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Say She She

DiscoSoul

Say She She

Silver

Karma Chief/Pヴァイン

木津毅 Dec 13,2023 UP

 これだけ世界情勢が荒れるなかにあって、当たり前に多様な文化が混ざっている音楽を聴くと胸が温かくなる。ブルックリンのディスコ・ソウル・バンド、セイ・シー・シーが奏でているのは洒落たパーティにピッタリのダンス・ミュージックで、その会場には多彩なバックグラウンドを持ったひとたちが集まっているのが想像できる。
 実際、セイ・シー・シーのフロントに立つ女性シンガー3人は人種的にもバックグラウンド的にもバラバラだが、彼女たちが生み出す清々しいハーモニーがバンドの最大の売りになっている。チカーノ・バットマンの元バッキング・シンガーでありニューヨークのファンク・バンドであるエル・ミシェルズ・アフェアのゲスト・シンガーも務めていたピヤ・マリク、元79.5のナイア・ガゼル・ブラウン、サブリナ・ミレオ・カニンガムによる掛け合いを聴いているだけで楽しいのだ。バンドのアンサンブルはヴィンテージなソウルやファンクを感じさせつつ、ドリーム・ポップやインディ・ロックに通じる軽さもある。本人たちはロータリー・コネクション、リキッド・リキッド、グレイス・ジョーンズ、トム・トム・クラブといった7、80年代に活躍したアーティストからの影響を公言しているそうだが、ジ・インターネットカインドネスクルアンビンといった10年代以降のインディとクロスオーヴァーするR&B/ソウル、ファンク・アクトが好きなひとも気に入るサウンドだと思う。

 本作は熱い注目を集めた2022年のデビュー作『Prism』につづく2枚めで、おもにリモートでの制作だったという前作に比べてぐっとバンド感が強まったアルバムに仕上がっている。シンガーの3人が先導しつつ手練れのプレイヤーとスタジオに入って制作されたとのことで、いっしょに演奏することの楽しさを記録するように曲数も倍増し、何より曲調のヴァラエティが広がった。現在はLAのファンク・バンドであるオレゴンのメンバーを含む7人編成となっており、バンドとして本格的なスタートを切ったアルバムと言っていいのではないだろうか。きらびやかなシンセ・ファンク “Reeling” のオープニングから、メロウなソウル・チューンの “Don’t You Dare Stop” や涼しげな “Astral Plane”、そしてベースが自然と腰を揺らすパーティ・ディスコ・ナンバー “C’est Si Bon” と、とにかく気持ちよさそうにアルバムは進んでいく。アナログ・テープによるレコーディングにこだわったらしくノスタルジックな風合いもあるが、本人たちのエネルギーが溌溂としていて後ろ向きな印象を受けない。
 そこにはおもにふたつの理由があると思う。まずひとつは、インド系のマリクのルーツに通じるような非西洋の音楽の要素がそこここに現れてスパイスになっていること。とくにサイケ・ロックと南アジアの旋律と70年代ファンクを混ぜたような “Bleeding Heart” はアルバムのなかでも目立って個性的な楽曲で、現代に向けてマルチ・カルチュラルな音楽を鳴らそうとする意思を感じさせる。
 もうひとつは現代の女性であることをテーマにしている点で、これはセイ・シー・シーの音楽の魅力と直結している。つまりこれは、いまを生きる女性たちの重なる声なのだ。若い女性を見くびる中年男をコケにする “Entry Level” や中絶の権利を訴える “NORMA” など今日的なフェミニズムと連動する曲があるのだが、それがパーティ・チューンとして鳴らされていることがとても大切だ。ジャネール・モネイスーダン・アーカイヴスらによるある種のシスターフッドを示す音楽は、サウンド自体が楽しいことで社会変革をアップリフティングなものとして表現している。現代の女性のひとつの闘い方である。そしてセイ・シー・シーの3人は声を揃えて宣言する――「We won't go back」、つまり、わたしたちは前に進むと(“NORMA”)。

 それにしても、タイトル・トラックにしてクロージングの “Silver” はひときわ心地いい。軽やかなドラミングとファンキーなベース、ドリーミーなシンセと戯れる清涼な歌声。基本的に、世界に対して心を開こうと聴き手を誘う音楽なのだ。こんなときこそ、パーティ・ミュージックに合わせて身体を揺らさなければ。

木津毅