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Politics

都知事選直前座談会

都知事選直前座談会

「今回の都知事選、どう見ればいいか」

2020年6月30日(火曜)12時~

望月衣塑子(東京新聞記者)
水越真紀(ライター)
野田努(ele-king編集長)
土田修(ジャーナリスト)
Jul 03,2020 UP

■野党一本化に失敗

土田 今回の東京都知事選では、れいわ新選組の山本太郎さんの出馬が話題をさらいました。早々と出馬を表明していた弁護士の宇都宮健児さんと政策が似通っているだけに「野党共闘は組んで一本化できなかったのか?」と残念がる声も聞こえてきました。

望月 実は、ある党の調査でも、野党候補を一本化しても現職都知事の小池百合子さんにダブルスコアで負けてしまうという調査結果が出たと聞きました。「そこまで小池さんは強いのか」と野党の幹部は意気消沈してしまったそうです。山本さんが記者会見で話をしたように、それでも次期衆院選に向けて、野党の候補一本化は必要ですから、山本さんと協議はしていたようです。でも山本さんは、自分が野党統一候補として出る場合には「消費税5%減税」を明文化し、確認団体を「れいわ東京」とすることを要望したようですが、国民民主党はその要望を呑んだものの、最終的には、立憲民主党が踏み切れなかったという流れがあったと聞きました。
 今回、宇都宮さんと山本さんのお2人が出たことで、選挙戦は小池さんが圧勝との予測が流れる中で、野党での主導権争いもテーマになっている様相です。山本さんとして野党が戦わないと無党派層の掘り起こしができないと踏んでいるのでしょう。安倍政権の支持率は下がっても、自民党の支持率は下がらない現状では、野党支持者ではない無党派層を掘り起こしていきたいという思いがあったのではないかと思います。
 山本さんの出馬によってリベラルの分裂、という側面は確かにありますが、一方で、リベラル陣営の本気度も増しており、都知事選はテレビでは討論会をしていませんが、ネットなどでの論戦は面白くなりました。過去22人の立候補者という点も含めて、多種多様な候補者が出ています。ネット世代の若者の投票率が上がることを願います。山本さんの演説力には人を惹きつける力がありますし、宇都宮さんの立憲民主・社民・共産の共闘も山本さんには負けられないと総動員体制で臨み、山本さんとの差異化をはかり、応援にも力が入っているように見えます。
 コロナ感染がやや拡大している中で、都知事選はどうなっているのかとチェックしようという機運も出てきていますし、選挙を盛り上げて投票率を上げるという意味では、小池さんが強くても、山本さんが出馬したことで政策論議が選挙戦の中で切磋琢磨されているようにも思います。懸念されるのは、都知事選後の野党共闘の枠組みがどうなるのかという点だと思いますが、都知事選の結果を見ながら野党の中での共闘の枠組みや論議がまた進むことを願います。

水越 山本さんが立候補した時には戸惑いましたが、左派の経済政策を語る候補が2人もいる都知事選挙なんて初めての経験で、長いこと右に移動し続けてきた「中心線」が、この選挙戦で多少とも元に戻っているのではと私も感じています。極端な左右がかみ合わないまま対決するのも選挙として面白くありませんが、もっと悪いのは中道同士でどっちがなっても似たようなもの、「今回は鼻をつまんで投票しましょう」と、左派は何度も言われてきました。今回は、街頭スピーチをネットで見たり、少ないですが討論会も見て、私も今では2人の立候補はいいと思うようになっています。

■開催されないテレビ討論会

土田 小池さんは強いにしても、山本さんと宇都宮さんのどちらが票数で上回るかによって今後の野党内の主導権争いに影響を与えませんか?

望月 山本さんの狙いは恐らく、消費税減税さえ一致する方向を見いだせない立憲民主に対して立場を明確にする意味でのジャブを放つことだったのではないでしょうか。今回、山本さんの支援に入った立憲民主の須藤元気さんは離党届を出していますが、まだ認められていないようです。立憲民主を離党した山尾志桜里さんは、国民民主に移りました。今後、立憲民主が山本さんとどう折り合いをつけていくのか、もしくはいかないのかということも含めて、今後注目していかなければなりません。
 政治学者の中島岳志さんは、選挙の時に有権者が熱狂するのは、政治家がひとつの物語を作っていくことだと指摘していました。そういう物語のある野党を作り、その魅力を打ち出していくことが必要なのではないでしょうか。小泉元首相が「自民党をぶっ壊す」と言って選挙で圧勝したように、ひとつの物語の中に有権者を取り込んでいく。都知事選後の野党再編では、内輪の論理で考えるのではなく、野党の中での物語をどう有権者に見せていけるかという視点をもっと掘り下げていく必要があるのではないかと思います。

野田 コロナの時代で特に重要な都知事選にもかかわらず、テレビは討論会をやらないようですね?

望月 信じ難い対応ですね。小池陣営は、コロナ禍での会見は別として、討論会にはなるべく出ないという方向でやっているようにも見えます。6月27日にネット番組である「Choose Life Project」のオンライン討論会には小池さんは出ましたが、ネットですから視聴者は多かったとはいえ2、3万人でした。1%の視聴率で100万人が見るといわれているテレビのように、多くの有権者に見られているわけではありません。
 小池さんが強いのは、女性の都知事ということで、公明はもちろん、立憲民主から共産まで幅広く支持者がいるという点にあります。小池さんには「カイロ大卒業」を含めて学歴詐称の疑惑も出ましたが、各社の出口調査の分析などを見ると、さほど有権者の判断に影響を与えていないようにも見えます。小池さんは討論会には参加せず、コロナ会見を重視することで、政治的なアピール、メリットを享受しているのではないでしょうか。
 オンライン討論会では、関東大震災の朝鮮人虐殺についての追悼文の送付を取りやめたことについて重ねて司会者に質問されていましたが、なぜ、送付を取りやめたかについては明確な答弁を避けていました。追悼文送付の取りやめは、小池さんの歴史修正主義的な側面を理解する意味ではもっと追及されるべきテーマだと思っています。コロナ禍は最重要事項であることに変わりはないですが、1400万都民のトップに立つ知事を決める重要な選挙なのですから、小池さんには逃げずに政策論争を通じて有権者に判断材料を提供するようネットをはじめ、NHKや民放テレビ各局でも討論会を開催してほしいと思います。

■政府との違いを演出した小池知事

望月 東京新聞、共同通信、東京MXテレビ3社の世論調査(6月30日付け東京新聞朝刊で掲載)で、都のコロナ対策「評価」7割、小池都政「評価」8割、東京五輪は「見直し」「再延期」「中止」と微妙に分かれていました。小池さんがどうのというより、都の政策は国に比べればまだマシ、よくやっている方ではないかという相対的な評価があるとも思います。首相と小池さんの会見を比較すると圧倒的に小池さんの方が、答弁が饒舌で、その場での切り返しもうまいと思います。
 一方、都職員の意見が反映されている「都政新報」によると、都職員からの評価は低く、「再選出馬」への賛成が21.5%しかありません。なのに、世論調査で「都政を評価する」が7割もあるのは、「小池アラート」のパフォーマンスや記者会見での発信を含め、「よく仕事をやってくれているのでは」という高評価に結びついているのかもしれません。
 国が減収世帯に30万円給付と言っていたのに、公明党の要請で一律10万円給付に切り替わるなど官邸の方針が揺れている最中に、都は感染拡大防止の協力金を出すとか、都独自の方針を出していました。私がびっくりしたのは「ネットカフェ難民をどうするのか?」という記者の質問に、ネットカフェ難民用のホテル費用など12億円を「これから予算で計上します」と迅速な予算対応を発表していました。しかし、後日、報道を見ていると、この都が提供したホテルは土日が過ぎると、追い出されたというネットカフェ難民が出てくるなど、実際、どこまでネットカフェ難民対策を本気で考えているのかが見えないような点もありました。

水越 そうですよね。私の周囲でも協力金の気前の良さで「小池さんは意外に良いのではないか」とそれまでの見方を変えた人がけっこういました。あの時の印象がなんとなくずっと残っているんでしょうね。

望月 東京オリンピックについてですが、官邸と恐らく示し合わせて「100%完全な形で実施する」と3月中旬までかなり強いトーンで言っていました。実はその最中の週末に感染爆発が起こりそうでしたが、その週は自粛要請も含めて何もせずに、翌週、IOC委員会で「見送り論が浮上」という報道が出た直後に、いきなりロックダウンとか、オーバーシュートが起こりうるということを官邸より早く大々的に言い出しました。ある意味、巧みだなと思いました。IOCの方向性が見えた瞬間に得意の横文字を使って、安倍首相よりも早く注意喚起を都知事として打ち出す小池さんは意図的に「私は官邸とは違う」というイメージを出したようにも見えます。官邸はやるつもりもなかった「ロックダウン」という言葉を使われたことに大激怒していたとも聞きました。
 今回の都知事選では、自民党の支援を断っており、一定の距離があるようにも見えます。この点、自民党の都連側も小池さんへの一定の警戒感はいまだに持っているようにも思えます。都知事選を糧にして9月解散と言われている衆議院選で、小池さんが何かをまた仕掛けてくるのではないかという警戒もあるのかもしれません。

■次期衆院選を見通す維新

土田 今回の都知事選は今後の国政にどのように影響しますか?

望月 野党が分裂している状況の中でどこが伸びてくるのかが問題です。9月に解散があった場合、テレビに出ずっぱりの大阪府の吉村洋文知事が、東京も含めて全国を走り回って運動したとすると、前回の総選挙を上回る形で、日本維新の会が伸びて立憲民主党に競り勝つ選挙区も出てくる可能性があります。政府からすると、自民が負けても、維新が勝てば、自公維という連立や閣外協力を組むことになるかもしれません。これは自公よりも右寄りで歯止めが効かない政権ができる懸念があります。前の国会で検察庁法改正案を含めて維新はほとんど賛成でしたし。

水越 そんなことになったらすごく怖いですね。トランプ並みの稚拙な右派ポピュリズム政治になるでしょう。大阪のコロナ対策も、それ以外の大阪維新の政策も東京には詳しく伝わっていないと思いますが、全国的にもっと知られる必要がありますね。

土田 今回の都知事選で小野さんが維新の推薦を受けて出馬したのは、次の衆院選を見すえてのことだろうと思います。維新は大阪では圧倒的に強いですが、今回、東京でどれくらいの票が取れるのか、リトマス試験紙のつもりではないでしょうか?

望月 昨年7月の参院選挙東京選挙区で、維新の音喜多駿さんが立憲民主の山岸一生さんに競り勝っていますし、神奈川でも維新が立憲民主を落とした選挙区がありました。想像以上に維新は関東でも浸透しつつあります。政治経済評論家の古賀茂明さんは、立憲民主やれいわに必要なのは、バラマキだけでなく、改革路線の方向性も打ち出すことだと指摘していました。その点、維新の推薦を受けた元熊本副知事の小野泰輔さんは、天下りの見直しということを掲げていました。改革路線を意識した政策なのでしょう。

土田 都はコロナ対策として1兆円以上を投入し、都の貯金にあたる「財政調整基金」が9300億円余から500億円余に減ったと言っています。山本さんは都債(地方債)の発行で総額15兆円を調達できると主張し、街頭演説でも聴衆にインパクトを与えています。これに煽られるように宇都宮陣営も告示後になって、コロナ対策の財源を具体的に示しました。それは、まず財調基金の残額5百億円に特定目的基金などを合わせて1兆円、そして外環道など不要不朽の大型道路の建設を先送りして1兆円です。そして、やはり地方債の活用にも踏み込み、公共施設の建て替え費用を都債に振り替えることで1兆円の予算を生み出すということで、結局、計3兆円を捻出するという内容でした。山本さんの総額15兆円に触発されて、現実的な政策案として打ち出してきたようです。
 都債で捻出したコロナ対策費の使い道についても山本さんは具体的に考えています。まず、都民全員に10万円を給付し、中小・零細、個人経営、フリーランスにほぼ無審査で各100万円ずつ給付します。次に、学校の授業料を1年間無料にします。それで数兆円。その後、第2波、第3波が来た場合にさらに数兆円と、何回かに分けて総額15兆円ということです。だから第2波や第3波が来なければ5、6兆円とか7、8兆円で済むかもしれないとも言っています。

望月 政府の打ち出した経済対策は総額108兆円規模で、安倍首相は「過去にない強大な規模」だと説明しましたが、国が新たに支出する一般会計補正予算は16兆7000億円規模でした。“真水” が17兆円規模でしたから、山本さんの総額15兆円は国の経済対策とあまり変わりません。一方、小池さんが言っているように将来、都民税がどれだけのしかかってくるのかという懸念があるのも確かです。小野さんも「15兆円はさすがにどうかと思うが、自分が知事になったら緊急時には、都債の発行は検討材料のひとつだ」と言っていました。

水越 選挙でこうした政策がここまで現実的に語られるのは過去にはあまりなかった珍しいことだと思います。これは経済左派の2人がライバルとしているからだと思います。例えば冷戦期、社会主義国がいたからこそ、資本主義国の福祉政策はあそこまで進んだと私は考えています。日本の政治でも大きな社会党があったからこそ、もっと言えば都知事の美濃部亮吉さん(在任期間1967年~1979年)がいたからこそ、自民党は福祉に力を入れたわけですよね。

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