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Jon Hassell

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Jon Hassell

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三田格   Jun 19,2018 UP
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 ブライアン・イーノとジョン・ハッセルの『ポッシブル・ミュージック』がリリースされて38年が経った。「アンビエント・ミュージック」のシリーズを立ち上げて、すぐにもセールス的に行き詰まったイーノが続けさまにローンチした「第4世界(Fourth World)」というラインの起点となった作品である。ジョン・ハッセルのトランペット・ドローンをメインに「エスニック・サウンドとエレクトロニクス・ミュージックをどう融合させるか」がテーマとなり、批評的には多くの媒体で年間ベストに選ばれるほど大成功を収めたものの、イーノが続いてデヴィッド・バーンとつくった『マイ・ライフ・イン・ザ・ブッシュ・オブ・ゴースト』をジョン・ハッセルが商業主義的だと批判したことでふたりはそのまま仲違いしてしまう。「フォース・ワールド」は「プリミティヴ・フューチャリズム」を標榜したジョン・ハッセル主導のコンセプトだったため、シリーズ2作目となるジョン・ハッセル名義『ドリーム・セオリー・イン・マラヤ』をもって終了となり、二度と再開されることはなかった。しかし、昨年、〈オプティモ・ミュージック〉は『ミラクル・ステップス(Miracle Steps)』と題された14曲入りのコンピレーション・アルバムをリリース。これには「ミュージック・フロム・ザ・フォース・ワールド 1983-2017(Music From The Fourth World 1983-2017)」という副題がつけられていた。「フォース・ワールド」が終了したのが1981年。その2年後から2017年まで、36年間にわたって「フォース・ワールド」は続いていたのだと主張する編集盤である。「なんとかディフィニティヴ」みたいな発想だけど、これが実に興味深かった。オープニングはメキシコのアンビエント作家、ホルヘ・レィエスによる“Plight”(96)で、彼が得意としてきた厳かなダウンテンポでしっとりとスタート。続いてロバート・A・A・ロウとエリアル・カルマが〈リヴェンジ・インターナショナル〉の新旧コラボ・シリーズに登場した“Mille Voix“(15)やグラスゴーの新人で〈オプティモ・ミュージック〉からデビューしたイオナ・フォーチューン、ポスト・インダストリアルのオ・ユキ・コンジュゲイト、あるいはデヴィッド・カニンガムやリチャード・ホロヴィッツといった〈クラムド・ディスク〉勢にラプーンと続き、全体にやや重怠くまとめられている。〈オプティモ・ミュージック〉らしい歴史の作り方である。

 『ミラクル・ステップス(Miracle Steps)』にはハッセル自身が86年リリースの『パワー・スポット』に収めていた「Miracle Steps」も再録され、これがコンピレーションのタイトルにもなっている。そして、このことがきっかけとなったのか、〈ECM〉からの『Last Night The Moon Came Dropping Its Clothes In The Street』以来、9年ぶりとなるハッセルの新作『Listening To Pictures』がこのほどリリースされた。どうやら純然たる新作のようで、81歳になって〈ワープ〉傘下に新たなレーベルを立ち上げたものだという。演奏スタイルも、これまでのバンド形式からスタジオでミックスを繰り返すなど『ポッシブル・ミュージック』と同じ方式に回帰し、もしかするとクレジットはされていないけれど、ブライアン・イーノが参加しているのではないかという憶測も飛び交っている(だいぶ前に和解はしたらしい)。一応、演奏はギターにリック・コックス、ドラムにジョン・フォン・セゲム、ヴァイオリンにヒュー・マーシュが柱となり、エレクトロニクスにはミシェル・レドルフィを起用。ミックスマスター・モリスにサンプリングされ尽くした水の音楽家で、最近になってデビュー作が〈エディション・メゴ〉から復刻されたミュジーク・コンクレートの重鎮的存在である。また、ドラム・プログラムにはダブステップのベース・クレフからラルフ・カンバーズの名も。これまでライ・クーダーと組んだり、アラブ音楽に接近したりと、それなりに多種多様なアプローチを重ねてきたものとは違い、やはり音響工作の面白さが前面に出ていて、海外のレヴューでOPNを引き合いに出していた人が何人かいたのもなるほど。言われてみるまでそうは聞こえなかったけれど。

 オープニングから意表をついている。コード進行がある(笑)。わかりやすいジャズみたいだし、それがだんだんとドローンに飲み込まれていく。“Dreaming”は見事な導入部をなし、続いてダブステップを意識したような“Picnic”へ。接触音の多用はアルヴァ・ノトを思わせ、ノイズとピアノのオブスキュアなアンサンブルへと連れ去られる。アフリカン・ドラムを駆使した“Slipstream”は『ポッシブル・ミュージック』を坂本龍一が『B2ユニット』風にリミックスしたようで、同じく“Al-Kongo Udu”もノイジーな音処理はダブステップ以降のレイヤー化された美意識を優先させたものだろう。ジュークを思わせる”Pastorale Vassant”は……たしかにOPNっぽいかもしれない。“Manga Scene(マンガ・シーン?)”ではテリー・ライリーのオルガン・ドローンが原型をとどめずに流れ出すなかをムード・ジャズ風のトランペット・ソロが響き……いや、これが本当にジョン・ハッセルなんだろうか。連続性はもちろんあるんだけれども、ここまで変貌できるとはやはり驚きである。プロデュースもジョン・ハッセル本人なんですよ。『絵を聴け』と題されたアート・ワークはマイルス・デイヴィスの『ビッチズ・ブリュー』や自身の初期作を飾ったマティ・クラーワインの手になるものだそうです。

三田格