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interview with Daniel Miller

interview with Daniel Miller

MUTE一筋35年

──ダニエル・ミラー、インタヴュー

野田 努    通訳:さいとうしょうこ   Oct 31,2013 UP



現在のダニエル・ミラー。(photos : Erika Wallsm)

Carter Tuttiはスロッビング・グリッスルのメンバーだったし、長い付き合いがある。別にポストパンク時代のものがすべて良いっていうわけではないよ。それほど良くもないバンドももちろんいたし。でもその時代のバンドでいまでも格好いいバンドもいるのはたしか。

■ヴィンス・クラークやデペッシュ・モード、ニック・ケイヴなど有名どころもそうですが、他にもライバッハ、バリー・アダムソン、ブルース・ギルバート、ボイド・ライスのように地味ながらずっとリリースし続けているアーティストがいますよね。彼らのような人たちはレーベルにとってファミリーみたいなものなんでしょうか? 

DM:断っておくとデペッシュ・モードとニック・ケイヴはもううちではリリースはしていないけどね。もちろんイレイジャー、ヴィンス・クラーク、ゴールドフラップなんかはいまも出している。ライバッハやボイド・ライスなんかはずっと一緒にいるからね、そりゃもう家族みたいなもんだ。彼らが良い音楽作り続ける限り、それを世に送り出したいと思う。こういったアーティストたちとともに歩んでいくことも僕自身大切なことだと思っている。

■来年はライバッハの新作が控えていますが、彼らのような東欧のベテランの作品に対する新しいリアクションにはどんなものがありますか?

DM:彼らにはいまだに世界中に熱狂的なファンがたくさんいるね。ライバッハに対してだけではないけれど、すべてのアーティストに対して新しいオーディエンスをつけたいと思っていて、それによってリリースを続けていければと思っている。ライバッハに関しては、新しいリアクションというのは目立ってあるわけではないけれど、彼らが活動をし続けていることを見られるのはみんな喜んでいるよ。

■再発もので、意外なほどセールスの良かった作品やアーティストがいたら教えてください。

DM:全体的に見ると、カンだろうね。89年からバックカタログのリリースを続けているけど、コンスタントにものすごく良く売れている。バックカタログの売り上げの中では常にカンがダントツだね。これにはいつも僕も驚かされるよ。と、同時にもちろんうれしくも思うけどね。

■亡くなったフランク・トーヴェイの編集盤を2006年に出していますね。彼はレーベル初期を代表するアーティストでしたが、彼はどのような人物でしたか? 

DM:フランクは僕がレーベルを立ち上げて初めて一緒に仕事をしたアーティストだ。Fad Gadgetとして契約をした。だから彼にはとても思い入れがあったし、彼との関係は特別なものだった。フランクとは友だちから紹介してもらって、デモを聴いたんだけどそれがすごくよくてね、実際会ったら意気投合した。クリエイティヴで、心優しくて、ユーモアのセンス溢れるやつだった。長年一緒にやっていたあいだ、途中で音楽活動をやめて、プロダクション方面にいったりしたけど、またアーティストとして活動をしはじめてた矢先に亡くなってしまったので、ものすごく悲しかったし、残念だった。彼と一緒に仕事ができて心から良かったと思ってる。

■昨年もCarter Tuttiの『Transverse』を出していましたが、やはり、ポストパンク時代のアーティストには特別の思い入れがあるのでしょうか? 

DM:そりゃ、もちろん。Carter Tuttiはスロッビング・グリッスルのメンバーだったし、長い付き合いがある。別にポストパンク時代のものがすべて良いっていうわけではないよ。それほど良くもないバンドももちろんいたし。でもその時代のバンドでいまでも格好いいバンドもいるのはたしか。クリス&コージー(Carter Tutti)はもちろんそうだし、その当時から一緒にやってるワイヤーも素晴らしいしさ(Duet Emmo名義で共作もしている)。ポストパンクの時代から変わらずいいバンドがいるのは間違いない。

■80年代にくらべて、音楽の力は弱くなったと思いますか?

DM:80年代に比べたら、60年代のほうがより多くの選択肢があったと思う。ただ、いま、音楽がこういった時代よりもより強いインパクトを与えることは可能だと思う。現在に比べてその当時は音楽に対して深い思い入れを抱くこともできたんだけど、いまはいろいろな選択肢があることによって絞りきれなくなっている。だからこそ、アーティスト自身や、アーティストが作る音楽そのものがよりいっそう強いインパクトを与えて、昔のような人の心の掴み方をしなければならない。結論から言うと、音楽の力は80年代に比べると弱くなっている。もちろん、それを覆す可能性もおおいにあると思うけど、あの当時のようにはいかないと思う。さっきも言ったようにいまは選択肢がありすぎるから。

■インターネットの普及によって、ミュージック・ビジネスはこの10年で大きな変化のなかにあると思います。あなたは現在の変化をどのように見ていますか? 

DM:インターネットの普及によって出来ることはかなり広がった。それにはもちろん音楽も含まれていて、レコーディングの技術が生まれてから現在に至るまでの膨大な量の音楽に誰でも気軽にアクセスが出来るようになったし、この変化はポジティヴなものだと僕は思う。ただ、さっきも言ったけど、こういう技術の発達によって選択肢がぐんと広がった以上、一歩先を行くには、音楽自体がよりいっそう強いインパクトを与えなければいけないと思う。

■新しいサブレーベル〈Liberation Technologies〉について教えてください。このレーベルのリリースにはMark Fellのような比較的新しい世代の実験的なアーティストが目に付きますが、今後、どのような展開を予定しているのでしょうか? 

DM:僕らは長年エレクトロニック・ダンス・ミュージックにも携わっていて、〈ミュート〉のサブレーベルでもある〈Nova Mute〉からはスピーディー・Jやリッチー・ホウティン(プラスティックマン)なんかのタイトルをリリースして来た。僕はダンス・ミュージックが好きだったし、その世界に居続けたかったから、その辺の音楽に詳しいやつと一緒に〈Liberation Technologies〉をはじめたんだ。まずは12インチのリリースやダウンロード・アイテムをリリースすることからはじめた。ジャンルはとくに特定せずに、それを越えて常に前に進み続ける音楽を出していきたかった。はじめてから1年くらい経つけど、立ち上げてよかったと思ってる。とても満足しているし、ネクストステージをどのようなものにするか考えているところだ。

■長年、ミュージック・ビジネスに関わっていて、音楽が嫌いにはなりませんでしたか?

DM:いや、音楽自体を嫌いになったことはいちどもない。仕事上で音楽を聴かなければいけないのはたまにつらかったりもするけど。レーベル運営者としての音楽に携わることと、いちファンとして音楽に触れることはまったく別物だから。音楽業界自体は僕は好きではないんだけど、アーティストと仕事をすることはとても楽しいし、彼らのヴィジョンを形にする手助けが出来るのもうれしい。長年やっていればつらいこともあるけれど、ほとんどの部分においてはレーベルをやっていて良かったと心から思るし、いまでもそう思えていることが大切なんじゃないかな。

■DJはやられているんですか? 

DM:うん、年に10回程、だいたい月1回のペースで。かけるのはテクノだね。

■日本には、〈ミュート〉に影響を受けたアーティストが少なからずいますが、日本人アーティストを出しようなことはお考えではないですか?

DM:まだその機会に恵まれたことはないんだけれど、いいアーティストがいればもちろん! ボアダムスとは何かやろうと思ったこともあったけれど、実現はしなかった。そこまで詳しいわけではないけれど、日本の音楽は好きだしね。日本だけではなく世界中のアーティストに興味があるよ。

■2013年にリリースされた作品で、あなたにとって良かった作品をいくつか挙げてください。

DM:いい質問だね(笑)! 良かった作品は間違いなく、〈ミュート〉からリリースした作品だ。ゴールドフラップのアルバムがダントツで良かった。自分のレーベルからアーティストを選ぶのは好きじゃないんだけど、ゴールドフラップのアルバムは群をを抜いてたからね。レーベルをやっていて難しいのはさ、自分が手がけている音楽以外のものを聴く暇がないんだ。だいたい毎年、クリスマスの時期になると数週間時間が出来るから一年を振り返っていろいろ聴けるんだけど、いまの時点だと〈ミュート〉からリリースされたものかな(笑)。

取材:野田努(2013年10月31日)

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