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Francis Bebey

Francis Bebey

African Electronic Music 1975-1982

Born Bad

BLNRB

BLNRB

Welcome to the Madhouse

Out Here

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三田 格   Jan 06,2012 UP

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 年末ギリギリのリリース......というやつです。そういえば2011年は誰も別れ際に「よいお年を」と言いませんねー。空々しい感じがするんでしょうかねー。

 こんな人がいたとは全然知りませんでしたが、マヌ・ディバンゴの次世代にあたり、カメルーンからヨーロッパに渡ったアフリカ系ギタリストのコンピレイション盤。75年から88年にかけて20枚のアルバムを残し(2000年にも1枚プラス)、前半期にあたる82年までの音源から14曲が選ばれている(ジャケットはセカンド・アルバム『ラ・コンディシオン・マスクリーヌ』と同じ)。タイトル通り、エレクトロニクスが強調されている曲は前半とエンディングに近い数曲で、中盤はいわゆるアフリカン・ポップスとして耳に馴染みのあるパターンも少なくない。そのアレンジに関しても、いわゆるニューウェイヴがワールド・ミュージックを取り入れたパターンを想起させ、タイミング的にはファン・ボーイ・スリーやトーキング・ヘッズよりも早い時期に録音されていたことがわかる。ライナーによるとフランス語圏ではかなりのヒット・メイカーだったらしく、ある日、彼が学校から帰ると居間にオルガンが置かれていたことから、一直線に音楽人生を歩み始めたという。初めて聴いたオルガンの音をベベイは「ビザーレ」に感じたと語り、多重録音をメインに、「サヴァンナ・ジョージア」などでは、なるほどアメリカにモーグ・シンセサイザーの音がもたらされた時とほとんど同じ気分が表現されている。

「時間を超えた」というチープなキャッチそのままのコンピレイションは、彼のアルバムのなかでももっとも高値をつけている『ニュー・トラック』(82)のタイトル・トラックにはじまり、カリンバやシンセサイザーの区別もつかないまま、ドラム・マシーンにストリングスを被せた"ラ・コンディシオン・マスクリーヌ"やセニョール・ココナツのデモ・テープに聴こえてしまう"ウーマ・テ"など4曲続けて76年の曲を配置する。"フルアー・トロピカーレ"ではリズム・ボックスとアフリカン・チャントの組み合わせが完全に時間の感覚を狂わせる。79年以降のエントリーは機材の扱いに慣れてきたようで、「ビザーレ」感もかなり薄まり、同時期のZEレコーズと同質のキッチュなムードが醸し出されていく(この時期のものが中古市場では最も安い)。アーサー・ベイカーやトッド・テリーを思わせる"キャッチング・アップ"からファースト・アルバムへと曲は回帰し、後半はなんとも言いがたいモンド風の曲構成へと変わっていく。どれもプリ-ハウス的というか、マルカム・マクラーレンが『ダック・ロック」で取り入れていたムバカンガにも通じるところがあり、シカゴじゃなくてもハウス・ミュージックは(フォーマット的には)生まれる可能性はあったんだなーと思う反面、アメリカという国には新しい音楽をカタチにするパワーがあるんだろうなーということにも思い当たる。

 この時期の音楽をジャンルレスに浴びるほど聴いている人でなければ面白さは半減かもしれない。そうとは言い切れないけれど、そのような条件が満たされているリスナーにはスルメのような体験になることは請け合いのアルバムです。リミックス・アルバムがつくられることも期待したい感じ。

 アフリカと西洋音楽の出会いといえば、この数年、〈クラムド・ディスク〉がコノノNo.1やスタッフ・ベンダ・ビリリといったところを発掘し続けるコンゴにデーモン・アルバーンがダブステップのプロデューサーを大挙して引きつれていったDRCミュージック(エレキングVol.4参照)が話題性でも音楽性の高さでも2011年の筆頭といえる。が、しかし、同じダブステップ周辺でも、それより2年も前からベルリンのプロデューサーたちが同じようにしてケニアを訪れ、ナイロビのクラブ系ミュージシャンたちとつくりあげたBLNRB(ベルリンナイロビ)のことは広く知られていないし、僕もライナーノーツに記された交流の記録以外は何もわかっていない。まずはタイヒマン兄弟がナイロビにDJとして呼ばれ、これにロボット・コッチの母体であるジャクージとモードセレクターが加わってナイロビでレコーディングが続けられ、ある程度、完成を見たところで、今度はナイロビのミュージシャンたちがベルリンに訪れてコンサートを行ったという経過があっさりと書かれているのみである。できあがったものを比較すると、ダブステップの本家であるDRCミュージックにはオリジナリティの点ではやはり突出しているものがあると思うものの、BLNRBは同じ現地のミュージシャンでもクラブ系のミュージシャンたちとコラボレイトしているために、ポイントがもっとはっきりしているともいえる。モードセレクターのレーベルからシングル・カットされた"モンキーフリップ"のキャッチーさや、ドイツならではの重いリズムにナイロビのフローが拮抗しようとする"ンソト・ミリオンズ"などクラブ・ミュージックとしてのオリジナリティには事欠かないし、ネセサリー・ノイズ(必要な雑音)という女性ふたりのラップ・ユニットがジャクージやモードセレクターなど組む相手を変える度に違う味を出している辺りもお見事といえる。ちなみにネセサリー・ノイズはしばらく解散状態にあったものが、このプロジェクトを通してデュオとして復活し、同じくモードセレクターも(国内盤のライナーノーツでは何も触れられていないけれど)長い停滞から脱出するきっかけを掴んだことは想像に難くない。個人的にはジャクージがプロデュースした7曲のほうが好みではあるけれど(http://www.dommune.com/ele-king/review/album/002085/)。

 ケニアといえば、現在はフラッシュ・ロブとして定着を見ているロンドン型の暴動が早くも2008年に起きた国でもある。当時の報道ではルワンダと同じく部族対立で片付けられていたけれど、実際には急速な経済成長のなかで分配機能が無視され、格差社会に抗議する若者たちが年長者に襲い掛かり、かなりな死傷者を出したことがいまとなっては知られている。ベルリン勢がナイロビを訪れたのはその翌年にあたるというのは、驚くべきタイミングである。

三田 格