「R」と一致するもの

interview with Shuya Okino (KYOTO JAZZ SEXTET) - ele-king


KYOTO JAZZ SEXTET feat. 森山威男
SUCCESSION

Blue Note / ユニバーサル ミュージック

Jazz

Amazon Tower HMV disk union

 DJ/プロデューサー/作曲家/クラブ運営者として四半世紀にわたりワールドワイドな活躍を続けてきた沖野修也。その活動母体とも言うべき Kyoto Jazz Massive と並行し、彼は2015年にアコースティック・ジャズ・バンド Kyoto Jazz Sextet も始動させ、これまでに2枚のアルバム『MISSION』(2015)、『UNITY』(2017年)を発表してきた。そして先日、待望の3作目『SUCCESSION』がリリースされたのだが、アーティスト名義は “KYOTO JAZZ SEXTET feat. TAKEO MORIYAMA”。そう、山下洋輔トリオなどで60年代から日本のジャズ・シーンを牽引してきた、あのドラム・モンスター森山威男(1945年生まれ)が、Kyoto Jazz Sextet のドラマー天倉正敬に代わり全曲で叩きまくっているのだ。

 森山ファンにはお馴染みの “サンライズ” や “渡良瀬” といった名曲に沖野が書下ろした “ファーザー・フォレスト” を加えた計7曲には、沖野がずっと掲げてきた「踊れるジャズ」というテーマから逸脱せんとするポジティヴな意志が溢れ、コロナ禍によって変わりつつある世界の今現在のジャズとしての新たなヴィジョンが提示されている。もちろん、これまでの作品のようにクラブでDJが客を踊るせることもできるだろう。が、同時に、自宅のソファに身を沈めてじっくりと聴き浸ることもできる。「匠の技」とも言うべきその微妙なバランス感、匙加減に、DJ/プロデューサーとして沖野が積み上げてきた経験の豊饒さ、感覚のリアルさを改めて思い知らされよう。

 何はともあれ、破格のパワーとグルーヴを堪能すべし。過去から現在、そして未来へとジャズが「継承(SUCCESSION)」されてゆく瞬間を体験できる、格調高い作品である。

僕がやってきた踊れるジャズをベースに、どうやって森山さんを引き入れるか。いったん踊れることを実現させた上で、どうやって逸脱していくか。踊らせたいけど同時に聴かせたい曲をどこに着地させるか。そこの格闘はなかなか痺れるものがありました。

森山威男さんは昨年11月20日の《Tokyo Crossover/Jazz Festival 2021》にゲスト参加し、それと前後してこのアルバム『SUCCESSION』の録音にも参加したわけですが、あのイヴェントに森山さんが参加した経緯から話していただけますか。

沖野:新木場の STUDIO COAST の閉館に伴い、クラブ・イヴェント《ageHa》もなくなるということで、昨年7年ぶりに《Tokyo Crossover/Jazz Festival 2021》の開催が決定したのですが、コロナ禍で海外勢は呼べる状況ではない。でも、日本人の出演者だけでやる以上、海外のファンが絶対うらやましがるようなラインナップにしたいと思いました。それで、目玉となるヘッドライナーを誰にするか考えた時に思い浮かんだのが森山さんでした。誰もが知っているジャズ・レジェンドであり、近年はイギリスのレーベル〈BBE〉から『East Plants』(83年)も再発されたし。あと、KYOTO JAZZ SEXTET のトランペットの類家心平が、以前森山さんのバンドでも吹いていた。これはもう森山さんしかいないなと。「KYOTO JAZZ SEXTET featuring 森山威男」にすれば、海外のジャズ系リスナーやクラブ・ミュージック好きはきっと注目してくれると思っていました。

マーク・ジュリアナとか、ここ近年のドラマー・ブームみたいなのも関係あったのかなと思ったんですけど。

沖野:まさにご指摘の通りで。ロバート・グラスパー周りとか、今、ドラムがジャズのイニシアティヴを握っているというイメージが世界的に広がりつつあるじゃないですか。「打ち込みを生で再生しているドラマー、すげー」みたいな。日本でも若いリスナーが「新しいジャズはドラマーだ!」みたいに言ってて(笑)。もちろん僕もそういった側面を否定しないです。でも、ベース・ラインとかコード進行とか、ドラマー以外のミュージシャンが醸し出す現代性や革新性も僕は常に意識しているし、プロデューサーやヴォーカリストも含めて、総合的に進化していると思っているわけで。そういった状況下で、レジェンドのドラマーを引っ張り出すのって、言わば逆の発想ですよね。KYOTO JAZZ SEXTET の上物というか、コード楽器や管楽器がオーセンティックなジャズで、ドラマーが今っぽい若手という選択肢もありましたが、それは他の人がやっているから、あえて逆にレジェンドを起用して、更に強烈な現代感覚を僕らは表現できるんですよ、というトライだったわけです。

なるほど。

沖野:やる前は、ひょっとすると森山さんワールドに僕らが持っていかれて、いわゆるメイン・ストリームのジャズになる可能性もあったし、はたまたフリー・ジャズになってダンス・ミュージックと完全に乖離してしまうという可能性もあった。どうやってジャズの現代性を表現するか、どうやって KYOTO JAZZ SEXTET らしさを出せるか、それは僕にとっても挑戦ではありました。

今、「ダンス・ミュージックと乖離する」とおっしゃいましたが、ということは沖野さんとしては今でもやはり根底には、自分達は踊れるジャズ、ダンス・ミュージックをやっているという意識があるんですね?

沖野:ベースとしてダンス・ミュージックはありますけど、今はむしろそこから離れてみたいという思いに駆られています。特に KYOTO JAZZ SEXTET はその方向性が強いですね。KYOTO JAZZ MASSIVE はやっぱりダンスありきですけど。KYOTO JAZZ SEXTET はむしろ踊れなくてもいい、もしくは踊れない方向にどんどん踏み出していきたいという気持ちが強いです。

権力との闘争なのか、メーカーとの闘争なのか、ミュージシャン同士の闘争なのか、わかりませんが、そういうぶつかる感じは若い世代のジャズ・ミュージシャンにはない。サラッとしてるというか、スマートというか。

実際に去年11月に初めて森山さんと共演した時の素朴な感想、印象を聞かせてください。

沖野:そうですね……初めてスタジオでお会いした時、僕が思っていたのと違って、森山さん、慎ましいというか、とても遠慮がちで(笑)。コロナ禍でライヴが2年間なく、全然叩いてなかったので、引退も考えられたそうなんですよ。もちろんカリスマ性というか、レジェンドに会ったという感動はありましたが、レコードでのプレイから感じていたエネルギーみたいなものは、お会いした瞬間はなかった。小柄で、とても寡黙な方だし。ところが、ドラム・ブースに入って叩き始めた瞬間に僕らの懸念は一気に吹き飛びました。リハーサル段階からものすごい音量、ものすごい手数で。音の洪水というか。アート・ブレイキーのドラムがナイアガラの滝に例えられますけど、本当に滝が流れ落ちるような状態で。メンバー全員で滝に打たれる修行、みたいな(笑)。

滝行(笑)

沖野:びっくりしましたね。2年間叩いてないって嘘でしょ、と。とにかく音がすごかった。1音目からすごかったです。

今回のアルバムでも、いきなり1曲目 “Forest Mode” の、特に後半なんてすごいですよね。

沖野:そうなんですよ。録音にもそのまま入っていますが、レコーディング中に雄叫びを上げて。あの小さな体から、これだけのパワーがどうやって出てくるのかな、と。衝撃でした。多分いつも一緒に演奏している方は、それが森山さんだという認識があるんでしょうけど。

ライヴやレコーディングでの森山さんの反応はどうでした?

沖野:ご自分でも仰ってましたが、本当に対等の目線でセクステットのメンバーと真剣勝負してくださって。ワンテイクの曲もいくつかありましたが、曲によっては森山さんが全くOKを出さず、これは違うと言って何度かやり直したんです。実はセクステットの過去2枚のアルバムでは採用テイクは全部ファースト・テイクでしたが、今回の3枚目では初めて、ファースト・テイクが採用されなかった曲がいくつもあります。

具体的には?

沖野:ワンテイクでOKだったのは⑤ “サンライズ” と⑥ “渡良瀬”、⑦ “見上げてごらん夜の星を” の3曲だけで、それ以外は森山さんが納得いくまでやりました。たとえば④ “ノー・モア・アップル” では、納得するリズム、納得するテンポが見つからないと森山さんが言って。あと、メンバーとのコンビネーションの問題とか。これじゃダメ、これじゃダメと何度も仰って。体力的に大丈夫なのかなとか、こっちはいらぬ心配をしましたが、森山さんが妥協されることはなかったですね。これでどうでしょう? と言っても、いやー違う、正解が出てない、と。

沖野さん以下メンバーの方では、どこがまずいのかな、と戸惑う感じですか?

沖野:いや、しっかりコミュニケーションをとりました。森山さんがノレるテンポとかグルーヴ、考えているアレンジと、メンバーが一番実力を発揮できるテンポなりリズムなりグルーヴなりの接点をどうやって探すかという。もう一回音を出してなんとなくやりましょう、ではなくて、問題点が速度のことなのかリズムのことなのか、誰かの演奏なのか等々をとことん話し合った上で次のテイクに臨むという感じで。

じゃあ、レコーディングはけっこう苦労されたんですか?

沖野:とはいっても、《ageHa》の本番前の2日間で録ったので、想定内です。森山さんが加わっての僕なりのクラブDJ的グルーヴ感というか理想の照らし合わせというか、森山さん曰く「激突」みたいな部分では、苦労したというより非常に興味深かったです。だって僕は元々森山さんの曲をDJでかけていたんですから。僕がやってきた踊れるジャズをベースに、どうやって森山さんを引き入れるか。いったん踊れることを実現させた上で、どうやって逸脱していくか。踊らせたいけど同時に聴かせたい曲をどこに着地させるか。そこの格闘はなかなか痺れるものがありました。

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KYOTO JAZZ SEXTET feat. 森山威男
SUCCESSION

Blue Note / ユニバーサル ミュージック

Jazz

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日本のジャズ・ミュージシャンは、50~60年代からやってる人たちと今現在の若手では感覚もノリも気質もかなり違う気がしますが、いかがですか?

沖野:あくまで僕の主観ですが、上の世代のジャズの人って、それこそアメリカと日本とか、メジャーとマイナーとか、闘争の歴史から音を紡ぎ出していたと思うんです。でも僕らの時代って、そういうカウンター精神はあまりない。若いジャズの子たちもスルッとメジャーに行ってブレイクしたりする。闘うことの是非はともかく、あまりないのかなというのは感じます。権力との闘争なのか、メーカーとの闘争なのか、ミュージシャン同士の闘争なのか、わかりませんが、そういうぶつかる感じは若い世代のジャズ・ミュージシャンにはない。サラッとしてるというか、スマートというか。

ですよね。端的に言うとあの世代の日本のジャズ・ミュージシャンは、全てが喧嘩という感じがするんですよ。話しててもそうだし、音聴いてもそうだし。つまり、喧嘩にこそ意義があるというか、まず喧嘩しなくちゃ始まらないというか。それがまた面白さでもあるんだけど。そういった根本的な感覚のズレみたいなものは今回はなかったですか?

沖野:いや、僕が知っているジャズ・レジェンドの中では森山さんは人間的にかなり柔和だし。ただ演奏は完全に喧嘩でしたよ。《ageHa》のライヴDVDを観ていただくとわかりますが、お互いがかなりやり合っていて。特にフリー・ジャズ・パートでは、それこそ僕もカウベルやウィンドチャイムを叩きまくり、シンセサイザーの効果音で森山さんを煽りまくって。普段、僕のようなDJ/プロデューサーがライヴに絡むのは難しいのですが、本当に喧嘩状態でした(笑)。とにかく森山さんは、予定調和はダメだとずっと仰っていました。僕らもどうやって森山さんに仕掛けていくかというのが、メンバー間のミッションでしたね。

77歳でこのオファーをもらい、《ageHa》でやれて、生きててよかったよ」という森山さんの言葉を聞いて、20年後の自分にだって生きててよかったと思う可能性があるはずだという気持ちになりましたし。本当に今回は、ミュージシャンとしてだけでなく人間として森山さんからは影響を受けました。

沖野さん自身は、森山さん世代のそういった「出会い頭の即興的な喧嘩」というものに憧れがあったりしますか?

沖野:ありますね。僕は多分、ジャズDJと呼ばれる人たちの中でもそこに一番憧れがある一人だと思います。後でリミックスしやすいようにクリックを鳴らして安定したテンポで録りたがるプロデューサーもいますし、インプロは踊れないからとカットしてテーマだけでつなぐジャズDJもいる。でも僕はやっぱりインプロがあってなんぼの世界だと思うし、想像もしなかった録音が実現した時の喜びも何回も体験してきたわけで。森山さんが今まで感じてきたことや積み上げてきたこと、森山さんだけが見てきた景色が絶対あるはずです。そういった経験から僕たちに投げかけられる疑問や挑戦や挑発は、他では絶対に味わえないものでしょう。50~60年代からやってきた人たちの出す音の説得力や迫力ってやっぱり違うと思うんですよね。技術だけでなく、ここでそういくか!?  という想像を超えた表現力はレジェンド・クラスになると別格ですね。

今のコメントがこのアルバムのタイトル『SUCCESSION』(継承)をそのまま表現してるような気がします。

沖野:そうなんですよ。うちのメンバーだけではこういう作品にならなかったと思います。僕たちが知っているつもりで実は知らなかった表現方法とか、ジャズとは何かという、音による説得力をこのレコーディングとライヴでは学びましたし、それを更に僕らが継承して次の世代に伝えていかなくてはと思いました。あと、「77歳でこのオファーをもらい、《ageHa》でやれて、生きててよかったよ」という森山さんの言葉を聞いて、20年後の自分にだって生きててよかったと思う可能性があるはずだという気持ちになりましたし。本当に今回は、ミュージシャンとしてだけでなく人間として森山さんからは影響を受けました。

近年は海外でも日本の様々な音楽が注目されています。60~70年代の日本のジャズの人気も高まっていますよね。

沖野:元々、日本のフュージョンやジャズは、海外のマニアの間では人気があったんです。僕だって最初は、ジャイルズ・ピーターソンを含むロンドンの友人やDJ、ディストリビューターなどから教えてもらって日本のジャズの魅力に気づいた人間ですし。

それはいつ頃のことですか?

沖野:25歳くらいだから、今から30年ほど前です。でも、ここ数年の盛り上がりはちょっと違いますね。層が変わってきたというか。ロバート・グラスパー人気やサウス・ロンドンのジャズの盛り上がりとかもあって、若い世代のジャズ・リスナーの規模全体も大きくなっているし。お父さんがディスコのDJで生まれた時からレコードがいっぱい家にあったとか、お母さんがアシッド・ジャズ大好きで子供の頃からブラン・ニュー・ヘヴィーズを聴いてましたとか、そういう20代のジャズ・ミュージシャンやDJもヨーロッパ中にたくさんいます。今の若い子たちにとっては、トム・ミッシュクルアンビンサンダーキャットなどが、僕らが若かった30年前のジャミロクワイやブラン・ニュー・ヘヴィーズなわけです。で、トム・ミッシュやサンダーキャットなどは、多分僕らがかけてきた音楽、僕らがやってきた音楽を好きだと思う。つまり、今は二重のレイヤー、昔からのリスナーと若いリスナーが混在し、層が分厚くなっているんです。今はその両方の層に日本のジャズが受け入れられているんじゃないかな、というのが僕の分析です。

アメリカ大統領の娘さんが KYOTO JAZZ MASSIVE とか KYOTO JAZZ SEXTET のファンだったとしたら、「お父さん、日本に核兵器落とさないで、私の好きなシューヤ・オキノがいるから」みたいになるかもしれないじゃないですか。極端な例ですけど(笑)。

昔の日本のジャズのどういった点に面白さを感じるのか、そのポイントは、外国人と日本人では微妙に違うと思いますが、沖野さん自身は、日本の当時のジャズの、欧米ジャズと比べた場合の面白さ、特殊性についてどのように考えていますか。

沖野:まずは、メロディーの独自性ですね。論理的説明は難しいのですが、民謡とか童謡などのエッセンスが作曲家の潜在意識の中にあると思います。あと、使用楽器によるエキゾチシズムというのもあるんじゃないかな。60~70年代には和楽器を導入する実験も盛んにおこなわれていたし。海外のDJからも、メロディーのことはよく言われます。すごく日本ぽいと。日本のメロディーはシンプルでわかりやすいんだと。それはきっと、母音が連なる日本語の特性とも関係していると思いますね。あと、演奏テクニックが素晴らしいというのもよく言われます。それはフュージョン系の作品を指していると思いますが。

昨年(2021年)暮れに KYOTO JAZZ MASSIVE の久しぶりのアルバム『Message From A New Dawn』も出ましたが、ここで改めて KYOTO JAZZ MASSIVE と KYOTO JAZZ SEXTET の立ち位置の違いを簡単に説明してもらえますか?

沖野:KYOTO JAZZ MASSIVE は、僕と弟(沖野好洋)の合議制によるダンス・バンド。演奏の中にジャズもフュージョンもテクノもファンクもソウルも入った、よりハイブリッドなダンス・バンドです。KYOTO JAZZ SEXTET は、僕のプロデュースのジャズ・バンドで、踊れることは特に目的にはしていません。

今日のインタヴューでも何度か「踊れるジャズ」「踊ることを目的としないジャズ」という対比がありましたが、踊れない/踊らないというのは、この2年間のコロナ禍の状況も関係あるのかしら?

沖野:関係あると思います。僕自身のことも含め、この2年間家にいて、リスニング体験を楽しむ人が劇的に増えたと思います。アルバムの中から踊れる曲を1~2曲ピックアップして繋いでいくDJの僕ですら、家ではアルバム1枚かけっぱなしです。踊れる踊れないに関わらず、自分が好きな作品を通して聴くという風にリスニング・スタイルが劇的に変化した。KYOTO JAZZ SEXTET のこの新作がこの内容、構成になったのも、家で日本のジャズのアルバムを針置きっぱなしで聴き続けたことが影響していると思います。だからひょっとすると、コロナ前に森山さんとやっていたら、全編踊れるジャズになっていたかもしれない。でもコロナ禍を経て、踊れる曲ですら、聴いて楽しんでもらえるんじゃないかな、という期待もあります。同時に、僕が踊れないと思った収録曲も別のDJがダンス・ミュージックとして再発見してくれるんじゃないかという楽しみもある。今までの KYOTO JAZZ SEXTET 以上に、リスナーにとっての音楽聴取の自由度を上げる作品になったんじゃないかなと。僕自身、解き放たれた感じなんです。

沖野さんは文筆家でもあるし、Twitter でも積極的に発言されています。普段から政治意識、社会意識が強い方ですよね。社会の中でのDJ/音楽プロデューサーとしての自分の役割をどのように考えてますか?

沖野:やっぱり世代と国境を越える、というのが自分のミッションだと思っていて。

それは最近に限らず、以前からずっと?

沖野:そうです。自分の音楽を違う国の人に聴いてほしいし、上の世代とも若い世代ともコラボレートしていきたいと思ってきました。そういう気持ち、そういう音楽は偏見や憎悪から人の意識を解放する働きがあると思うんですよ。60~66年の〈ブルーノート〉作品のカヴァー・ワークだった1stアルバム『Mission』(2015年)は、アメリカと日本のジャズの関係というのが自分のテーマでしたが、僕のオリジナル曲で構成された2作目『Unity』(2017年)は、平和とか調和とか、結構ポリティカルなことを自分なりに表現したんですよ。だからヴォーカリストにも、歌詞はそういう趣旨で発注しました。世代、国籍、人種を超えるというメッセージを音楽で発信して、この世界がより良くなることに少しでも貢献できたらいいかなとは考えています。

実際に今まで活動してきて、多少なりとも実効力があったと思いますか?

沖野:日本人に対するイメージの変化に、微力ながらも貢献できたかなとは思います。もちろん坂本龍一さんとか北野武さんとか、サッカー選手や野球選手の活躍ありきですよ(笑)。ありきだけど、実際僕がDJとして行くことで、様々な国の人が一か所に集まったりした。音楽大使と言うとおおげさですが、世界平和への貢献実績はゼロではないと思います。時々冗談で言うんですが、アメリカ大統領の娘さんが KYOTO JAZZ MASSIVE とか KYOTO JAZZ SEXTET のファンだったとしたら、「お父さん、日本に核兵器落とさないで、私の好きなシューヤ・オキノがいるから」みたいになるかもしれないじゃないですか。極端な例ですけど(笑)。音楽とか文化が持っている力は侮れないと僕はずっと思ってきました。微力ではあるけど、これからも世代と人種と国境を越えることをテーマに音楽を作り続けていきたいですし、世界を旅していきたいです。

 

[LIVE INFORMATION]

KYOTO JAZZ SEXTET feat. 森山威男
~New Album “SUCCESSION” Release Live

2022年5月26日(木)ブルーノート東京
www.bluenote.co.jp/jp/artists/kyoto-jazz-sextet

FUJI ROCK FESTIVAL’22 出演
2022年7月30日(土)新潟県 湯沢町 苗場スキー場
https://www.fujirockfestival.com/

[RELEASE INFORMATION]

沖野修也率いる精鋭たちとレジェンダリー・ドラマーの劇的な出会い。
日本ジャズの過去と現在を繋ぎ、その延長線上にある明日を照らし出す。

●ワールドワイドな活動を展開するDJ/楽プロデューサー・ユニット、Kyoto Jazz Massive の沖野修也が2015年に始動させたアコースティック・ジャズ・ユニット、KYOTO JAZZ SEXTET。単なる懐古趣味にとどまらず、“ジャズの現在” を表現することをコンセプトとし、これまでに『MISSION』(2015年)、『UNITY』(2017年)という2枚のアルバムを発表しました。
●5年ぶりの新作では、ジャパニーズ・ジャズ・ドラムの最高峰、森山威男を全面フィーチャー。両者は2021年11月20日に新木場ageHa@STUDIO COAST にて開催された Tokyo Crossover/Jazz Festival 2021 にヘッドライナーとして出演し初共演。世代を超えた気迫みなぎるコラボレーションで、オーディエンスを圧倒しました。
●アルバムには、クラブ・ジャズ・リスナーにも人気の森山の代表的レパートリーに加え、沖野修也書き下ろしの新曲「ファーザー・フォレスト」を収録。オール・アナログ録音による骨太でダイナミックなサウンドも魅力です。

artist: KYOTO JAZZ SEXTET feat. 森山威男
title: SUCCESSION
label: Blue Note / ユニバーサル ミュージック

KYOTO JAZZ SEXTET
類家心平 trumpet
栗原 健 tenor saxophone
平戸祐介 piano
小泉P克人 bass
沖野修也(vision, sound effect on 渡良瀬)
featuring
森山威男 drums

Produced by 沖野修也 (Kyoto Jazz Massive)
Recorded, Mixed and Mastered by 吉川昭仁 (STUDIO Dedé)

tracklist:
1. フォレスト・モード
2. 風
3. ファーザー・フォレスト
4. ノー・モア・アップル
5. サンライズ
6. 渡良瀬
7. 見上げてごらん夜の星を

Blue Lab Beats - ele-king

 現在のUKジャズでもっともクラブ・ミュージックやストリート・サウンドとの連携を見せるのがブルー・ラブ・ビーツとニュー(ノイエ)・グラフィック・アンサンブルである。プロデューサー/ビートメイカーの NK-OK ことナマリ・クワテンとマルチ・インストゥルメンタル・プレイヤーのミスター・DM ことデヴィッド・ムラクポルがロンドンで結成したブルー・ラブ・ビーツ、アフリカ系フランス人DJ /プロデューサーのフレッド・ンセペによるプロジェクトのノイエ・グラフィックがロンドンでバンド・スタイルに発展したノイエ・グラフィック・アンサンブル。ヒップホップやR&B/ネオ・ソウル、ハウスやブロークンビーツなどのプログラミング・サウンドとジャズ・ミュージシャンたちによる生演奏を融合する点は両者に共通する要素で、ラッパーやシンガーたちとのコラボを積極的におこなっている。アメリカにおけるロバート・グラスパーサンダーキャットなどの新世代ジャズの影響を受けつつも、レゲエやグライムなどUKらしいクラブ・サウンドのエッセンスを取り入れているのが彼らである。そんな2組の新作がリリースされた。

 ブルー・ラブ・ビーツの『マザーランド・ジャーニー』は、〈ブルーノート〉と契約を結んでからの初めてのアルバムとなる。基本的にはデビュー・アルバムの『クロスオーヴァー』や続く『ヴォヤージ』の路線から変わっていないが、エゴ・エラ・メイ、エマヴィージェローム・トーマスなどロンドンのシンガーやミュージシャン以外に、〈ストーンズ・スロー〉のキーファーともコラボしている点が目につく。キーファーとはサウンドクラウドを通じて知り合うようになり、実際にライヴでの共演を経て今回のコラボへと繋がったそうだが、その “ダット・イット” はキーファーによるメロウなピアノとミスター・DM のギターが結びついたサウンドで、アシッド・ジャズの頃のロニー・ジョーダンやジャズマタズなどを彷彿とさせるところもある。

 タイトル曲の “マザーランド・ジャーニー” はフェラ・クティをフィーチャーとなっているが、実際にはフェラの “エヴリシング・スキャッター” をサンプリングしたもの。フェラ・クティのような攻撃的なアフロビートと言うより、牧歌的で哀愁漂うハイ・ライフの影響が感じられる作品となっている。この曲やゲットー・ボーイズをフィーチャーした “センシュアル・ラヴィング” など、今回はアフリカ音楽との結びつきが顕著なアルバムだ。同じくゲットー・ボーイズをフィーチャーした “ブロウ・ユー・アウェイ” もカリビアンやラテンとR&Bが結びついた楽曲で、アメリカのジャズ×ヒップホップ/R&Bとは異なるテイストを感じさせる。

 エマヴィーをフィーチャーしてUKソウルらしい憂いと浮遊感を湛えた “ドント・レット・イット・ゲット・アウェイ”。ポッピー・ダニエルズのトランペットをフィーチャーしたブロークンビーツ×フュージョンの “ゴッタ・ゴー・ファスト”。フットワークのような高速シャッフル・ビートを背景にカイディ・アキニビのサックスなどがフィーチャーされた “ワープ”。エゴ・エラ・メイのネオ・ソウル調のヴォーカルながら、トリッキーなリズム・プロダクションが異彩を放つ “スロウ・ダウン”。楽曲によってはジャズと言うよりソウルやR&Bの成分が際立つものもあり、トム・ミッシュやオスカー・ジェローム、edbl などと同列で見るべきアーティストと言える。

 ノイエ・グラフィック・アンサンブルの『フォールデン・ロード・パート2』は、2019年にリリースされた『フォールデン・ロード』の続編。コロナによるロックダウン、イギリスのEU離脱、ジョージ・フロイドの死去以後の抗議活動などを経て制作されたということがあってか、前作に比べてダークな味わいが増している。そうした影響を感じさせるのが “ブラック・ボディーズ” で、ノイエ・グラフィック・アンサンブル流のブラック・ライヴズ・マターを示した楽曲となっている。マ・モーヨーのスポークンワードは2016年にパリ郊外で起こったアダマ・トラレオ事件を題材とするが、アダマ・トラレオはジョージ・フロイド同様に警官による身柄拘束が原因で死亡しており、フランスで大々的な抗議運動を引き起こした。続く “クイーン・アッサ” は、アダマ・トラレオ事件の後に人権活動家となった姉のアッサ・トラレオに捧げた楽曲。テクノとハード・バップ調のジャズが介したような作品で、もともと〈22a〉や〈リズム・セクション・インターナショナル〉からハウスやテクノをリリースしていたフレッド・ンセペならではのナンバーと言える。そしてアダマ・トラレオに対する鎮魂曲の “フォー・アダマ” と、一連の作品が『フォールデン・ロード・パート2』の屋台骨となっている。

 “オフィサー、レット・ミー・ゴー・トゥ・スクール” は警官による職務質問を示唆するタイトルがアダマ・トラレオやジョージ・フロイドの事件を連想させるもので、律動的なハード・バップとブロークンビーツの融合。1990年代や2000年代のクラブ・ジャズを彷彿とさせる味わいだ。ブラザー・ポートレイトのポエトリー・リーディングがフィーチャーされた “ランニング・オン・ア・フレイム” はレゲエやダブのフィーリングに満ちたダークな楽曲で、やはりブラック・ライヴズ・マターと結びつく内容。楽曲そのものの雰囲気としては個人的にはトリッキーサイレント・ポエツを思い浮かべる。そして、ジャーナリスト/写真家のJJアキンレイドがポエトリー・リーディングで参加した “ブレス”、ロンドンのラッパーのロード・アペックスをフィーチャーした “ステップ・トゥ・イット” と、『フォールデン・ロード・パート2』は前作からずっとメッセージ性が増した内容となっており、ノイエ・グラフィックの新たな覚醒を告げるものだ。

クラウトロック大全 増補改訂版 - ele-king

ドイツ・ロックの決定版ディスクガイドが復活!
70年代クラウトロックから80年代ノイエ・ドイチェ・ヴェレまでの主要作品を網羅

約40ページ増加、新たにタイトルを追加し合計868タイトルを掲載、
旧記載部分も大幅に差し替えや加筆修正を施した増補改訂版

A5判/オールカラー/304頁

[著者]
小柳カヲル
1967年新潟県生まれ。大学時代は高校の理科教員を目指していたが、卒業後は化学エンジニアとして数年間のサラリーマン生活を経験。
1996年より Captain Trip Records で勤務し、クラウトロックをはじめとする数々のリリース企画を担当。
2011年よりスタジオ兼レーベルの Suezan Studio として独立。独自の視線や考察、あまたのミュージシャンとのコネクションは、ごく一部から熱狂的な支持を受けている。
現在は新潟に住み、クラウトロックだけでなく新潟県と近県の過去の音楽シーンにも目を向け、編纂と記録を続けている。


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The Wooden Glass featuring Billy Wooten - ele-king

 Pヴァイン手がける「VINYL GOES AROUND」シリーズが好調だ。グラント・グリーンやリチャード・エヴァンスのアルバムに参加していたことでも知られるインディアナポリスのヴィブラフォン奏者、ビリー・ウッテン。先般Tシャツ付きの7インチが発売されているが、今度は1972年録音のジャズ・ファンクの名ライヴ盤『Live』が、カラー・ヴァイナルでリリースされる。限定200枚のシリアル・ナンバー入り。ピンクの彩りが鮮やかな1枚、これまた売り切れ必至でしょう。ご予約はお早めに。

ジャズ・ファンク・アルバムの金字塔、THE WOODEN GLASS featuring BILLY WOOTEN『Live』のカラーヴァイナルがシリアルナンバー付でVINYL GOES AROUND限定リリース。

グラント・グリーンのBlue Note盤『Visions』やリチャード・エヴァンスのアルバムにも参加しているインディアナポリスのヴィブラフォン奏者、ビリー・ウッテン。ヴィブラフォン、オルガン、ギター、ドラムという編成による当時のウッテンのレギュラー・バンド “ザ・ウドゥン・グラス” が1972年にインディアナポリスの小さなクラブ “ナインティーンス・ホール” でみせた熱演は、もはや伝説として語り継ぐべき奇跡的なライヴ・レコーディング!

その模様を収めたジャズ・ファンク・アルバムの金字塔と言うべき THE WOODEN GLASS featuring BILLY WOOTEN『Live』がピンクのカラー・ヴァイナルにて VINYL GOES AROUND のサイト限定でリリースとなります。ナンバリング入り、200枚の限定生産です。

グルーヴ度、白熱度、そしてオーディエンスの熱狂度とその全てを空前絶後と形容するにふさわしい大名盤としてジャズ・ファンク/レア・グルーヴファンを狂気乱舞させたまさに伝説の1枚です。

THE WOODEN GLASS featuring BILLY WOOTEN『Live (Color Vinyl)』予約ページ
https://vga.p-vine.jp/exclusive/

アーティスト:THE WOODEN GLASS featuring BILLY WOOTEN
タイトル:Live
品番:VGA-5003
フォーマット:LP (カラーヴァイナル)(シリアルナンバー付)
価格:¥4,950 (税込)(税抜:¥4,500)
販売開始日:4月28(木) 10:00 (日本時間) より受付開始
※発送は2022年5月10日(火)を予定しています。
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。

Abraxas - ele-king

 PiLのマスターピース『Metal Box』(79)に収録された“Radio 4”はキース・レヴィンがひとりで多重録音したもので、2016年のデラックス・ヴァージョンに収録されたレコーディング・テイクを聞くと、当初はカウボーイ・インターナショルのケン・ロッキーがドラムを叩いていたことも明らかになった(尺も倍近い→https://www.youtube.com/watch?v=se-Z6EO5pfA)。ベースもわざわざジャー・ウォッブルをマネて弾いたものだとレヴィンは述懐していて、広いスタジオでポツンと作業していた「冷たさ」が曲のムードに反映されているという。そして、最終的にドラムを抜いて短くエディットしたものが『Metal Box』のラストに収められ、それはまるでビートルズ“Good Night”と同じくチル・アウト効果をもたらすことになる。『Metal Box』という複雑怪奇な迷宮に鮮やかな出口を用意してくれたというか。“Radio 4”はビニール袋のようなものが膨らんだり縮んだりするようなイメージを繰り返す。それはオーケストラが短いコードしか弾かないとどうなるかというアイディアから出発した結果だそうで、ドラムを抜くことでその効果は最大限まで引き上げられた。『Metal Box』はどの曲も印象深く、いまだに得体の知れない感じがあり、とりわけ“Radio 4”はミステリアス度が高い。

 チリからフアン・マッジョーロ(Juan Maggiolo)とドイツ系らしきヴェルナー・ハインツ(Werner Heinz)によるデビュー作を聴いた時、それはまるで“Radio 4”が8つのヴァリエーションに増幅されて蘇ってきたという印象を僕は持った。かすかにジャー・ウォッブルのようなベース・ラインが聞き取れる曲もある。スピーディーなアンビエント・ドローンを基本にポップな味付けが多種多様に施されたカラフルな展開。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインが“Radio 4”をカヴァーしたり、リミックスしたり、様々な手法を用いてカスタマイズしたような……。ドローンといっても大して持続せず、細切れになっているせいでそう感じるだけかも知れない。とはいえ、キース・レヴィンのいう「冷たさ」も似通っているし、頻繁に転調するのも一因をなしている。何度も聴き込んでいるうちにやはり違うとは思うものの、初期イメージから脱却したくない気分も手伝って、いまのところ『Abraxas』は僕にとっては43年後の“Radio 4”である。アブラクサスとはちなみにグノーシス思想における偽神で、選ばれし者を天国に連れていくというニューエイジのフェイクのような存在。その姿はヒトの体にライオンの頭と下半身は蛇。



 南米のアンビエント・ミュージックはどうも得体が知れない。フアン・ブランコであれ、トマス・テロであれ、アカデミックな手法を使ってもその様式美に呑み込まれないという共通点があり、アブラクサスの2人がアカデミックなキャリアを持っているかどうかも想像がつかない。ついでにいえばアロンドラ・デ・ラ・パーラのようなクラシックの人でさえ、指揮をしながら踊りだしたり、パリの観客が手拍子を始めるなどアカデミックの枠組みは崩壊している。アブラクサスの背景にはなんとなくクラブ・カルチャーが横たわっているような気もするけれど、ヴィラロボスやアトム・ハートが撒いてきた種が花開いたにしてはタイミングが遅いし、そもそもドイツ資本とつながりがあるのかないのかよくもわからない。ここにあるのはイメージ豊かな曲の数々と曲の雰囲気には悪い予感のかけらもないこと。チリは一時期はコロナによって危機的状況を呈したものの、現在では南半球でもっともコロナの危険から遠い国という評価を受け(新自由主義に基づく税制に改められたことで連日のようにデモが起こったコロンビアとは対照的)、フランツ・エデルマン賞まで受賞している。そういった国の気分が感じられる作品でもある。つーか、『アンビエント・ディフィニティヴ 増補改訂版』を校了した10日後にリリースされやがった。く~。

Caterina Barbieri - ele-king

 〈Editions Mego〉からリリースされた2019年の前々作『Ecstatic Computation』が高い評価を獲得したミラノのプロデューサー、カテリーナ・バルビエリ。ロックダウン中に録音されたという新作『Spirit Exit』が7月8日にリリースされる。なんでも詩や哲学にインスパイアされたそうで、バルビエリ本人のコメントによれば「世界の終わり、もしくはテレパシーのいち形態へのラヴ・ソング」だという。最終曲 “The Landscape Listens” は、イーノの人気曲 “An Ending (Ascent)” のような上品さと穏やかさで死にアプローチしている曲らしい。現在 “Broken Melody” が先行公開中です。


artist: Caterina Barbieri
title: Spirit Exit
label: light-years
format: digital / 2LP / CD
release: July 8, 2022

tracklist:
01. At Your Gamut
02. Transfixed
03. Canticle of Cryo
04. Knot of Spirit (Synth Version)
05. Broken Melody 04:26
06. Life at Altitude
07. Terminal Clock
08. The Landscape Listens

Sonic Youth - ele-king

 サーストンには2014年の『The Best Day』の来日時取材したし、その4年後のキムのファースト・ソロ『No Home Record』は待った甲斐のあったというしかない力作だった。リーはリーとてポップ・ソングから実験作まで意欲的で、リリースした作品のいくつかにはスティーヴ・シェリーの名前もみえる──と、ソロ活動もすっかりイタについたいま、それぞれの事情もふまえると再結成の可能性は遠のいたにちがいないが、ソニック・ユースと聞くとパブロフの犬のごとき反応をみせるものもすくなくない。かくいう私がそのくちで『In/Out/In』と題した未発表曲集のリリースを知るやいなや5曲45分ほどの音源に耳を傾け、ソロ作ともことなるソニック・ユースという集団に固有の磁場とも空間性ともいえるものを再認識したのだった。
 『In/Out/In』は2000年から2010年にかけて録音した楽曲を編んだコンピレーションで企画盤への既出音源をふくむ。SYは2011年に活動を休止したので、2000年代の十年紀はSYの最後の10年にほぼかさなっている。アルバムでいえば、2000年の『NYC Ghosts & Flowers』から2009年のラスト・アルバム『The Eternal』まで、いわば成熟期の背景を記録したのが本作といえるであろう。
 30年を超えるSYの活動歴をステージごとに区切ると、81年の結成から88年の『Daydream Nation』にいたるアングラ期、90年代の幕開けをつげた『Goo』以降のオルタナ期と、2000年代以降の成熟期となろうか。とりわけ本作の射程となる成熟期は編成的にも音楽的にも実験性が高く、大作志向から楽曲主体まで作品の傾向も多様性に富む。収録曲の内訳をみると、1曲目の “Basement Contender” と3曲目の “Machine” が2008年、2曲目の “In & Out” は2010年と本作中もっとも新しい。レコードではB面にあたる後半の2曲 “Social Static” と “Out & In” は2000年で、タイトルの由来となった “In & Out” と “Out & In” は本作のリリース元である〈Three Lobed Recordings〉のオムニバス『Not The Spaces You Know, But Between Them』でいちど世に出ている。発掘作の例にもれず、本作もアイデアスケッチのきらいはあれど、おのおのの素描にはこの時期特有のタッチがある。ラスト・アルバム『The Eternal』と相前後する前半の3曲は中平卓馬にならえば「原点復帰」となる2000年代後半らしくソリッドなバンド・スタイルを深い諧調のギターで肉づけする方向性をとっている。変則チューニングをとりいれたリフと分散和音のコンビネーションはサーストンとリーの専売特許だが、『Rather Ripped』(2006年)のツアーを境にペイヴメント~フリー・キトゥンのマーク・イボルドが加入を経てキムをふくめたトリプル・ギター体制へと編成の選択肢の幅はひろがり『The Eternal』を基礎づける変化となった。前半の3曲はその前段階だが、気心しれた四者のリラックスした音のやりとりからSYというほかないサウンドがたちあがるのが興味深い。反復フレーズを土台に多彩な音色を交換するなかで加速度を増す冒頭の “Basement Contender”、つづく“In & Out” はよく似たムードの対になる2曲だが、前者が2008年当時マサチューセッツ州ノーサンプトンにかまえていたサーストンとキムの自宅地下での録音であるのにたいして、後者は2010年のポモナでのサウンドチェック音源に手を加えたものと、時期的な隔たりがある。一方で『The Eternal』のセッション時のアウトテイクとなる3曲目の “Machine” は先の2曲とは対照的に構成もかたまっておりアルバムに入ってもよかった気もするが陽の目をみなかった。もうひとひねりほしいと判断したと思しいが、ベースレスながら分厚いサウンドは『The Eternal』のみならず、その先の展開までも彷彿させただけに活動休止はなんとももったいない──と嘆息をもらす一方で、形式としてのロックの可能性をためしつづけた30年の道のりには頭がさがるばかり。
 後半の2曲は遠大なSY史において実験性がピークをむかえたころの楽曲で、不動の4人にジム・オルークを加えた布陣による。録音はいずれも2000年、この年SYはアルバム『NYC Ghosts And Flowers』をリリースし『Murray Street』(2002年)、『Sonic Nurse』(2004年)とつづくNY三部作の端緒をひらいた。他方前年の1999年にはケージ、カーデュー、ウォルフ、ライヒ、小野洋子や小杉武久ら20世紀前衛の作品をとりあげた『Goodbye 20th Century』を自主レーベル〈Sonic Youth Records〉から世に問うている。“Social Static” “Out & In” と題した2曲の背後には上記のようなながれがあり、それを反映するようにこの2曲では実験的な要素が前面に出ている。ただし楽曲の出自にはちがいがある。本作中もっともアブストラクトな4曲目の “Social Static” はクリス・ハビブとスペンサー・チュニクによる同名の短編映画のサウンドトラック。私は全編は未見ながら動画共有サイトにアップした抜粋版──大勢の男女が全裸でダイインする──から想像するに、政治的意図をもった実験映画との印象をもった。制作の過程はさだかではないが、おそらくフリーフォームの即興音源(の断片など)を映像にあわせてエディットしたのであろう。スーパー8の質感がノイジーなサウンドにマッチしている。サウンドは出だしこそSYらしさを感じさせるが、楽器の記名性はまもなく後景にしりぞき、中盤以降はピエール・シェフェールとアルヴィン・ルシエをかけあわせてノイズ化したような展開をみせる。つづく “Out & In” はバンド・サウンドではあるものの、前半とはうってかわって、どんよりとした展開にさまざまな音楽的情景が去来する構成をとっている。ともすれば単調になりがちな10分を超える長尺曲を持続させる手法にはスティーヴ・シェリーのドラミングもあいまってクラウトロックを想起するが、SYはさらにそこに音の襞にわけいるような響きをつけくわえる。『Murray Street』に入っていてもおかしくない仕上がりにうなりつつ、このような音源が眠っているなら出し惜しみしないでほしいと思ったのだった。

Soccer Mommy - ele-king

 グラミーにもノミネイトされたことのあるUSのシンガーソングライター、ソフィー・アリソンによるプロジェクト=サッカー・マミーが6月24日に新アルバム『Sometimes, Forever』を発売する。プロデューサーは意外なことに、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー。ポップなロック・サウンドと10年代を代表するエレクトロニック・プロデューサーの組み合わせ、どんな化学反応が起きるのか注目です。

米シンガー・ソングライター、サッカー・マミーがワンオートリックス・ポイント・ネヴァーをプロデューサーに起用した新アルバムから2ndシングルをリリース!
米シンガー・ソングライター、サッカー・マミーが6月24日にリリースする新アルバム『Sometimes, Forever』からの2ndシングル「Unholy Affliction」をリリースしました。この曲は、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーのダニエル・ロパティンをプロデューサーに起用し、サッカー・マミーことソフィー・アリソンが持っている美しいテクスチャーと不穏な雰囲気を同時に表現しています。

ソフィーはシングル「Unholy」について「スタジオでのレコーディングは当初思い描いていたものとは全く違って本当に楽しかった。ダンがデモ・ボーカルでとてもクールなシークエンスを作ってくれて、それが曲の大部分になったの。2つの異なるバージョンの曲が混ざり合っているのも気に入っている」とコメントしています。

“悲しみも幸せも永遠ではない” というアルバムのコンセプトを掲げ、『Sometimes, Forever』は、レトロなサウンド、個人的な動揺、現代社会から影響される障害など、様々なアイディアを統合してオリジナルな作品に仕上げています。アルバム・タイトルの『Sometimes, Forever』は、良い感情も悪い感情も循環しているという考え方にちなんでいます。「悲しみや虚しさは過ぎ去りますが、喜びと同じように必ず戻ってくるのです」とソフィー・アリソンはコメントしています。

ニューウェーブやゴスといったシンセ系のサブジャンルを巧みに取り入れた今作で、ソフィーは彼女のビジョンをサポートするために、プロデューサーにワンオートリックス・ポイント・ネヴァーのダニエル・ロパティンを起用しました。この組み合わせは意外に思われるかもしれませんが、実際に聴いてみると、2人のアーティストが同じような創造性を持っていることがわかります。アルバムでダニエル・ロパティンは無数のシンセサイザーと緻密なアレンジを駆使し、ソフィーが行った素晴らしいライブ・テイクを卓越したスタジオ技術でミックスし壮大な作品に仕上げています。新アルバムは、これまでで最も大胆で冒険的な作品であり、現代のロック・シーンの中で最も才能あるソングライターの一人としてのソフィー・アリソンの地位を確固たるものにするでしょう。

サッカー・マミーは、2020年にグラミー賞にノミネートされ、高い評価を受けた2ndアルバム『color theory』をリリース。このアルバムのリリース後、アリソンはバーニー・サンダースのオープニングを務めるなどして大絶賛を浴び、グラストンベリーなどの大型フェスティバルに出演。『color theory』は、ビルボードチャート「トップ・ニュー・アーティスト・アルバム」と「オルタナティブ・ニュー・アーティスト・アルバム」の2部門で1位を獲得しています。

先行シングル「Shotgun」のMVはこちら
https://youtu.be/I1xOoqD8jkI

[アルバム情報]

アーティスト:Soccer Mommy (サッカー・マミー)
アルバム:Sometimes, Forever (サムタイムス、フォーエヴァー)
レーベル:Loma Vista Recordings
発売日:2022年6月24日(金)

トラックリスト
01 Bones
02 With U
03 Unholy Affliction
04 Shotgun
05 newdemo
06 Darkness Forever
07 Don’t Ask Me
08 Fire in the Driveway
09 Following Eyes
10 Feel It All The Time
11 Still

ストリーミング・リンク:https://found.ee/pGb6O

バイオグラフィー

アメリカ、ナッシュビル育ち、ソフィー・アリソンによるソロ・プロジェクト、サッカー・マミー。Tascamのデジタル・レコーダーを買ってレコーディングした楽曲がBandcamp内でバズが起き始め、いくつかのライブか決定、最終的にはレコードの発売契約とともに、2017年賞賛の声を集めたベッドルーム・レコーディングのコンピレーションへの参加を果たした。その後、ベッドルームを飛び出しフルバンドを率いて、初のスタジオ・アルバム『クリーン』を2018年にリリース。2019年には初来日を果たす。2020年にセカンド・アルバム『color theory』をリリース、ビルボード「トップ・ニュー・アーティスト・アルバム」と「オルタナティブ・ニュー・アーティスト・アルバム」の2部門で1位を獲得。第64グラミー賞「最優秀ボックスセット/スペシャル・リミテッド・エディション・パッケージ」にノミネート。今までスティーヴン・マルクマス、ミツキ、フィービー・ブリジャーズ、ケイシー・マスグレイヴスなどと共にツアーを周っている。

The Smile - ele-king

 昨年より大きな話題を集めていた新バンド、トム・ヨーク、ジョニー・グリーンウッドトム・スキナーからなるザ・スマイルがついにアルバムをリリースする。告知にあわせ、新曲 “Free In The Knowledge (知のなかの自由)” のMVも公開された。
 6月15日に発売される同名のアルバムには、これまで単発で発表されてきた5曲すべてが収録される。プロデューサーはおなじみのナイジェル・ゴドリッチ。フル・ブラス・セクションも参加しているという。どんな作品に仕上がっているのか、楽しみに待っていよう。

The Smile - Free In The Knowledge

THE SMILE
トム・ヨーク×ジョニー・グリーンウッド×トム・スキナー
ザ・スマイル待望のデビュー・アルバム
『A LIGHT FOR ATTRACTING ATTENTION』発売決定!!

レディオヘッドのトム・ヨークとジョニー・グリーンウッド、フローティング・ポインツやムラトゥ・アスタトゥケのバックを務め、現在はサンズ・オブ・ケメットで活躍する天才ドラマー、トム・スキナーによる新バンド、ザ・スマイルが待望のデビュー・アルバム『A Light For Attracting Attention』を〈XL Recordings〉よりリリース。新曲 “Free In The Knowledge” とレオ・リー監督による同曲のMVが公開された。

今回公開された “Free In The Knowledge” は2021年12月にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われたイベント「Letters Live」の一環として、パンデミック以降初めてトム・ヨークが観客を前に演奏して話題を呼んでいた。ザ・スマイルはこれまでにシングル “You Will Never Work in Television Again”、“The Smoke”、“Skrting On The Surface” を連続リリースし、4月3日に発表された “Pana-vision” は英人気BBCドラマ「ピーキー・ブラインダーズ」の最終回に起用された。

アルバムは5つのシングルを含む全13曲を収録し、盟友ナイジェル・ゴドリッチがプロデュースとミキシングを務め、名匠ボブ・ラドウィッグがマスタリングを担当。収録曲にはロンドン・コンテンポラリー・オーケストラによるストリングスや、バイロン・ウォーレン、テオン&ナサニエル・クロス、チェルシー・カーマイケル、ロバート・スティルマン、ジェイソン・ヤードといった現代のUKジャズ奏者たちによるフル・ブラス・セクションが参加。5月13日(金)にデジタル配信され、日本盤CDは6月15日(水)、輸入盤CD/LPは6月17日(金)に発売。

本作の日本盤CDは高音質UHQCD仕様で解説および歌詞対訳が封入され、ボーナス・トラックを追加収録。輸入盤は通常盤CD/LPに加え、限定イエロー・ヴァイナルが同時リリース。本日より各店にて随時予約がスタートする。

label: BEAT RECORDS / XL RECORDINGS
artist: The Smile
title: Free In The Knowledge
release date: 2022/06/15 WED ON SALE

CD 国内盤
XL1196CDJP
(解説・歌詞対訳付/ボーナストラック追加収録/高音質UHQCD仕様)
2,600円+税

CD 輸入盤
XL1196CD(6/17発売予定)
1,850円+税

LP 限定盤
XL1196LPE(6/17発売予定/限定イエロー)
4,310円+税

LP 輸入盤
XL1196LP(6/17発売予定/通常盤)
2,600円+税

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12758

Raw Poetic - ele-king

 流行のスラングを使わない、ポップ・ミュージックを参照しない。そんなヒップホップがあってもいいだろう。小学校の先生をやりながら、子ども向けの本を執筆し、音楽も続ける、そんなラッパー、いるに越したことはない。で、ここにいる。ワシントンD.C.のロウ・ポエティック、2年前に叔父のアーチー・シェップと一緒に1枚の、傑出したジャズ・ラップ・アルバムを発表した男だ。いま聴いても、収録曲の“チューリップ”はすごいと思う。

 本人はそれを強調されたくないだろうけれど、60年代〜70年代のブラック・パワーの時代に活躍したジャズのリジェンドが親戚にいるというのは、まあ、インパクトはある。しかもそのカタログのなかの1枚でコーラスを担当した元ブラックパンサー党員が母親だったりして、きっとロウ・ポエティクスは幼き頃から良き教えを受けたのだろう。鷹は飢えても穂を摘まずではないが、彼にとってのプライドはメインストリームとは別の方角に向いている。
 だからといって、ロウ・ポエティックの通算6枚目のソロ・アルバムは、マニア向けの取っつきにくいものではない。むしろその逆で、聴きやすく親密でさえある。ここにはア・トライブ・コールド・クエストやデ・ラ・ソウルの成分があるし、古典主義的なのだが、クリシェに収まらないフリーキーさがあって、そのコンセプトはちょっとムーディーマンなんかとも近い。
 でもね、これはなんと言ってもリズムが格好いいんだ。ジャズ・ファンク、生ドラムと打ち込み、オールドスクール流のスクラッチ、ドラムンベース風のリズムだってある。とくにすごいのはベース。でしゃばったりしないし、あくまで黒子なのだけれど、ゴムのように音符に絡んではシンコペートし見事なうねりを生んでいる。調べてみたらムーア・マザーと一緒にジャズ・コレクティヴのイリヴァジブル・エンタングルメント(Irreversible Entanglements)をやっている人だった。
 
 とにかく、シェップとの『Ocean Bridges』によってさらにその知名度を上げたロウ・ポエティック(といっても彼にはすでに15年以上のキャリアがあり、ゼロ年代はジャジー・ヒップホップ・グループ、パナセアのメンバーでもあった)は、同作を作った主要メンバー──旧友でありトラックメイカーのダム・ザ・ファッジマンク、そしてIEからベースのルーク・スチュワート、ギターのパトリック・フリッツ──とのセッションにおけるリズムを継承した。その結果が本作『ラミネイテッド・スカイズ』というわけだ。UKのレーベルからのリリースとあって注目されているし、賞賛を集めてもいる。『Ocean Bridges』ほどジャズ全開ではないが、叙情的で、曲の細部にまで手が込んでいるがアルバムとしてのまとまりは良く、全体的に清らかで聴いていて気分が良い。この暗澹たる時代、カラフルな意匠をまとった、グルーヴィーで微笑ましいレコードが歓迎されないはずがない。

 黒人の社会的立場の不条理を描いたラルフ・エリソンの小説『見えない人間』にインスパイアされた曲もあるが、ぼくが気に入っているのはアルバム中盤の3曲。ストリングスがこってり入った“Intertwined”、そのエレガントな叙情詩を引き受けながらロウ・ポエティクスのメロディアスなラップが歌へと移行する“Sunny Water”、そしてジャズ・ファンクの大作“Hey Autumn”。リズムを基軸に、シンセサイザー、ギターとヴィブラフォン、パーカッションやスクラッチで構成されるこの曲には、本作の良いところが凝縮されている。みんなでジャムっているライヴ感覚があって、ファンキーかつスペイシーで、しかも緻密で温かい。1曲だけ選ぶなら迷わずこれ。

 ラップをしながらいつの間に歌っているというのがロウ・ポエティックのひとつの芸風で、それはそれでメロディアスだったりするのだが、彼の本作におけるいちばんの功績は、このコレクティヴをまとめ上げたことだろう。そして、繰り返すが、このアルバムのもうひとりの主役はルーク・スチュワートだ。彼のベースとダム・ザ・ファッジマンクのビートによる相乗効果こそ本作の肝である。
 アルバム制作はコロナ前の2019年からはじめたというが、周知のように世界ではそれからいろんな大きなことが次から次へと起きている。時間はあったが、ロウ・ポエティックは当初のメッセージを変更しなかった。『What's Going On』を改変する必要がないように、その必要がないものを目指していたからだと彼はある取材で話している。アルバムを締めるラヴリーな“Cadillac ”には、パートナーへの愛情表現に混じって、教室で子供に九九を教える際に使ったフレーズも入っているそうだが、たしかにそれなら戦争が起きようと変える必要はないよね。

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