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interview with Youth Lagoon

interview with Youth Lagoon

夢の世界で辻褄を合わせよう

──ユース・ラグーン、インタヴュー

橋元優歩    通訳:箱崎日香里   May 02,2013 UP

Youth Lagoon - Wondrous Bughouse
Fat Possum / ホステス

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 なるほど、彼はベッドルームで録音などしたことがないのだそうだ。てっきりテレコで部屋録りした素材を大事に作り直しているのだとばかり思っていたが、それはベッドルーム・ポップと呼ばれるものへのひとつの偏見だったかもしれない。「音がアイデアのはじまり」と語るユース・ラグーンことトレヴァー・パワーズは、制作環境ではなく、めぐらせた音によって彼自身のパーソナルなスペースを築いている。けっして陰険な音楽でも人嫌いなタイプでもないが、〈ウッジスト〉や〈キャプチャード・トラックス〉にも連なるようなリヴァーブ感は、心地よい遮蔽感覚を与えてくれるだろう。いい具合の隙間にすっぽりと入り込んで、外に陽のあたたかさを感じながら、膝を抱えて眠り込んでしまうような感覚。そこにはうっすらと狂気のにじんだドリーミー・ヴァイブが満たされている。ジャケットの絵が薬物中毒患者の手になるものだというのは、本作のサウンド・スケープをぴたりと象徴するものだ。
 2011年、ドリーム・ポップに活気づくインディ・シーンの追い風も受けながら、彼のデビュー作『ザ・イヤー・オブ・ハイバーネイション』は高評価をもって迎えられた。その時点では、流行や数多の才能のなかにやや埋もれがちな印象もあったが、ときをおいて、いま、彼本来のシンガー・ソングライター的な佇まいがようやくくっきり見えてきたように感じられる。遠景にパンダ・ベアをかすませて、イディオット・グルーやザ・ウォー・オン・ドラッグスやMGMTの間を縫いながら、まるでポスト・チルウェイヴ世代のダニエル・ジョンストンといったような楽曲が並ぶ。プロデューサーは、アニマル・コレクティヴやディアハンターでもお馴染みのベン・アレンだ。ドリーミー・サイケはお手のもの。もちろん時代性やモードに比較するよりも、彼個人の本当にパーソナルな表現だととらえるほうが、本作は輝くだろう。そのような遠近法がとれるようになった、よいタイミングでの快作である。ダニエル・ジョンストンもジャド・フェアも知らないというのは驚きだったけれども......。

自分の心が妙なはたらき方をするっていう事実を受け止めるのに少し時間がかかったんだ。その間に、不安だらけで心配性みたいな、間違った僕の人物像ができてしまったけど、実際の僕はそうじゃないよ。

あなたが活動をはじめた2010年前後から、音楽シーンも少しずつ変化しました。アニマル・コレクティヴが2000年代半ばに示したような新しいサイケデリック・ミュージックも、あなたのような才能を産みながらいろいろな方向へと拡散しています。いまあなたがこのアルバムを “スルー・マインド・アンド・バック”というメディテーショナルなノイズ・アンビエントからはじめたのはなぜでしょう?

パワーズ:アルバムへのイントロダクションになるものが欲しくて、あの曲がそれにぴったりだったんだ。あの曲自体が完成したのはアルバムに入っている曲のなかでも最後の方だったんだけど、出来上がったとき「この曲は冒頭に入れたら上手くいくんじゃないか」って思ったのさ。

“スルー・マインド・アンド・バック”の「バック」とは何ですか?

パワーズ:これはある意味で転換点みたいなトラックなんだ。僕がこの曲を書いていたとき、まるでどこか別の、何もかもつじつまの合っている世界へと連れて行かれたような感じがした。そして書き終わった途端に、また元の世界に「戻って」来たような感じがしたんだよ。

今作はプロダクションも整理されて、しかしあなたの音楽のシンセの丸みや太さ、ノイズ感やえぐみといったものはきちんと残されていますね。プロデューサーのベン・アレンとは相性も合うのではないかと思いますが、録音はいかがでしたか?

パワーズ:ありがとう。このアルバムの録音のプロセスはかなり綿密なものだったよ。ベンと僕は2ヶ月近くもの間、毎日レコーディングし続けた。インターンやエンジニアから成るベンのチームもみなすばらしい人たちだったよ。とても健全な感じのするプロセスだったね。僕が目指していたようなものを引き出しやすい雰囲気だった。

あなたの方からプロダクションについて要望したことはありますか?

パワーズ:レコーディングのためにアトランタに行く前から、ベンとはしばらく電話で話をしていたんだ。彼とは最終的なゴールについてしっかり話し合って意見を一致させておきたかったからさ。そしてそれってどんどん変わっていくものなんだ、ある曲やアルバムについて特定のヴィジョンを持っていたとしても、実際の制作が始まると、そこからまったく違ったものへと変化してしまったりする。それぞれの曲が意志を持って動きはじめるんだよ。今回のプロダクションでは、それぞれの曲が発したがっている音をそのまま出せるようなものにしたかったから、ベンと僕との間には良い意味での緊張感があった。彼の見方が僕の見方と違っていることはあっても、目指しているゴールは同じだったのさ。

ファースト・アルバムは大きく注目され、高い評価をもって迎えられました。このことがその後の音楽制作上の足枷になっているようなことはありませんか?

パワーズ:唯一気にかかるのは、前のアルバムと同じものを期待している人たちがいるってことだね。僕自身が音楽でエキサイティングだと思うことは、予測の出来なさなんだ。同じことを2度はやらないよ。だからそういうのを期待している人たちには、何もあげられるものがないね。

ファースト・アルバムには「不安の克服」というモチーフがあったという記事を読みました。今作にはより穏やかであたたかいムード(“ミュート” などは力強くすらあります)があると思うのですが、「不安の克服」はその後今作にいたるまでの間に形を変えたと思いますか?

パワーズ:とくに不安の克服っていうテーマを意識していたわけじゃないよ。自分の心が妙なはたらき方をするっていう事実を受け止めるのに少し時間がかかったんだ。その間に、不安だらけで心配性みたいな、間違った僕の人物像ができてしまったけど、実際の僕はそうじゃないよ。

取材:橋元優歩(2013年5月02日)

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