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Blue Lab Beats

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Foulden Road Part II

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小川充   Apr 26,2022 UP

 現在のUKジャズでもっともクラブ・ミュージックやストリート・サウンドとの連携を見せるのがブルー・ラブ・ビーツとニュー(ノイエ)・グラフィック・アンサンブルである。プロデューサー/ビートメイカーの NK-OK ことナマリ・クワテンとマルチ・インストゥルメンタル・プレイヤーのミスター・DM ことデヴィッド・ムラクポルがロンドンで結成したブルー・ラブ・ビーツ、アフリカ系フランス人DJ /プロデューサーのフレッド・ンセペによるプロジェクトのノイエ・グラフィックがロンドンでバンド・スタイルに発展したノイエ・グラフィック・アンサンブル。ヒップホップやR&B/ネオ・ソウル、ハウスやブロークンビーツなどのプログラミング・サウンドとジャズ・ミュージシャンたちによる生演奏を融合する点は両者に共通する要素で、ラッパーやシンガーたちとのコラボを積極的におこなっている。アメリカにおけるロバート・グラスパーサンダーキャットなどの新世代ジャズの影響を受けつつも、レゲエやグライムなどUKらしいクラブ・サウンドのエッセンスを取り入れているのが彼らである。そんな2組の新作がリリースされた。

 ブルー・ラブ・ビーツの『マザーランド・ジャーニー』は、〈ブルーノート〉と契約を結んでからの初めてのアルバムとなる。基本的にはデビュー・アルバムの『クロスオーヴァー』や続く『ヴォヤージ』の路線から変わっていないが、エゴ・エラ・メイ、エマヴィージェローム・トーマスなどロンドンのシンガーやミュージシャン以外に、〈ストーンズ・スロー〉のキーファーともコラボしている点が目につく。キーファーとはサウンドクラウドを通じて知り合うようになり、実際にライヴでの共演を経て今回のコラボへと繋がったそうだが、その “ダット・イット” はキーファーによるメロウなピアノとミスター・DM のギターが結びついたサウンドで、アシッド・ジャズの頃のロニー・ジョーダンやジャズマタズなどを彷彿とさせるところもある。

 タイトル曲の “マザーランド・ジャーニー” はフェラ・クティをフィーチャーとなっているが、実際にはフェラの “エヴリシング・スキャッター” をサンプリングしたもの。フェラ・クティのような攻撃的なアフロビートと言うより、牧歌的で哀愁漂うハイ・ライフの影響が感じられる作品となっている。この曲やゲットー・ボーイズをフィーチャーした “センシュアル・ラヴィング” など、今回はアフリカ音楽との結びつきが顕著なアルバムだ。同じくゲットー・ボーイズをフィーチャーした “ブロウ・ユー・アウェイ” もカリビアンやラテンとR&Bが結びついた楽曲で、アメリカのジャズ×ヒップホップ/R&Bとは異なるテイストを感じさせる。

 エマヴィーをフィーチャーしてUKソウルらしい憂いと浮遊感を湛えた “ドント・レット・イット・ゲット・アウェイ”。ポッピー・ダニエルズのトランペットをフィーチャーしたブロークンビーツ×フュージョンの “ゴッタ・ゴー・ファスト”。フットワークのような高速シャッフル・ビートを背景にカイディ・アキニビのサックスなどがフィーチャーされた “ワープ”。エゴ・エラ・メイのネオ・ソウル調のヴォーカルながら、トリッキーなリズム・プロダクションが異彩を放つ “スロウ・ダウン”。楽曲によってはジャズと言うよりソウルやR&Bの成分が際立つものもあり、トム・ミッシュやオスカー・ジェローム、edbl などと同列で見るべきアーティストと言える。

 ノイエ・グラフィック・アンサンブルの『フォールデン・ロード・パート2』は、2019年にリリースされた『フォールデン・ロード』の続編。コロナによるロックダウン、イギリスのEU離脱、ジョージ・フロイドの死去以後の抗議活動などを経て制作されたということがあってか、前作に比べてダークな味わいが増している。そうした影響を感じさせるのが “ブラック・ボディーズ” で、ノイエ・グラフィック・アンサンブル流のブラック・ライヴズ・マターを示した楽曲となっている。マ・モーヨーのスポークンワードは2016年にパリ郊外で起こったアダマ・トラレオ事件を題材とするが、アダマ・トラレオはジョージ・フロイド同様に警官による身柄拘束が原因で死亡しており、フランスで大々的な抗議運動を引き起こした。続く “クイーン・アッサ” は、アダマ・トラレオ事件の後に人権活動家となった姉のアッサ・トラレオに捧げた楽曲。テクノとハード・バップ調のジャズが介したような作品で、もともと〈22a〉や〈リズム・セクション・インターナショナル〉からハウスやテクノをリリースしていたフレッド・ンセペならではのナンバーと言える。そしてアダマ・トラレオに対する鎮魂曲の “フォー・アダマ” と、一連の作品が『フォールデン・ロード・パート2』の屋台骨となっている。

 “オフィサー、レット・ミー・ゴー・トゥ・スクール” は警官による職務質問を示唆するタイトルがアダマ・トラレオやジョージ・フロイドの事件を連想させるもので、律動的なハード・バップとブロークンビーツの融合。1990年代や2000年代のクラブ・ジャズを彷彿とさせる味わいだ。ブラザー・ポートレイトのポエトリー・リーディングがフィーチャーされた “ランニング・オン・ア・フレイム” はレゲエやダブのフィーリングに満ちたダークな楽曲で、やはりブラック・ライヴズ・マターと結びつく内容。楽曲そのものの雰囲気としては個人的にはトリッキーサイレント・ポエツを思い浮かべる。そして、ジャーナリスト/写真家のJJアキンレイドがポエトリー・リーディングで参加した “ブレス”、ロンドンのラッパーのロード・アペックスをフィーチャーした “ステップ・トゥ・イット” と、『フォールデン・ロード・パート2』は前作からずっとメッセージ性が増した内容となっており、ノイエ・グラフィックの新たな覚醒を告げるものだ。

小川充

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