MOST READ

  1. Run The Jewelsラン・ザ・ジュエルズは何がすごいのか (interviews)
  2. Arca - Arca (review)
  3. interview with YungGucciMane宇宙を渡るヤンググッチメン──インタヴュー (interviews)
  4. Big Boi──アウトキャストのビッグ・ボーイの新曲が大変なことに! なんと初音ミクが (news)
  5. ブレイディみかこ──新刊『いまモリッシーを聴くということ』、いよいよ刊行します! (news)
  6. DUB SQUAD──なんと16年ぶりの活動再開! 新作『MIRAGE』の全貌を確認せよ (news)
  7. リヴァイヴァルじゃないのだ。 - ──行かないと何かを逃すかもしれない、DYGL(デイグロー)・ジャパン・ツアーは明日から! (news)
  8. yahyel - ──この一風変わった名前のバンドをきみはもう知っているか? ヤイエルが500枚限定の初CD作品をリリース (news)
  9. Dasychira - Immolated (review)
  10. R.I.P. Mika Vainioミカ・ヴァイニオ、追悼。 (news)
  11. interview with IO - KoolBoyの美学 (interviews)
  12. Mikako Brady × Tsutomu Noda──ブレイディみかこ×野田努「UKは壊れたようで壊れていない――愛と幻想の雑談」 (news)
  13. 坂本龍一 - async (review)
  14. Smagghe & Cross - MA (review)
  15. interview with Purity Ringピュリティ・リング来日特別インタヴュー (interviews)
  16. Columns 永遠の「今」──ジャジューカを求めて (columns)
  17. interview with Clarkいまこそテクノに肉体を (interviews)
  18. interview with YURUFUWA GANGゆるふわギャングがぶっ壊しにキタ! (interviews)
  19. special talk : BES × senninshou特別対談:BES×仙人掌 (interviews)
  20. Wolf Eyes - Undertow (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Clap! Clap!- A Thousant Skies

Album Reviews

Clap! Clap!

AfroAmbientElectronicHouseJazzJuke

Clap! Clap!

A Thousant Skies

Black Acre/Pヴァイン

Amazon

野田努   Feb 20,2017 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加
E王

 1990年、デリック・メイが「ザ・ビギニング」というシングルを出したとき、まさかそれが本当に「はじまり」だったなんて誰も信じちゃいなかった。ぼくもそうだった。『ブラック・マシン・ミュージック』を書いているときもまったく予想できなかったな。ドラム・マシンが、いずれはその多くが、アフリカのリズムすなわちパーカッションをプログラムされるようになるとはね。
 イタリア人ジャズ・ミュージシャン、クラップ!クラップ!は、ビートの蒐集家にしてアフリカン・パーカッション&アフリカ楽器の魅力ある音色の混合者、かつファンタジーの語り部である。彼は、ブリストルのレーベル〈ブラック・エイカー〉からの数枚のシングルにおいて、ベース+ジュークつまりハウスよりもテンポが速めの、電子音によるシャンガーン的アフリカン・パーカッションというコンビネーションの妙技を披露し、脚光を浴びた。
 そして、2014年のファースト・アルバム『タイー・ベッバ』では、リズムにさらに自由度を与え、ゆるめの曲も交えながら全体をある種ファンタジーに変換した。それはネガティヴな小林の精神を照らす光となり、現実からの逃避を手助けし、深夜帰りの病んだ気持ちに優しく作用したのである。ゆえに『タイー・ベッバ』は、アナログ盤のみのリリースだったのに関わらず評判となり、高まるニーズに応えるべく日本ではCD化され、クラブ系では近年のベストセラーの1枚となった……どころの騒ぎではない。ポール・サイモンの2016年のソロ・アルバムにトラックを提供するまでに至った。(ポール・サイモンはその昔『グレイスランド』で南アフリカのレディスミス・ブラック・マンバーゾを起用したぐらいで、それを考えれば……という向きもあるが、にしてもこれは限定で発表されたような真性のアンダーグラウンド・ミュージックなわけで)

 本作『ア・サウザント・スカイズ』はセカンドであり、大躍進後の最初のアルバムだ。前作同様、別の時間軸からの音楽であり、寒々しくも荒廃した世界の住人の心を温める音楽、夢への旅立ちを助ける音楽ではあるが、前作よりもぐっと洗練された作品となった。間口は広がり、ひと言で言えば聴きやすいアルバムだ。いくつか曲名を挙げるなら、“Hope”なる曲ではポップ・センスを、“Ode To The Pleiades”ではエレガントなダウンテンポを、“Lunar Ensemble”ではアフロ・ハウス・フュージョンとも呼べる展開を見せている。完成度は確実に上がっている。
 CDには各曲に付けられた物語が記されている。宇宙の神話、ひとりの女性の夢とアフリカの往復──そのファンタジーは、希望がことごとく揉み消されるこの現実への抵抗の表れであろう。重力も忘れて、この音楽に身を委ねることで現実の惨さを忘れることは、音楽ファン冥利につきる。なお、2曲目にフィーチャーされているボンゲジウェ・マバンドラは、日本盤リリース&来日もある南アフリカのシンガー・ソングライター。ほかはよくわかりませんので、わかり次第追って報告したいと思います。

野田努

RELATED

Clap! Clap!- Tayi Bebba Black Acre/Pヴァイン

Reviews Amazon