ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Aphex Twin ──エイフェックス・ツインがブランド「Supreme」のためのプレイリストを公開
  2. Whatever the Weather - Whatever the Weather II | ホワットエヴァー・ザ・ウェザー
  3. interview with Roomies Roomiesなる東京のネオ・ソウル・バンドを紹介する | ルーミーズ
  4. 完成度の低い人生あるいは映画を観るヒマ 第二回 ボブ・ディランは苦悩しない
  5. Oklou - choke enough | オーケールー
  6. すべての門は開かれている――カンの物語
  7. new book ──牛尾憲輔の劇伴作曲家生活10周年を記念した1冊が刊行
  8. The Murder Capital - Blindness | ザ・マーダー・キャピタル
  9. R.I.P. Roy Ayers 追悼:ロイ・エアーズ
  10. Columns ♯12:ロバータ・フラックの歌  | Roberta Flack
  11. Lawrence English - Even The Horizon Knows Its Bounds | ローレンス・イングリッシュ
  12. Columns ♯11:パンダ・ベアの新作を聴きながら、彼の功績を振り返ってみよう
  13. interview with Acidclank (Yota Mori) トランス&モジュラー・シンセ ──アシッドクランク、インタヴュー
  14. Columns 2月のジャズ Jazz in February 2025
  15. story of CAN ——『すべての門は開かれている——カンの物語』刊行のお知らせ
  16. interview with DARKSIDE (Nicolás Jaar) ニコラス・ジャー、3人組になったダークサイドの現在を語る
  17. interview with Squid スクイッドの冒険心が爆発したサード・アルバム
  18. 別冊ele-king ゲーム音楽の最前線
  19. Columns 「ハウスは、ディスコの復讐なんだよ」 ──フランキー・ナックルズの功績、そしてハウス・ミュージックは文化をいかに変えたか  | R.I.P. Frankie Knuckles
  20. R.I.P. David Johansen Funky but Chic——デイヴィッド・ヨハンセン R.I.P.
/home/users/2/ele-king/web/ele-king.net/

Home >  News > Brian Eno - ──ブライアン・イーノ、話題のNFTについて自身の見解を述べる

Brian Eno

Brian Eno

──ブライアン・イーノ、話題のNFTについて自身の見解を述べる

Dec 21,2021 UP

 2021年、大きな話題となった「NFT」。ノン・ファンジブル・トークン(非代替性トークン)の略語で、ブロックチェーン技術のひとつである。ざっくり言えば、デジタル・データを替えが効かないようにできる、しるしみたいなものだ。
 ふつう、電子データは簡単に複製可能なので、たとえば心血注いでデジタルですばらしい絵画を描いたとしても、無限にコピーができてしまい、特別な商品価値は生まれにくい。が、NFTの技術を用いれば、1枚1枚の絵に改ざんできないシリアルナンバーみたいなものが付され、唯一性を担保できるようになる。結果、デジタル・データなのに(世界に1枚しかない、現実のレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画のように)唯一無二の価値が生まれるよ、というお話。
 これは大きなビジネス・チャンス、ということで2021年、メタヴァースとともにNFTが大きな話題になった。じっさいにNFTを利用して音楽やその他のアイテムを売ったりしたアーティストも、すでにいる。

 そんなNFTをめぐる狂騒について、まさに “アーティスト” であるブライアン・イーノが、「ザ・クリプト・シラバス」という設立されたばかりのメディアで自身の見解を述べている。いわく、これまで何度か「NFT作品をつくらないか」と打診されてきたものの、その分野において制作するに値するなにかがあるとは思えなかったそうだ。暗号技術には「興味深い活用法があるのかもしれませんが、わたしにはその活用法がまだわかりません。一部の銀行口座に数字が移動すること以外に、それが世界になにをもたらしているのかわからないのです」と。

わたしにとって “つくるに値するもの” とは、銀行口座にだけではなく、世界にこそ価値を付加するなにかを生み出すことです。もしわたしがカネを稼ぎたいとだけ思っていたなら、べつの人間として異なるキャリアを歩んでいたでしょう。アーティストになる道など選ばなかったはずです。NFTは、アーティストがグローバル資本主義からほんのちょっとだけお楽しみを手に入れる方法のように思えます。アーティストの金融化、そのちょっとかわいい版みたいなものです。なんとすてきな。いまやアーティストたちはささやかなクソ資本家にもなることができるというわけです。

 イーノは、NFTにかんする議論それ自体についてはオープン・マインドでいたいけれども、現在は詐欺師がお人好しを探している状況だと考えているそうだ。

 ちなみに、聞き手はエフゲニー・モロゾフ。ベラルーシ出身のリサーチャー/ジャーナリストで、GAFAMの強烈な批判者として知られている。今回イーノとの対話が掲載された「ザ・クリプト・シラバス」を設立したのも彼自身だ。「ザ・クリプト・シラバス」は、暗号通貨やブロックチェーンなどにかんする情報を提供しつつ、議論を活性化させ、その分野に批評をもたらそうとするためのメディア/プラットフォームだという。10月に刊行した『ele-king臨時増刊号 仮想空間への招待──メタヴァース入門』にはモロゾフのエッセイが掲載されているので、興味のある方はぜひご一読を。

NEWS