「Nothing」と一致するもの

Steve Gunn & Mike Cooper - ele-king

 夏が終わっちまう前に、ロマンティックな音楽を聴こう。厭世的で、嫌味なほど格好いい音楽を聴いてやろう。40歳以上も年が離れたアメリカ人とイギリス人のギター弾きが、ポルトガルの空港で出会い、リスボンで10日間のセッションを試みた。その結果生まれたのが本作である。
 〈Rvng Intl.〉は、この手の年の差コラボを得意とする。サン・アロウとコンゴス、アープとアンソニー・ムーア、ジュリアナ・バーウィックとイクエ・モリ……。「FRKWYS 」シリーズは、音楽的には近しい、親子ほどの年が離れた先達と若手、ときには民族も違った人を組ませる。

 スティーヴ・ガンは、マーク・マッガイアとほとんど同じ時期に脚光を浴びたギタリストだが、マッガイアとは別の方向性をもっている。ガンはブルースであり、カントリーだ。エフェクターは使わない。フィンガーズ・ピッキングで弾く。マニュエル・ゲッチングではなく、ジョン・フェイヒィの側にいる。
 ガンの2008年の出世作、〈Digitalis〉からのアルバムは、ジョン・マーティンのカヴァー曲で終わる。そう、ベン・ワットがもっとも影響を受けたブリティッシュ・フォーク・シンガーのひとりで、昔は「英国のボブ・ディラン」などと呼ばれた男だ。1973年の名作『ソリッド・エアー』の収録曲を演奏したガンのその作品のタイトルは『浮浪者(Sundowner)』。この言葉が、彼の音楽をよく言い表してはいるが、音楽が貧乏くさいわけではない。
 いっぽうのマイク・クーパーは、ジョン・マーティンと同様に60年代から活動している英国のミュージシャンだ。向こうの記事を読むと、ローリング・ストーンズへの誘いを断った男とも書かれている。最初はブルースとジャズを演奏していたが、やがてインプロヴィぜーションに傾倒した。ブルースを基本としながら、実験を好み、フリー・ジャズとサイケデリックに遊んでいる。昨年は、オーストリアのアンビエント/ドローンの作家、ローレンス・イングリッシュが主宰する〈Room40〉からアルバムを発表している。

 『Cantos De Lisboa』は、とても切ない気持ちにさせられると同時に、至福をももたらしてくれる。ブルースの音色は滑らかに流れながら、美しく破壊される。青い空の下で、ギター・アンサンブル以上の何かが立ち上がる。

interview with The Bug - ele-king

 移民政策というのは、日本にとっていよいよ他人事ではなくなった関心事のひとつで、以下のケヴィン・マーティンのインタヴューからは、そしてザ・バグの音楽からは、ロンドンの、いろいろ混じり合って、さんざん衝突し合ってきた挙げ句のリアリズムが激しく立ち上がってくる。ロンドンにおいては間違いなく移民文化が音楽の活力剤となっている。美しい話かもしれないが、甘さだけのものではない。その甘くはない方に性懲りもなく、律儀に肩入れしてきたのが、ザ・バグである。

 ザ・バグは、ケヴィン・マーティンのソロ・プロジェクトである。もともと彼は、1990年代初頭、ゴッド、アイス、テクノ・アニマルという、3つのプロジェクトによって頭角を表している。パートナーは、元ナパーム・デス(ハードコア/スラッシュ・パンク)のジャスティン・ブロドリック。ハードコアとダブが彼らの魂の拠り所だった。ふたりはインダストリアル・ヒップホップやダーク・アンビエント、テクノやジャングルどなど、様々なスタイルを食い散らかしては取り入れたが、結局、どこのシーンにも属すことなく「孤立主義」を押し通した。彼の言葉を借りれば「どこにも属さない変人」、早い話、浮いていたのである(それでも、ゴストラッドのような、ケヴィン・マーティンの支持者はいた)。

 しかし、ザ・バグをはじめてからのケヴィン・マーティンは、より時代に馴染んでいるように見える。ダンスホールを取り入れた2003年の『プレッシャー』、UKグライムとロール・ディープをフィーチャーした2008年の『ロンドン・ズー』は、いま聴き返しても素晴らしいアルバムで、2枚とも移民文化のエネルギーを吸収しながら、あらゆる角度から小刻みなジャブのように攻めてくる。アグレッシヴで、ヘヴィー級だが、踊りのステップもある。ハードコアだが、ダンスホールでもある。90年代は「浮いていた」彼のパンク精神は、UKグライムのふてぶてしさと相性が良かったし、情け容赦ない低音を有するキング・ミダス・サウンドも、最初の1枚からリスナーに支持された。


THE BUG
Angels & Devils [帯解説・ボーナストラック2曲収録 / 国内盤]

NINJA TUNE/ビート

DubGrimeLeftfieldSynth-popAbstract

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 この度リリースされる『エンジェル&デビル』は、20年以上にもおよぶケヴィン・マーティンのキャリアにおいて、いちばんの注目作となっている。
 アルバムは、そのタイトルが言う通り、「天使サイド」と「悪魔サイド」に分けられている(わりとこの人は、良くも悪くも言葉遣いが直球なのである)。「天使サイド」では、彼にとっての新しい試みと言えるであろう、妖艶な領域に足を踏み入れている。陶酔的なそのサイドでは、リズ・ハリスインガ・コープランドという、筆者もイチオシのふたりの女性シンガー、そしてフライング・ロータス一派のゴンジャスフィが歌っている。こうした配役は、90年代のマッシヴ・アタックを彷彿させるし、実際のところなかば退廃的なムードも似てなくはない。が、いっぽうの「悪魔サイド」は、USのデス・グリップスほか、ウォーリアー・クイーンやフローダンなどUKグライムのラッパーが威勢良く飛び出しては汚い言葉をわめき散らすという有様だ。「悪魔サイド」は、『ロンドン・ズー』以上にハードで、「怒り」がほとばしっている。その怒りを、ケヴィン・マーティンのビートは100%援護する。いちど溢れ出した水は、元には戻れない。いったいどうなっていくのだろう。ケヴィン・マーティンは、録音中、長年住み慣れたロンドンをあとにして、というか、たとえ愛するジャマイカ文化が身近にあっても、いや、さすがにもう、ここには住めんわーと決意して、ベルリンに移住した。


いまのイギリス政府はとにかく右翼で、人種差別者たちの集まりだから。だから彼らは他の国の人間を受け入れない。ロンドンを出ることはすでに考えていた。どうやっても、ここにこれ以上長くは住めないんじゃないかと思いはじめていたのさ。最後の年は、かなりの貧民地区に住んでいたからね。


通訳:こんにちは。今日はベルリンからですよね? 

ケヴィン・マーティン(KM):そう。ロンドンからベルリンに引っ越したんだ。もう1年以上になるね。

グルーパーのリズ・ハリスがザ・バグに参加するという情報は、たぶん1~2年前に聞いていて、ものすごく期待していたのですが、完成まで、けっこう時間がかかりましたね。実際、今作の準備はいつからはじまっていたのですか?

KM:このレコードを作ることには、ものすごく真剣だった。でも、だからこそベストな雰囲気やイメージをしばらく探していた。自分にとって、このレコードは個人的な旅のようなものというか……正しい言葉が見つからないけど。リズのヴォーカルはたしかに2年前に録った。でも、そこからまたあらためて曲を書き直して、それで時間がかかった。
 リズに関しては、まず彼女と一緒の作品をイメージして、そこから8~9曲くらい作って彼女に送った。彼女にそのなかから彼女自身に合うもの、もっとも彼女が繋がりを感じるものを選んでもらった。で、リズがその上にヴォーカルを乗せて送ってくれたんだけど、そこからまたオリジナル・トラックを書き直した。コラボレーションのプロセスも、音源を送って、そこにヴォーカルを乗せて、それをミックスするという普通のプロセスとは違っていたし、時間がかかってしまった。クリエイティヴなプロセスだったから。パーフェクトなレコードを作るのはどうせ不可能なんだけ……どんなレコードでも常に、あれが出来たら良かったなとか、これをすればよかったっていうのが出てきてしまうから。

通訳:準備自体はいつからはじまっていたのでしょう? 実際は、構想期間を入れると、どのくらいの時間を要したのでしょうか? ザ・バグとしては6年ぶりですよね?

KM:『ロンドン・ズー』が出来てからすぐだね。俺は仕事中毒だから(笑)。このレコードが出来上がるまでに、いくつかやり方を変えたりもしたし、自分に問い掛けたりもした。確かに長い時間だよな(笑)。そのあいだにキング・ミダス・サウンドのアルバムがあったりもしたしね。

録音はロンドンとベルリン?

KM:そう。最初はロンドンでレコーディングして、それからベルリンでミックスした。いくつかのトラックはベルリンで再レコーディングもした。“パンディ”はベルリンで書き直したし、“ファック・ユー”はゴッドフレッシュのショーの後書き直した。なんか、あのショーを見た後に自分のルーツを思い出してね。だからあのトラックをもっとヴァイオレントにしたくなった。あともう1曲あるんだけど……いま思い出せないな。とにかくその3曲はベルリンで書いてレコーディングした。

ベルリンに移住したのは1年と少し前とおっしゃっていましたね。あなたがベルリンを移住先に選んだ理由を教えてください。

KM:理由はいくつかある。まず、俺のパートナーは日本人で、彼女がイギリスに住むための新しいビザをもらえなかった。いまのイギリス政府はとにかく右翼で、人種差別者たちの集まりだから。だから彼らは他の国の人間を受け入れない。3ヶ月ずつ観光ビザで滞在させて、彼らにお金を落とさせるだけ。だから彼女もビザがとれなかった。
 同時に、『ロンドン・ズー』のときからロンドンを出ることはすでに考えていた。当時から、ロンドンに対しては大きなクエスチョン・マークがあった。どうやっても、ここにこれ以上長くは住めないんじゃないかと思いはじめていたのさ。最後の年は、かなりの貧民地区に住んでいたからね。ポプラーっていうエリアさ。
 ロンドンはいろいろな文化の坩堝と言われているけど、みんな貧困に悩んでて、滅入ってて、すごく悲しい街でもある。だから、もう住まなくてもいいんじゃないかと思った。もはや、それは住んでいるというより、無理して生き抜いてるという感じだったから。メインストリームの音楽ももう俺には関係ないしな。俺にとって、音楽というのは金がゴールなんかではない。音楽はセラピーだ。いつだって、俺はセラピーとしての音楽作りを求めてるからね。

あなたは80年代、まだ10代の頃にレゲエやデプス・チャージに共感する怒れる若者でした。ロンドンにやって来たばかりの頃は、フロ無しの部屋に住んでいたと、2008年に取材したときにあなたは語ってくれましたが、あなたが送ったボヘミアンな生活は、地価が急激に高騰した現代のロンドンではもう難しいのではないかと思います。あなた自身もベルリンに越されたそうだし、ドロップアウトという生き方が選べなくなっているように思いませんか?

KM:ロンドンにやって来たばかりの頃だけではなくて、まさに『ロンドン・ズー』を作ってるときもそうだったよ(笑)。スタジオに7年くらい住んでたんだけど、そこにはキッチンもシャワーもなかった。めちゃくちゃ汚かったな(笑)。法律やルールに従えば、ロンドンには住めるかもしれない。あとは、幸せを感じることが出来ないクソみたいな仕事をするか。その仕事ばばかりをやれば住めるかもな。俺はどちらも御免だ(笑)。だから街を出た。

通訳:ひとつ前の質問に戻りますが、ロンドンを出た理由はわかりました。ではなぜベルリンを選んだのでしょう?

KM:ベルリンにはもともと繋がりがあったんだ。ベルリンでは何回も何回もプレイしてきた。知り合いの音楽関係の人間でベルリンを拠点にしている人もたくさんいる。それに、ベルリンの雰囲気がずっと大好きだった。ヨーロッパの大都市のなかで、いまだにソウルを持っている数少ない街のひとつだと思う。ベルリンはオルタナティヴ・カルチャーを基盤としているし、政府もマシなほうだよ。いまはベルリンにとってすごく面白い時代だと思うよ。ヨーロッパの大都市のなかでも唯一物価の安い都市だしね。
 だからいま、ミュージシャンや画家、アーティストたちがたくさん集まってきている。アメリカからももちろんだけど、フランス、イタリア、スペインとか、とくにヨーロッパから。いま、急激に変化してきていると思う。もしかしたら、10年後にはロンドンみたいになってるかもしれないけどね。
 最初に越してきたとき、〈ワープ〉からレコードを出してるアンチポップ・コンソーティウムのプリーストが友だちなんで、彼のショーを見に行ったんだけど、そのとき彼が言ったんだ。「ベルリンは良かった頃のブルックリンを思い出させる」って。とはいえ、いまやベルリンにもたくさん人が来すぎてはいる。それでも、まだロンドンやニューヨークよりはマシだ。これからどうなるかはわからないけどね。

通訳:ベルリンとロンドンを比べてみてどうですか?

KM:ロンドンには23年住んでいた。ベルリンはそのあと、初めて住むロンドン以外の場所だった。だから、引っ越すまではやはりナーヴァスだった。引っ越してからもそれは続くだろうと思っていた。ロンドンは俺に音楽を教えてくれた場所だし、俺の音楽的な基盤はロンドンだから。人付き合いだってここで育んできたわけだし。ロンドンはスペシャルな場所ではある。
 でも、いまベルリンに住んでみてロンドンを違う角度から見てみると、おかしなことに全く恋しくないんだ。恋しくなるに違いないと思ったのに。恋しいと思う唯一のものは建築だね。ベルリンの建築はつまらないから。そこはロンドンのほうが面白い。あとは、ロンドンは社会や文化的な坩堝だけど、ベルリンはヨーロッパの坩堝。だから、ジャマイカやインドのコミュニティが恋しいっていうのはある。俺のロンドンでの生活のほとんどは貧しい地域で過ごしてきたからね。近所は常にパングラディッシュ人やインド人、パキスタン人、ジャマイカ人、トルコ人だった。ベルリンにもトルコのコミュニティはあるけど。これがベルリンを特別な場所にしてると思う。ベルリンというか、ドイツ全体を。いまロンドンに戻ると全てのバカ高さに気づかされるし、街の緊張感を感じる。戻る度に、よくあんなに長く住めたなと言い続けてるんだ。

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ロンドンは社会や文化的な坩堝だけど、ベルリンはヨーロッパの坩堝。だから、ジャマイカやインドのコミュニティが恋しいっていうのはある。俺のロンドンでの生活のほとんどは貧しい地域で過ごしてきたからね。近所は常にパングラディッシュ人やインド人、パキスタン人、ジャマイカ人、トルコ人だった。


たしかに『ロンドン・ズー』は、サッチャー以上にサッチャー的と言われるデヴィッド・キャメロン首相がもたらしたUK、たとえばロンドン・オリンピック後の、荒廃したロンドンを先んじて描いたと評されています。そうした政治的なことで言えば、この6年でさらに悪化しているように思いますが、あなた自身は、今日の情況をどのように分析していますか。とても大きな質問ですが、『エンジェル&デビル』の背景を知る上でも重要だと思います。

KM:いまのロンドンは悪くなっている一方だ。金を重視してるからな。ほとんどのヨーロッパの都市がそうだと思う。経済の問題のいち部はヤッピー(変に金を持ってるエリート・サラリーマンたち)からも来ている。街も質の悪いアパートをそこらじゅうに建てて、高い家賃を投げつけてくる。その繰り返しだ。10年前まではいろいろな人種のミックスだったのに、いつの間にか、いまのマンハッタンみたいになってしまっている。スターバックスだらけで、同じ服を来て同じ行動をする奴らしかいない。
 俺はコントラストが好きなんだ。だからロンドンを出たんだよ。ほとんどの大都市が金に引きつけられている。マンハッタンなんて、個人的にはとくに気持ちの悪い場所だね(笑)。
 『ロンドン・ズー』を“投獄”と言えるなら、今回の新作は“現実逃避”だ。そういうロンドンの情況からのね。新作はロンドンにもリンクしてるし、同時にロンドンからの逃避も入っている。説明が難しいけど……その両面が入っているというか……このレコードを作りはじめたとき、『ロンドン・ズー』のサウンドを続けるか、それとも完全に変えてしまうか迷っていた。ダブステップという枠にとらわれてしまっている気もしたし、そう思われたことに対して決してハッピーじゃなかった。
 だが、何年か経って、この作品の他のスタイルやマテリアルに取り組み出したときに…そのマテリアルはラップだったんだけど、基本的に俺のお気に入りのアーティストはみんな職人で、みんな自分のサウンドをよりベターにしていっている人たちだということに気づいた。アーティストは、自分の特徴としてみんなに知られたレアなサウンドを残すことが多い。俺にとっては、それが突破口になった。『ロンドン・ズー』は『ロンドン・ズー』で自分が進んでいるひとつのチャプターだと思えば良い。そこから何かをスタートさせて、また他のチャプターに行けばいいと思った。だから、『ロンドン・ズー』から遠すぎもせず、かつ『ロンドン・ズー』から次へ進むような作品を作ることにした。

ちなみに、ベルリンにもアフリカ系の人たちがやっているサウンドシステムがありますが、行ったことはありますか?

KM:ひとつ大きなクラブがある。最近場所を移動したけど、〈Yaam〉というクラブ。ベルリンのなかでもトップのレゲエ・クラブで、アフリカン・ミュージックのヴェニューだ。面白い場所で、フェイクのビーチがある。その偽物のビーチの上にジャマイカのビーチハウスを建てて、ドリンクやつまみを売ってる。ベルリンっぽくなくてすごくいい感じだ。最近移転のために閉まってしまったけど。まわりにアパートが建ち初めて、家賃も高くなったから。20年くらいその場所にあったんじゃないかな。新しいロケーションを見つけたみたいで良かったよ。〈Yaam〉はすごく大切な場所だから。

インターネットは好きですか? どんな風に利用していますか?

KM:ハハハハ。他のみんなと同じように、中毒でもあるし、大切なツールでもある。ときに、スクリーンの前でこんなに時間を無駄にしてしまったのかってイヤにもなるけどね。でも、同時に信じられないくらいに便利でもある。昔はアンチ・インターネットだったんだけど、ロジャー・ロビンソンとキキ・ヒトミからインターネットを使わないことに対してごちゃごちゃ言われてさ(笑)。プロパガンダには必要だって。だからいまでは俺もFacebookをパーソナル・マガジンとして使ってもいる。
 最近お袋と話してたんだけど、俺が本当に小さい子どものとき、世界の全ての本がある図書館に入り込めたらいいのにっていう夢の話を母親にしてたらしい。それがいま、インターネットで実現されているようなものだからね。そういう意味ではインターネットは奇跡とも言える。もうすっかり当たり前になってしまっているけど。でも、同時に危険でもある。インターネットの前ではゾンビになりかねないから。何もせずに情報だけを受け取るだけになってしまう可能性もある。だからバランスが必要なんだよ。すべてのことと同じ。いい面もあれば悪い面もある。

あなたはロンドンのUKのサウンドシステム文化からの影響を受けていますが、それがUKから離れることで、あなたの制作においてどのような化学変化が起きたのでしょう?

KM:先週もいくつかインタヴューを受けたんだけど、みんなこの質問をしてくる。まあ、この質問が来るのは当然だとは思うけどね。でも、さっきも言ったように、ここに住んでまだ1年ちょっとしか経っていない。この街が自分にどれくらい影響をおよぼしてるかに気づくにはまだ早すぎる。レコードをミックスしてるあいだ、3ヶ月は車いすの生活をしてて、彼女がずっと俺を世話してスタジオまで毎日押していってくれた。そういう生活からは精神的に影響されたかもしれないけど……
 あと、ベルリンは景観的にも、ロンドンよりもオープンだ。俺のスタジオは川岸にあるから、地平線が見えるんだよ。そういうものからも影響はされてるだろうね。でも、他の影響や化学反応に気づくには、いまはまだ早すぎる。いまはまだ馴染んでるところ。そこから自分のサウンドがどう形作られていくかはまだわからないね。

通訳:ベルリンの音楽から何か感じるものはありますか?

KM:ベルリンにおいて大切なのは、ここが音楽都市だということ。多くの若者がそれを求めてここにやってくる。ヨーロッパ内だとフライトも安いし、たくさんの若者が24時間パーティをしに来るんだよ。ボロボロになりに。そういうヴァイブとエナジーがある場所が大好きだ。ベルリンには確実にそれがある。それが自分にアイディアをくれているとは思う。
 俺がここに自分のサウンドシステムを移したのは、音楽に欠けていている何かを埋めるものがあったから。いま俺が取りかかっている次のアルバムのひとつは、7インチ・レーベルの〈アシッド・ラガ〉がベースになってるものなんだけど、〈アシッド・ラガ〉とライヴ・サウンドのマテリアルを俺のサウンドシステムで、ベルリンのクラブの汚い地下でプレイしたものが基盤になってる。
 だから、ベルリンにすでにインスパイアされてるのは間違いない。アイディアをくれているし、素晴らしい人たちに囲まれている。本当に、ベルリンに越してきたのはすごくポジティヴな動きだったと思う。来る前はナーヴァスだったけどね。

キング・ミダス・サウンドでは、ダブ(ないしはダブ・ポエトリー)を追求するプロジェクトでしたが、そこには、あなたの重要なコンセプトである多文化主義的アプローチも反映されていたと思います。ザ・バグのサウンドにおいて、そうしたエスノ的なアプローチ、多文化主義的アプローチはどのように活かされているのでしょうか?

KM:答えになってるかわからないけど……キング・ミダス・サウンドに多文化主義的アプローチが反映されているというのは、メンバーのひとりがトリニダード・ドバゴ出身で、もうひとりが日本人、そして俺のルーツがスコットランドとアイルランドだからっているのがあると思う。それはキング・ミダス・サウンドの大きな部分だ。
 それに加えて大切なのがダブだよ。キング・ミダス・サウンドでもバグでも、ダブは大きな要素だ。ジャマイカの音楽は自分にとって大きなインスピレーションだから。それを考えるとここ何年かは悲劇だった。自分が影響を受けてきたようなジャマイカ音楽がまったくなかったから。でもある意味、その状況は、自分自身の未来的なジャマイカン・ミュージックを作ろうと俺に決心させてくれた。自分が聴きたい音楽が見つからないから、自分が作らないといけないと思った。俺にとって、レゲエ、ダンスホール、ラガをはじめとするダブと呼ばれるすべての美とは、先進的で、驚きを与えてくれる部分だ。冒険的で脱構築的なところが魅力だった。しかし、それが最近はつまらなくなってしまった。先が読めるし、アメリカンすぎる。だから、自分が聴きたい音楽がなければ自分で作るしかないという姿勢で、自分なりのそういった音楽を作ろうとしている。先進的だったり驚きを与えるための新しい音楽の言語を作り出そうとしてるとでも言うかな。答えになっていないかもしれないけど……。

今回、ビートについてはどのように考えましたか? 『プレッシャー』のときはダブ、ダンスホール、ブレイクコア、『ロンドン・ズー』のときはグライムを参照したと思いますが、『エンジェル&デビル』はダンスホール、アンダーグラウンド・ヒップホップ、ノイズなど、さまざまなものが吸収されています。何かを参照したというよりも、あなたがいままで影響を受けてきたものが自然に吐き出されたカタチと言えるのでしょうか?

KM:サウンドに関しては、いままでに増してオープンになっている。このレコードを作る上でしたいくつかの重要な決断があった。そのうちのひとつは、ダンスホールとグライムをメインの影響にしないということだった。いや、グライムは違うな。ダンスホールとラガだ。アシッド・ラガのレコードを他で作ると決めていたから、そこは分けたかった。
 個人的に、ここ何年かでふたつの違う方法で音楽と繋がるようになってきたんだけど、それがどんどん明らかになってきている。ひとつは、クラブに行って、超クレイジーな音やヴォーカルで自分にショックを与える聴き方。精神的にドカンと来るような。で、もうひとつは、ダイナミックではなく、ゆっくりと身体に入ってくる音楽を聴くという音楽との繋がり方だ。旅行中や家にいるときはそういう音楽を聴く。ただ朦朧としたいからね。
 今回、俺はそのふたつの要素を新作のコアにしたかった。だからふたつのサイドに分けた。クラブ・ミュージックのサイドに関して言えば、昔よく聴いていたエレクトロニック・ミュージックをこの4~5年、ふたたび聴くようになった。最近のクラブ・ミュージックにがっかりしていたからね。最近のクラブ・ミュージックは、使い捨て感があって、鋭さが何もない。まるで工場で次から次に作られているみたいだ。俺が人生全体を通して好きな音楽は、超緊張感があって、革新的で新鮮なものだ。いまのクラブ・ミュージックにはそれがなくなっている。それが俺の目をエクスペリメンタルなアンダーグラウンドに向けさせているね。
 だから新作の半分は、自分が最近そういったクラブ・ミュージックに出会えていないことに対する救済策みたいなものだね。もう半分は、自分自身が朦朧としたいときに聴くような、パーソナルな部分だ。こうやってインタヴューをされると分析できるけど、作っているときは半々。行き詰まったりすれば考えたり分析するし、少し時間を与えてから、それに対する自分のリアクションを見たりする。だからサウンドの半分は自然に出て来たものだし、半分は意識して作ったものだね。

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右翼すぎる連中っていうのは、俺の最大の敵なんだ。それこそ怒りだよ(笑)。問題にはサイクルがあって、何かあればそういう連中はいつだって外国人や他の人を責める。反多文化主義で、了見が狭い。ああいうコンサバな奴らには、伝統にしがみつかず、未来に前進しろって言いたいね。


リズとコープランドという、それぞれ背景の異なった個性的な女性シンガーを起用した理由を教えてください。とくにリズは、USのドローン・フォークの人で、音楽的にみて、ザ・バグとはなかなか接点がないと思っていたので、ちょっと驚きました。

KM:俺が今回やりたかったことのひとつは、ザ・バグに対する決められた印象に対して異議を唱えること。世のなか、アニメのキャラクターみたいに、ひとつのイメージを作りたがる。だから、いつも俺はミスター・アングリーっていうイメージをもたれてるんだ(笑)。
 でも今回は、さっき言ったような、朦朧とするような部分も含め、イメージをぶち壊すような要素を入れたかった。自分には怒り以外の要素もあるし、アグレッシヴな音楽だけじゃなく、幅広い音楽を聴いて影響を受けていることを示したかった。それにはリズのようなサイケデリックな声がパーフェクトだと思った。
 最初彼女に依頼をしようと決めたとき、断られるだろうとも思ったし、ザ・バグのことを知りもしないかと思った。でも実際に依頼してみると快くオーケーしてくれて、しかも車のなかで彼女の母親に『ロンドン・ズー』を聴かせていたっていう話をしてくれてね。曲の内容は人殺しだったりするのに(笑)。それでますます思ったよ。彼女のようなシンガーだからといって、彼女が自分の曲のような音楽だけを聴いているわけじゃない。みんな、いろいろなテイストや側面を持っているんだってね。人が持っているイメージは関係ないのさ。

いま、ちょうど、怒りの質問をしようとしていたところでした(笑)。あなたは、いま、とくに何に対して何で怒っているのでしょうか?

KM:ははは(笑)。日本にはいいセラピストがたくさんいるだろうから紹介してくれよ(笑)。俺は常に怒っているわけじゃない。俺は怒ってばかりいるんじゃなくて、情熱的なんだ。音楽と人生に対してパッションがある。もちろんこの世のなかには腹が立つことがたくさんある。例えばイスラエルやガザでいま起こっていることもそうだ。ああいうのは心底腹が立つ。イギリスの政府に対してもそうだし、日本の政府もそうだ。俺を怒らせることは世のなかでたくさん起こってる。そういう怒りは、俺の音楽の燃料なんだ。それはそれでいいことだと思ってる。ただ、それは俺の一部であって、俺のすべてではないってことだよ。

通訳:今回のアルバムでも怒りはもちろん燃料に?

KM:怒りは増してると思う。さっきも言ったように、『ロンドン・ズー』ととまったく違うものじゃなく、そこからニュー・アルバムを構築していこうと決めて、そこからエンジェルとデビルのふたつの方向が生まれた。『ロンドン・ズー』からより広がっていくためにも。
 だから、一方では『ロンドン・ズー』よりもより美しく、そしてもう一方ではより醜くダーティーなサウンドを作りたかった。だからデビルの面では、より張りつめたサウンドを作り上げたかった。エンジェルの面では、より魅惑的で美しいサウンドを作りたかったしね。中途半端はつまらない。人生も、音楽も、アートも、政治もそうだ。エクストリームっていうのは、生きてるってことなんだ。真んなかにいて、なかなか動かず中身がないのはまるでマンハッタンだ(笑)。魂がないのさ。だから俺にとってこのアルバムは人生そのものだ。俺がどう生きたいか、どう人生をとらえたいか、自分が何に関心があるのか。それがこのアルバムだし、ふたつのサイドがある理由だよ。『ロンドン・ズー』のときはネガティヴなサイクルのなかにとらえられてたけど、今回はベルリンへの移住っていうポジティヴな面もあるしね。

あなたは日本の安部晋三の評判を知っていますか? 

KM:もちろん。パートナーも日本人だし、サウンドガイも日本人だし、いろんな人から話は聞いているからね。日本の政治には興味がある。日本の政治がいま軍事的になっているのはとてもショッキングだよ。最近東京の中心で自分に火をつけたジャーナリストもいたよな? いま、それくらい日本の政府は極端になってるんだと思う。大きな問題を抱えていると思うよ。前からそうなんだろうけど、とくにフクシマの後は。

通訳:EUの選挙結果も驚きでしたね。

KM:俺も驚いたよ。右翼すぎる連中っていうのは、俺の最大の敵なんだ。それこそ怒りだよ(笑)。問題にはサイクルがあって、何かあればそういう連中はいつだって外国人や他の人を責める。反多文化主義で、了見が狭い。ああいうコンサバな奴らには、伝統にしがみつかず、未来に前進しろって言いたいね。

アルバムは、「エンジェル」サイドからはじまっています。リズのほか、インガ・コープランド、ミス・レッド、ゴンジャスフィらが参加しています。「天使」と言いつつも、ユートピックな曲があるようにも思えないし、“パンディ”のように、どうにも不吉さが漂う曲があります。この「エンジェル」サイドの意図するところについてのあなたの説明を聞かせて下さい。

KM:言いたいことはわかるよ。エンジェル・サイドはハニー&シュガーではない(笑)。俺にとっては、現実逃避と希望かな。でも、俺はそれが可能だとは思っていない。大切なのは、このレコードで俺がデビルのなかのエンジェル、エンジェルのなかのデビルを表現していること。白黒にしようとしたわけではない。これは良い悪い、これは天使悪魔とハッキリわけられるものはないんだよ。必ず混ざっているものだと思う。

“ヴォイド”、フォール”、“マイ・ロスト”、“セイヴ・ミー”、非情に象徴的な曲名が並んでいますが、曲の歌詞、シンガーたちが書いたのですか? それともあなたがアルバムのコンセプトを指示したのでしょうか? 

KM:コンセプトを話し合ったりはしたけど、歌詞のほとんどはシンガーたちが書いてる。『ロンドン・ズー』ほど指示はしていない。

「デビル」サイドは、フロウダン、マンガ、デス・グリップス、ウォーリアー・クリーンらが登場しますが、こちらはよりアグレッシヴさが強調されていますが、あなたのイメージには何があったのでしょう?

KM:たしかによりアグレッシヴになってる。さっきも言ったように、今回はより緊張感のあるサウンドが欲しかったからね。それは大切な要素だった。イメージは、さっき言った通りさ。

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グライムは、俺にとってとても重要だ。グライムはロンドンの声だから。ロンドンのパンク・ヴォイス。決まりきったロンドンのものごとに対して、くたばれ! と言っている。俺が育った、そして生活していたロンドンの貧民街の声だ。俺の経験の声なんだ。


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アンガーというものは、悪魔サイドにおいては重要な要素だと思いますが、これはストリートからの怒りの表明と言えるのでしょうか? というのが次の質問でしたが、これはもう解答されてますね。

KM:だね。ストリートからだけじゃなく、いままで話してきたいろいろなこと。前に言ったように、怒りは大切な要素。何かを気にしてるからこそ怒りが生まれるんだ。怒りイコール・ネガティヴな感情ってわけじゃない。変化をもとめるからこそ生まれるものなんだ。子供の頃、パンク・ミュージックを通してそれを知った。ポスト・パンクが俺の(ミュージシャンになりたいと思うようになった)きっかけだった。当時や、当時を知る多くのアーティストは、怒りに駆り立てられていたから。

“ファック・ユー”や“ファック・ア・ビッチ”、“ダーティ”など、かなり直球な曲名が並んでいますが、どうしてこうなったのでしょう?

KM:歌詞から取っただけだよ。つまりヴォーカリストたちから来たってことだな。デビル・サイドをすごく反社会的にしたかったからこうなったんだ(笑)。こういうタイトルは、レコードの内容を現すのにまさにもってこいだったし。

“Fat Mac”は、マクドナルドのことでしょうか?

KM:大きな銃という意味。MAC-11のことさ。大きなマシンガンなんだ。でも、フロウダンが他の曲でマクドナルドのことを歌ってはいるけど。あ、待てよ。あれはたしかバーガーキングだったな(笑)。

リリックに関して、あなたの意見、考えが反映されているものはありますか?

KM:全てだね(笑)。驚く人もいるだろうけど。人によっては、俺がヴォーカリストをランダムにプロデュースしたコンピみたいな作品なんだと思ってる人もいるだろうから。でも適当にヴォーカリストを選んでいるわけではまったくなく、自分が繋がりを持てるアーティストを自ら選んでいる。歌詞のテーマはすべて俺の考えと繋がっている。だから、コラボの数々はある意味すごく組織的なんだよ。ランダムとは真逆のレコードなんだ。

2008年にあなたに取材したとき、グライムから影響を受けていると言われるのはかまわないけど、ダブステップと呼ばれるのは心外だと言っていたのが印象的でした。今作にもUKのMCが参加していますが、あなたがグライムを支持する理由は何なのでしょうか?

KM:そこまで強く言ったかな? ダブステップの世界に知り合いもたくさんいるし、尊敬もしている。コード9、マーラ、ローファー、ブリアル、シャックルトン……、そういうアーティストは素晴らしいと思う。彼らはみんなダブステップから来ている。ただ俺は、自分がやってることがダブステップだと思えなかっただけなんだ。ダブステップ・アーティストと呼ばれることに少し距離を感じていた。自分ではそうは思えなかったから。
 グライムは、俺にとってとても重要だ。グライムはロンドンの声だから。ロンドンのパンク・ヴォイス。決まりきったロンドンのものごとに対して、くたばれ! と言っている。俺が育った、そして生活していたロンドンの貧民街の声だ。俺の経験の声なんだ。だからある意味、グライムはストリートの言語なんだよ。俺にとっての最高のグライムは、ディジー・ラスカルみたいに考えさせられるグライムだね。ディープで、プロダクションがいままで自分が聴いたことのないプロダクションだから。歌詞もロンドンで、まるで俺の念写を表現してるみたいな感じがする。

デス・グリップスの起用も、あなたのリクエストだったのでしょうか?

KM:そうだよ。大ファンだからね。彼らが初めてロンドンでプレイしたショーを見たとき、自分がテクノ・アニマルにいた頃の音楽を思い出した。彼らはもう解散してしまったけど、いまだに大好きだ。彼らはどこにも属さない“変人”たちだ。彼らはまわりを気にしない。だから彼らを大好きな人たちもいれば、大嫌いな人たちもいる。中間がない。好きか嫌いか。それが俺のなかでグっとくる。多くのアーティストがリアクションを気にしているから。

現在ユース・カルチャーというものは、80年代以上にマーケティングの対象にされています。そして昔以上に、現代は、メインストリームの音楽と非メインストリームが分かれているように感じるのですが。

KM:100%そうだと思う。中間というものがなくなってると思う。ここ5年で、俺はずっと超アンダーグラウンドな音楽を聴きまくっているんだ。さっきも少し話したけど。中間で面白いものっていうのがないんだよな。超ビッグなポップ・ミュージックがアンダーグラウンドか。そのふたつになってる。だからその意見は正しいと思うよ。

最近見た映画、面白かったのは何でしょう?

KM:たくさんあるからな……どうしよう……新作と繋がるものを選んで答えようかな。ちょと待ってくれよ……狂気や熱狂に関して言えば、ギャスパー・ノエの『エンター・ザ・ボイド』。この映画のサウンドデザイン、ヴィジュアル・デザインは本当に素晴らしいし、普通とはかけ離れたストーリーラインがいい。映画全体を通してセックスとヴァイオレンスが極端に表現されてて、本当にクレイジーな作品だ。いままで見たことのないような映画だから、映画史のなかでも重要な作品のひとつだと思う。デス・グリップスと似てて、見た人の好き嫌いがわかれる。めちゃくちゃ好きか、めちゃくちゃ嫌いかのどちらかだ。俺のレコードの一部に共通する部分がある、そういった狂気で熱狂的な部分が。
 同時に俺は、すごくゆったりとした映画にも惹かれるんだ。『エンター・ザ・ボイド』とは真逆の作風の映画に。そういう映画では、ウォン・カーウァイの大ファンだ。彼の映画は何度も見ている。すごく美しいから。ベトナムの映画監督のトラン・アン・ユンの作品も面白い。美しくて、ヴァイオレントで面白い。

通訳:ありがとうございました。

KM:こちらこそ。来日を楽しみしているよ!



■ザ・バグ、来日情報!

新作をひっさげてザ・バグが来日! MCとしてフローダン(UKグライムの最高のMCのひとり)も一緒だ!
そして、今日のテクノを語る上で欠かせないアーティスト、今年の初め、『ゲットーヴィル』を発表したアクトレスも来日!

2014年9月19日(金)代官山UNIT
OPEN/START 23:00
前売 3,800YEN 当日 4,500YEN

LINEUP:
THE BUG FEAT. FLOWDAN
ACTRESS
AND MORE...
INFO: BEATINK 03-5768-1277[ info@beatink.com ]

TICKET INFORMATION
東京公演:前売3,800YEN
BEATINK先行販売:7/11(金)18:00~
ご購入はコチラ:https://shop.beatink.com
● 先行特典「THE BUG缶バッジ」付き!

2014年9月20日(土)CLUB MAGO
※詳細後日発表

2014年9月22日(月・祝前日)CIRCUS
※詳細後日発表

※各公演共20歳未満入場不可。要写真付き身分証持参。


Special Request - ele-king

 90年代はこまめにテクノを聴いていたけれど、2000年代になってからはどうもなー、いまひとつノリが合わず、ダブステップなんてようわからんし……などと開き直る人が僕のまわりにはわりといる。これは世代的もので、とくに庶民の分際で子供ができてしまったりすると、自分の趣味に使えるお金などほとんどないから無理もないのである。いかに家族にばれずにレコードを買うか、これは人生の深刻な問題だと、そんな話はまあどうでもいいのだが、とにかく90年代はテクノを聴いていたけれど、2000年代になってからはどうにもさっぱりという人に、僕はUKのポール・ウルフォードによるスペシャル・リクエスト名義のアルバム、『ソウル・ミュージック』を聴かせたいのである。
 〈ハウンズ・トゥース〉から昨年の暮れにリリースされた『ソウル・ミュージック』を簡単に説明すれば、ジャングル+“アナログ・バブルバス”+“ガール/ボーイ・ソング”+デトロイトのファンク。極論すれば、90年代初頭のエイフェックス・ツインとUKジャングルがこのアルバムではアップデートされている。90年代のテクノに思い入れがある人にとっては、おそらく感涙ものの作品だ。しかも、ゾンビーの92年復興運動と違って、『ソウル・ミュージック』はノスタルジーを感じさせない。このところ出すシングル出すシングルが話題になっている若手の注目株、テセラの思い切りの良いエネルギーとも確実に重なっている。

 CDは2枚組で、2枚目のCDは、そのテセラのヒット曲“ハックニー・パロット”のスペシャル・リクエストによるリミックスからはじまる。R&Bサンプルの、トゥー・マッチなエディティングと美的叙情性との奇妙な調和が印象的な“ハックニー・パロット”は、いちど聴いたら忘れられない曲で、今日のジャングルにおける大きな目印のひとつだ。〈R&S〉が引き抜きにかかるのも理解できる。
 2枚目のCDには、テセラに続いてラナ・デル・レイの曲のスペシャル・リクエスト自身による(ブートレッグ)リミックスも収録されている。このあたりの「やったれ」感、すなわち海賊文化的アティチュートも、UKジャングルのよき気風、一種のトレーマークとも言える。また、2枚目にはリミキサーとして〈ワークショップ〉のカッセム・モッセ、〈TTT〉のアンソニー・ネイプルス、デトロイトのアンソニー・シェイカー、〈PAN〉のリー・ギャンブル等々、魅力的な名前が記されている。
 いずれにせよ、今日のUKアンダーグラウンド・ミュージックの最良の部分が垣間見れる内容なのだが、それでも圧倒的なのはスリル満点の1枚目のほうだ。冒頭こそ“アナログ・バブルバス”直系のメロディアスなブレイクビート・テクノだが、アルバム後半にたたみかけるジャングルの、ジェットコースターめいた展開は迫力満点で、解体された音の断片(=ブレイクビート)が息つく暇もなく、シャープに、リズミックに再構築される様は、もう、ファンタスティックと言うほかない。ブリアルや「CMYK」、アンディ・ストットの次を探している人にも一聴の価値あり。

RHYDA (VITAL) - ele-king

都内を中心に活動するサウンドフリーク集団「VITAL」のMC。B-BOY文学でありながらパンクとも形容されるLIVEは唯一無二!必見です!
吉祥寺WARPにて「You gonna PUFF?」を不定期開催中。
今回のチャートは暑い真夏のショートブレイク!って感じのHIPHOP!汗拭いてChillin!

8/14(木)渋谷Lamafa
8//22(金) 中野Heavysick
8/31(日) COSMOS CAFÉ
9/2(火) 吉祥寺CHEEKY
9/6(土) 銀座GL
9/15(月)渋谷NEO
9/20(土) 吉祥寺WARP
9/21(日) 中目黒SOLFA

真夏のHAVE A BREAK 8/7


1
Freddie Gibbs & Madlib - High - Madlib Invazion

2
Rapsody ft. BJ The Chicago Kid - Good Good Love - Jamla

3
Ka - Every... - Iron Works Records

4
The Pharcyde - She Said (Jay Dee Remix) - Delicious

5
VOLO&KECHA ft. SunademusAnts - Ants - Vlutent Records

6
Problem Feat. T.I. & Snoop Dogg - Roll Up - HR

7
Outkast - Funky Ride - LaFace Records

8
Snoop Dogg & The Eastsidaz - Payday - DatPiff

9
ScienZe ft. Melodi J - Mid Summer Night Dream - ScienZe

10
Wiz Khalifa - Pure - Atlantic Records

MARK - ele-king

 MARKは、2001年当時バンド活動をしていた加藤麻季が、一人で多重録音等による音楽活動を行うためにはじめたソロ・プロジェクトである。2本のカセットテープを制作しているほか、これまでに3枚のフル・アルバムをリリースしており、監督・脚本・主演・音楽などすべてを手がけた映画や、編集・執筆・デザインなどこちらもすべて彼女の手によるミニ・アルバム付きの冊子も発表するなど、多才な活動をみせている。その音楽はローファイな質感や不協和な音程、微妙に揺らぎ続けるリズム、巧拙に還元できないような鬼気迫る歌声が特徴的で、初期ESPレーベルからリリースされたサイケデリック・フォークの数々を彷彿とさせる。しかし彼女の音楽からは、昭和歌謡ふうの叙情的なメロディであったり、童謡のような懐かしさも聴き取ることができるのであって、たんにジャンク・ロックと呼んでしまえないような味わい深さを醸し出している。いわば調和のとれた音の抽象の世界と、混沌とした音の具象の世界が、遊離していながらも、MARKという個の中で共立しているのである。『騎士について』から三年余りを経てリリースされた本作品には、冒頭の楽曲でどついたるねんから3人のメンバーをフィーチャリングし、最後の楽曲では嶺川貴子が作曲と歌で参加、また、前作に引き続き中尾勘二が多くの楽曲で演奏している。

 本作品は、圧倒的な個としてのMARKの音楽が、その本質を失うことなく、他者とどのような共同作業を行いうるか試みたものと捉えることができよう。それは中尾勘二の起用のしかたに端的にあらわれている。前作においては、管楽器を携えて演奏に参加した中尾勘二の、一聴してそれとわかる個性が、強い自己主張を伴うことで、フリージャズの色が濃い音楽へと仕上がっていたからである。それは紛れもなく中尾の活動の文脈に沿うものでもあった。だからMARKの音楽と呼ぶよりも、彼女の表現が他者のそれと拮抗する際に生まれる緊迫感がその場を支配するものであった。それはそれとしての魅力はあるものの、音の世界を「MARKという個の中で共立」するものではないだろう。そして彼女の出発点が「ひとりでいること」の意味を問うところにあったことを鑑みるならば、こうした共演のあり方は本意ではなかったのではあるまいか。前作リリース後に発表された、ミニ・アルバム付きの冊子に収められた「ひとり」いうエッセイは、その心情を吐露するかのようでもある。本作品において、中尾が管楽器ではなく、ドラムスに徹しているということ。それは音楽の色彩をMARKのもので染め上げていながらも、欠かすことのできない根底にあって彼女を支える役割を果たしている。つまり、彼女はついに、他者とのつながりを保ちながら、しかしあくまで個人の表現を行う領域へと、踏み出したのである。

Lana Del Rey - ele-king

 「サイレンの音が聞こえるの。サイレンが。彼は私を殴った。それはまるでキスのよう」とタイトル曲‟Ultraviolence”でラナ・デル・レイは歌う。
 一方、英国のフローレンス・アンド・ザ・マシーンにも‟Kiss With A Fist”という曲があり、DVを連想させると批判されたものだが、「あなたが私を殴る。私は殴り返す。あなたが私を蹴る。私はビンタをかます。あなたが私の頭の上に投げた皿が割れる。私は家に火を点ける」という歌詞のフローレンスのほうは、なにげにユーモラスでザ・スリッツみたいなパンクっぽさがある。が、ラナ・デル・レイは殴り返さないし、ビンタもかまさない。打たれても殴られても、「あなたは私のカルト・リーダー。永遠に愛している」とか言ってディオールのショウ・アイコニック・エクストリーム・マスカラをバシバシに塗ったまつ毛で虚ろにまばたきするばかりだ。
 『Born To Die』を出した後で、ラナ・デル・レイは「もう言いたいことはすべて言ったので、音楽活動はやめるかもしれない」と言った。実際、デヴィッド・ボウイのジギーだって期間限定のキャラだったのである。リズ・グラントだっていつまでもこのキャラを演じることはできないだろう。2枚目にしてラナ・デル・レイ・プロジェクトはすでにひたすら反復的だ。

 彼女の最大の悲劇は‟Video Games”をキャリアのはじまりに作ってしまったことだ。だからザ・ブラック・キーズのダン・オーバックにプロデュースを依頼したのもわかる。「もうヒップホップはいいの。私の声を最大限に活かした‟Video Games” のような曲をつくりたい」と彼女が言ったかどうかは知らないが、2作目のほうがラナ・デル・レイ決定版にはなっている。米国の田舎のバサバサした光景を髣髴とさせるギター主体のサウンドは、どこか『ツイン・ピークス』みたいだ。ラナ・デル・レイはローラ・パーマーの美しい死体を演じたかったのだろう。
 が、同じダン・オーバックがプロデュースした女性シンガーのアルバムといえば、昨年わたしの一押しだったヴァレリー・ジューンの『Pushin' Against A Stone』という名盤があり、「ザ・ブラック・キーズより良い」と言われた当該作に比べると、本作は聴き劣りがする。R&Bはアンドロイドより生身の女と親和性が高いからだろう。
 「とても退屈な人びとについて歌った、とても良く出来た楽曲群」と『ガーディアン』紙は評していたが、ラナ・デル・レイ提唱の「サッドコア」なる音楽は、ソフィア・コッポラの映画みたいだ。または、スーサイダルなパリス・ヒルトンでもいい。

 とはいえ、‟Fuck My Way Up To The Top(男とファックして成り上がった)”という収録曲について、彼女が「私はたくさんの業界の男たちと寝た。でも、現実の世界では誰も私の曲のリリースなんて助けてくれなかった」と言っているのを読んだ。いつも判で押したように重苦しい発言ばかりする彼女にしては、珍しくユーモアを感じる。
 「彼女はフェミニストではないし、あんまり深く物を考える人でもない」と『ガーディアン』紙の女性ライターが書いていたのには笑ったが、ロール・モデルになろうとし過ぎてメンタルヘルス上の問題がある人みたいになってしまう歌姫だらけのポップ界にあり、ロール・モデルになることを拒否するスタンスは新鮮ではある。
 そろそろ「サッドコア」なんてティーン狙いのマーケティングはやめて、リズ・グラントとして歌ってみたらどうだろう。リリー・アレンやレディー・ガガなどの臆病で人の良さそうなロール・モデル志願ガールズとは違い、この人はずっとしたたかでずる賢い女の声を出すのでそう思うのである(いやいやいや、褒め言葉だ)。

夏の! ele-king booksフェア - ele-king

 いつもele-king booksをご愛顧いただきましてありがとうございます! 今週よりタワーレコードさんにて「ele-king books フェア」がはじまります。刊行点数もいつのまにか30冊に届こうかというele-king booksシリーズ、夏休暇にぜひ1冊お手に取ってみてください。お買い上げいただいた方には「ele-king ロゴ入りボールペン」をプレゼント! 赤と緑のうち緑がレアらしいとの噂ですよ。
 好評のディスクガイド「ディフィニティヴ・シリーズ」をはじめ、コラムも絶好調のブレイディみかこさんや、粉川哲夫さんと三田格さんの往復書簡本(隠れ名作!)、めでたく重版となりました磯部涼さん×九龍ジョーさんの音楽対談、リリース・ラッシュの佐々木敦さんのジョン・ケージ本などなど、車中やフライト、あるいはベッドルームのひとときを音楽旅行に変えてくれる本をたくさんご紹介いたします。

タワーレコード フェア詳細ページ
https://sale.towerrecords.jp/article/campaign/2014/08/06/01

タワーレコード×ele-king
夏の! ele-king booksフェア


*特典がなくなり次第、キャンペーン終了となりますのでお早めに!
対象商品をお買い上げでele-king ロゴ入り特製ボールペンをプレゼント!(先着)

■開催期間:
8/6( 水)~ 9/19( 金)

■対象店舗:
タワーオンライン、新宿店、渋谷店、横浜ビブレ店
名古屋近鉄パッセ店、梅田マルビル店、難波店、静岡店

■対象作品:
ISBN 9784906700356 河村要助 / 河村要助の真実
ISBN 9784906700622 三田格+野田努 / TECHNO definitive 1963 - 2013
ISBN 9784906700707 二木信 / しくじるなよ、ルーディー
ISBN 9784906700639 湯浅学 / アナログ・ミステリー・ツアー
ISBN 9784906700738 粉川哲夫+三田格 / 無縁のメディア
ISBN 9784907276010 巻紗葉 / 街のものがたり
ISBN 9784907276034 三田格 / AMBIENT definitive 1958-2013
ISBN 9784907276041 ビル・ドラモンド / 45
ISBN 9784907276065 ブレイディみかこ / アナキズム・イン・ザ・UK
ISBN 9784907276072 久保憲司 / loaded
ISBN 9784907276096 西村公輝+三田格 / HOUSE definitive 1974-2014
ISBN 9784907276119 磯部涼+九龍ジョー / 遊びつかれた朝に
ISBN 9784907276133 佐々木敦 /「 4 分33 秒」論
ISBN 9784907276171 小柳カヲル / クラウトロック大全
ISBN 9784907276164 山本精一 / ギンガ
ISBN 9784907276157 山本精一 / イマユラ
ISBN 9784907276188 萩原健太 / ボブ・ディランは何を歌ってきたのか
ISBN 9784944124442 ele-king vol.1
ISBN 9784944124466 ele-king vol.2
ISBN 9784944124497 ele-king vol.3
ISBN 9784944124503 ele-king vol.4
ISBN 9784906700295 ele-king vol.5
ISBN 9784906700417 ele-king Vol.6
ISBN 9784906700585 ele-king vol.7
ISBN 9784906700691 ele-king vol.8
ISBN 9784907276003 ele-king vol.9
ISBN 9784907276027 ele-king vol.10
ISBN 9784907276058 ele-king vol.11
ISBN 9784907276089 ele-king vol.12
ISBN 9784907276126 ele-king vol.13


Traxman - ele-king

 やっぱ、いいね~、このルーピング、このサンプリング、そしてこのグルーヴ。シカゴ・ハウスだわ~。
 週末に来日DJを披露するトラックスマンだが、インタヴューで彼自身が喋っているように、彼はCorky Strongという名義でハウス・プロジェクトも手がけている。今回の来日会場で、アルバムを先行発売することになった。タイトルは、シンプルに『Corky Srrong Show Vol.1』。ブラック・ミュージックの光沢をビシビシと感じます。
 週末は、ちょっと涼しくなるかもしれないし、どうせこの暑さでは頭がまわらないし、ジュークで爆発しましょうね。それがいいす。

SOMETHINN 6 - DA MIND OF TRAXMAN VOL.2 RELEASE TOUR -

■8.8 (FRI) @ Circus Osaka
OPEN / START 22:00 -
ADV ¥2,500 / Door ¥3,000
*別途1ドリンク代500円

Guest:
Traxman (Planet Mu / Lit City / Dance Mania / GETO DJ'Z / TEKLIFE / TEK DJ'Z)

DJs:
Kihira Naoki (Social Infection)
D.J.Fulltono (Booty Tune / SLIDE)
Metome
Keita Kawakami (Kool Switch Works)
DjKaoru Nakano
Hiroki Yamamura aka HRΔNY (Future Nova)

More Info: https://circus-osaka.com/events/traxman-release-tour/

TRAXMAN JAPAN TOUR 2014

■8.9 (SAT) @ Unit & Saloon Tokyo
OPEN / START 23:00 -
ADV ¥3,000 *150人限定 / Door ¥3,500

DJs:
Traxman (Planet Mu / Lit City / Dance Mania / GETO DJ'Z / TEKLIFE / TEK DJ'Z)

DJ Quietstorm
D.J.Fulltono (Booty Tune)
D.J.April (Booty Tune)

Live Acts:
CRZKNY
Technoman

Saloon:
JUKE 夏の甲子園 <日本全JUKE連> 開催!

DJs:
D.J.Kuroki Kouichi (Booty Tune, Tokyo)
Kent Alexander (PPP/Paislery Parks, Kanagawa)
naaaaaoooo (KOKLIFE, Fukuoka)

Live Acts:
Boogie Mann(Shinkaron, Tokyo)
Rap Brains (Tokyo)
隼人6号 (Booty Tune, Shizuoka)
Skip Club Orchestra (Dubriminal Bounce, Hiroshima)
Subsjorgren (Booty Tune, God Land)

More Info:
https://www.unit-tokyo.com/schedule/2014/08/09/140809_traxman.php 


ボブ・ディランとは何者なのか、彼は何を歌ってきたのか、いったい何がすごいのか
50年以上にもおよぶ活動の歩みをディスコグラフィ形式で綴る、渾身の書き下ろし!

すべての「ボブ・ディラン本」へのアンサー。約50枚におよぶディスコグラフィを丹念にたどった、著者自身が代表作と語るボブ・ディラン論の決定版。

萩原健太の『ボブ・ディランは何を歌ってきたのか』は、1962年のデビュー・アルバム『ボブ・ディラン』から2012年の『テンペスト』までの、約50枚にもおよぶディスコグラフィーであり、萩原健太によるボブ・ディラン論でもある。長年、ディランを研究し続けてきた著者の、作品ごとの詳細な解説をしながら「現在」までのディランを丹念に描いた、渾身の書き下ろしだ。60年代の黄金期を繰り返すことなく、なおも「現役」であり続ける巨匠の姿がいま、はっきりと立ち上がる。

Sleaford Mods - ele-king

 スリーフォード・モッズのサウンドとヴォーカルを形容するたとえにスーサイド、ザ・フォール、ジョン・クーパー・クラーク、ジョン・ライドン、ポール・ウェラー、ザ・ストリーツなどが挙げられることが多いが、ここにアナーコ・パンクの雄=クラスのヴォーカリスト、スティーヴ・イグノラントも加えたい。そして、金太郎飴状態の簡素なリズムとベースライン、味つけ程度のエレクトロニクスが(逆に)暴力的なまでの空虚さを伴ってスタコラひた走るさまは、その方法論のみを拡大解釈し、パブで飲んだくれて四方八方にくだを巻く、暴徒化したヤング・マーブル・ジャイアンツと言ってもいいかもしれない。そう、つまり、ひどく悪意があり、ひどく滑稽なのである(彼らの直近2作品が、ザ・ニュー・ブロッケーダーズ、スメグマ、ラムレーらをリリースするUKの〈ハービンジャー・サウンド〉からリリースされていることからも、その特異さを察してもらえるだろう)。さらにつけ加えると、性急に言葉を詰めこみ、ツバを飛ばしまくりながら攻撃的にがなり立てるヴォーカルなんて(アルバム中の1/3は「ファック!」や「シット!」やらの悪態で満たされている)喉にタンがからまろうがおかまいなし、突然「おいっ! ダンカンっ!」とか叫びはじめても違和感がなかったりして、だんだんそのくぐもった声のアジテーションがビートたけしに聞こえてきたりするから笑える。

 ふてぶてしい反骨精神とその語感だけでやけに士気を煽る英国なまりを武器に、とことん鋭利なぼやきを担当するジェイソン・ウィリアムソン(ヴォーカル/ラップ/スポークンワード)。そして、機材(主にパソコン)の再生ボタンを押し、その後はアルコール片手にふらふらと所在なさげに踊っているだけのアンドリュー・ファーン(ビート/ベースライン)によるこのスリーフォード・モッズ。2006年よりノッティンガムを拠点に活動を始め、じつは最初のリリースから7年は経っているというからなかなかのベテランである。そんな地に足が着いているはずのおっさん2人が打ち鳴らすローファイ・エレクトロ・ヒップホップ・パンク。40越えたおっさん2人が、考える前にやってしまうささくれ立ったパンクの刹那と、永遠に完成形に到達しないまま進行するポストパンクの焦燥を携え、ベッドルームからストリートに飛び出して、酔いどれて、おぼつかない足取りながらも無骨に、そして正確に、クソまみれの日常に対してアイロニーを塗りこめたカウンターパンチを打ち込む。こいつがじわじわ効いてじつに小気味よい。

 彼らの単純明快にして誰にもマネできない「ミニマルぼやき芸」が確立した前作『オースタリティ・ドッグス』から1年。せっぱ詰まって袋小路から抜け出せずにいる「壊れた英国」において、市井の力強い支持だけでなく、いまやお高くとまったお偉方連中のスノビズムまでもくすぐる存在となりつつあるスリーフォード・モッズ(しかし、日本での反応はいまいち。これはザ・フォールの英国流皮肉と諧謔が日本では理解されにくく、知名度のわりにそれほど聴かれていない状況と似ているのかも)。だけど、彼らは攻撃の手をゆるめない。本作1曲め“エア・コンディショニング”〜“”タイド・アップ・イン・ノッツ”では過剰にディストートされて振りきれたベースラインと、マーク・E・スミスからインテリジェンスを抜いたようなジェイソンのぼやきが、いつになく力強い煽動力をもってあたりを挑発する。そして、スポークン・ワードのキレ味もネチこい巻き舌ももちろん良好なのだが、アンドリューが仕込んだトラックの勢いと厚み、立体感が幾分増していて(ミニマムなベースラインがマキシマムにかっこいい!)、これまで少し気になっていたサウンドののっぺり感もまったくなし。もうこれは愉快! 痛快! イントロでゲップをかます“ア・リトル・ディティ”、世の中すべてをおちょくるように、ビートの上に「バウ! ワウ!」とコーギーの吠え声をかぶせる“コーギー”、まるでミック・ジョーンズのギターが入っていないザ・クラッシュのような“ティスワズ”、(サー!)ポール・スミスを揶揄する“スミシー”、怒りのテンションが頂点に達する“ミドル・メン”など、手法は極めてシンプルながらもヴァリエーションに富んだミニマル・パンクが連続し、その畳み掛け、その心意気にイントロだけでふつふつと闘争心を駆り立てられる。

 かつて、1977年に「英国の見る夢に/未来なんてない」と絶叫したジョン・ライドン。しかし、26年後、MOSTを率いるPhew(彼女はオリジナル・パンクをロンドンでリアルタイムに体験している)が“パンク魂2003”のなかで叫んだように「NO FUTUREなんて嘘っぱち/未来はいやでも必ずやってくる」のだ。この突き放すのではなく、突きつけられる未来(現実)の重たさよ……。でも、しかし、末期症状を迎えた「英国の夢」の成れの果てに、インダストリアルでもダーク・アンビエントでもなく、かろうじでロックのフォーマットを維持した生活の臭いがするエレクトロ・パンクが現れ、ベッドルームとストリートの垣根を越えてどなり散らすさまに希望を感じずにはいられない。
 この偉大なるゴミ溜めモッズ野郎たちにミッドライフ・クライシス(中年の危機)なんて関係ない。この怒れる中年たちは、呼吸のタイミングを忘れるほどに全速力で造反し、怒りをこめてふり返る。過去のスローガンなんてもういらない。「Only trust over 40」——わたしは40歳以上だけを信じる!

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