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Home >  Interviews > talking with downy & Fragment - 十六月からはじまる話

talking with downy & Fragment

talking with downy & Fragment

十六月からはじまる話

──downy(青木ロビン)とFragment(kussy、deii)による対話

橋元優歩    写真:小原泰広   Mar 25,2014 UP

リスペクトしあっているからこそ、勝ちたいというか、あっちの度肝を抜くものを作りたいと思うんだよね。その繰り返しでしかないという感じはしますけどね、人柄うんぬんと音楽というのは。 (青木)


downy - 第五作品集『無題』リミックスアルバム
Felicity

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〈術ノ穴〉は狭い意味での音楽的共通性で成立しているわけではないですよね。こんな機会ですし、青木さんからFragmentの活動に対して、あらためて一言いただけませんか?

青木:ええ(笑)、一言ですか! 僕はとにかく、いまもう一度ミュージシャンに戻ろうとしている最中なので、偉そうなことは言えないですね。ただ、ジャンルとかの垣根を超えていくところを見たいとは思います。いいものが見たい。レーベルをやっていれば、お金を出して宣伝すれば売れるということもあるだろうし、素晴らしいのにあぶれさせているアーティストもいるだろうし、いろんなことに気づくんじゃないかと思います。そのあたり、いいツールがあったらいいですよね。レーベルがそのひとつのきっかけになっていけば最高だし。ライヴァルであり戦友というかね。
 コラボレーション自体も自分にとってははじめての経験だったんです。それもひとつの財産だなと思いますよ。昔だったら絶対にやっていないだろうな……。

Deii:ああー。

kussy:ははは!

青木:「はあ? リミックスってなんや」みたいな(笑)。

以前のインタヴューでも、音楽を離れて生活を見直すなかで、あらためて見えてくる音楽のかたちがあったというようなことをお話しされていましたよね。それがすごく印象深かったんです。そうした時間、9年の時間を経たいま、逆に青木さんのことは当時に比べてどのように見えるんですか?

青木:あ、それは訊いてみたい。

kussy:俺らとしては、めっちゃ作り上げているわけじゃないですか、青木ロビン像を(笑)。あのステージの上の青木ロビンしか知らないわけなんですよ。その後初めて目にするのがあの居酒屋でだったという衝撃。

青木:しかも、俺にはとんでもないヒゲもじゃの仲間がいるんですけど、その方といっしょのときでしたからね。だいぶ出来上がっていたし(笑)。

kussy:いやほんと、こんなに気さくに話してくれるのかって思いましたしね。

青木:よく言われるよ。

kussy:ライヴでもほとんど話されないし……

青木:MCはしたことないかも、というレベルですね。

kussy:ちょっと怖い人なのかな、とか。孤高の存在というふうに勝手に作り上げていたんですよね。あのときに比べたら、そりゃ「ロビンさんも人間じゃん」ってふうに思っちゃいますよ! 当時は、みんなでワイワイ飲むっていうようなことをしてたんですか?

青木:お酒は好きだったけどね。

kussy:でも、ピリピリしているような空気感がライヴからは感じられましたからね。

青木:ピリピリはしてたね。でも自分ではフランクな方だと思っていたけどなあ。そうじゃないと、ライヴとかに呼ばれないよ(笑)。

kussy:はははは!

コミュニケーションは取れなきゃ、という(笑)。

青木:うん。ただ、まあ感覚は変わったんだろうね。他人に委ねてよくなるようなところは委ねようと思ったし。

そういえば、音楽を離れてメールの書き方から学んだんだ、とおっしゃっていましたよね。社会というものにあらためて一から向き合ったというお話が心に残って。

青木:みんな、ほんとにちゃんとしたメールをくれるんだよ。すごいなって。同じ、音楽で飯食ってるのに、俺はそういうことをやっていなかったなと思ってね。

そういうところなんでしょうかね、「ピリピリ」しなくなったというのは。

青木:でも、だからって絵文字とか送られてもいやだよね(笑)。

kussy:ロビンさんが!? はははは!

(一同笑)

kussy:裕さんが絵文字にはまっているらしいですけどね(笑)。でもこの前、裕さんと話していたんですけど、当時はメンバー間でもピリピリしていたって聞きました。

青木:でも、よくしゃべるし、仲はよかったんだけどね。裕さんもずっと笑いを絶やさないというか、移動中なんかも、車中がずっと笑いに包まれている……、ただ、リハとか、楽器を持つタイミングではそれが変化するかもしれない。お互いがもっと音楽をよくしようとして緊張するというか。そういうピリピリはあったと思います。対バン相手でもそう。呼んでくれてありがとうって思うし、リスペクトしているんだけど、ある意味での勝ち負けは気にしたいというか。それはたぶん、これからも同じなんじゃないかと思いますけどね。まだ再始動後に対バンをしていないだけで、きっとスイッチが入る瞬間があると思うから。いい緊張感を残しつつやれればいいでしょうね。


いざ聴いたらいままででいちばん尖ってる作品だった。 (kussy)

本当に、そのとおりだと思います。10年の変化というところでおうかがいしたんですが、『第五作品集』そのものは、作品単位としてどのように聴かれましたか?

kussy:俺は本当に全作を聴いてきているんですよ。そしてこの9年の間に、実際に会わせていただいたりもしているわけで、人柄という点ではある意味で「丸くなった」部分があるんだろうなということも知っていました。だから、新しいアルバムについては、正直なところこわくもあったんですよね。……すげえピースになってたらどうしよう、みたいな。「あの頃」のまま、好きだったdownyでいてほしいなという勝手なファン心理もあるわけで。

青木:うん。

kussy:それで、いざ聴いたらいままででいちばん尖ってる作品だったという。もっとさらに緊張感のある作品をブランク後に出してくるということに本当に度肝を抜かれましたね。

青木:プレッシャーはあったからね。ハードルが上がっちゃっている。

kussy:そうですよね。だから……。……ただただ、かっこいいっすっていう思いです。そうだよね?

deii:うん。

青木:ミュージシャンはみんなそうだよ。コミュニケーションだからさ。人間と人間、ミュージシャンとミュージシャンだから、こっちが「オイッ」って居丈高にしていてもどうしようもない。リスペクトしあっているからこそ、勝ちたいというか、あっちの度肝を抜くものを作りたいと思うんだよね。その繰り返しでしかないという感じはしますけどね、人柄うんぬんと音楽というのは。

kussy:うん。そうですね。

青木:だから、Fragmentもいままで通りこっちを驚かせるものを作ってほしい。
それと、時間がなくてみんなの名前を挙げられなかったのがとても気になっているんだけど、参加いただいた方、みな本当に素晴らしかったです。それを最後に言っておきたいと思います。


downy - 曦ヲ見ヨ!Fragment remix

取材:橋元優歩(2014年3月25日)

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