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interview with Jackson and His Computerband

interview with Jackson and His Computerband

俺はテクノ・ラヴァー

──ジャクソン・アンド・ヒズ・コンピューターバンド、インタヴュー

斎藤辰也    Aug 28,2013 UP

Jackson and His Computerband
Glow

Warp Records /ビート

Amazon iTunes

 最近のおすすめは?

 「う~ん......ジャクソン・アンド・ヒズ・コンピューターバンドかな。知ってる?」

 森は生きているを観ながら、ダークスターのジェームス・ヤングは僕にそう言った。え~、さすがにそれは意外っすね~......しかし、なるほど、ジャクソンの8年ぶりの新作『グロウ』(Lなので「白熱」とか「幸福感」の意)を聴いて腑に落ちた。〈ウォープ〉のレーベルメイトというだけでなく、両者には古楽(バロック音楽)へのアプローチがある。ジェームスはディーズ・ニュー・ピューリタンズの新作も褒めていたし。
 フレンチ・エレクトロとくればアゲでダンスのサウンド......というわけでもなく、『グロウ』は落ち着き払っている。耳をすましていると、楽器の音が無音のなかから静かに立ち上がってくるのがわかる。とはいえ、やっぱりアゲなサウンドにもなったりするが、そこからいきなりプログレのような展開を見せたりもする。それらがあまり不自然じゃないのは、ジャクソンの音楽に、ちゃんと通奏しているムードがあるからだろう。ダンスそのものというより、ダンスへの予感だ。多彩な色をサウンド・パレットに用意していながら、闇雲に絵の具をキャンヴァスに乗せて訳の分からない画を描いてしまうことなく、最終的にはエレクトロとして仕上げている。
 ダンスへの予感。それは少々体力を要する場面もあるけども、シンフォニックで聴きごたえがあり、随所でチルウェイヴも吸収されている。リヴィング・ルームでも流していて苦しくない。僕はそういう音楽が好きだ。

いまだにEDMが何なのかわかってないんだよね(笑)。そういうのを聞くと、いつも90年代を思い出すんだ。90年代のある時期、4ヶ月ごとくらいに毎回新しい名前が出て来てた。トランスコアとかアシッドトランス、それが出て来たと思ったらハードテクノと呼ばれるようになったり、プログレッシブ・ハウスにトライバル・テクノに...(笑)。

日本の好きなところと違和感のあるところを教えてください。日本に以前きたことがあれば、そのときとの違いも教えてください。

ジャクソン:日本のグラフィック・カルチャーが好きなんだ。看板とか、すごく魅力的だと思う。伝統とモダンが混ざり合ってるところも好きだね。違和感があるところは......違和感とは言えないけど、フランス語とは全然違うから、言語はやっぱり変な感じがする。予測出来ない未知のものって感じ(笑)。あとは、味覚でビックリすることもある。もしかしたら、日本人もフランス料理を食べて、え? と思うことがあるのかもしれないけど、俺にとっては、寿司とか焼き鳥は大丈夫なんだけど、たまにまるで革命かのように驚かされる食べ物もある(笑)。何かは覚えてないけど。日本食を食べる時は、それを口にするまでに本当にファーストステップから始めないといけない時があるね(笑)。あと、これも違和感じゃなくてビックリのほうだけど、トイレのシャワーは驚いたよ(笑)。前回と今回の違いは...まだ特には感じてない。まだ着いて2日だからね。

前作から今作をリリースするまでの8年間、あなたはエレクトロのシーンをどのように見てきましたか?

ジャクソン:いろいろな進化を見て来たよ。パリではSound PellegrinoやMarbelの人たちと一緒にスペースをシェアしてるんだけど、彼らは最新のものが大好きだから刺激になった。彼らが新しいものを俺に聴かせてきたりして。俺は色んなものを吸収しようと思ってるし、素晴らしい創造力を持っている作品なら全てに興味があるし、発見が好きなんだ。でも同時に、そういうトレンドをベースにレコードを作ったりはしない。その時その時の新しいものとか、そういうのにあまり興味がないんだ。だから、とくにシーンを追ってきたわけではないんだよ。

では、なんとなくでもいいので、この8年でエレクトロのシーンはどのように変化したと思いますか?

ジャクソン:うーん、プロダクションや、音のクオリティのなかに進化した部分があると思う。でも、やっぱり基盤は変わらないと思うんだよね。ヒップホップやドラムンベースと同じさ。同じものがリピートしてる。音楽自体というより、どうやってそれを使うか、取入れるかっていうほうが変化してるんじゃないかな。でもいまの時代、みんなプロデューサーになれるし、かなり簡単にトラックが作れる。だからたくさんのアイディアを見ることができて面白くもあるよね。本当に多くの人たちがトラックを作ってる。前に比べて、かなりの人たちがエレクトロ・ミュージックを作ってるっていう人口の爆発も変化のひとつだと思うよ。敢えて言うなら、メインの変化は音楽そのものよりそこだと思う。

前作から今作をリリースするまでの8年間、ライヴ・ショーなどを行っていたと思いますが、ライヴからレコーディングに与える影響や、レコーディングからライヴに与える影響などあれば教えてください。

ジャクソン:そうだな......もちろん影響はし合ってると思う。ステージにいると、実際オーディエンスとコンタクトをとることになるから、その音へのみんなのリアクションがわかる。それはやっぱり自分の曲作りに影響してると思うよ。でも今回のレコードでは、ライヴとレコーディングがふたつ同時進行って感じだったんだ。スタジオではこれ、ツアーではこれ、という感じにわけて考えるんじゃなくて、ライヴで実際にパフォーマンスできる、ステージで即興が出来るリアルサウンドを意識して作ったから。オーデェンスがサウンドと同時にそれをプレイしてる俺の動きも楽しめるっていうのも大切な要素だった。レコーディングとライヴは、なるだけ近くしたいと思ってる。リアルタイムで音楽を作るっていう方向性を心がけてるんだ。『スマッシュ』では、ちょっとインスタントさが足りなかったからね。

『グロウ』では、それが達成できたと思いますか?

ジャクソン:近づけたとは思う。このアルバムを完成させることが出来たし、いまはコンピューターバンドも存在する。だから、いまはその方向性への扉を開けたって感じかな。これをステップにもっとリアルタイムな音楽を作っていけたらと思ってるんだ。

前作から今作をリリースするまでの8年間、あなたを支えていた音楽があれば教えてください。

ジャクソン:ありすぎて選べないよ(苦笑)。本当に色んな音楽を聴いてたから。

では、このレコードを作るにあたって影響や刺激を受けた、またはパワーをもらった音楽はありますか?

ジャクソン:音楽というより、レコード作りに関して刺激や影響を受けるのは俺の場合は経験なんだ。俺はサウンドを特定するっていうプロセスを避けてるから、自分の意識に自然と従って音楽が出来るって感じでね。だから、自分でもそのうちのどの経験が実際に影響してるのかわからないんだ。何に近づきたいとか、そういうのはあまり考えたことがない。全てが勝手に起こるんだよ。動物的本能みたいなプロセスなんだ(笑)。

もともと、子どもの頃にハービー・ハンコックの曲で電子楽器の音を聞いたとのことですが、そこからジャズへいかなかったのは、当時どういう音楽をつくるかのイメージがすでにあったのでしょうか?

ジャクソン:10代の自分にかなりのインパクトを与えたレコードのなかの1枚が『ヘッド・ハンターズ』だった。これは、俺にとって本当に驚きのフュージョンだったんだ。エレクトロサウンドを使ってるけど、すごくファンキーで変わってて......美しいサウンドと型破りなサウンドの間を行く作品だった。普通の心地いいサウンドを聴いてるかと思ったら、いきなり超ビッグなサウンドが鳴りはじめたり。ワイルドになったり、すごくエレクトロになったり。それがすごくテクノっぽく聴こえたり。それでもファンクへの愛はキープされたまま。そこに魅力を感じた。

そういったたくさんの要素が混ざった音楽を作りたいというヴィジョンは10代の頃から持っていたのでしょうか?

ジャクソン:そうだね。でも、みんな10代のときは自分が好きな音楽をいかに上手くリメイクできるかに執着するけど、それは実際不可能(笑)。俺は、自分のアイドルをコピーしようと思ったことは一度もない。どうせできなくて、フラストレーションが溜まりまくってしまうから(笑)。でも、彼らをそうさせているエッセンスや、彼らの作品の何を自分が好きなのかは理解しようとしてた。他の人間にはなれないから、ヒーローをコピーしようとしたことは一度もないね。それを理解した上で、自分が自分なりの作品を作れればいいと思う。

取材:斎藤辰也(2013年8月28日)

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Profile

斎藤辰也/Tatsuya Saito斎藤辰也/Tatsuya Saito
破られたベルリンの壁の粉屑に乗って東京に着陸し、生誕。小4でラルク・アン・シエルに熱狂し、5年生でビートルズに出会い、感動のあまり西新宿のブート街に繰り出す。中2でエミネムに共鳴し、ラップにのめり込む。現在は〈ホット・チップくん〉としてホット・チップをストーキングする毎日。ロック的に由緒正しき明治学院大学のサークル〈現代音楽研究会〉出身。ラップ・グループ〈パブリック娘。〉のMCとKYとドラム担当。

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