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interview with DVS1

interview with DVS1

強靭なるミッドウエスト・テクノ

――FREEDOMMUNEで初来日するDVS1、ロング・インタヴュー

浅沼優子    Aug 16,2011 UP

よくアーティスト同士が「コラボレーション」とかやってるけど、正直僕は恥ずかしくて出来ない。プロダクションのことなんて何もわかってないから(笑)。ただ自分を表現するのに適度なことだけ知っているんだ。

私があなたのプレイを見て最初に思ったことは、「なぜ私はいままでこの人のことを知らなかったんだろう!?」でしたよ(笑)。

DVS1:さっき言った通り、僕自身ももう出遅れたと思っていたくらいだからね。でも遅すぎるなんてことはなかったね、いまがパーフェクトなタイミングだったと思う。テクノはいままた勢いを取り戻している。僕が15年間プレイし続けてきた音楽が、いまいちばんきちんと聴かれていると思う。もし4年前に僕が「発掘」されていたら、そこまで注目されなかったかもしれない。音楽が注目されていなかったから。
 先日も『Groove』誌にインタヴューされたときに、「いまのテクノ・ブームをどう感じていますか?」と聞かれたけど、ブームは何でも去るときが来るからテクノ・ブームも同じように去ると思う、でも僕はこの音楽を愛しているから、ブームかどうかは関係なくプレイし続けるだけだ、と答えた。

昨年の6月が、初のベルリン出演だったんですか?

DVS1:いや、実はオリジナルの〈Tresor〉で10年前にいちどだけプレイしたことがあったよ。「新人ナイト」でね(笑)。97年にハイコ・ラウをミネアポリスに呼んでいた縁で、2000年に友人の結婚式でヨーロッパに来た際に、彼にどこかでプレイできないか聞いたんだ。それで彼が紹介してくれたのが〈Tresor〉だった。水曜日の夜に、3〜4時間のセットをやらせてもらった。あれも素晴らしい体験だったな。満員でね、でももちろん当時は誰も僕が何者かなんて知らなかった。


デリックが最初に僕にくれたアドヴァイスは、「人は君のことをオリジナルの楽曲で覚える。リミックスが記憶に残ることも稀にあるが、そう多くはない。だから自分のファミリーを作って、そこを基盤として、あまり多くのレーベルから出すな。そうじゃないと、いまの時代すぐに忘れられてしまうぞ」だった。

楽曲制作もずっと取り組んでいたんですか?

DVS1:ずっと取り組んではいたね。でも実験の繰り返しで、曲を完成させるまでに至らなかった。スタジオも構えていたし、一時期はたくさんのアナログ機材も持っていた。でも何度か自分の企画に失敗してすべてを失った。僕は16歳の頃から「自営業」なんでね(笑)、何か大きなプロジェクトをやるときは自分の持ち物を担保に入れなければならなかった。それで成功したこともあるし、何度か失敗して、2度ほどすべてを手放さなければならなかった。機材もね。それほど使っていたわけじゃないから不便はないんだけど、かなりいいアナログ機材を持っていたから、残念は残念だ。いまはReasonを使って曲を作ってる。Reasonと言うとみんなショックを受けるんだけど(笑)。僕の曲はすべてReasonで作った。でもReasonをアナログ機材のように使っていると思う。すべてをMIDIコントローラーで操作しているんだ。僕は数学的な思考で曲は作れないのでね。ループを作って、それに合わせて「ジャム」をして録音するんだ。だからとても自然に曲が出来上がる。「でもドラムマシンみたいな音がする」と言われるけど、ドラムマシンみたいな使い方をしてるということなんだ。

その制作方法はどうやってあみ出したんですか?

DVS1:ボタンを押してるうちに(笑)。よくアーティスト同士が「コラボレーション」とかやってるけど、正直僕は恥ずかしくて出来ない。プロダクションのことなんて何もわかってないから(笑)。ただ自分を表現するのに適度なことだけ知っているんだ。僕はDJすることに関しては精通していると言えるけど、プロダクションに関しては学習中だ。誰にもやり方を教えてもらったことがないから、恥ずかしくて「実は自分でも何をやっているのかよくわかりません」って正直に言えない(笑)。
 でも時折、知識がないことが逆にプラスになっているんじゃないかと思うこともあるよ。知識が限られている分、その限られた中で最大限のことをしようと努力する。たまに「ああ、こんなエフェクトがかけられたらもっといいかもな...」なんて思うこともあるけど、「いや、これはこれでいい」と考え直す。僕はDJとしても、シンプルな音楽を好む。そういうことを忘れて歌を作ったりする人もいるけど、僕はトラックを作りたい。僕はDJだから、そのツールが欲しい。

あなたの曲はすべてDJのために作られていると。

DVS1:ああ、リヴィングルームで聴かれることを想定して作ったことはないね(笑)。もちろんリヴィングで聴きたい人がいたら自由に聴いてもらってかまわないけど! 僕にとってはDJありきの音楽だ。パズルのピース。

いまはかなり制作量も増えてますか?

DVS1:僕の作品としては、〈Klockworks〉、〈Transmat〉、そしてもうひとつ〈Enemy〉というレーベルから出した3枚だけだ。その後、ちょうど膝の手術をして3ヶ月歩けなかったときがあって、暇だし気分も落ち込んでいたので何か気を紛らわそうといろんなリミックスを引き受けた。それはいい勉強になったんだけど、そのときわかったのは、僕は複数のプロジェクトを同時進行できないということ。1曲ずつ片付けていかないとダメなタイプなんだ。リミックスをやると、いつもひとつのヴァージョンに絞れなくてふたつのヴァージョンを作ってしまう。完全に満足できる1曲が作れないんだ。自分ではすごくたくさんリミックスをしてきた気がするのは、実際は5曲なのにすべて2ヴァージョン作っているから10曲になってる(笑)。
 でもいまはリミックスのオファーはすべて断っていて、自分の曲作りに集中したいと思ってる。〈Klockworks〉からの次のリリースはほぼ完成している。実はその1曲のエディットをベンが作って、すでにデトロイトやCLRのポッドキャストでプレイしているんだ。ネット上では「この曲誰か教えて!」と話題になってるから、なかなかいい感触を持ってるよ! 9月くらいまでには出るんじゃないかな。そして12月には自分のレーベルをはじめる。〈Hardwax〉がディストリビュートしてくれることが決まってる。

レーベル名は?

DVS1:〈HUSH〉だ。僕は〈HUSH Productions〉というイヴェント・プロダクションをもう15年やっていて、〈HUSH Studios〉という31部屋あるスタジオも経営していて、さらに〈HUSH Sound〉という音響会社もやっているんだ。ちょうど今年の12月に〈HUSH Productions〉設立15周年になり、僕も35歳になる。だから、それを機にレーベルを立ち上げることにしたんだ。

もちろんリリース第一弾はあなたの作品だと。

DVS1:すべて僕のオリジナル楽曲だ。リミックスは出さない。いま、みんなリミックスをやりすぎだと思うんだ。

みんなたくさんのリミックスをたくさんの違うレーベルから出してますね。

DVS1:そう。デリックが最初に僕にくれたアドヴァイスは、「人は君のことをオリジナルの楽曲で覚える。リミックスが記憶に残ることも稀にあるが、そう多くはない。だから自分のファミリーを作って、そこを基盤として、あまり多くのレーベルから出すな。そうじゃないと、いまの時代すぐに忘れられてしまうぞ」だった。たしかに90年代を振り返ると、ほとんどの人はせいぜい2〜3レーベルからしか出さなかった。でもいまは同じ連中が25の違うレーベルから出して、同じ週に5つのリリースが重なっていたりする。そんなにいろいろやってもみんな消化し切れない。少なくともじっくり楽しんでもらえない。だから僕もその教訓に従って、自分のリリースを絞ろうと思ってる。ヴァイナル・オンリーでね!

今後も拠点はミネアポリスなわけですね。

DVS1:ああ。ヨーロッパには2ヶ月毎くらいのペースで来ているけどね。ありがたいよ。いまはとてもいいポジションにいると思う。

私もそう思います(笑)。

DVS1:とても幸せだよ。僕がよく人に言うのは、「僕はいま電車に乗っている。僕はそこから蹴り落とされるまで、乗り続ける」蹴り落とされたら元の生活に戻るけど、乗れる限りは乗っていこうと思ってるよ(笑)。やはり遅すぎるということはなかったね、いまが完璧なタイミングだ。

参考ミックス
Pacha NYC Podcast http://pachanyc.com/podcast/

最新リリース(リミックス)
Jon Hester/ Shouts In The Dark http://soundcloud.com/edec/

↓こちらも宜しく!
http://go-to-eleven.com/schedule/detail/386/2011/8

取材:浅沼優子(2011年8月16日)

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Profile

浅沼優子浅沼優子/Yuko Asanuma
フリーランス音楽ライター/通訳/翻訳家。複数の雑誌、ウェブサイトに執筆している他、歌詞の対訳や書籍の翻訳や映像作品の字幕制作なども手がける。ポリシーは「徹底現場主義」。現場で鍛えた耳と足腰には自信アリ。ディープでグルーヴィーな音楽はだいたい好き。2009年8月に東京からベルリンに拠点を移し、アーティストのマネージメントやブッキングも行っている。

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