ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns 内田裕也さんへ──その功績と悲劇と
  2. R.I.P. Steve Cropper 追悼:スティーヴ・クロッパー
  3. P-VINE × FRICTION ──フリクション公式グッズが、Pヴァイン設立50周年企画として登場
  4. xiexie - zzz | シエシエ
  5. Amanda Whiting - Can You See Me Now? + The Liminality Of Her | アマンダ・ホワイティング
  6. FRICTION ──フリクションのデビュー7インチ「Crazy Dream」と「I Can Tell」が復刻、『79ライヴ』もCDリイシュー
  7. ambient room ──岡田拓郎Sextet、maya ongaku、BudaMunk、Satomimagaeが出演するイベント
  8. Columns 2月のジャズ Jazz in February 2026
  9. DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTS ——パンキー・レゲエ・パーティのレジェンド、ドン・レッツとマッシヴ・アタックのダディ・Gが揃って来日ツアー
  10. DJRUM - SUSTAIN-RELEASE x PACIFIC MODE - 2026年2月7日@WOMB
  11. Columns Introduction to P-VINE CLASSICS 50
  12. interview with Autechre 来日したオウテカ──カラオケと日本、ハイパーポップとリイシュー作品、AI等々について話す
  13. Cindytalk - Sunset and Forever | シンディトーク
  14. interview with xiexie オルタナティヴ・ロック・バンド、xiexie(シエシエ)が実現する夢物語
  15. Geese - Getting Killed | ギース
  16. ele-king presents HIP HOP 2025-26
  17. 別冊ele-king 坂本慎太郎の世界
  18. Street Kingdom 日本のパンク・シーンの胎動期を描いた、原作・地引雄一/監督・田口トモロヲ/脚本・宮藤官九郎の『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』が来年3月公開決定
  19. interview with Sleaford Mods 「ムカついているのは君だけじゃないんだよ、ダーリン」 | スリーフォード・モッズ、インタヴュー
  20. Fumitake Tamura ──「微塵な音」を集めたアルバム『Mijin』を〈Leaving Records〉より発表

Home >  Interviews > interview with Perfume Genius - 茨の“クイーン”

interview with Perfume Genius

interview with Perfume Genius

茨の“クイーン”

──パフューム・ジーニアス、インタヴュー

木津 毅    Sep 26,2014 UP

周りからはゲイ的な歌詞を入れるべきじゃないって意見もあったんだけど、それに反抗するために逆にもっと入れてみたんだ(笑)。もっと声を出して言うぞってね。

なるほど。今日のライヴでも、“マイ・ボディ”みたいな曲はすごくダークでみんなビックリしていましたね。ああいうすごく実験的な曲っていうのは、何か影響元があったんですか?

MH:さっき言ったようにまわりの意見を気にせず自分の作りたいものを作ろう、って切り替えたときに何を大切にすべきかを考えたんだ。たとえばPJハーヴェイ。彼女は秘密にしておきたいことを表現しながらも、とても力強く自信を持って表現しているから、そういう感覚を見習って曲を書きたいと思ったんだ。だから彼女には影響を受けたね。自分の見た目で恥ずかしいと思っているところを、自信を持ってパワフルに歌うっていうことが自分にとってのセラピーになっているんだよ。

前のアルバムのときでもそういった、自分に正直であることっていう話をしましたね。そうした感覚がさらに押し進められているのかなと思います。ただ、歌詞がまだ届いていなくて見られてないので、そこについてもいまから訊いていきたいと思うんですけど。全体を通しての歌詞のテーマはありますか?

MH:そうだね、前作からは自分の生活環境はよくなって、自分で家賃も払ってるし自立してる。ドラッグやアルコールもやめたし。だけどいまでもいつも何かを心配してるし、落ち込むし、自意識過剰になったりするし、急に悲しくなったりする。状況がよくなっても気持ちは昔と変わらない、自分は周りよりも劣っていると思ってしまうときがあるんだ。だけど、それに対して闘っている、周りにも尊重されて、自分自身でも尊重できるように意識できるようにはなってきたから……それが全体のテーマなんだ。音楽的なテーマでもあり、僕自身の人生のテーマでもあるんだよ。

 僕が気取って歩くのは
 ファミリー向けじゃないんだって 
(“クィーン”)

では曲単位でいくつか訊きたいと思います。2曲めの“クィーン”は新しいアルバムの新しいサウンドを印象づけるバンド・サウンドのナンバーですね。「No family is safe」という歌詞が聞こえてきますが、これはひょっとしたら“フッド”のヴィデオがリジェクトされた件と関係あると思ったんですが、どうでしょうか。
(※ヴィデオが削除されたとき、その理由は「not family safe」であると説明された)

MH:直接関係したわけじゃないけど、いろいろなことがインスピレーションになってるんだよね。
アメリカでは家族の価値を守ること、イコール、同性結婚に反対する運動っていうところがあるんだけど、僕にはまったく理解できない。ストレートの夫婦でも離婚率はじゅうぶんに高いし……その恐怖心がどこから来ているか、どうしてゲイのひとたちをそんなに怖がるのか、理解できないんだよ。僕がそんなに害を与えることもないし、サンドイッチを食べたりして普通に暮らしてるだけなのに。周りのひとをみんなゲイにできるんだったらすぐにやっちゃうけど(笑)、そんなことできるわけないんだよ。そういう考え方に対する怒りが、その言葉に反映されているんだ。
 周りからはゲイ的な歌詞を入れるべきじゃないって意見もあったんだけど、それに反抗するために逆にもっと入れてみたんだ(笑)。もっと声を出して言うぞってね。

クール!

MH:(笑)

僕はいままで、いかにまわりに大切にされるか、まわりに尊重されるかってことを考えてきたんだけど、でも大人になるにつれてそんなことは必要ないってことに気づいたんだ。その意識を自分に向ければよかったのに。

ヴィデオがリジェクトされたとき僕もすごく怒りを感じたので、あなたのそういう姿勢は本当にカッコいいですね。“クィーン”っていうタイトルにはクィアネスに対する誇りが込められているんでしょうか?

MH:いろんな意味はあるんだけど、ちょっと自意識過剰になってるときに自分のなかにロイヤル・ファミリーが登場するんだ(笑)。周りから自分を守るために高貴に振る舞うっていう意味もあるし、ゲイを指す意味での「クィーン」でもあるし、すごくパワフルな女性を指しているときもあるし、いろんな意味が混ざってるタイトルなんだ。
 ……なんでいま、ロイヤル・ファミリーみたいに振る舞うって言っちゃたんだろう(笑)!

(笑)いやいや、意味するところはわかりますよ。

やってみるよ
このままでいるよ
首をくくられ 腸をとられ
高いところに横たえられていても
(“トゥー・ブライト”)

E王
Perfume Genius
Too Bright

Matador/ホステス

Indie Rock

Tower HMV Amazon iTunes

では、アルバム・タイトルの『トゥー・ブライト』はどうでしょう。「トゥー」が入ることで「ブライト」の印象が変わってくるんですが、このタイトル・トラックはどういうことを歌ったもので、なぜこのタイトルになったのでしょうか。

MH:ひとっていうのは物事に対して希望も見えるしダークな部分も見えるんだけど、ダークな部分もほうがより複雑なんだ。だけど、希望を見るほうがより努力が必要で、僕自身正しくないほうを選んでしまう。好きじゃないのにね。それがこの曲のテーマなんだ。

僕がとくに好きな曲が最後の“オール・アロング”という曲なんですけど、そこで「きみは僕の時間を無駄にした」と繰り返されるのが印象的です。複雑なリレーションシップを歌っているのかなと想像していたのですが、これはどういうところから出てきた曲なんでしょうか。

MH:僕はいままで、いかにまわりに大切にされるか、まわりに尊重されるかってことを考えてきたんだけど、でも大人になるにつれてそんなことは必要ないってことに気づいたんだ。その意識を自分に向ければよかったのに、っていう意味で、それだけ時間の無駄だったって歌詞なんだ。愛情を自分に向ければよかったって、聴き手にも言っているし、自分自身にも言ってるんだ。

なるほど。前回のインタヴューでもまさに、「悩んでもいいんだ」って話してくれたので、あなたにとってすごく一貫したテーマなんですね。そこに心を動かされました。

MH:そうだね、ありがとう。

木津毅(2014年9月26日)

12

Profile

木津 毅木津 毅/Tsuyoshi Kizu
ライター。1984年大阪生まれ。2011年web版ele-kingで執筆活動を始め、以降、各メディアに音楽、映画、ゲイ・カルチャーを中心に寄稿している。著書に『ニュー・ダッド あたらしい時代のあたらしいおっさん』(筑摩書房)、編書に田亀源五郎『ゲイ・カルチャーの未来へ』(ele-king books)がある。

INTERVIEWS