ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 坂本慎太郎 - ヤッホー
  2. 別冊ele-king 坂本慎太郎の世界
  3. IO ──ファースト・アルバム『Soul Long』10周年新装版が登場
  4. Reggae Bloodlines ——ルーツ時代のジャマイカ/レゲエを捉えた歴史的な写真展、入場無料で開催
  5. interview with Sleaford Mods 「ムカついているのは君だけじゃないんだよ、ダーリン」 | スリーフォード・モッズ、インタヴュー
  6. DJ Python and Physical Therapy ──〈C.E〉からDJパイソンとフィジカル・セラピーによるB2B音源が登場
  7. Columns Introduction to P-VINE CLASSICS 50
  8. Bandcamp ──バンドキャンプがAI音楽を禁止、人間のアーティストを優先
  9. Autechre ──オウテカの来日公演が決定、2026年2月に東京と大阪にて
  10. DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTS ——パンキー・レゲエ・パーティのレジェンド、ドン・レッツとマッシヴ・アタックのダディ・Gが揃って来日ツアー
  11. aus - Eau | アウス
  12. IO - Soul Long
  13. interview with bar italia バー・イタリア、最新作の背景と来日公演への意気込みを語る
  14. 野田 努
  15. Daniel Lopatin ──映画『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』のサウンドトラック、日本盤がリリース
  16. 見汐麻衣 - Turn Around | Mai Mishio
  17. interview with Ami Taf Ra 非西洋へと広がるスピリチュアル・ジャズ | アミ・タフ・ラ、インタヴュー
  18. Ken Ishii ──74分きっかりのライヴDJ公演シリーズが始動、第一回出演はケン・イシイ
  19. R.I.P マジック・アレックス,マジアレ(村松誉啓)
  20. Geese - Getting Killed | ギース

Home >  Reviews >  Album Reviews > Marsesura / Uwalmassa / Wahono- Animisme

Marsesura / Uwalmassa / Wahono

Marsesura / Uwalmassa / Wahono

Animisme

Disk

DubGamelanTechno

Ramzi

Ramzi

Pèze-Piton

12th Isle

三田格   Jun 27,2018 UP

 ジャカルタの〈DIVISI62〉とデュッセルドルフでドントDJが主宰する〈Diskant〉傘下〈DISK〉の共同リリースとなるガムラン・テクノの4曲入りコンピレーション。ドントDJはキャリアも長く、そう簡単には紹介し切れないプロデューサーで、2016年にソロでリリースしたセカンド・アルバム『Musique Acephale』ではアシッド・ハウスやテクノにガムランを融合させることで新たに注目を浴びた存在。その彼(フローリアン・マイヤー)がその時からインスピレーションを得ていたのか、その後に育まれた縁なのかはわからないけれど、インドネシアでガムランをベースにテクノをつくっている3組をまとめて紹介するのは、ごく自然な成り行きといえる。3組とも男性なのか女性なのかもよくわからんちんですが、逸早くブルックリンのレーベル〈Maddjazz Recordings〉からヒップホップ風のトラックでデビューしていたWahonoと、その WahonoがRMPと組んだMarsesura 、そして、ここでは2曲を提供しているUwalmassaの3組がそれ。ざっくり言えばWahonoとUwalmassaが中心人物なんでしょう。コンピレーションのテーマは都会のスラムとダンドゥットと呼ばれるインドネシアの音楽、そして、シラットという武術だそうです。そう言われても何もイメージできませんが。
 まずはティンバランドのチキチキにガムランとフルートを載せたMarsesuraがオープニング。

 パーカッションだけのゆっくりとした展開から呪術的なムードはばっちしで、続くUwalmassaの“Untitled 10”ともども23スキドゥー『アーバン・ガムラン』(84)を思い出すなと言う方が無理だろう。ドントDJが持ち込んだテクノやアシッド・ハウスの要素はスパッと捨て去られ、あくまでもガムランの音だけで現代的な再構築が試みられている。Bサイドに移って”Untitled 06”ではヴォイス・サンプルも用いられ、シャックルトン式のダブステップに通じるものがあると指摘する声も(なるほど)。最後のWahonoは最も音数が多く、派手に鐘の音が叩き鳴らされる。ストイックなのに快楽的というか。
 カンとベーシック・チャンネルの出会いなどと評されたドントDJのサウンドにはガムランだけでなくアフリカのリズムも聞き取れる。「Animisme」と同時に〈DISK〉からリリースされたバンボウノウ「Parametr Perkusja Ep」はむしろアフリカ寄りで、フレンチ・フライと共にパリからベース・ミュージックの担い手として登場したバンボウノウがいつの間にかアフリカとベース・ミュージックの橋渡し役になっていることに気がつかされる。とくに“Dernier Metro”が「Animisme」に勝るとも劣らないヒプノティックなミックスを聞かせ、ドントDJとの連携にも納得がいく。

 アフリカン・ビートといえば、ラムジーがやはり強力だった。ジョン・ハッセルのレヴューで触れた「ミュージック・フロム・ザ・フォース・ワールド 1983-2017」のコンパイラーでもあるファーガス・クラークがグラスゴーで主宰する〈12th Isle〉はクルー・サーヴィスやパルタなど新たな才能の集積地となりつつあるけれど、とりわけラムジーことフィービー・ギラモトーの5作目『Pèze-Piton』はアフリカン・リズムとハウスを組み合わせたものとしてはなかなか聞き応えのあるものになっていた。名前から察するにケベックのミュージシャンなのか、彼女の叩き出すビートはやはりフランスでアフロ・ハウスを先導してきたアルビノスやブラック・ゾーン・ミス・チャント(ハイ・ウルフ)を踏まえつつ、より複雑に展開させたものに聞こえるし、ふわふわとした質感には独特のものがある。

 アフリカだけでなく、ラムジーの志向はサンバをはじめとするブラジル音楽にも向いているようで、全9曲はとてもバラエティに富んだ作品性を示している(エンディングは中華風)。あるいは80年代のリジー・メルシエ・デクローを思わせる無国籍志向と呼んだ方がいいか。少し前のリリースだけど、せっかくなので併せて紹介しておきたい。
 ドイツのバレエが精神性を重んじた観念的なものに向かい、フランスのそれが官能的な性格を帯びるように、等しくワールド・ミュージックにアプローチしても、ドイツはストイックで、フランスは楽しさを手放さないという対比も興味深いところ。

三田格