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Interviews > interview with Gold Panda - セックスと同じでやっているときが興奮するんだ。
終わったらもうどうもいい、そんな感じだよ。
ハハハハ。じゃ、あなたと日本との結びつきについて話してもらえますか?
パンダ:最初はアニメだった。15歳のとき、『アキラ』が大好きだったんだ。ストリート・ファイターも好きだったし、どんどん日本の文化にのめり込んでいった。日本のヴィデオ・ゲームも集めはじめたんだけど、イギリスではホントに高くて、ひとつ100ポンドもする。それでも僕は日本の文化にハマっていったんだ。で、19歳のときに、僕は思いきって東京に行った。ちょうどフィルという友だちが東京に住んでいて......サブヘッドという名前で活動していたんだけど。
フィル? えー!!! マジですか!!! びっくり。そうかー、それでわかった。アルバムのなかに何で"マユリ"って曲があるのか。質問するつもりだったんだけど。(注:フィルはマユリちゃんの元彼氏で、フィルは彼女の家に住んでいた)
パンダ:そうだよ。まさにそのとき川崎のマユリの家に泊まったんだ。観光客みたいにお金があるわけじゃないから、観光地には行かなかったけど、居酒屋行ったり、カラオケ行ったり、すごく刺激的だった。川崎、渋谷、新宿、目黒......すべてが面白かった。
それ何年?
パンダ:1999年。
はぁー。僕もマユリちゃんの家に何度か遊びに行ったことがあったよ。
パンダ:15歳で、僕が音楽を作りはじめた頃、フィルはいつも僕を励ましてくれた。「お前なら音楽で食っていける」って言うんだ。自分はダメなんじゃないかって思っていると、「You can do it, you can do it, you can do it」って言うんだ。そんなのジョークだと思ってたし、友だちだから言ってくれるんだと思っていたよ。だけど、彼が死んだとき、どうせ普通の仕事をやってもクビになったりうまくいかないんだから、音楽をちゃんとやってみようと思い直した。そしてロンドンに引っ越して、また音楽に取り組んだんだよ。ロンドンではセックス・ショップで働いてたりしたんだけど、友だちと通じてブロック・パーティのリミックスをやることになったり......。
ホントびっくりだね。フィルとは何回か飲みに行ったなぁ。下北で彼が酔っぱらってしまって、店内でスティーヴィー・ワンダーを歌ったこともあったよ。
パンダ:モータウンが大好きだったよね。僕は彼が亡くなるときに看取ったんだ。
そうなんだ。
パンダ:彼は年を取りたくないって言っていた。だからああやってパーティという人生を終えて、星になって飛んでいったんだと思っている。
彼は本当に自由に生きていたからね。僕より年上で、ターザンみたいな体格の人だったけど......ボクサーだったんだよね?
パンダ:そうだよ。とても強かった。そういえば、1970年代に彼がやっていたロック・バンドの写真を持っているよ。僕の叔父さんと一緒にバンドをやっていたんだ。
へー、そんなに近い関係だったんだね。幼なじみ?
パンダ:ていうか、僕が生まれたときから知ってるよ。
デヴィッド・ボウイみたいなことをやっていたのかな?
パンダ:聴いたことがないからわからないけど、写真を見るとパンク・ロックみたいだったね。うん、たしかにフィルは、デヴィッド・ボウイが大好きだったよね。
好きだった。
パンダ:だから彼が危篤状態になったときに、僕は"スターマン"を再生してそのイヤホンを彼の耳に突っ込んだんだよ。
それは良かった。ところでフィルのサブヘッドはハードな音楽だったけど。
パンダ:そうだね。
あなたの音楽はまた違っているよね。
パンダ:フィルはハッピーな人間だっただろ? でも僕は悲しくて孤独な人間なんだ。僕は自分のエモーションを音楽に反映させているから、それで彼とは違ったものになるんだろうね。
いやー、僕はあなたのことを日本のアニメが大好きで、〈リフレックス〉のカタログを揃えているようなオタクかと思っていましたよ(笑)。
パンダ:ハハハハ。
本当ですよ(笑)。
パンダ:わかるよ。ある部分は本当だからね。マニアとまではいかないけど、アンダーグラウンドなマンガが好きなんだ。丸尾末広とか。ちょっと危ないヤツ。
丸尾末広は僕らの世代では人気があったんだよ。日本語で読んでいるの?
パンダ:そう。でもアメリカでも出ているんだよ。絵が変えられているんだけどね。ただ、日本では2千円で買えるけど、イギリスではその倍以上するんだ。
古本屋さんを探せばいいですよ。
パンダ:他にオススメは?
花輪和一とか......あとでメールするよ。ところで日本の文化でアニマやマンガ、ゲーム以外には惹かれなかった? 音楽とか?
パンダ:そうだね。「これだ!」っていうモノじゃなくて、もっと日常的なモノというか、街の雰囲気とか好きだね。
へー、日本人からすると「なんだこのクソつまらない街は」って感じなのに。
パンダ:なんでだろうね。僕のなかではすごく興味深いんだ。なんてことはない風景が好きなんだよ。たとえばこの窓の向こうのマンション、あのミニマルな感じとか。イギリスにもマンションはあるけど、日本の建物はもっと規則正しくきっちりしているように見える。何故かわからないけど、それが気持ちいいんだ。僕は金がないから、新幹線に乗って名所を見て回っているわけじゃないんだけど、日本人の普通の生活のなかで「それがいいな」と思えるところがたくさんあるんだ。
へー。
パンダ:先日も友だちと山形に行ったんだけど、そこで見た日常の風景がとても良かった。ぶらっと行ったときに偶然目に入る景色が好きなんだ。目的地を決めて苦労して観光するのは性に合わないんだろうね。それは音楽でも同じなんだ。自分で、フィニッシュを決めて作ると、うまくいかないときにイライラしてしまう。だけど、もっとリラックスしてやっていけばうまくいく。だから曲作りも、てきぱきと済ませるんだ。素早くできた曲のほうが出来がいいんだよ。逆に、時間がかかってしまった曲は収録しなかった。
今回はどこに泊まっているの?
パンダ:市川の友だちのところ。まだ日本で行ったことのないところばかりだし、また日本に住みたいよ。
野田 努(2010年4月15日)