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XXX Residents

XXX Residents

Attack of the Killer Black Eye Ball

Yamaha A&R

Amazon

野田 努 Dec 27,2009 UP

 以前リキッドでやった宇川直宏の偽サイン展は大盛況だったようで、多くの人がこのシミュラクラを楽しんでいるというのは、ある意味では驚愕に値する。本物をまがい物が凌駕する......ことはまあ昔からあるとはいえ(ダッチワイフとかそうなのかね、いやあれは現実の代用品か)、しかし、それにしても積極的に偽サインを面白がるという感覚はまったくポスト・モダン的で、宇川直宏はそうした変わりゆく世界の見え方に非常に敏感なのだろう、彼はこのゲームをずっと弄んでいるように思える。
 僕は去る11月27日にアルバム発売記念のトークショーを彼と一緒にやった。喋りが終わったあと、宇川は「今日、CD買ってくれた人には偽サインを描きます」と言ってその日のメニューを告げると、誰か忘れたけど何種類もの著名人(もしくはカルト的人物)のサインを描き、そしてその"偽もの"を何十人もの人たちが楽しんでいるのだ。僕はそれを端で眺めながら、「オレも描いてもらおうかな」と思ってしまった。偽物であるから面白いのだ。こうしてシュミラクラは本物を駆逐する。彼はこの更新される現実をこうやって見せているのかもしれない。

 XXXレジデンツはご存じのように、彼のプロジェクトのひとつで、そこにはオリジナルのザ・レジデンツへのオマージュを含みつつも、彼のシュミラクラへの興味が恐ろしく注がれている。そもそも1973年にサンフランシスコで誕生したポップ史上で最初に匿名性を打ち出したこのユニットは、そもそも誰が本物のメンバーなのかわかならなかった。交友関係はあった。電気グルーヴの曲名にまでなった故スネーク・フィンガーをはじめ、フレッド・フリスやクリス・カーターといった70年代のUKにおけるアヴァンギャルドの旗手たち、あるいは80年代末にはレーベルが勝手に"カウリガ"――いちど聴いたら忘れられないギターとダークなエレクトロニック・ビート――のヒットによってアシッド・ハウス・フィーヴァーやバレアリックの渦中に投げ込まれたこともあった。それでも彼らの匿名性は守られてきた。XXXレジデンツの活動に先立って、宇川がこのプロジェクトの旨を本物のザ・レジデンツに問い合わせたら「好きにするがいい」との返事がきた。こうして彼は気兼ねなく、ポップ史上において指折りの異端者たちのシュミラクラを演じることができるというわけだ。

 ザ・レジデンツは彼らが全盛だった70年代から80年代は、原型がわからないカヴァー集(サード・ライヒン・ロール)や1分ジャストの曲を1枚のアルバムに40曲収録したり(コマーシャル・アルバム)、あるいはモグラ帝国についてアルバムを作ったり(マーク・オブ・ザ・モール)......とかいろいろ1枚ごとコンセプチュアルにやってきた。音は、そのポップなデザインとは裏腹にいたってダークで、気が滅入るような曲も少なくない。

 XXXレジデンツにとって最初のアルバム『Attack of the Killer Black Eye Ball』はレジデンツのテクノ・ダンス・ヴァージョンだ。宇川のダンス・ミュージックへの愛情が純粋に注がれている......ように思える。1曲目がいちばんオリジナルのザ・レジデンツっぽい。不吉なそのトラックにミックスされる2曲目はフロアを当たり散らすかのようにトランスする。3曲目は狂ったテクノで、リスナーは暴れるか、さもなければ気色の悪い見せ物小屋に取り残されることになる。4曲目は......普通にクラブの午前3時にかかっていてもおかしくない。できの良いテクノ・トラックだ。5曲目は地味だが、後半になると狂気が爆発する。6曲目は......普通にクラブの午前5時にかかっていてもおかしくない。もっともポップなトラックである。リスナーはそして、メルツバウによる7曲目で再度フリーク・ショーの世界に落とされる。が、最後にはハッピーなアンビエントが待っている。DVDの映像を観るとライヴのステージ上では掃除したりアイロンかけていたりしている。たしかにこの音とヴィジュアルならフロアは笑顔で盛りあがるわ。

 そして......ジャケットのアートワークが最高。

野田 努