Home > Interviews > interview with Keigo Oyamada - ガラパゴス、リミックス、脱原発
『CM3』はけっこう偏執狂的に音をほんとに少なくしよう見たいな感じでストイックさがすごく強かったような気がするんだけど。ちょっと肩の力が抜けて遊びが入ってきてるなって気がしますね。
CORNELIUS CM4 ワーナー |
■相対性理論をコーネリアスがやるっていうのはよくわかる気がするんですけどね。
小山田:ふーん……そうなんだ。
■ある意味では、遠い存在ではないでしょ。このなかでは。
小山田:まあそうだね。このあいだ一緒にやったりしたし。ヴァセリンズと一緒と時に。話しやすいね(笑)。普通に話せる感じ。
■布袋寅泰を1曲目に持ってきたっていうのはすごいね。
小山田:あ、そうですか。
■自分でどうですか、今回の『CM4』を通して聴いてみて。
小山田:うーん……『CM3』はけっこう偏執狂的に音をほんとに少なくしよう見たいな感じでストイックさがすごく強かったような気がするんだけど。ちょっと肩の力が抜けて遊びが入ってきてるなって気がしますね。
■はははは。でも最後にオリジナル・アルバムを出してから早6年ですよね。
小山田:あ、もうそんなんですか。6年経ってる? ほんとに?
■クラフトワークは、『ポイント』のときはヒントになったって言ってたけど、ほんとにクラフトワークになりつつあるんじゃないかと。
小山田:そうだね。6年?
■だからいまほとんど『エレクトリック・カフェ』を出した頃のクラフトワーク(笑)。
小山田:はははは。
■そして『ザ・ミックス』が出て(笑)。
小山田:『ザ・ミックス』でお茶を濁すっていう(笑)。
■じゃあ、次は“EXPO”だね(笑)。
小山田:“EXPO 2000”(笑)。
■いや、“EXPO 3000”。もうみんな死んでるって。そういえば最近はYMOに加わって、ほとんどメンバーになって活動してるそうじゃないですか。
小山田:DOMMUNEの次の日がワールド・ハピネスっていうYMOのイベントがあって。でもここ4、5年ぐらいやってるよね。
■「NO NUKES」に出演したじゃない?
小山田:やろうかなと。クラフトワークも出るし。
■なるほど。
小山田:あれけっこう衝撃的でしたよ。いきなり日本語で来たから。“放射能(Radio-Activity)”を1曲目でやって、いきなり日本語で歌い出して。あれは衝撃でした。
■小山田くんがポリティカルな場所でライヴをやるって初めてじゃない?
小山田:いや、そんなことないですよ。うちのバンドのベースのシミーってひとがいるんですけど。彼がスーデラでけっこう福島の子たちにお金集めるイヴェントとかやってて。それとかはけっこういつも出てるよね。
■今回はそういうチャリティではなく、やっぱ政治的主張が目的だったわけじゃない?
小山田:まあ脱原発ですよね。
■原発問題に関する小山田くんの考えを聞かせてもらっていいかな? いろんな次元での考えがあると思うけど。
小山田:ないほうがいい、っていう。単純に怖いなっていう。
■いままでそういうことあまり言わないひとだったじゃない。
小山田:そうですね、あまり言わなかったかもしれないですね。いきなり言うことではないと思うし。
■変な話、どちらかと言うとコーネリアスは政治とかね、そういうところから180度離れたところにいるようなところがあったじゃない、敢えて。
小山田:だから、そういう(政治的な)ところにはいたくないですよ、ほんとに。でも、脱原発じゃないひとっているんですか?
■それはいるでしょうね。科学者のなかにだって。
小山田:まあいろいろじゃないですか。まあ、「いますぐ止めろ」とは……クラフトワークが言ってたけど。
■日本語で?
小山田:そう、日本語で(笑)。
■それは素晴らしいですね(笑)。
小山田:すごいなと思って。あんなにクールな音楽じゃないですか。メッセージもすごいシンプルじゃないですか。「いますぐ止めろ」って言ってたのがけっこうびっくりした。
■それにクラフトワークが言うと何か違う説得力を感じるね。
小山田:だってわざわざ日本語ヴァージョン作ってきたんだよ、クラフトワーク。それで映像もちゃんと日本語訳で、エコノミー・クラスで来たって言ってたから。ちょっと泣けるよね。
■たしかに。日本人も英語で歌っている場合じゃないね。ところで、コーネリアスのほうはどうなってるの?
小山田:ちょっと進行してたんですよ、実は。でもいま止まっちゃってて(笑)。
■止まってるあいだにスタジオも引っ越して?
小山田:そうですね、まあ引っ越してからちょっと作業してて。で、夏ちょっとライヴだったり。明日からちょっと夏休みだったり(笑)。
■自分の夏休み(笑)。コーネリアスの新作っていうのはそんなに容易く作れるとはまわりの人間も思ってはいないだろうけど、自分自身のなかでも今回はとくに大変なの?
小山田:どうなんですかね。大変っていうか、作業的には一緒ですけどね、こういうのと。
■あ、リミックスと(笑)? それはウソでしょ(笑)。
小山田:いや作業的にはね(笑)。
■作業的にはね。
小山田:精神的にはやっぱちょっと違うけど。ちょっとこの間やりはじめて、「あ、ちょっとエンジンかかったな」と思ったら止まっちゃって。でもまあのんびりやろうかなと。いろいろやりつつ。
■いいですね、ほんとクラフトワークみたいで(笑)。やっぱり『ポイント』や『センシュアス』を超えなきゃいけないっていう思いはあるの?
小山田:超える?
■そう、より高次元へと飛躍する(笑)。
小山田:まあそれは自然になるんじゃないかなっていう感じですよね。
■ほお、さすがだね。
小山田:(笑)いや、わかんないですけど。6年前とは細胞もやっぱ入れ替わってるし。
■新しい自分がここにいるぞと。
小山田:ふふふ(笑)。
■そういえば、前に話したときはダーティ・プロジェクターズがいいとか言ってたよね。最近いいなと思った音楽とかある?
小山田:最近はベンチャーズずっと聴いてる(笑)。
■何で(笑)?
小山田:ベンチャーズ・ブームが到来で。あの、せたがや区民まつりっていうお祭を馬事公苑でやってるんですけど、今年ベンチャーズが来たんですよ。
■ほお。
小山田:それでベンチャーズ観に行って。それでベンチャーズ熱が急激に高まって、ずっと聴いてましたね。
■はははは!
小山田:はははは。
■その、再発見した部分っていうのは?
小山田:いやもう、カッコいいですね、やっぱ。
■もうクラフトワークみたいな普遍的なものとして。
小山田:そうですね。クラフトワークにちょっと近いかも。まあYMOに近いなと思ったんですよ。
■ほお。
小山田:いや、メロディを何か楽器が単音で弾いてるインストゥルメンタル・ミュージックで。で、エキゾチックだったり、音響的なものだったり、そういうのもあって。クラフトワークとベンチャーズと、あとジョルジオ・モロダーとか足すと、初期のYMOになる感じがする。
■ああ、なるほどね。
小山田:(YMOの)“コズミック・サーフィン”とかやっぱベンチャーズだし。幸宏さんも細野さんも、最初やっぱベンチャーズではじめたって言ってたんですよね。ギターも、ドラムもベンチャーズで。それでベンチャーズ熱がすごい高まっちゃって。全然最近の音楽じゃないけどね。
とにかく、まあちょっとCD買ったりとか、ダウンロードしたりとか。日本公演がいいですね。64年か65年に日本に来たときに、映画があるんですよ。で、大橋巨泉がナレーションやってて。昭和30年代の風俗みたいなものもすごく入ってて。ほんとにめちゃくちゃ人気あったんですよ、日本で。多分ビートルズ以前は、ベンチャーズがいちばん人気あったロック・バンドですよね。ビートルズよりも人気あったぐらい国民的な存在だったんじゃないですかね。毎年3ヶ月日本ツアーやってますよ。で、1月と7、8、9と年2回来るっていうのを50年間やってるっていう(笑)。
■どれだけ日本人に愛されたかってことだよね。
小山田:で、僕ら日本のバンドでも行ったことないような、ほんと地方の公民館のホールとかでも、1000人とか2000人とか必ず入るんだって。
■それ馬事公苑でやってたんだ。
小山田:そう、タダで(笑)。
■それ何歳ぐらいになってるの?
小山田:えっとね、リーダーのひとがドン・ウィルソンってひとなんですけど、79歳。来年80で、ヨーコさんと同い年。
■すごいパワフルだね-。
小山田:で、オリジナル・メンバーはいまそのひとしかいないんですよ。で、全盛期のノーキー・エドワーズってひとは1月しか来ない。夏はほかで営業してるらしいです。で、ドン・ウィルソンってひとが、あの「テケテケテケテケ」をやるひとで、サイド・ギターなんですよ。ずっとリズムを刻んでて、そのひとがリーダー。
■新しい音楽は全然聴いてないの?
小山田:うーん……まあ何となくユーチューブで見たりしてるけど、CDは買ってないかなあ。
■ほお、ついに小山田圭吾までもが。
小山田:まあダウンロードはちょこちょこしてるかな。
■何か気になったのとかいない?
小山田:何かあったかな、ぱっと思いつかないな。何だろう。あ、オン・ザ・ゴーって知ってる? オン・ザ・ゴーっていうロシアのバンド。ロシアの若い子たちで、けっこうカッコ良かった。ロシアでこれはいままでちょっとないなっていう。普通にヨーロッパのバンドっぽいんだけど。まあ変なんだけど。ロシアこれからいろいろ出てきそうかなと。
■まあプッシー・ライオットがね。
小山田:プッシー・ライオット知らない。
■ええ、プッシー・ライオット有名だよ。それこそロシアのさ、ライオット・ガールズで、メンバーも逮捕されて。それを「釈放しろ」って言って、それこそいろんなミュージシャンが呼びかけてるぐらいの。
小山田:へえー。
■じゃあ日本のアーティストで気に入ってるのはいる?
小山田:青葉市子ちゃん。
■彼女いいよね。ギターが上手いし。
小山田:歌も良いね。そういえば、今年はまたプラスティック・オノ・バンドのレコーディングが入ってて。それでまたニューヨーク行ったりとかしなきゃいけなくて。
■ほお。そうやってコーネリアスが延びてくわけだ(笑)。
小山田:そうなんですよ(笑)。ヨーコさん来年80なんです。やる気満々らしくて、もう「いますぐやりたい」みたいな感じらしいです(笑)。
■わかりました。とりあえずは『CM4』を楽しみたいと思います!
取材:野田 努(2012年9月04日)
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