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Keiji Haino

Keiji Haino

──ジョン・ケージらによって設立された財団が授ける「ロイ・リキテンスタイン賞」を灰野敬二が受賞

Photo by Kazuyuki Funaki   Mar 01,2023 UP

 NYにファンデーション・フォー・コンテンポラリー・アーツ(FCA)なる財団がある。1963年にジョン・ケージや画家ジャスパー・ジョーンズらによって創設された非営利団体で、8つの賞の授与をつうじて芸術家を支援することを目的としている。
 そのうちのひとつにポップアートの代表的な画家、ロイ・リキテンスタインの名を冠した賞があり、これまで詩人でありブラック・スタディーズの研究者でもあるフレッド・モーテン、フェミニズムやLGBTQにまつわる表現をつづけてきた写真家のイヴ・ファウラーなどが受賞しているのだが、その2023年度の受賞者として灰野敬二が選ばれることになった。音楽家としては初の受賞となる。国境を越え、音楽に留まらずさまざまな分野の芸術家たちとコラボレーションをおこなってきた、その50年以上にわたる活動が評価されたということなのだろう。
 昨年70歳を迎えた灰野敬二。コロナ禍以後、海外ツアーには出ていないものの、昨年の国内でのライヴは46本と近年でも最多。最新リリースは〈サブ・ポップ〉からの7インチ・シングル、そして2016年に深センでドイツのファウストと演奏したライヴ・アルバム(2LP+CDのボックスセット)。まだまだ衰えることはなさそうだ。

音楽家・灰野敬二が2023年度ロイ・リキテンスタイン賞を受賞(米ファンデーション・フォー・コンテンポラリー・アーツ)

 ニューヨークのファンデーション・フォー・コンテンポラリー・アーツ(Foundation for Contemporary Arts/FCA)は2月15日、2023年度の助成芸術家を発表し、音楽家の灰野敬二がロイ・リキテンスタイン賞(Roy Lichtenstein Award)を受賞することが決定した。
 FCAは芸術家個人の支援を目的として、作曲家のジョン・ケージと、画家のジャスパー・ジョーンズによって1963年に創設された非営利組織。設立当初より、アール・ブラウン、マース・カニングハム、コーネリアス・カーデュー、メレディス・モンク、トリシャ・ブラウン、スティーヴ・ライヒといった数多くの芸術家への支援を行い、1993年には、ダンス、音楽/サウンド、詩、ヴィジュアルアーツ、パフォーマンスアート/演劇と、広範囲にわたる芸術家への助成金プログラムを公式化した。
 2023年度の助成対象者には、長年FCAと関わりのある芸術家にちなんだ8つの賞、マース・カニングハム賞、ヘレン・フランケンサーラー賞(絵画部門)、ロイ・リキテンスタイン賞、リチャード・パウセット・ダート賞(本年度より新設)、ロバート・ラウシェンバーグ賞、ドロテア・タニング賞、サイ・トゥオンブリー賞(詩部門)、C.D.ライト賞(詩部門)の受賞者が含まれる。対象となった21人の芸術家全員にそれぞれ45,000米ドルの助成金が贈られる。
 灰野が受賞したロイ・リキテンスタイン賞は、ポップアートを代表する画家リキテンスタインの精神を反映すると認められた優れた活動や業績に対して贈られるもので、2018年に創設されて以来、毎年候補者の中から非公開の選考によって決定される。過去の受賞者は、フレッド・モートン(詩)、アンディ・ロバート、イヴ・ファウラー、コンスタンティナ・ザヴィツァノス、フレデリック・ウェストン(以上、ヴィジュアルアーツ)で、音楽家の受賞は灰野が初となる。
 FCAのウェブサイトに英文で掲載されているアーティスト・ステートメントとバイオグラフィの原文は以下の通り。

【アーティスト・ステートメント】
わたしと 今 どっちがどっちに にじんでいる

1というものを成就させる事によって、次を必要としているか、さらにその次に動きたいか。1を成就させてあげれば、次(2)は全く違う次(2)を隣に呼びたいでしょう。そのとき、呼ばれるものをそれぞれ速度の違う、形状も違うものを呼びたいと思うでしょう。それが数字(メトロノーム)に表せない、人が理解しにくい一番深い今として現れます。そのことを人々は間という言葉で片づけてしまいます。私も説明がしきれないので、そのように呼んでいました。

特に私のパーカッションの演奏について、人々は即興という形容をします。しかしそれは前記の如く一音一音を成就させていることであり、時には床を打つ、壁にジャンプする、自分の身体を楽器に近づける等の行為を行うことで、ひとつの宇宙を形成しようとしています。それはその場で考えながら行っていく作曲とも編曲ともさらに変容(憑依)とも言い切れない試みです。音楽と呼ばれているものが次の何かになっていくことです。

私が考えていることは、全ての呼吸をしているものと繋がりたいということです。そして、それは呼吸をしていない全てのものともつながる為の修行だと思っています。
2022年12月

【バイオグラフィ】
 灰野敬二は、一つ一つの音の発生を唯一かつ不可逆的とみなす音楽的一元論を標榜する音楽家で、その実践は作曲とパフォーマンスの区別を消滅させ、(楽譜の)再現と即興という両方の概念を無効化する。彼はロックからインスピレーションを受け取っているが、それはロックから否定性、固着性、復讐心を除去した上でのことである。灰野の独自のテクニックはギター、ハーディ・ガーディ、その他の弦楽器、管楽器、打楽器、DJ機器、エレクトロニクスなどの性能を極限まで引き出し、あらゆるジャンル、スタイル、伝統の自由な探究、コラボレーション、実験を可能にしている。
 灰野は当初アントナン・アルトーに触発され演劇を志したが、ザ・ドアーズに遭遇し音楽に転向。以来ブラインド・レモン・ジェファーソンをはじめとする初期ブルース、ヨーロッパ中世音楽から歌謡曲まで幅広い表現を検証し吸収した。
 1970年、エドガー・アラン・ポーの詩から名を取ったグループ「ロスト・アラーフ」にヴォーカリストとして加入。また、ソロで自宅録音による音源制作を開始、ギター、パーカッションを独習。1978年にロックバンド「不失者」を結成。滲有無、哀秘謡、Vajra、サンヘドリン、静寂、なぞらない、The Hardy Rocksなどのグループでも活動し、デレク・ベイリー、ペーター・ブロッツマン、リー・コニッツ、ジョン・ダンカン、フレッド・フリス、チャールズ・ヘイワード、ローレン・コナーズ、ジョン・ゾーン、ファウスト、ジム・オルーク、スティーヴン・オマリー、オーレン・アンバーチ、SUMAC、Boris、巻上公一、メルツバウ、大野一雄、田中泯、勅使川原三郎など様々な音楽的、芸術的バックグラウンドの芸術家とコラボレーションを行っている。
 灰野はこれまでに200点を超える音源を発表しており、ライブ・パフォーマンスは確認されただけでも2,000回以上を数える。


関連リンク(FCAウェブサイト)
2023年度ロイ・リキテンスタイン賞 灰野敬二(音楽家)
https://www.foundationforcontemporaryarts.org/recipients/keiji-haino/
ロイ・リキテンスタイン賞 これまでの受賞者一覧
https://www.foundationforcontemporaryarts.org/recipients/grant/roy-lichtenstein-award/
助成アーティスト一覧
https://www.foundationforcontemporaryarts.org/recipients/?page=2&limit=20

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