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Home >  Interviews > interview with the telephones - “あざとさ”を超えた先にある、愛と自由

interview with the telephones

interview with the telephones

“あざとさ”を超えた先にある、愛と自由

――ザ・テレフォンズ、インタヴュー

宇野維正    Aug 09,2010 UP

the telephones
We Love Telephones!!!

EMIミュージックジャパン

Amazon

 海外の新しいムーヴメントから意匠をかっぱらって、それを邦楽のリスナーにアジャストするように意訳、あるいは超訳して音を届けるバンド。いつの時代にもそんなバンドはいて、多くの場合は、洋楽系のリスナーから遠巻きに白い目で見られたりもしてきた。しかし、the telephonesはそんなステレオタイプな洋楽系邦楽バンドの枠組から外れて、新たなムーヴメントをこの国のシーンで巻き起こそうとする強い意志を前面に押し出してきた上昇志向の強いバンドだ。メジャーから2枚目のフルアルバムとなる『We Love Telephones!!!』は、そんなthe telephonesにとって正念場とも言える作品である。
 彼らが過去に参照してきたニュー・レイヴやディスコ・パンクといったムーヴメントは、ここ数年で跡形もなく消え去ってしまった。同時に、the telephonesをめぐる状況は次第に熱を帯びていき、同世代のバンドとのイヴェントである〈KINGS〉や、精力的なツアー、フェス出演などを通して、彼らは新しいタイプのロックリスナーを開拓することに成功してきた。その背景には、かつてはこの国の若いリスナーの間でも機能していた、「洋楽に影響を受けた邦楽と出会う→その元にある洋楽を辿っていく」というリスナーの行動原理が働かなくなってしまったことの、幸福な副産物とでも呼ぶべき追い風があったかもしれない。いずれにせよ、the telephonesが現在の邦楽ロックのフロントラインに立っているのは事実だ。"あざとさ"を捨てた丸腰状態のままバンドの本質と向き合ったニュー・アルバム『We Love Telephones』をたずさえて、彼らはここからどこへ向かっていこうとしているのか? フロントマンの石毛 輝を中心に、本音を交わしてきた。

要はいわゆるニュー・レイヴとかディスコ・パンクっていう流れのなかでやってた僕らが、それが終わったなかで何をやるのかっていうのがすごく大事なことだと思ってたんだけど、そこで開き直ってみたら意外にいい作品ができなって思って。

まず今年の3月にナカコーのプロデュースによる「A.B.C.D.e.p.」をリリースして、4月に初のセルフプロデュースによる「Oh My Telephones!!!e.p.」をリリースして、今回のアルバム『We Love Telephones!!!』に至るわけですけど、この流れのなかで、the telephonesの音楽はどんどん解放されていったように思います。

石毛(VOX/GUITAR/SYNTHESIZER):曲としては全部同時に作ってたんですよね。「A.B.C.D.e.p.」と「Oh My Telephones!!!」用の曲が10何曲かあって、そこからナカコーさんといっしょに選曲していって、これはナカコーさんにやってもらう、これは自分たちでやるっていう感じで分けていって。

じゃあ、ナカコーにある程度たくさんの曲を聴いてもらった上で、どの曲だったらいっしょにやると面白いかっていう判断からピックアップしていったのを最初にかたちにしたのが、「A.B.C.D.e.p.」ってことですか?

石毛:そうです。ずっとナカコーさんのファンだったから、純粋に「どれが好きなのかなぁ?」って訊きたい気持ちもあって。まだその時点ではこのアルバムの曲全部はまだ出揃ってなかったんですけど、たとえば"I'll Be There"(『We Love Telephones!!!』収録)なんかはその時点でもうあった曲で、「この曲やりたいな」ってナカコーさんが言ってて。

「A.B.C.D.e.p.」の時点で、アルバム『We Love Telephones!!!』までの構想はかなり明確にあったんですね。

石毛:そうですね。その時点でアルバムの設計図はあったら、全部が同時進行です。the telephonesのやることは、つねに「確信犯だ」って言われたいんですよね。

そういう意味では、ナカコーから「盗めるものは盗んでやろう」っていう意図もそこにはあったりした?

石毛:あぁ、それはもう、もちろんありましたよ。去年アルバム『DANCE FLOOR MONSTERS』でメジャー・デビューして、あれはある意味、僕らの勢いだけをパッケージした、いちばん濃い部分だけを絞って出したようなアルバムだったんで、その次に出す作品は、本来の自分たち――もともといろんなタイプの音楽をやりたかったバンドだったから――勢いだけじゃないものがやりたいなと思って。やっぱりiLLの作品を聴いたらわかるけど、ナカコーさんの作品って音がすごくいいじゃないですか。シンセもたくさん使ってるし。だから、これまでの自分たちの作品では作れなかった音像が、ナカコーさんだったたちゃんと作れるんじゃないかなと思って。で、もちろんその過程で、いただける技術は盗んじゃおうと思って(笑)。

その意図を隠すこともなく?

石毛:そうそう。もちろん、僕も隠さずに「教えてください!」って言うし、ナカコーさんも隠さない、ものすごくオープンな人だから。音楽に限らず、あまり詳しいことは言えないけど(笑)、いろんな動画とかもすぐに焼いてくれたりとか。the telephonesのレコーディング以外でもiLLの現場に行かせてもらって、機材をどうやって使うのか、音をどう作るのかとかも教えてもらって。しっかり盗みましたね。まぁ、盗みきれてないとは思うんですけど、いままでわかんなかったことがわかったのは大きかった。ものすごい勉強になりましたね。

それは、その次の段階として、「Oh My Telephones!!!」と、『We Love Telephones!!!』収録曲における初のセルフ・プロデュースというチャレンジを見据えてのこと?

石毛:もちろんそれもありますけど、それをそのままナカコーさんからの影響でやったらあまり意味もないと思ってて。あくまでセルフ・プロデュースでやる上での助言というか、アドヴァイザー的な存在として考えてました。あんまりそこに頼っちゃうと、自分たちでやる意味がなくなってしまうから。でもまぁ、ぶっちゃけ、録り終わった後にいっかい聴いてもらって、「大丈夫ですかね?」って相談はさせてもらいましたけど(笑)。

宇野維正(2010年8月09日)

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Profile

宇野維正宇野維正/Koremasa Uno
音楽・映画ジャーナリスト。洋楽誌、邦楽誌、映画誌、サッカー誌などの雑誌編集を経て独立。現在、『MUSICA』、『装苑』、『クイック・ジャパン』、『シネコンウォーカー』、映画誌『T.』、旅雑誌『4 travel』などでレギュラー執筆中。

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