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Home >  Interviews > interview with DJ Nobu, Shhhhh, Moodman - 2013年ミックスCDの旅

interview with DJ Nobu, Shhhhh, Moodman

interview with DJ Nobu, Shhhhh, Moodman

2013年ミックスCDの旅

──DJノブ、Shhhhh、ムードマンの3人、インタヴュー

小野田雄松村正人野田 努    写真:小原泰広   Apr 10,2013 UP

interview with Moodman

聴くことコレ即ち魔道なり──ムードマン、インタヴュー

取材:野田 努
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例えば、地図を書くときに、GPSとかで俯瞰して書く人もいれば、伊能忠敬じゃないけど、歩いて書く人もいる。僕は歩いて書いて、測量するほうが好きなんです。俯瞰する誰かの目を、まったく信じてないんです(笑)。


MOODMAN
Crustal Movement Volume 03 - SF mixed by MOODMAN

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今回の選曲見せてさ、まあ〈アップル・パイプス〉とか〈ヘッスル・オーディオ〉とか〈パンチ・ドランク〉とか、ダブステップ系の人気レーベルの楽曲があるんだけど、でも、ダブステップの系譜で聴いていったら出会えないようなレーベルも入っているんで、そこが「らしい」と思った。

ムードマン:自分にとっての良い湯加減を探しただけです(笑)。ただ、今回は楽曲的にはわりと現時点でポピュラーなものを選んだつもりで、むしろ、ダブステップの定番的な楽曲を違った感じで聞こえさせることに気持ちを注いだんです。ダブステップに関しては、本道ももちろん、好きなんですよ。ただ、自分がかけても説得力がないのでね。

結果論なのかもしれなけど。

ムードマン:良い湯加減の曲を見つけたときは嬉しいですよ。そのときは、つい、その周辺をぐるぐるとまわっちゃう。テクノ創世記の話で言えば、例えばハウスのコーナーの片隅に、〈トランスマット〉の12インチが1枚混ざっていたりして、「なんだこの妙なイラストは?」と思って、そこからその周辺を探したのと同じことをしているだけですよ。あの頃、「ヌード・フォト」に針を落としたときの衝撃はいまでも覚えてますね。

デジタルの世界でもそれが可能なんだね。

ムードマン:もちろん。

アナログ盤は、やっぱモノとして愛でることができるけど、データは......、否定するわけじゃないけど、集めても充実感がなくない(笑)?

ムードマン:いや、モノを愛でる感覚は重要だけど、そこに引っ張られるといろんなことを見失うと思いますよ。音楽はモノじゃないから。空気の振動だから。

クラシックの時代は楽譜だったわけだしね。

ムードマン:パッケージングされて音楽を聴くのって、たかだかここ100年の歴史ですよね。データはアルバム単位じゃなくて曲単位なんだけど、アルバム文化なんていうものは、これもまた古くなくて。SP盤、EP盤、そしてLP盤っていうね。

『サージェント・ペパー~』以降なわけだしね。

ムードマン:アルバム単位で作家性を出すって言うのは、『サージェント・ペパー~』以降といわれてますよね。って、今日はこういう話で良かったんでしたっけ?

でも好きでしょ?

ムードマン:大好き(笑)。愛でる感覚は大好き。レコードを開けたときの匂いが、まず好き(笑)。ただ、いまの作家がいまのスタイルで作っている音楽を、軽視するのは良くないと思う。良くないというか、もったいないと思うんです。データとヴァイナルと二項対立で語られがちですが、グラデーションで様々なメディアがあるわけで。ポンチャックはカセットでかけたいとか、エキゾチックサウンドを8トラックで聴いたらびっくりしたとか。オープンリールで聴くディスコって凄みがあるなとか。いろいろね。愛でる感覚はメディアに関係なく伝えたいとは思っています。

デジタルをディグるときの快楽ってどんなもの?

ムードマン:僕はそもそもあいだにあるものが好きで、ヒップホップでもなく、レゲエでもない、ラガマフィンヒップホップに萌える感覚というか(笑)。

ムードマンは本当にそうだよね。今回のミックスCDなんか、「あいだ」だよね。

ムードマン:で、デジタルは僕にとっては、「あいだ」を探しやすいんですよ。

へー、そうなんだ。

ムードマン:これまでおいそれとは聴けなかった地域の音源とか、「この辺くさいぞ」ってディグすると、あるんですよね。今回のミックスCDではそこまで広い地域の音楽をピックアップしませんでしたけどね。

AでもなくBでもなく、AとBのあいだにあるもの。

ムードマン:3つ以上かもしれないし、それらが混ざり合っているもの。混ざり合いそうだという雰囲気。なにか妙なものが生まれてきそうだぞという躍動感もふくめて、そういった音楽が好きなんですよ。ロウな感じっていうか。食感で言うと、グミっぽい感じと言うか。ちょっと違うか。

そう考えると、2013年に出したというのも結果論なんだけど、必然にも思えるんだよね。何故ならいまはその「あいだ」で良いのがたくさんあるから。

ムードマン:ミックスCDって、ドキュメンタリーかなと思ってるんです。

最初のミックスCD(2002年の『Weekender』)はポスト・パンクっぽい感じがあったりね。

ムードマン:ミックスCDに関しては、収録している曲が新しいとか古いとかいうことではなくて、「いま」の空気がどうやっても染み込む。「いま」を封印する能力に長けてるとおもっているんです、ミックスCDという型式自体が。なので、映像で言うならば、映画というよりは、ドキュメンタリーを撮る感覚に近い感じというか。客観性の限界としての個性と言うか。

噂では、ムードマンはいまシカゴのフットワークにハマってるっていう。

ムードマン:ああ、よく言われるんですけど、パーティでがっつりかけたのは数回です(笑)。新参者です。ハマっているということでは、ゴルジェ(GORGE)のほうがハマっているかも(笑)。まぁどちらも、ときどき、隙あらば混ぜてはいますけど、僕の場合はもともと、広義のダブとともに、広義のベース・ミュージックが好きなだけなんです。マイアミベースの頃から、ずーっと。マイアミというと、2ライヴ・クルーに端を発するお尻系のイメージが強いけれど、もっとクルマ系とか、スピーカー系とか、宇宙系とか。マイアミでもダークな系譜のトラックはいまのベース・ミュージックに近いんですよ。昔、エイヴェックスからリリースさせていただいたコンピ『インテリジェント・ベース』にも少しだけその要素は入れたんですが。

そうだよね。フットワークって言葉が新しくなっただけで、やっていることは、シカゴ・ハウスとオールドスクール・エレクトロのアップデート版というか。

ムードマン:そのなかでも際立って、オリジナルですけどね。オールドスクール・エレクトロの系譜への関心は、もちろんずーっとあって。もっというと、その前段階の、エレクトリックなブギーからエレクトロに帰結する流れがいちばん自分のツボなんですけどね、地味だしクラブではなかなかかけるチャンスが無いんですが。先週たまたま、DJ APRILさんとか、PAISLEY PARKSのKENTさんと一緒だったんですが、彼らはストリクトリーにシカゴのストリートのフットワークをかけていて、やっぱりかっこ良かったなぁ。半端ないですよ。僕はどうしても、先人への尊敬が前提なんだけど、「あいだ」ぐらいのジュークをかけたくなってしまう(笑)。

なに、その「あいだ」ぐらいのジュークって(笑)?

ムードマン:ジュークの影響を受けてるとおぼしき世界中の音(笑)。あるいは、単に同時多発的な、類似性を感じるビート。

アジソン・グルーヴみたいな?

ムードマン:「あいだ」のまた「あいだ」もあるんですよ(笑)。デトロイトっぽいヤツとか、アンビエントっぽいヤツとか。同時多発的というか、近いビートでまた違った表現をしている人たちがたくさんいる。もっとR&Bっぽいとかね。オリジネイターに敬意を払いながら、その拡散というか拡大というか、そこをかけるのが僕の担当かなと思って(笑)。王道ではないですよね。

まあそれ言ったら何が王道なのかと思うけど、DJラシャドの最近出た2枚組とか聴いた?

ムードマン:うん、聴いた。

最高だよね。

ムードマン:最高。こないだトラックスマンが来日したときに、自分はジュークという以前にシカゴ・ハウスのDJだというような発言があったんだけど、なるほどなぁと。プレイもシカゴハウスのクラッシックを新しい観点でかけていてかっこよかったなぁ。感慨深かったです。

そういえば、フットワークが入ってないなと思って。

ムードマン:今回は聞き心地として、平坦な感じにしたかったの。フットワークは自分的にまだまだ完全に消化できてはいないので、平坦にできないのです(笑)。

ピッチが合うの?

ムードマン:ピッチの面では、たぶん、やりようはある......はず(笑)。

あの辺、本当に面白いよね。聴いててワクワクするよ。

ムードマン:僕がいちばん好きなのは、スネアの音が優しいところ。中音から上が良いんですよ。

えー、そう? アグレッシヴな感じあるじゃん。

ムードマン:いや、フットワークって、ベース・ミュージックのなかでは非常に高音が優しくなっている。もちろんきついの一発入れてくるパターンもあるけど、シカゴハウスの系譜のなかでは、とくにスネアの鳴りが希有ですよ。

なるほどね。

ムードマン:昔、マイアミ・ベースにハマった頃、よくローライダーが集まるモーターショーに行ってたんですよ。会場の一角に、ウーファーを何十個も積んだクルマが死ぬほど並んでいてね、けっこう遠くから、低音の固まりを感じるんです。で、近づいていくとベースの沼というか、低音が身の回りをぼわーっと包んでいて、高音は蚊の鳴くような音で、小さく鳴っている感じなんですね。ああいう感じが好きなんです。そういう音の配置っていうのかな。レゲエのサウンドシステムでも好きなのは、上(高音)が天の声のように微かに聞こえる感じ。つま先から首ぐらいまでが低音で、低音浴というか、いい湯加減のベースにずっと包まれている感じ。そのポテンシャルがあるベースミュージックが本来的には好きですね。

なるほどね。フットワークにしてもダブステップ系にしても、ミニマルやダブにしても、ここ数年で、ダンス・ミュージックがまた更新された感じがあって。

ムードマン:全部、続いているんですけどね、急に変わった訳ではなくて。さっきのインテリジェント・テクノのオリジネーターの話じゃないけど、新しいムーヴメントだけではないんです。例えば、ディープなヴォーカルハウスも地味ながらアップデートされていたり。バズの起こりようがないので、話題になりにくいだけなんです。なんというか、いまの「更新された」っぽい空気って、新しい音楽のリリースの形態、流れが整ってきたことも大きいのかもしれないですね。

ミックスCDを「平坦な感じ」にしたかったっていうのは何で?

ムードマン:これは僕の習性なんだけど、ミックスCDって、なんかしながら聴くでしょ。

「さあ、聴くか!」っていうよりも、家で、なんとなくかけるって感じだよね。

ムードマン:だから、一定のテンションが保たれているものの方が、個人的には使用頻度が高いんです(笑)。

実用性を考えればそうだね。

ムードマン:そう、テンションは一定しているんだけど、ふと気がつくと変な音が入っているみたいな。「あれ?」っこんな曲、入ってたっけ?とか。そのくらいの変化を、小出しにまぶしているものが好きなんです。主張せず、引っ込みもせず。甘からず、辛からず、美味からず(笑)。だから、過去の2作もそうなんですけど、キーとか、ヤマは、作らないんです。

そうだね。

ムードマン:自分がよく聴くのが、そういうものなだけなのですが。どの曲も他の曲を引っ張らない感じ。ムード音楽志向なんですかね、やっぱり。ゆきゆきてディープ・ハウスというか。

貫禄だね(笑)。

ムードマン:本当はもっと出したいんですけどね、ミックスCD(笑)。いろんなスタイルで出したい。

でも、今回3枚同時発売されたけど、3枚とも面白かったな。ダンス・ミュージックがいま面白いんだなってよくわかる感じで。

ムードマン:3枚とも、キャラクターが出ましたよね。Nobuくん、Shhhhhくんと一緒に出せて、良かったな。

Nobu君のが尖ってて、Shhhhh君は、ワールドな感覚を捉えていて、ムードマンのが安定感があるっていうね。

ムードマン:今度は、ゴルジェ(GORGE)で1枚作りたいな(笑)。やらせてくれないかな。

最近はDJはどんなペースでやってるの?

ムードマン:週に2回ぐらいかな。

それは己の体力の限界に挑戦しているの(笑)。

ムードマン:いや、単純に音が聴きたくなるんですよ。でかい音で。結局、DJやってなくても遊びに行ってしまうから(笑)。同じなんですよ、体力的には。しかも、ふだん音楽をずーっと聴いているから、曲のかけ方なんかも考えてしまったりして。もともと分裂気味なので、いろんな方がDJで呼んでくれるのでホントありがたいです。
 あと、僕は毎回、オーガナイザーからお題をもらうんです。今回は、こんな感じでお願いします。はい、がんばります。という感じで。結果、毎週のように悩んでいるけど、それが楽しいんですよ(笑)。大喜利というか、ボケ防止にはいいですよ。

最近は、若い子のあいだで、ムードマン・スタイルがスタンダードになっちゃってるんだよ。働きながら音楽やるっていうのが(笑)。

ムードマン:ちゃんとかどうかは分からないけど、海外の人にとってはそれが普通ですよ(笑)。よく両立していられるねって言われるんだけど、そういうことでもなくて。僕の場合は、一生のうちどれだけ音楽を聴けるかっていうことが一番大きくて、あとはどうでもいい。どうでもいいというほど、破天荒なキャラじゃないですけど(笑)。ライフ・イズ・ワンスですから。

最初からそこは思ってないもんね。

ムードマン:まず聴きたいんですよ。その代価として身銭を切る。データでも同じ。

そこは作り手へのリスペクトでしょ?

ムードマン:そう。作り手がもっと作れるように。芸で食うべき人が芸で食えることが大切。で、僕はただとにかく、聴きたいんですよね(笑)。音楽のかけ方に関しては、自分のスタイルがどうこうではなくて、そうやって自分が聴いた曲を、どうやったら他人によく聴かせられるか......なんですよね。

しかしムードマンもいい歳だから、いままでのように突っ走り続けられない領域に近づいてきているよ。

ムードマン:もう、そうなってますよ(笑)。

週2でもすごいよ。

ムードマン:なので、普段、気がつかれないように、ぼーっとしてますよ(笑)。リビング・デッドですよ。トオルさんとかノリさんとかワダさんをずーっと見てきて、いつまでも若い衆気取りでいたけど。野田さんにずいぶん前に「いずれ来るよ」って言われてた通りに来てますよ(笑)。

ムードマンが最初にDJをやったのって?

ムードマン:10代の後半。ちゃんとしたところでは、〈ZOO〉が初めてだったと思います。

そのときは何をかけたの?

ムードマン:〈ON-U〉(笑)。当時は面白い音楽を聴くためには、クラブに潜入するしかなかったんですよ。毎日のように、日常では耳にできない音楽がかかっていた。スカ、カリプソから、テクノまで。で、出会った音楽を少しずつ集め始めたんですね。最初は、友だちの主宰する身内のパーティだったんですよね。レコードもってそうだから出てという感じで。〈ON-U〉ばっかりかけてたら、店長から「良いねー」みたいに言われて、調子にのったという。

俺、ムードマンがまだ大学生だった頃に家まで行って取材したじゃん。あのとき、レコードは家にたくさんあったけど、まだ部屋にDJ機材とかなかったような気がするもん。

ムードマン:あのときは、ボロボロの家具調ステレオしかなかったかも。あのずいぶん後ですね、DJの機材を買ったのは。つなぎとかは、ミックスとかは、当時、働いていたお店のオープン前の時間を使わせてもらったりして練習しましたね。

いま、25年ぐらい?

ムードマン:そうです。好きだと言うだけで来てしまったというか、正直、こんなに長くやれてると思ってなかったです(笑)。

レコードどうしてる?

ムードマン:カミさんのレコードも加わったので、XX万枚ぐらいかな......。

ハハハハ、それ酷いね。

ムードマン:7インチが多いんで、場所はとらないんですけど....嘘、食卓の周囲以外は、音盤です(笑)。

ジャンルで言うと?

ムードマン:いや、もういろいろ。ここのところは50年代の音源を探ってることが多いですかね。どんなジャンルでも、例えばジャケットの裏を見て、面白い楽器の編成だとつい買っちゃうんですよね。そもそも、シンセものも、リズムボックスものも、その観点で好きなんです。

編成?

ムードマン:3ピースなのにアコーディオンが入っていたり。アレンジが面白いものが好きなんですかね。今回の選曲にも結局、その要素は出ているかもしれないです。地味なんだけどひと癖あるものっていうか。大衆小説でいうところの「奇妙な味」というやつです。

はははは、そうだよね。それ、〈ON-U〉にはじまっているのかもね(笑)。ところでさ、〈ダブスレストラン〉のコンピレーションを再発したいんだけど、ライセンスしてもらえない? 聴きたい人は多いと思うんだよ。

ムードマン:赤岩君と連絡が取れればいいんだけど......僕だけがやっていた訳ではないので。ちょうど、20年前ですよね。当時、〈ダブスレストラン〉に送られてきたデモテープは、ぜんぶ取ってあるんですよ。段ボール、数箱分かな。いま聴いても、どれもクオリティ高いし、面白いんですよ。
 なにが面白いかというと、ガチリアルな、ベッドルーム・テクノの音源というか。明確なフロアが無かった時代に、みんなが仮想のフロアを夢想して制作したクラブ・ミュージックである点です。ありえたかもしれない90年代。メタフィクションですよね。いずれなんかのカタチで公の場で共有できればと思っているんだけど、さすがに当時の作り手は、もういい大人だろうし、住所も違っているだろうし、連絡付けようがないだろうからな。海外の音源を買うよりも、送られてくるデモテープの方が面白かったんですよ、当時。あの時代でしか生まれなかった、すごく良い音がたくさん眠ってるんですよ。聴いてみたいでしょ。

むちゃくちゃ聴いてみたいから出そうよ。

取材:野田 努

取材:小野田雄、松村正人、野田 努(2013年4月10日)

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