルドと、(結成当初はキム・カーリィ、現在は)ミカエラ・トゥ=ニャン・ バーテルから成るプロジェクト、ドップラーエフェクト。その新作が4月14日にベルリンの〈Leisure System〉からリリースされる(デジタル版。LPとCDは6月10日発売)。ドップラーエフェクト名義としては、2017年の『Cellular Automata』以来5年ぶりのアルバムとなる(EP「Athanatos」からは4年ぶり)。
 研ぎ澄まされたダークなサウンドはもちろん、彼らはしっかりコンセプトも練るタイプのアーティストだ(たとえば1999年、〈Gigolo〉から出た編集盤『Gesamtkunstwerk』は、社会主義の理想にオマージュを捧げたものだった)。今回のタイトルは「ニューロ(神経)テレパシー」とのことで、インフォメイションにも「機械と人間のインターフェイス」「神経学的現実」「物理的蓋然性」といった単語が並んでいる。はたしてそれはなにを暗示しているのか?
 現在 “Neuroplasticity” が先行公開中。しびれます。

artist: Dopplereffekt
title: Neurotelepathy
label: Leisure System
release: April 14th, 2022

tracklist:
01. Epigenetic Modulation
02. Neural Impulse Actuator - Mirror Neuron
03. Visual Cortex
04. Neuroplasticity
05. Cerebral data download 2100 A.D.
06. Cerebral to Cerebral Interface
07. Cerebral - AI entanglement
08. Optogenetics
09. Transcranial Magnetic Stimulation
10. EEG

µ-Ziq - ele-king

 一昨年に設立25周年を迎え、去る2021年もDJマニーヤナ・ラッシュRP・ブーなど変わらず力作を送り出した〈Planet Mu〉。同レーベルを率いるマイク・パラディナス本人によるプロジェクト、ミュージック(µ-Ziq)名義の新作EP「Goodbye」が4月1日にリリースされる。
 今年2022年は代表作『Lunatic Harness』の25周年にあたり、夏にリイシューが予定されているのだが、それを中心に展開される新作シリーズの一発目に当たるのが今回のEPだという。なんでも、『Lunatic Harness』のリマスタリング中に過去のアーカイヴに触れる過程でインスパイアされたのだとか。美しい和音とグリッチ、ジャングルのリズムが融合した表題曲が現在公開中です。

artist: µ-Ziq
title: Goodbye
label: Planet Mu
release: 1st April, 2022

tracklist:
1. Goodbye
2. Giddy All Over
3. Moise
4. Rave Whistle
5. Rave Whistle (Darkside Mix)
6. Rave Whistle (Jungle Tekno Mix)

https://planet.mu/releases/goodbye/

Aldous Harding - ele-king

 ポピュラー(=人気のある/大衆向け)音楽というだけあって、ポップスの基本テーゼのひとつは「人に好かれること」にある。耳に心地よいメロディやサウンド、踊りたくなるビート、美しいヴィジュアル等の正の価値観&普遍性は大抵勝つのだ。筆者の暮らすイギリスでも、ここ数年音楽業界のマーケティング・キーワードとして「共感しやすさ」が重視されている。SNSや各種プラットフォームの発達でかつて以上にファンとじかに繫がることのできる時代だけに、スターも「近づきがたい憧れ」だけではなく「親しみやすい普通の人間」な面もアピールした方が賢明かつ無難らしい。
 正の価値観だけで世界が構成されているはずはなく、光あるところに影が生まれるように、負の価値観も音楽の想像力を拡張してきた。前衛や実験音楽のノイズ、不協和音、ドローン、即興/偶然といった「秩序を乱す」ヴォキャブラリ──ときに「音楽ではない」とも評された──は、様々な形でポピュラー音楽に侵入し吸収された。チャート1位云々のレベルではなく多くはアート/アングラ/インディ系と呼ばれるが、それらも確実に商業音楽の一角を占める。人間は清明で整った美しいものだけではなく、不快な/不気味な/恐ろしいものにも魅かれてしまう。普通は抑圧されるか排除される、境界線をかく乱する異物(ジ・アザー、埒外、禁忌、アンビヴァレンス。ジュリア・クリステヴァが言うところのアブジェクシオン)に、アートは長い間生存する逃げ場をもたらしてきた。
 ニュージーランド出身、現在ウェールズを拠点に活動するシンガー・ソングライター、オルダス・ハーディングの新作4th『Warm Chris』を聴きながら、そんなことを考えている。オルダス(Aldous)というとハクスリーが浮かぶし、オルダスの語源は「old」らしい。だが、男性でも年寄りでもないこの人の正体はハナ・シアン・トップという名の今年32歳の女性だ。2015年からやっているツィッターのこれまでのポストは13個。プラヴェートかつインタヴューも苦手という「作品に語らせる」アーティストで、音楽はラウドでもノイジーでもなく一聴チャーミング。だが、その世界観が放つ不穏さ・矛盾は、アブジェクシオンの美で際立っている。

 フォーク/ブルーズ系ミュージシャンのロリーナ・ハーディングを母にもつ彼女にとってギターを手に歌う行為は日常的な光景だったようだ。10代で作曲を始め、一時期ブルーグラス・バンドでも活動。地元のインディ〈Spunk〉から発表したセルフ・タイトルのデビュー作(2014)のジャケットはトラッカー帽にTシャツという現代女性ぶりながら、フォークとカントリーに根ざしたサウンドと思慕に満ちたメロディ、アルカイックなトーン/密やかなフレージングを継承した歌声はタイムレスだった。メルヴィン・ピークの『ゴーメンガースト』を引用した曲名やPV(特に “Hunter”)や歌詞に浮かぶアンジェラ・カーターの『血染めの部屋』的想像力も作用し、同作は「ゴシック・フォーク」とも評され注目を集めた。

ジョンには歌の本質を見極める不思議な才能が備わっている。言葉で言い表せない感覚のようなもので、私の人生の中でもっとも重要なもののひとつである彼との関係は、ふたりにそれぞれ与えられたギフトの間で起きる沈黙のコミュニケーションの上に成り立ってきたように思う
(*発言はオルダス・ハーディングとのメール・インタヴューより引用、以下同)

 世界的な名門〈4AD〉からのリリースとなったセカンド『Party』(2017)で、彼女はジョン・パリッシュと一種運命的な出会いを果たす。『Warm Chris』も含め3作をプロデュース(プレイヤーとしても貢献)することになるジョン・パリッシュはPJハーヴェイの懐刀として知られるが、ジェニー・ヴァル、ディス・イズ・ザ・キット、ドライ・クリーニング等の作品でも優れた手腕を発揮してきた。パーソナルな歌という根本は変わっていないものの、彼と共にピアノ、打ち込み、管楽器、クワイア等の新たな彩りをストイックに配した音空間を造成しつつ、オルダスは大胆なヴォーカル・パフォーマンスに乗り出していった。イノセントな少女のささやき、男性的な低域、空を刺すナイフのようなシャウト、柔らかなメゾ・ソプラノ、初期ニコの硬質で超然としたトーン。曲ごとに、というかひとつの曲の中ですら表情・質感・音域がメタモルフォーズし、視座も変わる。“Horizon” のドラマチックさを筆頭に、表現者としての跳躍が起きた。

まあ、私の歌詞やヴィデオの解釈には色んなものがある。私をホドロフスキーの大ファンで障害者だと思っている人たちもいる。また、ホドロフスキーの大ファンで子供を産めない人だと考える者もいる。どうなることやら

(実に多彩なヴォーカルの「妖精」を用いていますね、との意見に対し)この世界はカラフルなもの、そうじゃない? ヴォイスは楽器であり、私はこの世のギャップを埋めるためにそれを使う。あれら様々なヴォイスは、若い願望やテレビ番組等々と同じくらいに、私の一部を成している

 ニュージーランドと欧州の音楽賞で最優秀アルバム部門にノミネートされた前作に続くサード『Designer』(2019)はクリーンなアレンジとあたたかなサウンド、レンジを広げたヴォーカリゼイションがハモり始めた1枚。初来日も果たしている。才媛ケイト・ル・ボンのコラボレーターでもあったH.ホークライン(ヒュー・エヴァンス)らウェールズ・シーンとのオーガニックな連携も嬉しいが、“Designer” や “The Barrel” のR&Bなグルーヴ・メイクや “Weight of the Planets” のトロピカル味の導入が何より耳を引く。フォークという分類からスルリと逸脱した一種無国籍/無時代なハイブリッドぶりは、スラップ・ハッピーの『Acnalbasac Noom』の楽しさすら彷彿させる。
 より多くの耳目に触れたことで、彼女につきまとう「エニグマ」、「風変わりな」といった形容詞もこの作品で定着したように思う(別に難儀な人だとか、意図的にミステリーを醸しているのではなく、作品や自身を「説明」することに意義を感じないようだ)。たとえば、一聴軽やかなポップ・ソングである “The Barrel” のヴィデオ。子宮を思わせるトンネルを潜ると、17世紀オランダ風でありつつアシメトリーな衣装(上記の引用発言で彼女が触れている「ホドロフスキー」は『ホーリー・マウンテン』に由来する)と分厚いプラットフォーム・シューズ姿を始め、色々な「オルダス」が登場する。がに股で指をスナップする映像は心をざわつかせずにいられないし、「鳩」、「フェレット」、「卵」、「ピーチ」といったセックスや繁殖のイメージを喚起する言葉が並ぶ詩的な歌詞も解釈は十人十色。どうして? 何を象徴しているの? と謎は深まるばかり。
 「動物園の目」なる不思議なイメージからなぜか話がアラブのドバイにまで飛ぶ “Zoo Eyes” の歌詞もシュールで抽象的だ。「ズゥアイズ」―「ドゥバイ」の韻なのはわかるが、そもそも「私はドバイで一体何をしてるんだろう?」の自問で始まる曲だけに、その「私」の状況も曖昧と言える。これでは Genius も註釈に困るだろうし、彼女が主体(語り部)と客体(キャラ)を兼ねるヴィデオもマルチプルな視点が可能な夢の世界のそれ。この奇妙で美しい内的ロジックと想像力を、聴き手は直観で受け入れる(あるいは拒絶する)しかない──簡単に飲み下し消化できない異物でありつつポップな魅力も備えた、久々のカリスマの覚醒だった。

今回のヴォーカルは、他のレコード以上に純粋な音響/音声にチューニングを合わせている。背景音に対して、言葉のサウンドそのものを独立した詩として響かせたかった

 新作『Warm Chris』は、奇妙な感性を自由に広げると同時に、音楽的なフォーカスを引き絞ったマエストロの1枚と言える。どこに向かうか見当のつかない曲展開やテンポ/ムード・チェンジ、コード進行の妙、変幻自在なヴォーカル。1曲ごとに味わいも中身も違うイースター・エッグを思わせる緻密さながら、風通しのよいサウンドゆえに自然体に響くバランス感が素晴らしい(「がんばった」エキセントリックさほど悲しいものはないので)。そこには、ゲストに迎えた英ジャズ界の名物ドラマー:セブ・ロチフォード(近年ではサンズ・オブ・ケメットにも参加)が存在感を増したベースと共に軽快でしなやかなグルーヴを形成しているのはもちろん、タイトル曲のフィンガー・ピッキングを始めギターも健在ながら、歯切れよいアタック感のあるピアノ──昨年出た単発シングル “Old Peel” のPV でもわかるが、ロックダウン中に彼女はピアノを学んだ──がリード楽器になっている点も大きく作用している。

ジェイソンがオーストラリアのフェスでプレイしたのを見たことがあった。自分のショウの後で少し話せたけれども、彼にさよならと言いつつ、頭の中ではもう彼に向けてEメールを書いていた。私たちの間には非常に敬意に満ちた、不安定なケミストリーが生じた。ジェイソンに期待していたのはサウンドではなくエネルギー。彼の肉体性と頭脳から、こちらの求めるどんなサウンドも作り出せる人だと、自分には分かった。たしか彼はあの曲をワン・テイクで録ったんだったと思う

 掛け布団やキルトにぐるぐる巻きにされたアーティスト写真、第一弾シングル “Lawn” のヴィデオではトカゲ(!)に扮する等、相変わらずシュールな世界にも引き込まれる。彼女のこれまでのアルバムはすべて9曲入りであり、ジャズ味が新鮮な⑨ “Bubbles” でしっとり終わる……のもありだっただろう。しかし今回は10曲目に、強力なワイルド・カード=スリーフォード・モッズのジェイソン・ウィリアムソンがカメオ参加した “Leathery Whip” が控えている。「美女と野獣」な顔合せだが、このふたりにしか生み出せない強烈に異色なポップ・マントラなだけではなく、双方が通常の守備範囲を越えている意味でも秀逸(ジェイソンはアレックス・キャメロンの『Oxy Music』でもコラボしている。興味のある方は聴き較べてみてください)。

 この曲の「少し歳をとったけれど私は変わらないままだ/私のことを欲しがる連中は私が追いかけているものを持ち合わせていない/あり得ない」という印象的なヴァースの力強い拒絶の意思(それは “Old Peel” でも響いていた)はより明確にアーティストとして/女性としての自身を定義した彼女を伝えるし、この大胆なオープン・エンディングを聴いていると、オルダス・ハーディングはどこまで行くんだろう? とますます楽しみになる。その唯一無二の旅路をぜひたどってみて欲しい。

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