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interview with Jun Miyake

interview with Jun Miyake

美しきミュータント

──三宅純、インタヴュー

野田 努    photo:Jean Paul Goude   Oct 23,2013 UP

三宅純
Lost Memory Theatre act-1

Pヴァイン

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 三宅純はインターナショナルに活動しているパリ在住の日本人作曲家である。わりと最近では、2009年の寺山修司版『中国の不思議な役人』の音楽を担当して国内外で話題になった。昨年は、ドイツの高名な舞踏家、ピナ・バウシュを描いたヴィム・ベンダースの映画『Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』にも楽曲を提供しているが、映像や彼女のパフォーマンスもさることながら、その音楽も国内外で賞賛されている(そういえば、1996年の大友克洋の『MEMORIES』にもフィーチャーされています)。
 近年欧米では、賛辞の意を込めて、現代のクルト・ワイル、新時代のギル・エヴァンス、未来のバート・バカラック……などと喩えられているが、こうした表現が正しいか否かはさておき、それが多彩な音楽(ジャズ、ボサノヴァ、エレクトロニカ、クラシック等々)がミックスされた魅力的なものであることはたしかだ。エレガントで静謐で、そしておおらかで、想像力を喚起する面白さがある。「記憶を喚起するような音楽」を主題とした新作『ロスト・メモリー・シアター-Act-1』には、とくにそうした魔法があるように感じる。一流の料理人が用意したご馳走であり、旅人の描いたオデッセイアの断片でもあり、美しいミュータント音楽でもある。 
 ゲストも豪華で、アート・リンゼイをはじめ、大御所デヴィッド・バーン、ピーター・シェラー(exアンビシャス・ラバーズ)、かつて〈4AD〉からの作品で一世を風靡したブルガリアン・ヴォイス、天才ベーシストのメルヴィン・ギブスなどなど……、それからなんとニナ・ハーゲンの名前まであるじゃないですか。

小学6年のときにチャーリー・パーカーとマイルス・デイビスを聴かされて、雷に打たれたようになりました。その和声感、リズムの躍動、即興で奏でられる旋律、すべてにスリルを覚え、自分のやりたいことはこれしかないと思いました。

『Lost Memory Theatre act-1』はとても美しい作品ですが、まず、「失われた記憶の劇場」という主題が興味深く思いました。ヴィム・ヴェンダースがライナーで言っているように、それは「心象風景」に関する音楽ということなのでしょうか? 

三宅純(MJ):ヴェンダースさんにはご自身が感じられた通りに書いて下さいとお願いしました 。僕は常々言葉で限定することで、リスナーの感性を制限するようなことはしたくないと思ってきました。コンセプトノートに書いたように、失われた記憶が流入する劇場が自分のために欲しかったのです。そして結果的に失われた記憶を喚起するような音楽を創れたら良いと思いました。

それは、郷愁という言葉にも置き換えられる感覚なのでしょうか?

MJ:むしろ単に懐古的にはしたくありませんでした。「過去はいつも新しく、未来はいつも懐かしい」という言葉が好きです。パーツを見ると層になった記憶の断片から作られているのに、全体として聴くといままで聴いたことがないものが出来上がったという風にしたかったのです。

「失われた記憶が流入する劇場があってもいい」という考えは、音楽がしうることのひとつを表していると思います。記憶を喚起する音楽、思い出すことを促すであろう音楽を今回お作りするにあたって、何を重視されましたか? 

MJ:僕個人の記憶を投影するのではなく、 失った記憶を呼び覚ますトリガーになるような音楽とはどんなものだろう? というのが大きな課題でした。言うのは簡単ですが、実現は極めて困難です。まだ語り尽くせていないと感じるのでシリーズ化するかもしれません、『act-2』の曲はすでに出揃っています。

三宅さんご自身のリスナー体験として、自らの記憶を刺激するような音楽というと何がありますか?

MJ:物心ついた時から音楽とともに生きて来たので、数限りない音楽 、そして風景や香りが、さまざまな記憶と結びついています。特定するつもりはありません。

ご自身の記憶の風景のなかで、いつか音楽の主題にしたいものがあれば教えてください。

MJ:脳裏に残る情景があったとしても、実際に音にするかどうか、そのときが来るまでわからないのです。僕にはいつか音にしたい「感情の備蓄」のようなものがありますが、風景の備蓄はそれに比べると少ないように思えます。

三宅さんとジャズとの出会い、トランペットとの出会いについて教えて下さい。日野皓正さんに憧れて、ジャズの入ったと聞いたことがありますが、ジャズのどんなところが三宅さんにとって魅力だったのでしょう?

MJ:小学6年のときにジャズ狂のお母さんを持つ友人宅で、チャーリー・パーカーとマイルス・デイビスを聴かされて、雷に打たれたようになりました。その和声感、リズムの躍動、即興で奏でられる旋律、すべてにスリルを覚え、自分のやりたいことはこれしか無いと思いました。当時はまだジャズは進化の途中でしたから、音楽の様式に惹かれたというよりも、日進月歩で進化する自由な魂に憧れたのだと思います。
 それから独学でやみくもに練習をはじめましたが、大学受験の時期に両親の反対にあって、日本でもっとも尊敬できるトランペッター日野皓正さんの門を叩き、彼に才能が無いと言われたらやめようと思ったのです。彼は僕を沼津の自宅に連れていってくれ、聴音の試験をし、奏法上の問題を指摘し、音楽家として生きる厳しさについて話をしてくれました。つまりやめろということだと思った時 、心配した母親から電話があって、日野さんはいきなり電話口で「お宅の息子さんはアメリカに行くことが決まりました」と宣言されたのです。大騒動になりました。

バークリー音楽院では学んだことで、いまでも大きな財産となっていることは何でしょう?

MJ:むしろ学校外の演奏活動で多くのことを学びました。学校では……良くも悪くも楽曲をシステマチックにアナライズすることでしょうか。

とくにアメリカではジャズの演奏家の層も厚いと思いますが、そういう競争率の高い、演奏能力の高い次元で活動することは、それなりのプレッシャーやストレスもあったと思うのですが、いかがでしょうか?

MJ:日々が他流試合の連続だったのでプレッシャーやストレスもあったと思いますが、そういう環境のなかで突出できないのなら、やる意味がないとも思っていました。

質問:野田努(2013年10月23日)

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