ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Ambience of ECM ──創立55周年を記念し〈ECM〉のエキシビションが開催
  2. SOPHIE - SOPHIE | ソフィー
  3. interview with Kelly Lee Owens ケリー・リー・オーウェンスがダンスフロアの多幸感を追求する理由
  4. Famous - Party Album | フェイマス
  5. R.I.P. Sophie 追悼 ソフィー
  6. Ricardo Villalobos & Max Loderbauer - Re: Ecm
  7. Dialect - Atlas Of Green | ダイアレクト
  8. interview with Coppé なにものにも縛られない宇宙人、コッペ降臨 | アトムTMからプラッド、ルーク・ヴァイバート、DJ KENSEIまでが参加したリミックス盤
  9. Klara Lewis - Thankful | クララ・ルイス
  10. SOPHIE × Autechre ──オウテカがソフィーをリミックス、その長い長い物語
  11. 別冊ele-king 日本の大衆文化はなぜ「終末」を描くのか――漫画、アニメ、音楽に観る「世界の終わり」
  12. Brainstory ──クルアンビン以降の雑食音楽を追求する話題のバンド、ブレインストーリーが初来日
  13. Terry Riley ──清水寺でのテリー・ライリー『In C』ライヴ音源を世界初公開する試聴会が開催、古舘鍵とSUGAI KENによるサウンド・インスタレーションも
  14. Nídia & Valentina - Estradas | ニディア&ヴァレンティーナ
  15. Columns 10月のジャズ Jazz in October 2024
  16. R.I.P. Tadashi Yabe 追悼:矢部直
  17. Charli XCX - Pop 2  | チャーリーXCX
  18. Sophie - Oil Of Every Pearl's Un-Insides
  19. fyyy - Hoves
  20. ゲーム音楽はどこから来たのか――ゲームサウンドの歴史と構造

Home >  Reviews >  Album Reviews > Steve Gunn & Mike Cooper- FRKWYS Vol. 11: Cantos De Lisboa…

Steve Gunn & Mike Cooper

Ambient CountryChill Out Blues

Steve Gunn & Mike Cooper

FRKWYS Vol. 11: Cantos De Lisboa

Rvng Intl.

Amazon iTunes

野田努   Aug 12,2014 UP
E王

 夏が終わっちまう前に、ロマンティックな音楽を聴こう。厭世的で、嫌味なほど格好いい音楽を聴いてやろう。40歳以上も年が離れたアメリカ人とイギリス人のギター弾きが、ポルトガルの空港で出会い、リスボンで10日間のセッションを試みた。その結果生まれたのが本作である。
 〈Rvng Intl.〉は、この手の年の差コラボを得意とする。サン・アロウとコンゴス、アープとアンソニー・ムーア、ジュリアナ・バーウィックとイクエ・モリ……。「FRKWYS 」シリーズは、音楽的には近しい、親子ほどの年が離れた先達と若手、ときには民族も違った人を組ませる。

 スティーヴ・ガンは、マーク・マッガイアとほとんど同じ時期に脚光を浴びたギタリストだが、マッガイアとは別の方向性をもっている。ガンはブルースであり、カントリーだ。エフェクターは使わない。フィンガーズ・ピッキングで弾く。マニュエル・ゲッチングではなく、ジョン・フェイヒィの側にいる。
 ガンの2008年の出世作、〈Digitalis〉からのアルバムは、ジョン・マーティンのカヴァー曲で終わる。そう、ベン・ワットがもっとも影響を受けたブリティッシュ・フォーク・シンガーのひとりで、昔は「英国のボブ・ディラン」などと呼ばれた男だ。1973年の名作『ソリッド・エアー』の収録曲を演奏したガンのその作品のタイトルは『浮浪者(Sundowner)』。この言葉が、彼の音楽をよく言い表してはいるが、音楽が貧乏くさいわけではない。
 いっぽうのマイク・クーパーは、ジョン・マーティンと同様に60年代から活動している英国のミュージシャンだ。向こうの記事を読むと、ローリング・ストーンズへの誘いを断った男とも書かれている。最初はブルースとジャズを演奏していたが、やがてインプロヴィぜーションに傾倒した。ブルースを基本としながら、実験を好み、フリー・ジャズとサイケデリックに遊んでいる。昨年は、オーストリアのアンビエント/ドローンの作家、ローレンス・イングリッシュが主宰する〈Room40〉からアルバムを発表している。

 『Cantos De Lisboa』は、とても切ない気持ちにさせられると同時に、至福をももたらしてくれる。ブルースの音色は滑らかに流れながら、美しく破壊される。青い空の下で、ギター・アンサンブル以上の何かが立ち上がる。

野田努