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interview with Kiyoshi Matsutakeya

interview with Kiyoshi Matsutakeya

ジャパニーズ・レゲエの夜明けから

──松竹谷清、松永孝義を語る

野田 努    写真:小原泰広   Jun 18,2014 UP

70年代からロックを聴いていた世代にしたら、パンク/ニューウェイヴっていうのは子どもの音楽だったんですね。僕はそういう風には絶対に思わなかった。壊して新しくなっていくってところにすごく喜びを感じていまして。

松永さんはミュート・ビートでベースを弾いて、清さんはトマトスをやってて、そのふたつのバンドの最高の邂逅を音源として残しているものをひとつ挙げるとすれば、やっぱりローランド・アルフォンソとの共演だったと思うんですよね。ワッキーズで録音したヤツ(『ROLAND ALPHONSO meet GOOD BAITES with ピアニカ前田 at WACKIES NEW JERSEY』)です。90年代初頭の美しい隠れ名盤ですよね。

松竹谷:内容は最高ですよね。まずローランド・アルフォンソを呼びたいという石井さ(志津男)んの話があって。その後に、今度はローランドのソロ・アルバムを作らないかってことになりまして。で、トラックをミュートのドラムの今井に作ってもらって、僕らは前田とバッキングして音楽をアレンジして。それをこっちで録って、テープを持ってニューヨークでダビングっていう。1曲は昔やってた“テンダリー”って曲で、もう1曲はまあ俺の曲をやったんですけど……ローランドさんは目が悪くて譜面が読めなかったという(笑)。
 だから前田にメロ吹かせたのを送るんだけど。こんなでっかいお玉(音符)を前田に書かせて(笑)、それを持って行って吹いてもらったりしたんですけど。完璧にはできなかったですけど、でもいいムードになりましたね。

ローランドさんはそのときおいくつだったんですか?

松竹谷:その頃ねえ……だからあれをやったのが20数年前でしょう?

ミュートでもやられてるし、あとはワッキーズでもやってますよね。

松竹谷:そうです。だから……ひょっとすると、いまの僕らぐらいかもしれないですね。僕57なんですけど、60ちょっと手前かぐらい。そんな歳いってなかったと思いますよ。

その当時はほかにもジャッキー・ミットゥが来たりとか。

松竹谷:そうですね。

ただ当時のジャマイカ国内は、スレンテン以降のああいうコンピュータライズした時代で。ジャマイカってやっぱりトレンドが早いんで。

松竹谷:そうですね。ちゃんとしたヒット・ミュージックなんでね。みんなニューヨークにいるって言ってましたね、当時。

そういうなかで、日本で自分たちの曲をこんなにも演奏できる連中がいるっていうのは、やっぱりすごく嬉しかったんじゃないかなって想像するんですけど。

松竹谷:ものすごく喜んでいただきましたね。まずライヴのときにね。

スタッフ:ローランドが来たのは、ミュートとのライヴの当日ですからね。たしかリハぐらいに来て。

松竹谷:いやいや、リハじゃないよ。開演10分前に来たんですよ。で、開演時間30分押して。

それを、ぶっつけ本番の一発でやって、しっかり息が合っちゃったんですからね。すごいですよねえ。

松竹谷:しびれましたけどね、ほんとに。一応、(ローランドは)なしで、こうやって(笑)、練習してました。これは松永の話だからネタとして。じつはリハは松永も京都で足止め食らって来てなかったですからね。で、松永も来ないしローランドも来ないし、どうすんだろって、俺たちしぶーく練習してたんですよ、最初。そのうち松永も戻って来れたんだけど。

今回三回忌ということで、The Main Man Special Bandのライヴ盤が出たわけですけれども、このリリースに関して清さんはどのような感想を持ってらっしゃいますか?

松竹谷:まあ……いいんじゃないですか。スタジオ盤じゃなく、こういうライヴのグルーヴというかムードがちゃんと伝わるものをしっかりまた聴いていただけるっていうのは。

レゲエ以外に、ハワイアン、島唄もありますけれども、そういったものは80年代レゲエをずっとやられてきたなかでの次のステップみたいな風に考えてらしたんですか?

松竹谷:もともと好きでね、松永さん。ああ見えていろんな音楽好きなんで。沖縄にしても小笠原にしてもハワイアンにしてもスウィング感、グルーヴがあるんでね。あと、まず松永は音色でグルーヴするっていうのを大事にしてた。要するにマイク一本で生音でやるハワイアンのCDなんかをあいつよく聴いてたりしたんですけど。昔のジャズとかラテンなんかも同じなんで。音色で、音量も合わせてグルーヴするっていうのがあるんでね、そういうところをすごく大事にしてたことが、よりいっそうそういうところに行ったんだと思いますよ。
 極端に言うと、いまのレコーディングと全然違うんで。たとえばの話、1小節弾けりゃいいでしょ、っていう感じのがあるでしょう? あれってダメですからね。1曲でグルーヴしてないと。何でも直せちゃうとダメなんですよね、やっぱり。いい場合もあるけど。グルーヴが止まったらダメなんでね。影響があるんで、細切れには絶対できない。それって音色も含めてのことなので。

その80年代末、活動のなかでターニング・ポイントだったことは何か覚えてらっしゃいますか?

松竹谷:うーん……自分自身は松永とやることでよりいっそうシンプルになっていったというか。レゲエだアフロだサルサだっていうんじゃなく、ポップスのなかでもロックしているっていう。自分の解釈だったり音色っていうところも含めてやって行きたいっていう風になっていった時期ですかねえ。

松永さんがひとまず入られたのが89年?

松竹谷:そうですね。半年ぐらいミュートとダブってるのかな? ミュートのリズム・セクションに「やれ」って(笑)。引き抜いたっていうより並行してやってもらったんだけど(笑)。

エマーソン北村さんってじゃがたらのキーボードがミュートだったりで。

松竹谷:まあ、ルースターズとかああいうやつらも俺ら仲いいんですけど、ロックンロールが好きなんでね。僕らの好みの音楽をやるにはセンスがやはり、ということで、ただドドドドドドドドってやるわけじゃないんでね。16ビートもラテン色というか。そういうセンスのひとがなかなかいなかったというか。そうするとやはり近場になってきてしまったというのが現状ですね。あんまりいなかったんで、やっぱり。ソイソースやってたメンバーになっちゃうんでね。

ちなみにソイソース・チームのリズム隊が一番お手本にしたものって何かありますか?

松竹谷:僕らはいつも言ってるんですけど、みんなが好きだったのはイアン・デューリーとブロックヘッズかなあ。

それはこだまさんもよく言いますね。

松竹谷:じゃがたらも好きだし、こだまも好きだし、俺も好きだし。松永も大好きだしね。イアン・デューリーとブロックヘッズはね、あれだけフュージョンっぽいアレンジしてもロックだっていうね。あれはほんとにカッコいいですね。ほんっとに大好きですね。ミュートなんてブロックヘッズの曲ちゃんとカヴァーしてるんでね。ブロックヘッズは、71年ぐらいにキルバーン&ザ・ハイローズって名前でデビューしてるんで。もうカリプソとかレゲエやってるからね、そのときに。大好きですね。カッコいいです。
 ちなみに松永に聴かせたいぐらいに、去年出たノーマン・ワット・ロイ(元ブロックヘッズのベーシスト)のソロ・アルバムがいいんですよ。なんか似てるよ。多少ベース・ソロみたいなの入ってるんだけど、松永のセンスとなんか似てるね。曲で(グルーヴを)やるっていうのがあるんで。すごいいいわ。
 まあ、そういう、もちろん(海外のミュージシャンを)お手本にして一生懸命やってたんですけど、日本人なりのノリが混ざって出てくるのも俺はいいんじゃねえかっていうのもあったからね(笑)。

「ROCK-A-BLUE BEAT」も日本語の歌の響きにこだわってますもんね。

松竹谷:戦前からのジャズやシャンソンの替え歌を歌ったりとか、“わたしの青空”とかやってるわけで。60年代入ってから和製ポップス、弘田三枝子が“子供じゃないの”とかやってるのと全然変わらないですよ。感覚的には。向こうのメロディで自分の言いたいことを歌詞で作っていくっていうのは。さっきも言ったけど、多少ズレようがそれが日本人だからいいんじゃないかなっていう。そういう気持ちがありますね。
 だから批判めいちゃうけど、いまみたいに譜割りが細かいのに日本語の歌詞乗せたりするわりと流行ってる音楽は、リズムの譜割り気にするわりに歌詞の量多くて何歌ってるかわからないですからね。それを気にしすぎな気がしちゃいますね。詰め詰めで。グルーヴしてないっていうか。

英語で言うところの子音の部分を何とか埋めようとしちゃってるというか。

松竹谷:そうそう。あれはちょっと違うんじゃねえかなあと思うんですけどね。メロの麗しさみたいなものと一緒になってないという感じがしますね。だって外国語の語感と違うんだからしょうがないですよ。それでいいんですよ。日本人に伝わるのが好きなんで。
 松永もそういうところがあるんで、まあチエコ(・ビューティー)なんかも喜んでやってたしね。英語だけにこだわってるよりは、自分たちが作っていったものをやるほうがすごく好きでしたね。

取材:野田努(2014年6月18日)

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