Home > Interviews > intervew with Atjazz - 特別対談:赤塚りえ子×アットジャズ
■そういえば、マーティンに初めて会った時に、グラストンベリーでジ・オーブを聴いたときに思いっきりぶっ飛んだって話を聞いたんだよね(笑)。
マーティン:オー、そんな話よく覚えてるね! ちょうどアンビエント系の音楽にハマっていた頃で、当時僕は19歳だった。3年ぐらいアンビエントにハマっていた時期があったね。
■ちなみに、その後のダービーのシーンはどういう感じなの? 新しい世代は出てきてるの?
マーティン:いや、難しいところだね。ノダがいま再びダービーに来たら、ずいぶん寂しくなったと感じるかもしれないね。いくつかのクラブはなくなってしまったし。
■でもマーティンはいまだに〈インナーヴィジョンズ〉とかから積極的にリリースしているじゃない?
マーティン:でもいまはシーン自体はそんなに活気があるとは思えないな。新しいジャンルやサウンドはたしかに出てきているけれど、当時に比べるとシーンは全然エキサイティングなものじゃないね。いまのテクノロジーを使えば誰でもある程度の音楽は作れるようになった。でも同時に似たような音楽ばかりが氾濫する結果になってしまっているような気がする。テクノもハウスもヒップホップも似たようなものばかりだ。
■まあ、逆に言えば、当時のUKが活気があり過ぎたとも言えるのかもしれなしね。
マーティン:ほんとその通りだと思うよ。いろいろな理由があるかもしれないけれど、当時に比べて、どういうわけか音楽から得られる感動が減ってきたような気がする。ともかくダービーではアンダーグラウンドな音楽を売ったり、聴けたりする場所はなくなってしまった。
赤塚:みんなダウンロードしているのかな?
マーティン:イギリスではほとんどの人がダウンロードに移行しているね。しかも多くの人が違法ダウンロードにより、無料で音楽を手に入れているのが実状だよ。
■そりゃあ大変だ。
マーティン:いまやイギリス人の音楽に対するモラルはかなり希薄なものになってきたね。
■ふむ。でもイギリスがそうなってしまたっら悲しいなあ。......そういえば、マーティンは『天才バカボン』をもう読んだの?
マーティン:いや、実はまだコミックは読んだことがないんだ。でもとくに日本に来て、いろいろなところでキャラクターを見かけてビックリしているよ。本当に有名なキャラクターなんだって実感してる。
■マーティンは『天才バカボン』をジャケットに使用している世界でも唯一のハウス・プロデューサーだもんね。
マーティン:偉大なお父様の作品をジャケットに使わせてもらって、本当に光栄に思っているよ。
赤塚:こちらこそ、ありがとう。
■リッキーの親父さんって、イギリスで言えば、ジョージ・ベスト並の知名度だからね。
マーティン:すごいね......。
■しかし世界で唯一の『天才バカボン』のジャケットが、マーティンだっていうのが、なんともいい話だなって思って。
赤塚:あははは、そうだね。
■でもさ、アットジャズと言えば大の飛行機嫌いじゃない。その当時、リッキーがアットジャズという名のものすごいDJがいるから日本に呼びたいんだけど、彼は飛行機が嫌いらしくて実現できないかもしれないって悔しがっていたくらいだもんね。それがなんでいま。軽々と目の前にいるのかって(笑)。
マーティン:いまでも飛行機は大嫌いだよ。13時間、ずっと寝てきたんだ。
赤塚:本当によく来れたよね。いま日本でこうやってマーティンと会えていること自体、奇跡みたいで本当に嬉しい。初来日だもんね。
■いまイギリスでDIYみたいなフリーレイヴはあるの?
マーティン:本当に稀に、1年に1度くらいはあるね。
■どのくらいの人が集まるの?
マーティン:200人前後かな。
■ダービー・ポッセはどうなったの?
マーティン:いまはバラバラだね。活動期間は13年間だったかな。アンディはベルリンから帰ってきていまはマンチェスターに住んでいるよ。〈マンティス・レコード〉のような小さなインディ・レーベルにとっては厳しい時代になってきたから、いまだ解散したままだね。
■13年もやっていたんだね。
赤塚:すごいことだよ。
■実はね、自分でDJをするときは、いまだに必ず〈マンティス・レコード〉のレコードをプレイするんだよ。リッキーがレコードをくれたからね。年末のパーティでもかけたよ。
マーティン:嬉しいね。
■じゃあ......、最後にマーティンに前向きな発言をして締めて欲しいね。嘘でもいいから、前向きな(笑)!
マーティン:時代は変わっても、ハウス・ミュージックは必ず残って受け継がれていくと確信しているよ。音楽はハートで感るもの、そういう音楽の感じ方、楽しみ方は、絶対になくならないよ。
■昔、マーティンにダービー仕込みのハウスのダンスの仕方を伝授させられたんだ。
赤塚:そうそう、鶏に餌をまくようなダンスでしょ(笑)!
マーティン:だははは!
ちなみにアットジャズは、現在のところ3枚のアルバムと1枚のリミックス・アルバムを出している。最新作は、2008年に〈マンティス〉レーベルから出た『Full Circle 』。とても素敵なジャジー・ハウスで、1曲、ロバート・オウェンスが歌っている。また最近は自分のレーベル〈Atjazz〉もはじめている。
https://www.atjazz.co.uk/
司会:野田 努(2010年2月08日)